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シーズン1 いざMIH(メイド・イン・ヘブン)学園へ
011 きょうから一人称私で固定して!!
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冗談めかしく祖父のことを高校生活に誘ったわけだ。が、本気の眼差しで凛と構えるメビウスを前にすれば、さしものモアも慌てるしかない。
「え、え? おじいちゃんって72歳だよね?」
「ああ。実年齢72歳だ」
「年金受給者が高校通うって聞いたことないよっ!? それに軍学校出てるんでしょ? しかも見た目も入れ替わってるから、戸籍だって消滅してるようなものなのに!」
「ロスト・エンジェルスの軍学校は学歴のひとつに入らん。すくなくとも60年以上前はそうだった。戸籍などいくらでも融通が効く。この学校でわしの正体を知っている者は君とフロンティアくんしかいないわけだし、問題はないだろう」
あくまでも押し切る構えだ。ことし16歳になる少女と中身72歳男性の少女の激突が始まろうとしている。
とはいえ、モアはMIH学園へはあまり友だちのいない身分である。いくら喧嘩の腕が立つからと、モアも女子だ。どうせならば友だちをつくりたいし、あわよくば彼氏も、そのままスクールカーストの頂点へ……。
故に、モア思う。目の前にいる少女は絶世の美少女。こんな子を隣に連れて歩いていれば、自分のカーストも自ずと上がっていくのではないか……と。
そんな打算だらけの計算は、モアの答えを決定付けた。
「……。あたしとおじいちゃんは一卵性双生児。顔や髪色似てなくても双子。その設定しかない」
「おお。前向きに考えてくれるのかね?」
「おう!! ノッてやるよ!! おじいちゃんという成果物でクラスのクイーンになってやる!!」
「わしはこの学校に興味があるだけなのだがなぁ」
「おじいちゃん、いや、お姉ちゃん!! わしなんてシワシワ単語使っちゃダメ!! きょうから一人称私で固定して!!」
保護者として訪れたはずの学校に、妙に老人臭い喋り方をする少女が入学するのはもうすこし先のお話。
*
クール・レイノルズという者がいる。ロスト・エンジェルス連邦共和国第25代大統領である。伝統的に強かった大統領権限をさらに強め、支持率は90パーセントと高水準だ。
彼の主たる事業は、『200年先の技術を絶やさない』ことだ。
世界中の鉱物資源が眠ると思われる場所を征服し、現地民を雇うことでそれらを採掘させ、本国ロスト・エンジェルスへ大量に持ち込む。時代は18世紀末期。最大の敵国であるブリタニカですら、原油の使い方は極々限られている。
いまやガソリン代は半ば投げ売り状態──1リットル 50円程度で売られているものになった。対外的にも強硬路線をまったく恐れず、クールは理想的な最高指導者として君臨していた。
そんな英明な大統領閣下はいま、服を着直したところであった。ベッド上で絶頂の余り気絶している女を横目に、彼は言う。
「あーあー。たまにァマジの殺し合いしたいぜ」
そんな折、クールの携帯電話が鳴る。相手はかつての師匠、メビウス元上級大将だった。
「メビウスさん!?」
つい最近退役し、それ以降は一切の消息を見せなかった恩人メビウスからの突然のラブ・コールに、クールは思わず声を荒げた。
「はあ、はあ……。どうしたんですか? 大統領」
「まだいたのか? オマエもう帰れ」
「え、いきなりなんですか?」
「女と遊んでる場合じゃなかったぜェ!! メビウスさんが手合わせしてくれるなんてよォ!!」
唖然とする愛人とは対照的に無邪気な笑顔を浮かべ、クール・レイノルズはメッセージを返信した。
*
肉体と魂が協調しようと妥協点を探しているこの頃、メビウスはいつもどおり街を散歩する。街のガラスやら水たまりを見る度に怪訝な表情になりながら、その少女はロスト・エンジェルスを歩いていく。
