田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件

マルルン

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1年目の秋~冬の件

思わぬ角度からの襲撃に遭ってしまう件

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 さて、すっかり見慣れた“弥栄やさかダムダンジョン”の第4層である。階層渡り後に、さっそく地図を確認してチーム員に近場の集落の方向を指し示す紗良。
 それによると、奥に行くほど獣人の集落は数を増やしている傾向があるみたい。そして層が深まるにつれて、集落は巨大化している気配を見せるそう。

 深くなれば攻略も大変になる、その図式はここにも当てまる感じ。基本は集落の殲滅作業だが、巨大モンスターを倒してもワープ魔法陣は出現するそう。
 中ボスエリアの5の倍数層は、集落は存在せずに巨大ボスの討伐が必須みたい。なるほどねぇと感心する姫香だが、ここはまだ4層目である。

 なので集落を探そうかと言う話で、一旦いったん議論は落ち着きを見せた。そして移動を開始して5分もせずに、何故かハグレらしい巨大モンスターに遭遇する一行。
 運が良いのか悪いのか、向こうもこちらをバッチリ認識。

 凶悪そうな口を開いて威嚇するソレは、ワニガメに見えなくも無い。ただし一軒家サイズの巨大亀で、のそのそと草むらから這い出て来ての戦闘開始。
 咄嗟にチームに号令を掛けて、護人&ルルンバちゃんでその巨大な顔をぶん殴りに掛かる。そうしてヘイトを稼ぎつつ、魔法での攻撃指示を出すリーダー。

 それを受けての香多奈の爆破石攻撃は、硬い甲羅に阻まれてあまり効果は無かった。レイジーも『魔炎』で右足に攻撃、これは多少ダメージは通ったか。
 そして敵の反撃のブレスに、護人は総毛立つ思い。

 咄嗟にルルンバちゃんのアームのパワーで、上手く顔の方向を変えられたのは僥倖ぎょうこうだった。それでも前に立つ護人は完全に避け切れず、毎度の薔薇のマントでのガードでやり過ごす。
 後方からも悲鳴は上がったが、それは恐らく驚きの声だろう。そう信じつつ、護人は速攻で倒せとチームに指示を出す。

 つまりは全力で素早く倒して、被害を最小限に抑えろとの思惑だ。それに反応して、恐ろしい速度で飛んで来る金のシャベル。
 それは狙い違わず、巨大亀の首筋にヒット。甲羅に当たっても意味は無いので、これは姫香のファインプレーだ。

 この攻撃に苦しむ巨大亀だが、追いうちは全く容赦無かった。ミケの『雷槌』が、そのシャベルを避雷針代わりに見事命中してくれた。
 しびれたようなモージョンの敵、そして護人の“四腕”が追撃の準備。巨大ハンマーを取り出し、突き刺さっていたシャベルを釘のように何度も撃ち始める。

 ルルンバちゃんも、下手に動かないようにアームでのキープお手伝い。『馬力上昇』を得てから、彼のパワーの上昇具合は凄まじいレベルに達している模様。
 そして5発目の追撃で、とうとう巨大亀はギブアップ。

 負けを認めて魔石へと変わって、激しい戦闘の跡など無かったかのようないさぎよさ。それでも短い戦闘だったのに、疲労はそれなりにチームに圧し掛かっていた。
 やったーと喜ぶ香多奈の声に反比例して、MPを消費した面々はグッタリ模様。ルルンバちゃんも同じく、いつものように嬉々としてドロップ品の回収におもむけず。
 今はアームをグッタリ降ろして、エネルギー注入を末妹におねだり。

「いやいや、さすがに巨大モンスターの相手は辛いな……姫香、ナイスコントロールだったぞ。香多奈はルルンバちゃんのエネルギー補給を頼む、紗良はハスキー達の怪我チェックを。
 少し休憩しよう、MPポーションを取ってくれるかい?」
「護人叔父さんこそ、怪我は大丈夫だった? あの巨体でブレスとか使うって、本当に酷い敵だよねっ!」

