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1年目の春~夏の件
ダンジョンの中で不審な小屋を発見する件
しおりを挟む第3層で初出のリザードマンは、装備もきっちり着込んでいて武器も立派な槍持ちだった。ワニ獣人より武人寄りで、実際割と洗練された武器使いで迫って来た。
数こそ少ないが、遣り合ってみてその厄介さは体感出来た護人と姫香。何しろ2人は、きちんと武芸を習得している訳では全く無いのだ。
下手に武器での殴り合いに持ち込まれると、怪我では済まなそうな雰囲気。なのでコロ助の『牙突』で倒して貰えるのは、前衛的にも非常に有り難い。
ワニ獣人の持つノコギリ状の武器も厄介だが、幸い彼らの動きは鈍くて稚拙である。戦闘訓練には割とピッタリと言うか、倒す事で自信にも繋がる。
護人と姫香は、コイツ等は積極的に自分たちで狩る事に決定する。そして大トカゲはハスキー達に、厄介なリザードマンはスキル持ちに一任の作戦に。
そんな3層での探索途中、前衛の姫香が妙なモノを発見した。4層へ降りる階段を探索中、不意打ちに気を付けながら慎重に進む一行は揃って不審な表情に。
それは沼に沈みかけた電子レンジで、姫香に報告を聞いた面々は何アレと気味悪げ。古い型なのはともかく、半分は濁った泥水の下に沈んでいる。
しかも上部には落ち葉のデコレート、よく見付けられたモノだ。
「これって中に何か入ってるパターンだ、絶対にそうだよっ! お姉ちゃん、水に入って拾って来てっ!」
「こらこら、欲はかき過ぎると良くないぞ……俺が取って来るから、皆は休憩してなさい。紗良、ハスキー達が怪我をしてないか見てあげといてくれ」
「はいっ、護人さん」
そんな訳で、チームは沼のほとりで小休憩を開始する。レイジーだけは、沼に捨てられた電子レンジを確認に向かう、ご主人を水辺で警護中。
その結果だが、何と見事にアイテムを幾つか回収に成功した。香多奈の観察力と言うか、その意地汚さはなかなか馬鹿に出来ないモノが。
それを見て大喜びの香多奈、それぞれを手に取って鑑定をし始める。もっとも、スキルも何も無いので完全に妖精ちゃん頼みである。
まずはコーヒー瓶に入った薬品が2種、どうやら回復ポーション(600ml)とMP回復ポーション(300ml)らしい。それから銀製の皿が3枚と、フォークとナイフが2本ずつ。
純銀製なら高値が付くかも、手にすると割と重量はある気もする。皆で固まってワイワイしながら、いい加減な鑑定会は続く。最後に大振りな木の実が2個、こちらは相変わらず用途不明な品だ。
妖精ちゃんもこればかりは、食べられるよとのアドバイスしかしてくれない。詳しく訊ねても、味の感想しか返って来ない始末。
香多奈もこの案件は、さすがにお手上げみたいである。
そんな休憩も終わり、チームは揃って第4層へ。ここも平原と沼地の組み合わせ、出て来る敵もほぼ同じ奴らの組み合わせばかり。
気合いを入れて駆逐しながら、来栖家チームは平原の真ん中辺りまで踏破して行く。その原動力だが、ここにも隠し宝箱あるかもと子供たちの注意力は半端ない。お陰で不意打ちの類いは、この層では全て防げているから結果オーライかも?
