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シーズン1 いざMIH(メイド・イン・ヘブン)学園へ
010 というわけで、わしも入ろうと思う
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魔力の質が良くなくて、魔力量も新魔術を考えれば心もとない。
つまりフロンティアの魔力は男性的だということだ。
それだけでメビウスは確証を抱いた。LGBTQが取り沙汰される世の中だし(18世紀末期の話である)彼女のような性の不一致を抱えている子どもも少なくない。
さらにいえばロスト・エンジェルス人の子どもたちは挨拶でキスをする。所詮高校生といえども子どもだろう? と。もっとも、口づけする必要はなかったかもしれないが。
「でもチューするなんてずるい。こんな美人に、キスのひとつもされないまま死んでくヒトもたくさんいるんだよ?」
「それはとても悲しい話だが、君は本心を隠している」
「ほ、本心?」
「わしの口が加齢臭混じりの嗚咽したくなるような匂いなのか、それとも見た目どおり無味無臭なのか」
「ずっと気になってたのは間違いないけど……。おじいちゃんのことライク超えてラブになっちゃうかもよ? それでもキスして良いの?」
「君がお望みとあらば文句など無粋だ」
すこしずつ男女……いや同性だとしても危険な距離に近づいていく。
モアの顔は真っ赤だった。子どものとき良く顔を赤くして怒っていたなぁ、と昔を思い出してしまう。
こんな愚かな世界にすこしでも救いがあるのならば、きっとそれは少女になった老人と少女の接吻になのかもしれない。どこを向いてもくだらないおもちゃが転がる街、ロスト・エンジェルス。
そのおもちゃたちを使って遊べる年齢まで若返ったのだから、その決定的な証明として自身を性別変換させてきた孫娘との唇を合わせ、互いのつばを聖水のように交換し合うのは的確なのかもしれない。
それから数秒間、我々は互いを見つめ合っていた。
ただしモアはメビウスのひとつの部分を凝視している。胸だ。
なぜ自分は膨らみかけなのにTS化したジジイのほうが胸でけえんだよっ!! という理不尽なクレームも貰えそうだ。
「ねえおじいちゃん!! なんであたしより女の子やってる時間短いくせにそんなにスタイル良いの!? 存在そのものが犯罪的だよそのバスト!!」
なんとも身勝手にモアはキレ始めた。
言われてみれば若干肩こりが強まったなぁ、くらいにしか思っていなかった。胸が邪魔で足元が視えないときもあった。
ただ、この男の目を釘付けにする巨乳は娘も持っていた。やがていつかモアにも継承されるはずだ。
「大丈夫。キャビンの娘である君は母上から教わっているはずだ。人間いつ身体のピークが来るのかは分からないが、たいていの場合最盛期は高校2年生になったとき訪れると」
まあメビウスもびっくりしたのだが。遠征から帰ってきて家族水入らずでバカンスに行っている頃、この前まで貧乳改善したいと言っていたメビウスの娘キャビンの胸が数多の男性を魅了するナイスバストになっていたのだから。
「ともかく、もう問題はなさそうだし……わしは君の保護者として授業態度等をしっかり見させてもらおうかね」
「じゅ、授業態度、ですかぁ。そ、そうですねえ。やはり学生の本分は勉強なだけありりまして、テストの点数で評価していただきたくよう深く存じます」
もはや疑いもしないが、やはりモアの授業態度はとても悪いようだ。テストで点を取って魔術能力が高ければそれで良い。割り切った考え方をしているのであろう。
「まあ、わしとしては点数を出せていればそれで良いと思うがな」
「え、ほんと?」
「ほとんどの場合は、な」
「いえーい!! んじゃ、教室行こうか!!」
MIH学園の内部は奇妙だ。壁紙の代わりにディスプレイが設置されており、それらは乱暴な生徒への警告を行う。
