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○2章 手汗魔王と天才少女
-6 『舐められないことが大切でした』
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腹を満たし終えたボクたちは、町外れの小さな宿に部屋を取って一泊した。
エイミと手を離せない以上、同じベッドで寝なければならない。天幕を張って野宿したときもすぐ隣同士で眠ったが、それでもまだ慣れるものではなかった。
布団に入った彼女の寝息を聞きながら、ボクは心臓がドキドキするのを必死に抑えて眠りに付いた。
結局、どうにか無事に朝を迎えることが出来た。
無意識に手を離して、隣のベッドで眠っていたリリオを苦しめることもなかったのは一安心だ。
「おはようございますです」
目を覚ますとリリオに笑顔でそう迎えられ
「お、おはよう」とボクは少しぎこちなく返した。
それが少し嬉しくて、ボクも笑顔を浮かべて返した。
ふとリリオの視線が留まり、顔がほんのりと赤くなる。
「それにしても、やっぱり仲が睦ましいのでございますです」
彼女の視線は、エイミと繋いだ手に注がれていた。
「いや、これはね。言ったと思うけど、仕方ないことなんだ」
「はい。なにか事情がおありだとはお聞きしましたです。けれど、本当に仲がよろしいようで」
「ただ手を繋いでるだけなのに――って、うわあ!」
急に手首にひんやりとした感触があり、ボクはか細い声を上げてしまった。
ぬめりと、何かが手首を這っている。
「な、なんで手首を舐めてるの?!」
気付けば、エイミがボクの腕を引き、顔を摺り寄せるように近づけていた。
また寝ぼけているみたいだ。
それにしても間違って舐めてくるなんて想定外だ。
突然のことに動転してしまう。
「んん。しょっぱい」
「うわああ。手汗です、ごめんなさい」
エイミの寝言に反射的に謝ってしまう。
だがイヤ、待て。今はそれどころではない。
「やっぱり仲良しでございますです」
恥らうように茶化してくるリリオがいる手前、手を離すことも出来ない。
このままもし彼女が起きれば、またこの前のように殴られかねない。
咄嗟にボクは頭を回す。
「リリオ、ちょっとこっちに来て」
「はい?」
近寄ってきたリリオの腕を引っ張り、眠りこくるエイミの目の前に差し出す。
替え玉作戦だ。
また、ぺろり、とエイミが舌を出した。
今度はリリオの滑らかな手首を舌が這う。
「ふにゃあ……」と身体を震わせてリリオが甘い声を漏らした。
「んん。今度は、甘いわ」
あ、甘いんだ。
ごくり、と思わずボクは唾を飲んでしまった。
「な、何をなさいますですか、アンセル様」
「ごめん。でも、このまま舐められててくれないかな」
「イヤでございますですよ。ひゃあっ、また。お嬢様の舌が私の手首に」
「我慢して。ボクを守るためだと思って」
「意味がわかりませんです……ひゃあああ、また」
「エイミは寝起きの時にはひどく寝ぼけるみたいなんだ。ボクに変なことしてたってわかると、ボクが殴られちゃう」
「私が殴られるのはよろしいのでございますですか?!」
「リリオなら殴られないよ。女の子同士だし」
「そんなあ……ひゃあっ。あ、今度はほっぺスリスリぃ……」
リリオが羞恥と感触に身悶えるたび、彼女のふさふさの尻尾がぴんと張ったりしょげたりを繰り返している。
「助けてくださいです、アンセル様」
「ボクには無理だよ。エイミを怒らせるなんて、竜神の怒りを買うようなものさ。そっとしておくほかないんだよ」
「そんなあ……」
「我慢して! 触らぬエイミに祟りなしだよ!」
「…………へえ。私ってそんなに恐いんだ」
ふと、地鳴りのように低い声が混じり、ボクは雷に打たれたように全身をビクリと痺れさせた。
気が付くと、寝ぼけ顔だったエイミはすっかり目を見開き、寝転んだままボクの顔を見上げていた。
ゆっくりと彼女の口角が持ち上がっていく。
「竜神の怒りってどんなものかしら。見てみたいと思わない?」