 プリプリ怒っている姫香だが、素直にMP回復ポーションを護人やミケに配り始める。香多奈もルルンバちゃんの補給作業を、ねぎらいの言葉を掛けながら真面目に取り組んでいる。
 巨大亀のドロップ品だが、魔石(中)と亀の甲羅らしきモノが3枚。それからワープ魔法陣が青白い光を放って、次の層へと一行を誘っていた。

 これは1度使うと再充填に15分程度掛かって、放置すると1時間で消滅する仕様なのだそう。すぐに飛び込まなくても平気なのは承知してるので、慌てる事も無い。
 何しろ4層の滞在時間は、まだ10分と少しなのだ。競争している訳でも無いので、10チーム内で突出し過ぎるのもよろしくないと護人の意見に。
 そうだねのんびり行こうと、子供達も賛同の構え。



 そんな休憩中も、ハスキー軍団は周辺の警護に余念が無い。それどころか、割と近くに獣人の集落を発見したらしく、ビリついた雰囲気をかもし出していた。
 もう少ししたら移動だよと、姫香が声を掛けるとレイジーは心得たようにそれ以上のアクションは無し。ところがヤンチャな子供たち、ってかツグミが姿を消しての潜入ミッション。

 何事かと心配しつつ、レイジーの側で見守る姫香だが。母親のレイジーは我が子を信頼してるのか、特に焦った感じも出していない。
 そして数分後、集落の宝物をガメて戻って来たツグミが、『隠密』を解いて集落の外に出現。口には自転車の買い物籠らしきモノを咥えていて、それを運ぶのをコロ助もお手伝い。

 そして姫香の元に戻って来て、嬉しそうに尻尾をブン回す2匹。それに気付いた香多奈も寄って来て、一緒になって2匹を褒めそやす。
 姫香に至っては、危ない真似はしちゃダメと、叱るべきかなぁと一瞬迷ったけど。まぁいいかと、得意満面なツグミを撫で回す事に。

 何だかんだでツグミもまだ若いのだし、今は褒めて伸ばす時期。分別の類いは、もう少し大人になれば自然と身につくだろう。
 まぁ、レイジーは未だにヤンチャな面も際立っている気もするけど。ハスキー軍団の圧倒的なリーダーには違いなく、そこまでの成長を願う姫香である。

 そして買い物籠の中身は、解毒ポーション500mlとポーション800m、魔石(小)が4個に魔玉(土)が6個。更には当たりのスキル書が1枚、5層を前にして既に2枚目である。
 ここまで来ると、さすがの香多奈も凄いねぇとビックリ顔。

「大丈夫だよ、香多奈ちゃん……広域ダンジョンのドロップ回収は、動画観てて多いだろうと予想してたからね。薬品の回収瓶やタッパーとかも、普段の倍ほど持って来てるから。
 丸1日こもるんだもん、思いっ切り稼いで帰ろうね!」
「そうだねっ、紗良お姉ちゃん……夜までにどの位になってるのか、ちょっと怖い気もするけど。頑張って稼ごうね、コロ助たちも頑張って!」

 話を振られたハスキー軍団は、元気に返事してさあ進もうとヤル気は充分。そして休憩は終わって、次は中ボスの待ち構える5層である。
 そこも景色に大きな変化は無し、ただしすぐ側に割と小高い丘が存在していた。中ボスを探すために、まずはそこに登ろうよとの姫香の提案に。

 全員で賛同して草の生い茂る丘を、ルルンバちゃんの先導で制覇して行く。割と広範囲を見渡せるようになって、遠くに噂の弥栄やさか大橋を視界に収める事が出来た。
 視力の良い香多奈が、そこに掛かっている看板を発見した。そしてちゃんと『5』って書いてあるよと、家族に報告してくれる。

