15 / 23
16 赤い霊長類の恐怖
しおりを挟む
夢中で菜っ葉をたいらげながら、ふと目線をあげると、ロレッタがテーブルの向こう側に頬杖をついていた。
「あのさ」
「ん?」
「なんでそんなに必死なの?」
「なんでって──旨いからさ。ここの炒め料理ときたら──」
「菜っ葉じゃなくて、冒険」
「ああ、そっちか。まあ──んぐ──仕事だからな」
「そんな仕事やめてさ、もっと楽なのやればいいじゃん」
「簡単に言うけどな。仕事が楽だと給料も安いんだよ」
他の客からの注文も一段落ついたのか、ロレッタは勝手に休憩をとって、お喋りをする気のようだった。
俺はモグモグやりながら、
「誰かさんと違って特別な才能とかないんでね。親から引き継いだ商売でもなきゃ、俺みたいな若造が生業にできるのは肉体労働しかないんだよ」
「ふーん、ホントかなぁ──」
「本当だよ。どっかの親方に弟子入りして手に職つける年齢でもないしな。役人になるツテでもありゃあ、また違うんだろうけどさ」
俺はエールをぐびりとやった。
これがまたいい!
脂っこくなった口を苦味のきいた発泡性の刺激がきれいに洗い流して、すっきりしたところにまた塩と油まみれの菜っ葉。味がしつこくなったらまたエール。
で、結局、なにしにきたんだっけ?
まあいいや、そいつは食ってからだ──ぐびり、パクリ、ぐびり、バクバク、ガツガツ、ぐびり。
「そんなこと言って、ホントはあの赤ゴリラ女が好きなんじゃないのかなぁ──」
いきなり素っ頓狂な妄想をぶっ込まれて、俺はあやうくエールを吹きだすところだった。
「──あたり?」
「あ、あのな。俺とリアは養成学校の同期生で、いまは同じギルドの代表と団員だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ムキになって否定するところがアヤシイ」
「だいたいな、リアのことを赤ゴリラとか言ったら殺されっぞ」
「え? あたしリアがそうだって言ってないよ? フィルって赤ゴリラ女が好きだよねって言ったら、勝手にリアのことだと思ったんでしょ?」
「きったねえな。言ってるようなもんじゃねえかよ」
「リアに言いつけちゃおっかなー、ひひ」
なんて生意気な小娘だ。
しかも小娘だけに、この手の嫌がらせを始めるとしつこくて長い。
俺は辟易しながらも大人の威厳をみせて、
「さ、さてと。悪ふざけはそのくらいにして仕事の話しでもしようぜ」
「あ、逃げた」
「今回は割安な報酬になるかもしれない。だが大迷宮商事は業界大手だ。実績をつくっておけば今後の継続的な仕事が期待できる」
「ほほー、よほど都合がわるいとみえる」
ほんっとにタチ悪いなぁ──
「あのさ」
「ん?」
「なんでそんなに必死なの?」
「なんでって──旨いからさ。ここの炒め料理ときたら──」
「菜っ葉じゃなくて、冒険」
「ああ、そっちか。まあ──んぐ──仕事だからな」
「そんな仕事やめてさ、もっと楽なのやればいいじゃん」
「簡単に言うけどな。仕事が楽だと給料も安いんだよ」
他の客からの注文も一段落ついたのか、ロレッタは勝手に休憩をとって、お喋りをする気のようだった。
俺はモグモグやりながら、
「誰かさんと違って特別な才能とかないんでね。親から引き継いだ商売でもなきゃ、俺みたいな若造が生業にできるのは肉体労働しかないんだよ」
「ふーん、ホントかなぁ──」
「本当だよ。どっかの親方に弟子入りして手に職つける年齢でもないしな。役人になるツテでもありゃあ、また違うんだろうけどさ」
俺はエールをぐびりとやった。
これがまたいい!
脂っこくなった口を苦味のきいた発泡性の刺激がきれいに洗い流して、すっきりしたところにまた塩と油まみれの菜っ葉。味がしつこくなったらまたエール。
で、結局、なにしにきたんだっけ?
まあいいや、そいつは食ってからだ──ぐびり、パクリ、ぐびり、バクバク、ガツガツ、ぐびり。
「そんなこと言って、ホントはあの赤ゴリラ女が好きなんじゃないのかなぁ──」
いきなり素っ頓狂な妄想をぶっ込まれて、俺はあやうくエールを吹きだすところだった。
「──あたり?」
「あ、あのな。俺とリアは養成学校の同期生で、いまは同じギルドの代表と団員だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ムキになって否定するところがアヤシイ」
「だいたいな、リアのことを赤ゴリラとか言ったら殺されっぞ」
「え? あたしリアがそうだって言ってないよ? フィルって赤ゴリラ女が好きだよねって言ったら、勝手にリアのことだと思ったんでしょ?」
「きったねえな。言ってるようなもんじゃねえかよ」
「リアに言いつけちゃおっかなー、ひひ」
なんて生意気な小娘だ。
しかも小娘だけに、この手の嫌がらせを始めるとしつこくて長い。
俺は辟易しながらも大人の威厳をみせて、
「さ、さてと。悪ふざけはそのくらいにして仕事の話しでもしようぜ」
「あ、逃げた」
「今回は割安な報酬になるかもしれない。だが大迷宮商事は業界大手だ。実績をつくっておけば今後の継続的な仕事が期待できる」
「ほほー、よほど都合がわるいとみえる」
ほんっとにタチ悪いなぁ──
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる