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第1章
6 . かつての仲間
しおりを挟むソフィアの名前が決まってから数日後、サマンサは赤ん坊のジェナミと一緒にオーウェンの家で住み込み始めた。 ジェナミは黒くてくせのある髪で、母親譲りのブラウンの目をしていた。
サマンサは、伯爵だったとは思えないオーウェンの人柄に触れて親近感が湧き、オーウェンの提案を引き受けることに決めたのだ。
それに加えて、どうやらオーウェンへの忠誠心とベビーシッターとしての誇りに火がついたようだった。
サマンサは本当に頼りになった。オーウェンは牛だけではなく、畑も世話をしなければならないので、意外と外に出ている時間が長い。その間、散らかった家の中を掃除してくれたり、家事全般をそつなくこなしてくれるので助かっていた。
オーウェンには、最近変わったことが一つある。
オーウェンの牛と畑の世話 ・ 絵を描くという日課に、もう一つ新しい日課が加わったのだ。
それはソフィアを寝付かせること。
ソフィアはたまに大声で泣くことがあった。ジェナミとの対決がはじまりそうだ。
しかし、ソフィアの夜泣きは、サマンサの娘である ジェナミ とは比べものにならないくらい静かだ。
そのかわり、寝付きはよくない。サマンサはジェナミを寝付かせなければならず、必然的にオーウェンがソフィアを寝付かせる。
ソフィアの寝付きの悪さは、逆にオーウェンの庇護欲をかきたてる一方だった。ソフィアは寝付くまで、オーウェンの頬を触り「だぁぁ、ばぶっ!」と遊ぶ。どうやら、ソフィアはオーウェンの頬が好きなようだった。
今日もオーウェンはソフィアを抱いて、かかとを浮かせたりと体を上下に揺らす。
「ソフィア。我が愛しのソフィア。なんてきれいな目をしているのだ!きっと母親譲りなんだろうね。」
オーウェンのソフィアに対する態度は、日に日にひどくなる一方だ。だが、それを諌める者はいない。
ソフィアを可愛がるオーウェンを見て、サマンサは「なんて優しいお方なのだろう!」と敬うばかりだ。
しかし、オーウェンはソフィアを可愛がる一方でソフィアの実の親が誰なのかを気にしていた。
一旦は引き取ったが、罪悪感は多少なりともあった。本当の家族とこのまま離れ離れなのは、実の親にとっても、ソフィアにとっても 辛い ことだろう。 たとえ、どんな事情があったとしても。
オーウェンは、しっかりと分別をわきまえる主義だ。だから、オーウェンはソフィアの実の親が見つかったら引き渡す覚悟をしていた。そんな風には見えないかもしれないが...
そこで、オーウェンはかつての仲間に来てもらうことにした。 彼にソフィアの母親を探してもらおうと思ったのだ。
数日後、オーウェンは電報で エイデン・ウィルソン という男を呼び出した。
エイデン・ウィルソンは情報屋を兼ねた探偵だ。オーウェンがハミルトン伯爵として活躍していた時、裏の仕事はほぼ全てこの男に託していた。
性格は少し難ありだが、頼まれた仕事はミスなくやり遂げるので信頼していた。
「お久しぶりでございます、閣下。なんなりとお申し付けくださいませ。ただし、暗殺は扱っておりませんのでご了承ください。」
「おい、エイデン。やはり君は変わらないなぁ、そういうところ。私のような貴族をからかうなど肝が座ったやつだ。まぁ、そこが好きなのだがな!」
「ご主人様~そこはもうちょっと、ノってくださいよー。昔のようにねっ?久しぶりなんですから!」
オーウェンが、身分関係なく話せるのはこの男が唯一だろう。エイデンの、お調子者で軽いところが黒い貴族社会で生きてきたオーウェンにとって新鮮だった。
とはいえ、貴族の中にも ちゃんと仲間はいるのでご安心下さい。オーウェンは一匹狼ではありません。
オーウェンはさっそく、ソフィアのことを話す。エイデンはそれを聞いた後、いくつか質問をして、さっそく探しに行く。
「ご主人様!ひさびさに腕がなりますわい!すぐに見つけて参ります。それまでソフィアちゃんを可愛がりまくってくださいな!それでは。」
「かっ、かわいがりまくる?お、わしがそんなことをするとでも?」
オーウェンは、ソフィアを溺愛しているのがバレないように とぼけるが、隠すのが下手だった。ソフィアに関しては。
「がははっ!いやいや、随分丸くなられたようなので、可愛がっているのかと思い、聞いたのですが...まさか本当だとは!ハミルトン伯爵が懐かしいですよ。」
「うるさいっ!とにかく頼むぞ!」
「へいへい。お任せください!」
このことが、かつてのハミルトン伯爵を呼び起こすことになろうとは、誰も予想していなかった。
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