 それと同時に、割と近くで戦闘中のチームも発見した。それなりに手練れの一団なのか、巨大亀をチームで囲って攻略中の模様である。
 護人達が見学している間に、そのチームは何とか討伐に成功した模様。声を荒げて怖い雰囲気だったが、その中の1人がすぐにこちらの存在に気が付いた。

 そして何故か態度が一転しての、フレンドリーな声掛けからポーション余って無いかとの催促。このワープ魔法陣を譲るから少し分けてくれと、リーダーらしき男が交渉を持ち掛けて来た。
 下手に突き離しても、そこは同じ大規模レイドの仲間ではある。こちらは紗良もいるし、ポーション程度なら分けても全然平気。

 なので、それ位なら譲るよと護人は思わず返答する。そこからは、自然とチーム同士で近付きながら世間話をする流れに。
 ここまでの調子はどうだとか、確か初参加だったよなとか。姫香は末妹に、さっさとフードをかぶりなとサインを送っている。
 つまりは変に絡まれないよう、前もっての用心の呼び掛け。

「いや、アンタ等なかなかの腕前だな……俺らも間引きを半分無視して、スピード重視でここまで来たんだが。確か西広島のチームだよな、こっちは急遽参加を打診されちゃってなぁ。
 前準備の時間も無くて、色々と探索資材が不足してて困ってたんだ」
「そうそう、例えばアンタ等……魔道具の類いは持ってるかい? 魔素を遮断する休憩用の魔法陣とか、色々あるだろ? おっと、魔法の鞄は持ってそうだな。
 まぁ、丸1日も滞在するんだから当たり前の準備だけどな」
「いやまぁ、そこまで高価なモノは所持してないけどね」

 護人の言葉は謙虚から口にしたのではなく、向こうの視線にねちっこい悪意みたいなモノを感じたから。下手にこっちが裕福だと自らバラして、標的にされるは冒したくはない。
 子供達も警戒しているようで、必要以上に距離は縮めようとはしていない。護人もリーダーの男にポーション瓶を渡して、必要以上に親しく会話はしない構え。

 それでも向こうは、この小型ショベルはどうやって動いてるんだとか、賢そうな犬達だなと情報を得ようと会話を仕向けて来る。
 ただ、連中は武器を全員納めているし、フレンドリーな態度は崩していない。違和感は感じるが、変に警戒してるのを向こうに気付かれても気不味くなるだけ。

 そんな中、リーダー格の男が取り敢えず取引は成立だと話し掛けて来た。それから奥に光る魔法陣を指し示して、どうぞ自由に使ってくれとの合図。
 それは護人も同意したのだし、それならばと使わせて貰う事に。


 問題があるとすれば、連中が左右に割れてその中央を通らなければならない事。連中を大きく避けて進むのも、それは警戒してるよと告げるのと一緒だ。
 仕方無く、子供たちはほぼ一団となって護人の後に続く事に。ハスキー達も心得た様子で、本来の護衛任務に余念が無い感じで頼もしい限り。
 それでも事態は急変する、主に悪い方向へと。

 恐らく事前の打ち合わせで、このパターンの襲撃は何度も経験済みなのだろう。つまりは弱そうな後衛を人質にとって、前衛を不意打ちである程度痛めつける的な。
 その素早い動きに、対応出来たのはハスキー軍団のみだった。小柄な香多奈は完全に首根っこを掴まれて、紗良に至ってはテグスの様な透明な糸を首筋に絡み取られる始末。

 護人も油断していた訳では無いが、やはりまさか同じ探索仲間がとの思いは心中にあった。それが完全に、発砲音と共に打ち砕かれて悲惨な状況に。
 その拳銃だが、襲撃チームの実に3名が所持していた。残りの2人はハスキー達に撃ち込んだが、それは呆気なくかわされる破目に。
 そして護人に向けられた銃弾も、薔薇のマントが華麗にブロック!

