34 / 49
シーズン3 自分から助かろうとする者のみが助かる
034 最近の若者のここがダメだ、という説教でもされたいか?
しおりを挟む
「死んじゃう☆……じゃないよ!!」
思いもよらずモアは苛立つ。彼女は続けた。
「あたしとお姉ちゃんをなんだと思ってるの!? ミンティって言ったら大統領の息子! そんなのとあたしたちを対峙させるつもり?」
「えーっ。だっておれアンタたちの軍門に下ったんだぜ? だったら守ってくれよん」
「そんな態度だったら下ったこともなかったことにするよ!? あたしたち暇じゃないんだから──」
「いや、もう遅いな」
メビウスは歩道のど真ん中を歩き、こちらを見ている猫との獣人がミンティであることを悟る。獣人は賢く魔術の腕も高い。身体能力にも優れている。
まさかクールの息子が人間と獣のハーフだとは思ってもいなかったが、もうじき戦闘になることは明白であった。
「うお! あのバケモン魔力を検知してこっちまで来たのか──!?」
店内が吹き飛ばされ、ほとんどの店員が息絶える。ケーラやモアも無事では済まない。
『うあああッ!?』
『一点集中型のビーム!? お姉ちゃん!!』
そんな未来が魔術を通して見えたメビウスは、咄嗟に店から飛び出してミンティに迫撃戦を仕掛ける。
「……!?」
「最近流行りのレーザーガンじゃな? 破壊力の高さも凄まじいが、利点のひとつはその光が相手から視力を奪ってしまうことだ。生憎、妹は耳を治したばかりなのでね。目を奪われるわけにはいかないのだよ」
メビウスによって両手を凍らされた茶トラの獣人ミンティは、5キロメートル以内の敵を焼き払うレーザーを撃てなくなった。カチカチ……と音を鳴らしながら、ミンティはその両手を見る。
「ねえ、これ君がやったの?」
「そうだ。民間人がいるというのにレーザーガンを撃とうとしたからね」
「じゃあ、これいつ溶けるの?」
「もう暴れない確証を持てれば解除しよう。時間経過では溶けないぞ?」
「怖いなぁ。おれはケーラって茶坊主を詰めたいだけなんだけど」
「とても不思議な話だが、彼は私の傘下に入っているらしいぞ」
「え。傘下に入れた本人が自覚ないの?」
「良く分からないのでね。MIH学園の決まりは」
「ふーん。だったらさぁ、アンタおれを弟子にしてくんね?」
藪から棒にそんなことを言われては、メビウスも引きつった笑顔を浮かべるほかない。
「さっきの攻撃で目ェ覚めた。やっぱおれには師匠が必要だ」
「大統領閣下の息子にしては随分自分を安く見積もるのだな」
「だって父さんが魔術の稽古つけてくれるわけじゃないし。仕事で忙しそうだからねェ」
ミンティは苦笑いを浮かべ、遠くを見ていた。手の氷も溶け始め、指の感覚も取り戻しつつある中、少年はメビウスに頼み込む。
「だからさ、頼むよ。おれを弟子にしてくれ。父さんはアンタの爺さんに育てられて一流になった。アンタは同級生だけど、どうもそういう風には見えない。もしかして中身が? とにかく、おれをのし上がらせてくれ」
メビウスとミンティが話し込んでいるのを確認しに来たモアとケーラは、そんな茶トラ獣人少年の言葉を聞いてしまう。
「ミンティ……さん、アンタもバンデージさんの傘下に入るンかよ?」
「オマエの子分になったわけじゃないぞ? ヘタレのケーラ」
「誰がヘタレじゃ!?」
「どうせラッキーナ・ストライク襲って返り討ちにあったんだろ? それでも学習しないオマエはバンデージを襲おうとしたわけだな。もしも相性さえ良ければ、場面さえ合っていれば……弱者の考えってヤツだね」
愚弄されたケーラだが、ラッキーナに負けたのは事実らしく、彼はしおらしく黙り込む。そしてその話を聞き流すことができないのがメビウスであった。
「ラッキーナを襲ったのか?」
「ああ、バンデージさん。アイツも馬鹿みてーに強かった」
「ラッキーナ……どっかで聞いたことある名前」
メビウスは瞬時にモアへアイコンタクトを送る。メビウスが少女の姿になる前、ふたりはラッキーナと面識があると教えられたはずだ。
