㈲ノーザン・クエスト カスバ市ハンブル区マージー通り196-2

あしき×わろし

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22 悠久の牢獄

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「ジュリ姉、話ながーい」
「ごめーん。だってフィル君たらね、ひとのこと大人扱いしてくれないんだもん」
「あ、それわかる。フィルってさ、すぐ子供扱いしてエラソーにするよね」

 おいおい。ちょっと待ってくれ。

「だいたいフィルってエラソーだよね。なんか上から目線で」

 だから、ちょっと待ってくれ。
 なんか少し前にも似たような難癖を聞いた気がするんだが、なんでさっきの流れでそういう話になるんだ?
 というかその前にだな、

「おいおいロレッタ。いつ俺が偉そうにしたって?」
「いっつも。年上だからってエバっちゃってさ」
「年上って──げんに年上だろ。ジュリアさんはともかくとして」
「あー、フィルくんたら、あたしのことおばさんって言ったー」
「最っ低──女の子の年齢をからかうなんて。あんた自分がなに言ったかわかってんの?」
「待て、待ってくれ──そんな意味で言ったんじゃなくてだな」
「フィルくんがぁ、おばさんってぇぇ──」

 びえー。
 とうとうジュリアが泣きだしてしまった。

「あー泣かした!」
「お、おばさんってぇぇ──ふええぇぇ──」
「いや、あの、そんなつもりじゃ」
「謝んなさいよ! ジュリ姉に謝んさいよ!」
「そのう──ご、ごめんなさい」

 なんだこれは。なんなんだこの展開は。
 もともと『上から目線でエラソーだ』という苦情がいつの間にか『中高年おばさん扱いした』にすり替わっている。
 なにが起こった? なんの魔術だ?
 しかし繰り返すが、今日の彼女ジュリアは年端もいかない少女なのだ。事情を知らない人が見れば、これはいい大人が子供を泣かしている風景シーンでしかない。
 まあ、客がかち合うことなんて滅多にない店ではあるんだが──

「お、来客でござるか」

 よりにもよってこんな時に誰か入ってくるとは。
 見ると、随分と上背のある男だった。一見ひょろりと頼りない印象だが、見る人が見れば大ぶりな骨格にみっしりとついた筋肉がわかるだろう。
 縮れた黒髪を後ろに束ねて、ゆったりとした服を腰の紐で身体に巻きつけている。これはハオリという異国の装束なのだとあとで知ったが、この時はそんなことには気にならないほど焦っていた。

「ち、違うんですよ? これは別に子供を苛めているわけじゃなくてですね──」
「ははは、若人をからかって遊ぶのは感心しませんな、魔女殿」

 男は日焼けした顔を苦笑させていた。
 は? 若人? か、からかった?
 振り返るとジュリアが、

「だってぇ、フィル君が困った顔するの、かわいくってぇ──」

 と笑い転げていた。
 俺はしばらくポカンとしていた。はて、笑えばいいのか、それとも怒るべきなのか。

「若人、怒りたもうな。これも魔女どのの、ほんの一時の気散じでござれば」
「は、はあ──」
「そーよぉ、フィル君」

 赤い頬をしてけらけら笑うジュリアが、

「刻のことわりに逆らって現世に居続けるって、とっても退屈なことなのよぉ──」

 そう言った瞬間、ひどく年老いた表情に見えて、俺は思わず目をこすった。
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