そしてこの層での異変に気付いたのは、今回も姫香だった。
「あれっ、草むらの向こうに小屋みたいなのが建ってるよ、護人叔父さん! 何だろっ、気になるかな……中に敵とか、待ち伏せがあるのかな?」
「小屋の中にお宝が隠されてるのかも、姫香お姉ちゃんっ……ちょっとだけ寄り道して、覗いて見てみようよっ!」
そんな都合良くは行かないだろうと、誰も少女の妄想を笑う者は存在せず。一行は足取りも軽く、沼のほとりに建つ掘っ立て小屋へと近付いて行く。
小屋の前にいたカピバラの群れを駆逐して、トタンの屋根から落ちて来たスライムを華麗に避けて。ミケが嬉々として、それらの核を潰して行く。
小屋の中は薄暗く、生き物の気配などは全く無かった。代わりにボートに櫂、投網などの釣り道具がひっそりと置かれていた。
小屋の中を物色していた香多奈は、古びたバケツを手に少し寂しそう。手狭に感じた護人は、敵に備えて小屋の中から外へ出る。
興味を失ったハスキー軍団も、ご主人の見える範囲で探索を開始している。残された子供たちは、小屋の中でめいめいに宝探しを開始。
棚の奥の小物入れの中とか、置かれた釣り具の合間とか。挙句の果てには、このボート持って帰れないかなと末妹がのたまう始末。
無茶言わないのと、姉のツッコミが入る中。執念は実って、小屋の中から鑑定の書を5枚と黄色の小粒の魔石4個をゲット。
その成果を喜ぶ子供たちとは別に、実は小屋の裏からもアイテムはゲット出来ていた。それを見付けたのは、何とレイジーである。
主人の護人に知らせた彼女は、どこか得意気な顔付き。
彼女が発見したのは、低木に生っている虹色の果実が2つだった。護人がそれを丁寧に回収すると、自分も頂戴と珍しく強請って来る。
戸惑いながら差し出すと、レイジーは躊躇いなくそれを咀嚼し始めた。そして食べ終わると、ご主人も食べろと進めて来る仕草。
推測だが、これは所謂パワーアップ系の食料なのかも。リーダーは強くあるべしとの信念で、レイジーはそれを率先して食べたのだろう。
護人はそう思い至って、覚悟を決めてその果実を口に運ぶ。意外と甘いソレを呑み込むと、不思議と身体の奥から力が漲って来る気がする。
実際そうなのかは不明だが、少なくとも毒では無さそうで護人はホッと一息。もしくはステータスに変化が生じたのかもだが、鑑定してみないとそれも分からない。
オーブ珠で特殊能力をゲットした護人だったが、その使い方も未だに不明な身である。気のせいとしても、能力の向上は有り難いかも。
レイジーを撫でながら、護人はやっと小屋から出て来た子供たちと合流する。小屋での成果を報告する子供たちは、相変わらずとっても元気。
それから、チーム揃って次の層へと向かうのだった。
「さあっ、中ボス部屋の扉が見えて来たよっ! ここも草原と沼地マップなのにはビックリしたけど、ボス部屋の概念もちゃんと存在するんだね?
何がいるのかな、私の想像だと獣人系か河童だけど……」
「あ~っ、河童は確かにいそうだよね……この前の追跡戦の時にも、確か戦って強かった記憶があるし。
途中のワニ獣人とトカゲ獣人も強かったよね、油断のならないダンジョンだよ!」
そう騒ぎ立てる姫香と香多奈だが、ここまでの道中にもきっかり雑魚敵は存在していた。超弱いスライムやカピバラから、手強いワニ獣人やリザードマンまで。
チームできっちり倒して進んで、MP回復ポーション込みの休憩も間に挟んだ次第。これで万全の体制で、中ボス部屋へ挑めると言うモノ。
そんな訳で、チームに声を掛けて扉を開ける護人と、威勢良く先頭で進み出る姫香。素早く敵の種類と配置を確認して、中ボス部屋での戦いに備える。
部屋は割と広くて、ここにも湿地地帯が半分以上ほど存在した。そこに踏み込みたくない一行は、得意作戦の速攻&遠距離攻撃を敢行する。
中ボスは、事前の予想通りの大河童だった。それが大将らしく奥に1匹、それを守るようにリザードマン兵士が3匹ほど。
そして前衛には、ノコギリ状の刃を構えたワニ獣人が7匹も控えていた。数も揃えられた中ボスの間に、熾烈な先制攻撃が来栖家チームから見舞われる。
香多奈の魔玉の投石で、敵の中衛陣に派手にダメージが入る。前衛のワニ獣人も明らかに浮足立って、そこにレイジーの炎のブレスが見舞われた。
更にはミケの『雷槌』が、まるで突破口を作るように真っ直ぐに大河童に進んで行った。ついでに中ボスにも少なくないダメージを与え、そこに姫香のスキル込みのシャベル投げが炸裂する。
2メートルを超す体格の大河童が、その一撃で派手に吹っ飛んで行った。この得意の速攻で、戦いの趨勢はほぼ決まってしまった模様。
中ボスはこのダメージでほぼ撃沈され、雑魚の兵士たちは足並みが全く揃わずな状態。お陰で、後衛をガードする役目の護人は楽で仕方が無い。