歩く場所は見慣れた場所ノース・ロスト・エンジェルス──通称NLA市。ロスト・エンジェルスの中でも指折りの富裕層街であり、宝石店や高級服屋、スーパーカーのショーウィンドウなどが立ち並んでいる。
ただ、メビウスは特段なにも買わない。カネがないわけではないが、単純に見た目がこんなだから車は乗れないし、アクセサリーをつけるのは負けた気になる。服は買い込んでしまった以上仕方ないが、女性もののネックレスやらブレスレットをつけることは、男性としてのメビウスが埋没してしまうと感じたのだ。
というわけで、メビウスは淡々と散歩する。老後のボケ防止のために。
──とはいえ、女性もののアクセサリーを着飾るほうが認知症対策になるかもな。
人生でまずやったことのない刺激的な経験。そう考えたとき、指輪を見てみようという気分になってくる。埋もれていく男性性を見て見ぬふりして、メビウスは宝石店へと入っていく。最前考えていたことをあっさり翻せるのは、果たして頭が柔軟なのか痴呆症なのか。
──なにやら仰々しいのがいるな。
店内に入ったメビウスの感想は、大量のボディーガードを抱える女子高生に対するものだった。が、メビウスになにかをしてきたわけではないので、放っておくことにする。
──……店員の口車に乗せられるくらいなら、モアでも連れてくれば良かった。
店員はカモを見つけたと言わんばかりに目を光らせ、メビウスに近寄ってくる。こういう場面で押し切られてものを買ってしまうメビウスとしてはよろしくない光景だ。
その刹那、ガラス張りのドアを蹴って侵入してくる者が現れた。
考えたくもない光景だ。アサルトライフルを持った男たちが3人、侵入してきた。
「伏せろ!! 強盗だ!!」
メビウスは咄嗟に伏せる。伏せるが、いつでも攻撃できるように準備はしておく。他の者も概ね似たような反応を見せた。
しかし、最前メビウスの目を奪った少女だけは違った。彼女はまったく身体を低くする気がないようであった。
「おい!! 伏せろって言ってるだろ!?」
「……」
「チッ!! 撃たれたくなきゃさっさと動け──うぉ!!」
メビウスの持っていた拳銃が、男たちの手を撃ち抜いた。彼らはライフルを落とす。
「え、え? おじいちゃんって72歳だよね?」
「ああ。実年齢72歳だ」
「年金受給者が高校通うって聞いたことないよっ!? それに軍学校出てるんでしょ? しかも見た目も入れ替わってるから、戸籍だって消滅してるようなものなのに!」
「ロスト・エンジェルスの軍学校は学歴のひとつに入らん。すくなくとも60年以上前はそうだった。戸籍などいくらでも融通が効く。この学校でわしの正体を知っている者は君とフロンティアくんしかいないわけだし、問題はないだろう」
あくまでも押し切る構えだ。ことし16歳になる少女と中身72歳男性の少女の激突が始まろうとしている。
とはいえ、モアはMIH学園へはあまり友だちのいない身分である。いくら喧嘩の腕が立つからと、モアも女子だ。どうせならば友だちをつくりたいし、あわよくば彼氏も、そのままスクールカーストの頂点へ……。
故に、モア思う。目の前にいる少女は絶世の美少女。こんな子を隣に連れて歩いていれば、自分のカーストも自ずと上がっていくのではないか……と。
そんな打算だらけの計算は、モアの答えを決定付けた。
「……。あたしとおじいちゃんは一卵性双生児。顔や髪色似てなくても双子。その設定しかない」
「おお。前向きに考えてくれるのかね?」
「おう!! ノッてやるよ!! おじいちゃんという成果物でクラスのクイーンになってやる!!」
「わしはこの学校に興味があるだけなのだがなぁ」
「おじいちゃん、いや、お姉ちゃん!! わしなんてシワシワ単語使っちゃダメ!! きょうから一人称私で固定して!!」
保護者として訪れたはずの学校に、妙に老人臭い喋り方をする少女が入学するのはもうすこし先のお話。
*