セグウェイに乗って移動する生徒も多数いる。とにかくただ広い廊下では、よほど速度を出していない限り接触事故になる心配もない。
教室を窓から見る限り、出された問題やテストを解くのならばなにをやっても良いという雰囲気が広がっている。菓子を食べたり、果てには電子タバコを咥えたり……高校という概念がひっくり返りそうだ。
元々近未来の国であるロスト・エンジェルスの中でも特に“200年先の技術”を欲張って築いた仮想的な未来なのだろうか。
「のう、モア」
「なに──かわいいっっっ!!」
モアは目をキラキラさせ、これで何十枚目か分からない少女になった祖父の写真を撮りまくる。割と普段からやられていることだ。だが、正直この姿になって数日しか経っていないメビウスからすれば、老人を写真に収めることがそんなに世間の流行りなのか、と一瞬考えてしまう。
「はーっ。かわいい。あーっ、可愛い。んで、お姉ちゃんなに?」
「高校という場所はこんなに自由なのか?」
「ん~? まあ、MIH学園とカインド・オブ・マジック学園とかはこんな感じだね」
「しかし、若者がタバコなど吸って良いのか?」
「まー、ダメだよね。けど、あれタバコじゃないもん。色んな集中できる薬草やらなにやら丸めて加熱タバコにしてるんだってさ」
「まさしく最先端だな……。この学校は」
「んん? おじいちゃん?」
誰もいないことを知ったのか、モアは途端にニヤケ面になった。彼女は心底楽しそうな声色で続ける。
「まさかMIH学園入りたいの?」
「興味が湧いたのは事実だ。私の行っていた軍学校は自由で開かれた学校ではなかったからな。生徒たちも皆、なにかに怯えながら生きていたよ」メビウスは窓から陸上部の練習を眺め、「しかし、ここは自由をもって生徒を教育するのだな。ジョンやクールのような、変人だが天才児を腐らせないという意味で素晴らしいといえる」
かつての教え子たちが通っていた学園。メビウスの姿は16歳程度の少女。白くて柔らかい手を見つつ、メビウスという英雄は血迷った決断を下す。
「というわけで、わしも入ろうと思う。せっかく子どもの身体を手に入れたわけだしな」
つまりフロンティアの魔力は男性的だということだ。
それだけでメビウスは確証を抱いた。LGBTQが取り沙汰される世の中だし(18世紀末期の話である)彼女のような性の不一致を抱えている子どもも少なくない。
さらにいえばロスト・エンジェルス人の子どもたちは挨拶でキスをする。所詮高校生といえども子どもだろう? と。もっとも、口づけする必要はなかったかもしれないが。
「でもチューするなんてずるい。こんな美人に、キスのひとつもされないまま死んでくヒトもたくさんいるんだよ?」
「それはとても悲しい話だが、君は本心を隠している」
「ほ、本心?」
「わしの口が加齢臭混じりの嗚咽したくなるような匂いなのか、それとも見た目どおり無味無臭なのか」
「ずっと気になってたのは間違いないけど……。おじいちゃんのことライク超えてラブになっちゃうかもよ? それでもキスして良いの?」
「君がお望みとあらば文句など無粋だ」
すこしずつ男女……いや同性だとしても危険な距離に近づいていく。
モアの顔は真っ赤だった。子どものとき良く顔を赤くして怒っていたなぁ、と昔を思い出してしまう。
こんな愚かな世界にすこしでも救いがあるのならば、きっとそれは少女になった老人と少女の接吻になのかもしれない。どこを向いてもくだらないおもちゃが転がる街、ロスト・エンジェルス。
そのおもちゃたちを使って遊べる年齢まで若返ったのだから、その決定的な証明として自身を性別変換させてきた孫娘との唇を合わせ、互いのつばを聖水のように交換し合うのは的確なのかもしれない。
それから数秒間、我々は互いを見つめ合っていた。
ただしモアはメビウスのひとつの部分を凝視している。胸だ。