こちらに到達する輩はほぼ皆無、ってかレイジー達が次々と噛み殺して行く。その勢いに乗って、護人と姫香も戦線を押し上げて行く。
そして結局は、速攻で築いた勢いが途絶える事は無く、中ボス戦は呆気なく幕を閉じた。2度目の対戦となった大河童も、ドロップ品をばら撒いて撃沈されて行った。
元気に喜ぶ子供たち、そして香多奈は早速この部屋の宝箱を探しに走り回っている。チームに怪我人が出ていないか、聞いて回ってる紗良とは大違い。
もっとも、この圧勝具合では怪我をする暇など無かった。
大河童のドロップは、ピンポン玉大の魔石と河童の意匠の首飾り、それから待望のスキル書が1枚だった。護人がそれを回収中に、子供たちが草むらの奥に宝箱を発見する。
それを見て、木製だったと残念がる香多奈。どうも金属製の方が、良品の入ってる確率が上がるそうだ。それでも姫香が開けた中身を、嬉しそうに確認する少女。
その中身は重そうな武器が大半を占め、回収するかは迷うモノばかり。魔法の鞄があるとは言え、入る量には限度が存在する。
重さは幾らか誤魔化せるが、無駄な品を持ち帰る余裕は無い。そんな武器類だが、ワニ獣人の使っていたノコギリ刀が2本、中ボスの大河童が持っていた気がする大鎌が1本。それから先端の鋭い、柄が木製の槍も3本ほど。
質の良さそうな大鎌だけでもと思ったけど、鞄の口を通過しそうも無いと言う悲劇が。仕方なく、武器は全て諦めて置いて行く取り決めに。
他は何故か竹の筒に入った、薬品が約100ml程度見付かった。見た事の無い色合いなので、こちらは貴重な品かも知れない。後はお馴染みの、鑑定の書が5枚と爆破石が7個である。
数だけは本当に多かったので、香多奈も一応は満足げ。
中ボス部屋で少しだけ休憩を挟んで、一行は予定通りに6層へ。その先は、そこまで変化は無いだろうと思っていた皆の想像は半分当たり。
風景は草原と沼地で、雲の薄く掛かった空も窺える。沼の周辺には水トカゲやカピバラ型のモンスター、それからスライムも生息しているのは前の層とほぼ同じ。
違う点は、それに混じって泥人形やサル型獣人も出て来た事。サル型のモンスターは2本腕で、オーバーフローで遣り合った4本腕とは違う雑魚ではあった。
ただし、しっかりと装備を着込んで武器も刀を手にしてそれなりに手強い感じ。ハスキー軍団もやり難そうで、自然とスキルを使う機会も多くなって行く。
ツグミも前回習得した『影縛り』を、姫香とのペア狩りで頻繁に使い始める。そのスキルは敵の足止めに便利で、サポート役に少しずつ慣れて来ている様子。
その点はレイジーとコロ助も同様で、スキル慣れはチームの地力を確実に底上げしていた。護人もそれに加わって、誰が敵を怯ませて誰が止めを刺す役なのかの役割分担に淀みは無い。
瞬時に役割をパスし合い、ゴールを決めて行くその手腕は見事の一言。連携という点で言えば、物凄く洗練されているのは事実である。
ハッキリ言って、各々が勝手気儘に挑んで来る敵の群れなど、1ダースいても気にならない程。そして倒す優先順位も、リーダー役の護人とレイジーが素早く指示出しして、事故も最小限で済んでいる。
これが意外に重要で、厄介な攻撃手段を持つ敵はなるべく早く退場願うのが常套手段である。それを見抜く能力は、あると無いとでは大違い。
初見の泥人形などは、護人自らがまずは相手取る念の入れよう。どんな特性を持ち、どの程度の強さの敵なのかをまずは見極める経緯を挟む。
結果、コイツは泥で出来た人形ってだけだと判明。
「こいつはスライムと一緒だな、中心の核を潰せば勝手に崩れて行く……シャベルだと倒すの楽だな、刃の武器だと少し大変かも知れないね」
「武器の相性ってあるよね、護人叔父さん。私の鍬でも割と楽かな……逆に犬達はやり難そうだから、コイツ等は全部私たちでやっつけよう」
戦闘後には、こんな軽いミーティングも挟むのも大事である。何しろスキルを使うとMPを消費して、終いには動けなくなってしまう。
体力も同様で、相性の悪い敵を相手に頑張るのは馬鹿らしい事。それなら足止め役に徹して、相性の良い人に止め役を譲る方が楽であり効率的だ。
そんな学習を挟みつつ、少し勝手の違った6層エリアも無事にクリア。次の層への階段の場所も、段々とパターンを掴み始めて探し当てるのも楽になって来た。
時間的にも、体力とMPの余裕的にも、次の7層が限界かなとチームで話し合う。だったら、次のエリアは宝箱出て欲しいよねと、前回の成功体験を思い起こして興奮模様の子供たち。
それも道理で、諸説あるけどダンジョンのパターンは似通って来るそう。
――それを踏まえて、より集中して宝探しに熱中する一同だったり。
――― ――― ――― ――― ―――
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