クール・レイノルズという者がいる。ロスト・エンジェルス連邦共和国第25代大統領である。伝統的に強かった大統領権限をさらに強め、支持率は90パーセントと高水準だ。
彼の主たる事業は、『200年先の技術を絶やさない』ことだ。
世界中の鉱物資源が眠ると思われる場所を征服し、現地民を雇うことでそれらを採掘させ、本国ロスト・エンジェルスへ大量に持ち込む。時代は18世紀末期。最大の敵国であるブリタニカですら、原油の使い方は極々限られている。
いまやガソリン代は半ば投げ売り状態──1リットル 50円程度で売られているものになった。対外的にも強硬路線をまったく恐れず、クールは理想的な最高指導者として君臨していた。
そんな英明な大統領閣下はいま、服を着直したところであった。ベッド上で絶頂の余り気絶している女を横目に、彼は言う。
「あーあー。たまにァマジの殺し合いしたいぜ」
そんな折、クールの携帯電話が鳴る。相手はかつての師匠、メビウス元上級大将だった。
「メビウスさん!?」
つい最近退役し、それ以降は一切の消息を見せなかった恩人メビウスからの突然のラブ・コールに、クールは思わず声を荒げた。
「はあ、はあ……。どうしたんですか? 大統領」
「まだいたのか? オマエもう帰れ」
「え、いきなりなんですか?」
「女と遊んでる場合じゃなかったぜェ!! メビウスさんが手合わせしてくれるなんてよォ!!」
唖然とする愛人とは対照的に無邪気な笑顔を浮かべ、クール・レイノルズはメッセージを返信した。
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肉体と魂が協調しようと妥協点を探しているこの頃、メビウスはいつもどおり街を散歩する。街のガラスやら水たまりを見る度に怪訝な表情になりながら、その少女はロスト・エンジェルスを歩いていく。
歩く場所は見慣れた場所ノース・ロスト・エンジェルス──通称NLA市。ロスト・エンジェルスの中でも指折りの富裕層街であり、宝石店や高級服屋、スーパーカーのショーウィンドウなどが立ち並んでいる。
ただ、メビウスは特段なにも買わない。カネがないわけではないが、単純に見た目がこんなだから車は乗れないし、アクセサリーをつけるのは負けた気になる。服は買い込んでしまった以上仕方ないが、女性もののネックレスやらブレスレットをつけることは、男性としてのメビウスが埋没してしまうと感じたのだ。
というわけで、メビウスは淡々と散歩する。老後のボケ防止のために。
──とはいえ、女性もののアクセサリーを着飾るほうが認知症対策になるかもな。
人生でまずやったことのない刺激的な経験。そう考えたとき、指輪を見てみようという気分になってくる。埋もれていく男性性を見て見ぬふりして、メビウスは宝石店へと入っていく。最前考えていたことをあっさり翻せるのは、果たして頭が柔軟なのか痴呆症なのか。
──なにやら仰々しいのがいるな。
店内に入ったメビウスの感想は、大量のボディーガードを抱える女子高生に対するものだった。が、メビウスになにかをしてきたわけではないので、放っておくことにする。
──……店員の口車に乗せられるくらいなら、モアでも連れてくれば良かった。
店員はカモを見つけたと言わんばかりに目を光らせ、メビウスに近寄ってくる。こういう場面で押し切られてものを買ってしまうメビウスとしてはよろしくない光景だ。
その刹那、ガラス張りのドアを蹴って侵入してくる者が現れた。
考えたくもない光景だ。アサルトライフルを持った男たちが3人、侵入してきた。
「伏せろ!! 強盗だ!!」
メビウスは咄嗟に伏せる。伏せるが、いつでも攻撃できるように準備はしておく。他の者も概ね似たような反応を見せた。
しかし、最前メビウスの目を奪った少女だけは違った。彼女はまったく身体を低くする気がないようであった。
「おい!! 伏せろって言ってるだろ!?」
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