最強すぎて誰も近寄れない魔王のボクですが、初めて女の子と手を繋ぎました。手汗ヤバイです

矢立まほろ

文字の大きさ
46 / 69
○3章 手汗魔王と死者の王

 -15『暗雲も彼方に今の青天です』

しおりを挟む
 騎士団の人たちに悪影響を与えないために、エイミがボクの手を握り、そのまま支えて引き起こしてくれていた。

「隊長、町の外の鎮圧もおおかた終了いたしました」

「そう。第二小隊はこのまま公爵を王都へ連行。第一小隊は私とこのままボードの調査を続けるわぁ。ヴリューセンの私兵と傭兵たちにも話を聞きたいから、町の門の付近で待たせておいてぇ。それと、トラッセルに残した子たちに、急ぎ領主邸への突入を」

「了解いたしました」

 ガイセリスの指示を出す姿はさすが国を纏め上げる騎士団の団長らしく凛々しい様で、部下達への命令はもてきぱきと手慣れたものだった。

 女口調のいまいち締まらない雰囲気からは想像もできない。

 しかし彼らがやってきてくれたおかげで、町外で劣勢を強いられようとしていたトラッセル軍や傭兵たちも無事なようだ。おそらくユーなんとかも。

 さすがは国属の精鋭部隊なだけはある。

「ただのオカマだと思った? これでもみんなからは『ナイス、ガイセリス!』と敬われているのよ」

 なんとも格好いいのか悪いのかわからない台詞に、ボクは曖昧な苦笑を浮かべて返した。

「私に惚れちゃ、駄目よぉ」

 そう言ってウインクを飛ばしてくる。
 三十代か四十代はいってそうなおじさんのウインクをどう受け取ればいいのか。

「さて、とぉ。これでやっと一息つけるわねぇ。彼は国家への反逆罪として送致されるわぁ」
「ありがとうございます。助かりました」

「それにしても驚いたわぁ。また貴方たちに出会うなんてぇ」
「そ、そうですね」
「この魔獣も貴方たちが? 貴方たちっていったい……」

 キメラ魔獣の死体を横目に、ガイセリスが尋ねてくる。

 ぎくり、と胸が高鳴った。

 かつて、意思に関係なくとはいえ無差別に人を殺してきた森の魔王と知れれば、心象も悪くなりかねない。そのことに気付かれないようあまり注目されたくない以上、ボクがやった、とも答えづらい。

「そ、それは……」とつい口ごもっていると、

「その通りなのじゃ! わらわたちならば、魔獣の一匹や二匹、ちょちょいのちょいなのじゃ!」

 いつの間にか戻ってきていたミレーナが、ボクたちの間に割って入り、ふんぞり返ってそう言いはなった。

 突然やって来たちんちくりんに、ガイセリスが目を丸くして驚く。

「まあ、誰かと思えばドールゼを捕らえた天才魔術師ちゃんじゃなぁい」
「ふっはっは、そうなのじゃ!」

 ここぞとばかりに気持ちよさそうに見栄を張っている。
 なんとも図々しいが、今ばかりはその背伸びがとても助かる。

「そうだったのぉ。ドールゼを打ち負かした魔術師というのなら、まあ納得はできるわねぇ」

 素直に感心したガイセリスが、ふとパーシェルの姿も捉える。ガイセリスの目にとまったのは、彼女の背中の白い羽だ。

「それに天使族まで。なるほどねぇ。どうして貴方たちがドールゼのところでも、このボードでも問題の渦中にいるのかと不思議に思っていたけれど。争いの調停者である天使族に使わされていたのねぇ」

 ――ああ、またあらぬ誤解だ。

 やはりそんな高尚な考えもなくたまたま来ただけなのに勝手に持ち上げられ、申し訳なさといたたまれなさに胃が痛くなりそうだ。

 ガイセリスはすっかりそれを信じきっているようで、そんな彼にパーシェルは気分がよくなったのか、

「私たち天使族はいつも貴方たち人間を見守っています。平和への祈りを絶やさず、日々精進を続けるのです。かっこ注釈、右手を前に差し出してできるだけ朗らかに笑うことで、その神々しさが五割増します」

 ――なんだかそれっぽい言葉の最後になんか引用してきたみたいな変な説明書き入ってるんですけど!

 パーシェルは右手を差し出した格好でまさに言ったとおりに微笑を浮かべる。

 まるで何かの教本どおり――絶対に天使学校で習っただろ、それ。

 思わず突っ込みたくなるのはさておき、ガイセリスは完全に信じきった様子でパーシェルの前に傅いていた。

 申し訳なさに駆られるが、ミレーナもパーシェルも満足そうなのでいいとしておこう。敬われるのが嬉しいのか、二人とも蕩けるような笑顔で悦に浸っていた。

 茶番劇のような下らないやりとりをしているうちに、ボクの方もすっかり体調を取り戻せた。

「これで平和ですね」

 先ほどまで激戦が繰り広げられていたとは思えないほど静かなダンスフロアを見渡してボクは呟く。

 しかしまだ何か引っかかっているとでも言いたげに、ガイセリスの表情は浮かないものだった。

「そうねぇ。そうならいいのだけれど」

 そう吐き捨てた彼の言葉に一抹の不安を残しながら、死霊魔術騒動は一端の区切りを迎えたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...