最強すぎて誰も近寄れない魔王のボクですが、初めて女の子と手を繋ぎました。手汗ヤバイです

矢立まほろ

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○2章 手汗魔王と天才少女

 -10『残念な美少女はお好きですか』

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 天使の少女、パーシェル。

 彼女はつまり、ボクを監視するために天使族の長老から使わされたらしい。

 実際、ボクは『森の魔王』と恐れ呼ばれるほどの力がある。
 凶暴な魔獣ですら一瞬で倒せるほどだ。そんな大きな力を持った人間が下界に混じれば、動向が気になるのは不思議というほどではない。

 ましてや世界の平和を調停、維持することが存在意義といわれる天使族ともなれば殊更だろう。

「……世界に対する謀反の可能性があるから、って。おじ……長老様に」

 なるほど、と話を聞いてボクは納得した。

 もしかすると先の外套の男達と関係があるかと構えていたが、思ってもいない自体に拍子抜けした気分だ。けれどパーシェルは悪い子ではないようだし、何事もなくてよかった。

 監視虫なんていうものまで使って監視されていたと聞かされたときは、少し気味が悪いとは思ったけれど。

「監視虫で、監視中。えへへ……」

 照れ顔でこっそりリリオがそう呟いたのをボクは聞き逃さなかった。三角の耳を垂れさせ、頬を紅潮させてにんまり笑む。

 ――可愛いなあ。親父くさいけど。

 パーシェルの素性は判明した。
 しかしそれでも、まだエイミは少し怪訝そうだった。

「謀反で一大事かもしれないって言うわりに、天使族の連中はどうしてこんな子を寄越したのよ」

 こんな子、とはもちろん、悪い意味でだろう。
 たしかに、とボクも思わず心の中で賛同してしまう。失礼ながら。

「失礼ですね。パーシェルは天使学校を主席で卒業した超エリートなんですよ!」

 天使学校……なんだかすごそうだ。

 そんなところの主席となると、見かけによらず、実はすごい実力や知識を持っているのだろうか。もしくは魔法などの才能が長けているとか。

「エイミ、この子、もしかして凄い子なんじゃ」
「そうなんです。パーシェルは凄いんですよ」

 ボクに言われ、えへん、とパーシェルは調子に乗って胸を張った。
 鼻息を強く噴き出し、たわわな胸元の二つの実が勢いよくゆれる。

 なんだか、本当にちゃんとした天使に見える。

「まあ、生徒はパーシェル一人だけだったんですけど」

 ……前言撤回だ。

「少子化なんですよ! 『この際、血がちょっとくらい薄くなっても良いから、ついでに下界で優良な血を見つけて子孫を繁栄させてこい』って、『ユー、やっちゃいなよ』って軽く言われちゃったくらいに!」
「そ、そうなんだ」

 天使にもいろいろ事情があるんだなあ、とイヤな生々しさに苦笑してしまう。

「とにかく、パーシェルは怪しいものではないんです」
「怪しくないのはわかったよ」

 変だけど。

「でもボクは別に、力を使って悪さをしようってわけじゃないんだ。ちょっと頼まれごとをされて、ついていってるだけなんだよ」
「ほう。それで、頼まれごととは?」

「秘密よ」とエイミが割って入る。

「もしや謀反ですか!」と何故か目を輝かせるようにして言うパーシェルに、エイミは呆れ顔で首を振った。

「そんなわけにでしょ。それよりも、わたしたちはもう行くわよ」
「どうして。あ、まさか今から謀ほ……」
「違うわよ」

 エイミが頭を抱えて溜め息を漏らす。

「ボクたち、これから行くところがあるんだ」とボクは付け足す。

「やはり謀反では!」
「違うよ」
「ですがそれが真実という確証も……」
「じゃあ一緒に来て、近くで監視しながら確かめてみれば良いんじゃないかな」

 ぽかんと少しの間があったが、やがて、

「……なるほど!」とパーシェスは胸の前で手を打つ。

「天才ですね!」

 飛びぬけた明るい声でそう言う彼女に、ボクも頭が痛くなりそうな気分だった。

 残念美人。
 ただその一言に尽きる。

 こうして、残念系美少女天使のパーシェルが新しく仲間に加わった。
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