「あ、いえ……間に合ってます――いったああああああああああああああ」
寝起きとは思えない、顔が潰れるかと思うほどの豪快な右ストレートを顔面に叩きつけられ、ボクは「護衛なんかいらないんじゃないか」と昨日の会話を思い出しながら涙を流した。
エイミと手を離せない以上、同じベッドで寝なければならない。天幕を張って野宿したときもすぐ隣同士で眠ったが、それでもまだ慣れるものではなかった。
布団に入った彼女の寝息を聞きながら、ボクは心臓がドキドキするのを必死に抑えて眠りに付いた。
結局、どうにか無事に朝を迎えることが出来た。
無意識に手を離して、隣のベッドで眠っていたリリオを苦しめることもなかったのは一安心だ。
「おはようございますです」
目を覚ますとリリオに笑顔でそう迎えられ
「お、おはよう」とボクは少しぎこちなく返した。
それが少し嬉しくて、ボクも笑顔を浮かべて返した。
ふとリリオの視線が留まり、顔がほんのりと赤くなる。
「それにしても、やっぱり仲が睦ましいのでございますです」
彼女の視線は、エイミと繋いだ手に注がれていた。
「いや、これはね。言ったと思うけど、仕方ないことなんだ」
「はい。なにか事情がおありだとはお聞きしましたです。けれど、本当に仲がよろしいようで」
「ただ手を繋いでるだけなのに――って、うわあ!」
急に手首にひんやりとした感触があり、ボクはか細い声を上げてしまった。
ぬめりと、何かが手首を這っている。
「な、なんで手首を舐めてるの?!」
気付けば、エイミがボクの腕を引き、顔を摺り寄せるように近づけていた。
また寝ぼけているみたいだ。
それにしても間違って舐めてくるなんて想定外だ。
突然のことに動転してしまう。
「んん。しょっぱい」
「うわああ。手汗です、ごめんなさい」
エイミの寝言に反射的に謝ってしまう。
だがイヤ、待て。今はそれどころではない。
「やっぱり仲良しでございますです」
恥らうように茶化してくるリリオがいる手前、手を離すことも出来ない。
このままもし彼女が起きれば、またこの前のように殴られかねない。
咄嗟にボクは頭を回す。
「リリオ、ちょっとこっちに来て」
「はい?」
近寄ってきたリリオの腕を引っ張り、眠りこくるエイミの目の前に差し出す。
替え玉作戦だ。
また、ぺろり、とエイミが舌を出した。
今度はリリオの滑らかな手首を舌が這う。
「ふにゃあ……」と身体を震わせてリリオが甘い声を漏らした。
「んん。今度は、甘いわ」
あ、甘いんだ。
ごくり、と思わずボクは唾を飲んでしまった。
「な、何をなさいますですか、アンセル様」
「ごめん。でも、このまま舐められててくれないかな」
「イヤでございますですよ。ひゃあっ、また。お嬢様の舌が私の手首に」
「我慢して。ボクを守るためだと思って」
「意味がわかりませんです……ひゃあああ、また」
「エイミは寝起きの時にはひどく寝ぼけるみたいなんだ。ボクに変なことしてたってわかると、ボクが殴られちゃう」
「私が殴られるのはよろしいのでございますですか?!」
「リリオなら殴られないよ。女の子同士だし」
「そんなあ……ひゃあっ。あ、今度はほっぺスリスリぃ……」
リリオが羞恥と感触に身悶えるたび、彼女のふさふさの尻尾がぴんと張ったりしょげたりを繰り返している。
「助けてくださいです、アンセル様」
「ボクには無理だよ。エイミを怒らせるなんて、竜神の怒りを買うようなものさ。そっとしておくほかないんだよ」
「そんなあ……」
「我慢して! 触らぬエイミに祟りなしだよ!」
「…………へえ。私ってそんなに恐いんだ」
ふと、地鳴りのように低い声が混じり、ボクは雷に打たれたように全身をビクリと痺れさせた。
気が付くと、寝ぼけ顔だったエイミはすっかり目を見開き、寝転んだままボクの顔を見上げていた。
ゆっくりと彼女の口角が持ち上がっていく。
「竜神の怒りってどんなものかしら。見てみたいと思わない?」
「あ、いえ……間に合ってます――いったああああああああああああああ」
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