スライムむすめの転生日記～自称序盤のレベル上げ要員は実質無限再生と吸収能力、打撃も斬撃も効かない身体etcでビビリながら無双する～

シーズン1 チャプター2 それでもおれは正義のヒーローなんかじゃないっ!!

048 むっつりスケベ

「なあ、小粋。車内で寝てて良いか?」

「疲れたのか?　タイラー陛下」

「疲れたに決まってるだろ……。きょうだけで4回闘ってるんだぞ?」

「まあ良いや。コイツらは許すってことで良いんだよな?」

「ああ……」

　もう眠い。脳内で羊さんが40,000匹くらい歩いている。しまいには二足歩行し始めている。意味不明だが、実際支離滅裂なほどに眠いのだから仕方ない。

　おれは小粋のワンボックスカーへ戻ってきた。

「……。抑えられたの?」

「あたり前田のクラッカー」

「……。意味分かんない」

　ミリットはフッと笑う。

「だったらさ、モバイル版のコール・オブ・ウォーやろうよ!!　あたしブリタニカでミリットちゃんガリアね!　タイラーはロスト・エンジェルス!!　よーし、頑張るぞ──!!」

「悪りぃ、タイーシャ。兄貴のささいなお願いを聞いてくれないか?」

「な～に?」

「眠りたいんだ……」

「スライム娘なのに!?」

　目を見開いてとんでもねえことを言ったかのような口調になるのだから、スライム娘はやはり眠らないものなのだろう。
　でもよくよく考えたらおれは化け薬（?）を飲んでスライム娘になっただけらしい。なのでそんなルールは通用しない。

「ああ……もう会話する気力もねえ」

　タイーシャが元気なのは結構なことであるが、元気すぎるのも難儀なものだ。この肌が青色で髪が紫色の、おれがスライム娘としてもっともスタンダードな姿になったときとそっくりなモンスター娘、果たしておれを寝かせてくれるのか。

「なら仕方ないね!　みんなで寝よう!」

　おお……妹って良いモンだなあ。ただタイーシャ、みんなってことはミリットも含まれるのかな?

「私眠くないけど」

「タイラーの身体触ってたら眠れるよ!!　スライム娘の身体はヒトを癒やすこともできるんだから!!」

　ミリットの目の色が変わった。そういえば、いつだかおれの身体をペタペタ触っていたな。しかも好評だったのか、寝ている間もずっとお触りし放題だったんだっけ。

「……。触って良いの?」

「一向に構わん」

　とにかく夢の世界へレッツラゴーしたい。この際触ってくるだけでふたりが静かになるのならば安い話だ。

「んじゃ、お言葉に甘えて」

　ミリットは一旦席を離れ、おれに真ん中に座るようジェスチャーする。
　すでに脳内は夢の中だったおれは従う。
　ただ車内は寒いのであらかじめ持っておいたガソリンを飲み、おれはついに眠り始めた。

　＊

　なあ、ミリー。オマエってさ、実はむっつりスケベなのか?
　あれから1時間と22分後。ものすごい光景とともにおれは目を覚ました。
　目の前にミリットがいた。おれに抱きついていた。だいしゅきほーるどしていた。
　彼女は満足げな表情で眠っていた。寝言も言わず、とてもリラックスしていた。
　しかもタイーシャとおれのスライムがくっついて離れそうにもない。おまけにタイーシャは大口開けながら寝てやがる。

「…………。分からん。幸福なのか不幸なのか」