なぜ自分は膨らみかけなのにTS化したジジイのほうが胸でけえんだよっ!! という理不尽なクレームも貰えそうだ。
「ねえおじいちゃん!! なんであたしより女の子やってる時間短いくせにそんなにスタイル良いの!? 存在そのものが犯罪的だよそのバスト!!」
なんとも身勝手にモアはキレ始めた。
言われてみれば若干肩こりが強まったなぁ、くらいにしか思っていなかった。胸が邪魔で足元が視えないときもあった。
ただ、この男の目を釘付けにする巨乳は娘も持っていた。やがていつかモアにも継承されるはずだ。
「大丈夫。キャビンの娘である君は母上から教わっているはずだ。人間いつ身体のピークが来るのかは分からないが、たいていの場合最盛期は高校2年生になったとき訪れると」
まあメビウスもびっくりしたのだが。遠征から帰ってきて家族水入らずでバカンスに行っている頃、この前まで貧乳改善したいと言っていたメビウスの娘キャビンの胸が数多の男性を魅了するナイスバストになっていたのだから。
「ともかく、もう問題はなさそうだし……わしは君の保護者として授業態度等をしっかり見させてもらおうかね」
「じゅ、授業態度、ですかぁ。そ、そうですねえ。やはり学生の本分は勉強なだけありりまして、テストの点数で評価していただきたくよう深く存じます」
もはや疑いもしないが、やはりモアの授業態度はとても悪いようだ。テストで点を取って魔術能力が高ければそれで良い。割り切った考え方をしているのであろう。
「まあ、わしとしては点数を出せていればそれで良いと思うがな」
「え、ほんと?」
「ほとんどの場合は、な」
「いえーい!! んじゃ、教室行こうか!!」
MIH学園の内部は奇妙だ。壁紙の代わりにディスプレイが設置されており、それらは乱暴な生徒への警告を行う。
セグウェイに乗って移動する生徒も多数いる。とにかくただ広い廊下では、よほど速度を出していない限り接触事故になる心配もない。
教室を窓から見る限り、出された問題やテストを解くのならばなにをやっても良いという雰囲気が広がっている。菓子を食べたり、果てには電子タバコを咥えたり……高校という概念がひっくり返りそうだ。
元々近未来の国であるロスト・エンジェルスの中でも特に“200年先の技術”を欲張って築いた仮想的な未来なのだろうか。
「のう、モア」
「なに──かわいいっっっ!!」
モアは目をキラキラさせ、これで何十枚目か分からない少女になった祖父の写真を撮りまくる。割と普段からやられていることだ。だが、正直この姿になって数日しか経っていないメビウスからすれば、老人を写真に収めることがそんなに世間の流行りなのか、と一瞬考えてしまう。
「はーっ。かわいい。あーっ、可愛い。んで、お姉ちゃんなに?」
「高校という場所はこんなに自由なのか?」
「ん~? まあ、MIH学園とカインド・オブ・マジック学園とかはこんな感じだね」
「しかし、若者がタバコなど吸って良いのか?」
「まー、ダメだよね。けど、あれタバコじゃないもん。色んな集中できる薬草やらなにやら丸めて加熱タバコにしてるんだってさ」
「まさしく最先端だな……。この学校は」
「んん? おじいちゃん?」
誰もいないことを知ったのか、モアは途端にニヤケ面になった。彼女は心底楽しそうな声色で続ける。
「まさかMIH学園入りたいの?」
「興味が湧いたのは事実だ。私の行っていた軍学校は自由で開かれた学校ではなかったからな。生徒たちも皆、なにかに怯えながら生きていたよ」メビウスは窓から陸上部の練習を眺め、「しかし、ここは自由をもって生徒を教育するのだな。ジョンやクールのような、変人だが天才児を腐らせないという意味で素晴らしいといえる」
かつての教え子たちが通っていた学園。メビウスの姿は16歳程度の少女。白くて柔らかい手を見つつ、メビウスという英雄は血迷った決断を下す。
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