最強すぎて誰も近寄れない魔王のボクですが、初めて女の子と手を繋ぎました。手汗ヤバイです

矢立まほろ

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○4章 手汗魔王と繋いだ手

 -14『天より来たりし助っ人です』

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 王城の中の廊下にも、おそらくワドルドが殺したのだろう死人兵たちが点在していた。

 リリオの拳、ミレーナの火球魔法、そしてパーシェルの槍さばき。
 向かい来るその悉くを薙ぎ倒し、豪奢に飾られた廊下を進んでいく。

 二つの峰に挟まれる形で建つこの城は、より深く、山の麓へと向かうように長く伸びている。そして玉座が置かれているのは、その最奥で、市井を一望することができるやや小高い場所に存在した。

 玉座へ至るにはその道のりも長い。
 王城を守る衛兵や使用人たち。その衣服を血に染めた彼らが、絶え間なくボクたちへと襲い掛かってくる。

 本当に、城の中の人だけなのだろうかと疑いたくなるほど数が多い。もしかすると町の巡回兵のように、事前に仕組んでいた可能性も考えられる。

 ひっきりなしに襲い掛かってくる死人兵たちに、退け払うリリオたちにも相当な疲労の色を見せはじめていた。

 このままでは数に押されて、いつまでもワドルドに追いつけないかもしれない。壁のように並んで眼前に迫る死人兵の波に、さすがの焦燥が駆け巡る。

「これじゃあ間に合わないよ……」

 ボクの力を使えれば早いのに、それではリリオたちも巻き込みかねない。

 本当に、どうしてこう肝心なところで役に立てないのか。

 口惜しさに心が逸る。
 そんなボクに、ふと、パーシェルが振り返った。

「あ、そうだ!」

 拍子抜けするような明るく弾んだ声で彼女は平手を打つ。すると懐からラッパのようなものを取り出した。いったいどこに収納していたのかわからないが、それは見たところ、小さな白い翼が付いただけのただの管楽器のようにしか見えない。

「なにそれ」とボクが尋ねると、パーシェルは思わずむかつきそうになるくらい得意げな笑みを浮かべた。

「天使のラッパです!」
「天使のラッパ?」
「ええ、そうですよ。これを吹くとですね、音色に導かれて、天界から天使族の精鋭部隊を召集することができるのですよー」

 えっへん、と胸を張るパーシェル。
 天使族の精鋭部隊。それが本当なら増援として心強い。

「もっと早く言うのじゃ!」とミレーナが怒る。

「す、すみませんー。ですが、これで吃驚するくらい戦況を変えてしまいますよ」

 そう言ってパーシェルがラッパを吹く。
 綺麗な音色が響き渡り、心なしか、城の窓から見える空から光の柱が差し込んできた。

 ――ばさり。

 翼の羽ばたく音が聞こえる。
 それはやがて幾重にも重なり、窓の外に多くの陰を映す。

 本当に天使がやって来た。これで数の有利も多少は巻き返せる。

「パーシェル、すご……」

 凄いよ、と窓の外を見たボクは、思わず足を止めて立ち尽くしてしまった。それに気付いたエイミたちも立ち止まり、やはり一様に口を開け、ぽかりと窓の向こうの光差す空を見上げていた。

 そこにいたのは確かに天使だった。
 白い翼を羽ばたかせ、槍と戦衣装に身を纏った十数人の天使族。

 しかし屈強という言葉とは程遠いほどに、そこにいた全員が「おじいちゃん」くらいに年老いていた。シワはよれよれで、手足も細く、今にも死にそうな顔をしている者も少なくない。天に召されている最中なのではないかと思うほどに。

「これが……精鋭部隊?」

 思わず呆れ声を漏らしてしまったボクに、

「言ったじゃないですか! 少子高齢化で大変なんですよー!」とパーシェルは言い訳していた。

 彼女の主席卒業もそうだが、本格的に心配になってきた。天使族の将来が。

 おまけに外に光臨したものの、窓が閉まってて入れないといった風に天使族の老人達は困惑している。リリオが親切に窓を開けてやって、やっと彼らはそこからのそのそと中に入ってきたのだった。

「我ら、神の加護を受けし勇敢なる戦士なり!」

 老人たちは今更そんな口上を述べ、槍を構えて一列に並んだ。その手や足腰は震えていて、小鹿のように心配になる。

「パーシェル、あの人たち大丈夫なの?」
「もっちろんですよ、アンセルさん」

 自信を持って答えたパーシェルが言うとおり、最初はゆっくり挙動だった老人たちだが、やがて翼を羽ばたかせると、広い廊下を縦横無尽に飛び回り、寄ってくる死人兵たちを瞬く間に薙ぎ倒していった。

「す、すごい」

 見た目はともかく、実力は確かのようだ。

「がんばってくださいです、おじいちゃんたちー!」とリリオが声をかける様子は、さながら老人会のゲートボール大会に応援に来た孫のような奇妙な様相を呈していた。
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