「……。ああ、元王族のラッキーナ・ストライクか。昔家が隣だったから遊んでたような気がする。というか、アンタも元王族よね? ケーラ」
「連邦政府との取り決めで、名字を名乗れる権利があとすこしで消滅するおれたち元王族になにか因縁でもあるの?」
「いや。同じ元王族でも実力差は激しいんだなぁって」
「ひでぇ言い方! おれ泣いちゃうよ!?」
「アンタ顔だけは可愛くて良い感じなんだから、泣いても良いよ」
「可愛いとか言うなよ~!! 昔からコンプレックスなんだぞ~!!」
モアとケーラがじゃれ合っている間、メビウスとミンティは師弟関係に対する協議を進めていた。
「しかし、ミンティくん。私の修行は厳しいぞ? 基本的な理論を叩き込んだら即座に実戦じゃからのう」
「アンタ、もう正体隠す気ないよね。しかも妙に可愛い顔してさ」
「正体をどう思うかは君の自由じゃ。それに、私はこういう喋り方のほうが話しやすくてのう。老人性というものだろうなぁ」
「往年の覇気は戻ってると思うよ」
「んん?」
「アンタの妹だか孫娘だかは感覚麻痺してるみたいだけど、近くにいるだけで魔力に飲み込まれそうだもん。ほら、猫の尻尾は機嫌悪いと動くんだってさ」
白い尻尾をブンブン動かすミンティは、つい先ほどまでのモアのように、時々フロンティアやラッキーナが見せるような、寂しげに染まった赤い目でこちらを見てくる。
「でも、それに萎縮しなくなればおれは強くなれる。ねえ、なんでおれが強くなりたいんだと思う?」
「私から聞こうと思っていたが」
「だろうね。正解は、最強やら無敵って呼ばれるようになってSNSで自己顕示欲を満たしたいからだよ」
「最近の若者のここがダメだ、という説教でもされたいか?」
「別に強くなる理由なんてヒトそれぞれじゃん。おれは軍隊に入るつもりなんてないし、なんなら魔術に直接関わる仕事すらしないかもしんない。けど、専属じゃないのにクソ強ェーのがいるってチヤホヤされたくね?」
世の中を舐め腐った態度はかつてのクール・レイノルズにそっくりだ。DNA鑑定は必要ない。
思いもよらずモアは苛立つ。彼女は続けた。
「あたしとお姉ちゃんをなんだと思ってるの!? ミンティって言ったら大統領の息子! そんなのとあたしたちを対峙させるつもり?」
「えーっ。だっておれアンタたちの軍門に下ったんだぜ? だったら守ってくれよん」
「そんな態度だったら下ったこともなかったことにするよ!? あたしたち暇じゃないんだから──」
「いや、もう遅いな」
メビウスは歩道のど真ん中を歩き、こちらを見ている猫との獣人がミンティであることを悟る。獣人は賢く魔術の腕も高い。身体能力にも優れている。
まさかクールの息子が人間と獣のハーフだとは思ってもいなかったが、もうじき戦闘になることは明白であった。
「うお! あのバケモン魔力を検知してこっちまで来たのか──!?」
店内が吹き飛ばされ、ほとんどの店員が息絶える。ケーラやモアも無事では済まない。
『うあああッ!?』
『一点集中型のビーム!? お姉ちゃん!!』
そんな未来が魔術を通して見えたメビウスは、咄嗟に店から飛び出してミンティに迫撃戦を仕掛ける。
「……!?」
「最近流行りのレーザーガンじゃな? 破壊力の高さも凄まじいが、利点のひとつはその光が相手から視力を奪ってしまうことだ。生憎、妹は耳を治したばかりなのでね。目を奪われるわけにはいかないのだよ」
メビウスによって両手を凍らされた茶トラの獣人ミンティは、5キロメートル以内の敵を焼き払うレーザーを撃てなくなった。カチカチ……と音を鳴らしながら、ミンティはその両手を見る。
「ねえ、これ君がやったの?」
「そうだ。民間人がいるというのにレーザーガンを撃とうとしたからね」
「じゃあ、これいつ溶けるの?」
「もう暴れない確証を持てれば解除しよう。時間経過では溶けないぞ?」
「怖いなぁ。おれはケーラって茶坊主を詰めたいだけなんだけど」
「とても不思議な話だが、彼は私の傘下に入っているらしいぞ」
「え。傘下に入れた本人が自覚ないの?」