「なっ、コイツ等……動くんじゃねえっ、こっちは人質が……っぐ、あぁがっ!?」
「なっ、おいっ……止まれっ……んがはっ!!」
「レイジーにコロ助っ……やり過ぎちゃダメだよっ!?」

 拳銃を持つ敵より、後衛を人質に取った暴漢の息の根を止めに掛かろうとしたハスキー軍団に。一応制止の言葉を掛けた姫香だが、心情は全く別だったり。
 と言うか、紗良と姫香を羽交い絞めにした2人は、ミケの容赦の無い《刹刃》でかなり悲惨な目に遭っていた。

 透明かつ頑丈なテグスも簡単に切断され、それどころか相手の指も数本宙を舞っている。子供には見せられない風景だが、き込んでいる紗良を救助して温情心も引っ込む姫香。
 喉元の赤い線は、下手したら致命傷になっていた恐れも。

 拳銃を乱射していた男たちも、怒号交じりに半狂乱の様相をていして来た。そいつ等もミケの『雷槌』とハスキー軍団の襲撃に遭って、怒号が悲鳴へと変わって酷い有り様。
 残りの襲撃犯たちは、剣やハンマーを取り出しての遅ればせながらの乱闘参加。それも時既に遅しな感じで、ルルンバちゃんのアームで吹っ飛ばされている。

 そして、魔法を使おうとした男もツグミの『隠密』攻撃で反撃の芽を摘まれる始末。呆気なく発動を潰され、それどころか喉を噛み千切られそうな勢い。
 さすが大型犬と、感心する前に慌ててその所業を止める飼い主の姫香である。とは言え、最初のミケの反撃に遭った連中の容体が一番酷そうなのは確か。

 慌てて近付いて来た護人も、あちゃーと言う表情で二の句が継げない感じ。それでも取り敢えず、紗良と香多奈を回収して魔法陣の側へと連れて行く。
 何にしろ、悲惨な現場は姉妹には見せないに限る。

「コイツ等きっと常習犯だと思うよ、護人叔父さん……犯行が手馴れてたし、プロの手口だよ。反撃しなかったら、私達全員が殺されていたんじゃないかな?」
「そうだな、確かに追加募集のチームには気を付けろとは言われていたな。まさかこんな直接的な、手段に打って出られるとは思って無かったけど。
 俺の考えが甘かった、ミケとハスキー軍団には感謝しないと」

 そうだねと、尚も興奮しているハスキー達を撫でてあやし始める姫香である。護人も人質に取られそうになった、紗良と香多奈の心のケアに忙しい。
 幸い、2人とも人質に取られたのは一瞬で、本当の意味での怖い目には遭遇する事は無かった。ただし容赦の無いミケの攻撃で、宙を飛ぶ指やら銃撃戦を目の前で見たのだ。

 その恐怖は、恐らくモンスターとの対戦とは全く別物だと思われる。後衛2人は、気丈にも大丈夫だよと笑顔を返してくれているけれど。
 人の心の本音の部分は、決して外からは窺い知れないのも事実。

「2人とも、本当に無理しないでいいからな……気分が悪くなったり変にふさぎ込みそうになったら、ちゃんと俺に知らせるんだぞ?
 取り敢えずは、この場所から離れようか……姫香、連中の武器を集めてくれ」
「了解、護人叔父さん」

 護人とハスキー軍団も手伝って、襲撃犯たちの武器の回収を素早く行なう。そして呻き声を上げてる連中を完全無視して、武装解除からワープ魔法陣での離脱に至る。
 これで一応は、同じ魔法陣で追って来るにしても、15分は時間を稼げる計算だ。それから護人は、周辺を歩き回って割と深そうな沼を発見する。
 それからそこに、回収した連中の武器を全て捨てるように指示。




 ――拳銃も高そうな剣も全てポイ、これであと腐れも無くなれば良いのだが。







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