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18 一触即発
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年季の入った魔術士ってのは、なんでこういう、いかがわしい場所が好きなんだろう。
アヤシサの演出としてわからなくはないが、なにも呑む・打つ・買うが揃った頽廃窟に店を構えなくていいだろうに。
そんな物騒な街並みを、
「ふんふんふーん♪」
と、ロココ・スタイルで身を固めたロレッタが、足取りも軽くスキップしてゆく。
何というか──違和感しかない。
もっとも、この手の場違いに敏感なのは、同伴の俺や往来で屯っている酔っ払いより、界隈で商売をしている女性であることが多い。
(やっぱ来るか。そりゃ来るよなあ──)
彼女たちにしてみれば、ヨソ者にド派手な身なりで職場を闊歩されては、商売もあがったりというものだろう。
しかもそれがうら若い(しかもクソ生意気そうな)少女ときてる。
案の定──
往来で男たちの袖を引いていた女性がひとり、ふたりと路地に消えて、かわりに現れたのは人相のよくない極道者たちだった。
ところがこの方々、
「麗しき姫御前におかれては、今宵は何処のサロンにお忍びであらせられるか」
最近の極道者は、なかなか風流なことを言うもんだ。
人数はふたり──いや、後ろでそっぽを向いてる男がリーダー格か。ああして周囲を警戒しながら、こちらの様子をうかがっているのだ。
俺はロゼッタと極道者の間に身体を割り込ませて、
「悪気はないんです。そのう、ちょっと変わった娘でして」
「おやおや、彼氏の登場かね」
「彼氏ィ? そう見える???」
「ロゼッタは黙っててくれ──すいません、すぐに行きますから」
「残念だが、この界隈を職場にしている御婦人が酷くご立腹でね」
「俺もそう思ったんですけど、言ってきくような娘じゃなくて──よく謝っといてください」
「人づては感心せんな。我々と同行して自身の言葉で真摯な反省の意を伝えたまえ」
「すいません。急いでるもんで」
「どうやら少しばかり社会勉強が必要のようだね」
「あ、間に合ってます。会社でビジネスマナー研修やりましたから」
「──なかなか性根のすわった青年だ」
心を込めた謝罪もむなしく、間合いに不穏な空気が流れ始めた。
ロレッタはといえば──オラ、ワクワクがとまんねえゾって表情を隠しもしない。こういう揉め事が大好物なのだ。とりあえず、その顔やめろ!
極道者の片手が背後にまわった。得物は券鍔か短刀か風火輪風火輪か──
俺はといえば長剣を下宿に置いてきている。
抗争でもあるまいに、刃物をぶらさげてスラム街をうろつくなど、
「袋叩きにして身ぐるみ剥いでください」
と、お願いするようなものだ。
じりっ、と極道者が間合いを詰めた。
ずいっ、とロレッタが間合いを詰め返した。
いいよな、お前は。触媒なしの呪文でそこそこの魔術を出せるんだから──さて、俺のほうはどうしようかね。
そう思案をめぐらせたとき、
「やめとかんかィ」
やたらと威圧のきいた低い声がした。
アヤシサの演出としてわからなくはないが、なにも呑む・打つ・買うが揃った頽廃窟に店を構えなくていいだろうに。
そんな物騒な街並みを、
「ふんふんふーん♪」
と、ロココ・スタイルで身を固めたロレッタが、足取りも軽くスキップしてゆく。
何というか──違和感しかない。
もっとも、この手の場違いに敏感なのは、同伴の俺や往来で屯っている酔っ払いより、界隈で商売をしている女性であることが多い。
(やっぱ来るか。そりゃ来るよなあ──)
彼女たちにしてみれば、ヨソ者にド派手な身なりで職場を闊歩されては、商売もあがったりというものだろう。
しかもそれがうら若い(しかもクソ生意気そうな)少女ときてる。
案の定──
往来で男たちの袖を引いていた女性がひとり、ふたりと路地に消えて、かわりに現れたのは人相のよくない極道者たちだった。
ところがこの方々、
「麗しき姫御前におかれては、今宵は何処のサロンにお忍びであらせられるか」
最近の極道者は、なかなか風流なことを言うもんだ。
人数はふたり──いや、後ろでそっぽを向いてる男がリーダー格か。ああして周囲を警戒しながら、こちらの様子をうかがっているのだ。
俺はロゼッタと極道者の間に身体を割り込ませて、
「悪気はないんです。そのう、ちょっと変わった娘でして」
「おやおや、彼氏の登場かね」
「彼氏ィ? そう見える???」
「ロゼッタは黙っててくれ──すいません、すぐに行きますから」
「残念だが、この界隈を職場にしている御婦人が酷くご立腹でね」
「俺もそう思ったんですけど、言ってきくような娘じゃなくて──よく謝っといてください」
「人づては感心せんな。我々と同行して自身の言葉で真摯な反省の意を伝えたまえ」
「すいません。急いでるもんで」
「どうやら少しばかり社会勉強が必要のようだね」
「あ、間に合ってます。会社でビジネスマナー研修やりましたから」
「──なかなか性根のすわった青年だ」
心を込めた謝罪もむなしく、間合いに不穏な空気が流れ始めた。
ロレッタはといえば──オラ、ワクワクがとまんねえゾって表情を隠しもしない。こういう揉め事が大好物なのだ。とりあえず、その顔やめろ!
極道者の片手が背後にまわった。得物は券鍔か短刀か風火輪風火輪か──
俺はといえば長剣を下宿に置いてきている。
抗争でもあるまいに、刃物をぶらさげてスラム街をうろつくなど、
「袋叩きにして身ぐるみ剥いでください」
と、お願いするようなものだ。
じりっ、と極道者が間合いを詰めた。
ずいっ、とロレッタが間合いを詰め返した。
いいよな、お前は。触媒なしの呪文でそこそこの魔術を出せるんだから──さて、俺のほうはどうしようかね。
そう思案をめぐらせたとき、
「やめとかんかィ」
やたらと威圧のきいた低い声がした。
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