「良く分からないのでね。MIH学園の決まりは」
「ふーん。だったらさぁ、アンタおれを弟子にしてくんね?」
藪から棒にそんなことを言われては、メビウスも引きつった笑顔を浮かべるほかない。
「さっきの攻撃で目ェ覚めた。やっぱおれには師匠が必要だ」
「大統領閣下の息子にしては随分自分を安く見積もるのだな」
「だって父さんが魔術の稽古つけてくれるわけじゃないし。仕事で忙しそうだからねェ」
ミンティは苦笑いを浮かべ、遠くを見ていた。手の氷も溶け始め、指の感覚も取り戻しつつある中、少年はメビウスに頼み込む。
「だからさ、頼むよ。おれを弟子にしてくれ。父さんはアンタの爺さんに育てられて一流になった。アンタは同級生だけど、どうもそういう風には見えない。もしかして中身が? とにかく、おれをのし上がらせてくれ」
メビウスとミンティが話し込んでいるのを確認しに来たモアとケーラは、そんな茶トラ獣人少年の言葉を聞いてしまう。
「ミンティ……さん、アンタもバンデージさんの傘下に入るンかよ?」
「オマエの子分になったわけじゃないぞ? ヘタレのケーラ」
「誰がヘタレじゃ!?」
「どうせラッキーナ・ストライク襲って返り討ちにあったんだろ? それでも学習しないオマエはバンデージを襲おうとしたわけだな。もしも相性さえ良ければ、場面さえ合っていれば……弱者の考えってヤツだね」
愚弄されたケーラだが、ラッキーナに負けたのは事実らしく、彼はしおらしく黙り込む。そしてその話を聞き流すことができないのがメビウスであった。
「ラッキーナを襲ったのか?」
「ああ、バンデージさん。アイツも馬鹿みてーに強かった」
「ラッキーナ……どっかで聞いたことある名前」
メビウスは瞬時にモアへアイコンタクトを送る。メビウスが少女の姿になる前、ふたりはラッキーナと面識があると教えられたはずだ。
「……。ああ、元王族のラッキーナ・ストライクか。昔家が隣だったから遊んでたような気がする。というか、アンタも元王族よね? ケーラ」
「連邦政府との取り決めで、名字を名乗れる権利があとすこしで消滅するおれたち元王族になにか因縁でもあるの?」
「いや。同じ元王族でも実力差は激しいんだなぁって」
「ひでぇ言い方! おれ泣いちゃうよ!?」
「アンタ顔だけは可愛くて良い感じなんだから、泣いても良いよ」
「可愛いとか言うなよ~!! 昔からコンプレックスなんだぞ~!!」
モアとケーラがじゃれ合っている間、メビウスとミンティは師弟関係に対する協議を進めていた。
「しかし、ミンティくん。私の修行は厳しいぞ? 基本的な理論を叩き込んだら即座に実戦じゃからのう」
「アンタ、もう正体隠す気ないよね。しかも妙に可愛い顔してさ」
「正体をどう思うかは君の自由じゃ。それに、私はこういう喋り方のほうが話しやすくてのう。老人性というものだろうなぁ」
「往年の覇気は戻ってると思うよ」
「んん?」
「アンタの妹だか孫娘だかは感覚麻痺してるみたいだけど、近くにいるだけで魔力に飲み込まれそうだもん。ほら、猫の尻尾は機嫌悪いと動くんだってさ」
白い尻尾をブンブン動かすミンティは、つい先ほどまでのモアのように、時々フロンティアやラッキーナが見せるような、寂しげに染まった赤い目でこちらを見てくる。
「でも、それに萎縮しなくなればおれは強くなれる。ねえ、なんでおれが強くなりたいんだと思う?」
「私から聞こうと思っていたが」
「だろうね。正解は、最強やら無敵って呼ばれるようになってSNSで自己顕示欲を満たしたいからだよ」
「最近の若者のここがダメだ、という説教でもされたいか?」
「別に強くなる理由なんてヒトそれぞれじゃん。おれは軍隊に入るつもりなんてないし、なんなら魔術に直接関わる仕事すらしないかもしんない。けど、専属じゃないのにクソ強ェーのがいるってチヤホヤされたくね?」
世の中を舐め腐った態度はかつてのクール・レイノルズにそっくりだ。DNA鑑定は必要ない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる