若がえる“老夫” と 老いてゆく“少女”は

すみれ

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第1章

7 . 離島の繁華街

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 エイデン・ウィルソンに頼んでから1週間が経った。



 今日は久しぶりに雨が降っている。草木が喉を潤して、喜びに満ちている。

 それとは反対に、家の向かいの林に住んでいるはずの葵の鳥の気配を感じない。ただ、ざぁざぁと雨音だけが家の中に鳴り響いていた。 




 客室では、サマンサが大泣きしているジェナミをあやしている。ジェナミは雨が嫌いだそうで、こういう暗い日は泣いてしまうらしい。 



 一方ソフィアは、ロッキングチェアに座っているオーウェンにあやしてもらっていた。 

 ソフィアは、オーウェンの頬を相変わらずぺちぺちと触る。最近は、唇を触ってくることもあった。 


 「こら、ソフィア。くちびゅるはやめなさい!ひゃべれないではないか。それぇにおててが汚くなるぞ。」


 ソフィアはオーウェンの口周りをぺちぺちして遊ぶので、オーウェンは上手く話すこともできず、ただ笑ってソフィアをあやす。

 それを見たソフィアもわらいだす。 

 サマンサはその光景を客室の扉の隙間から見て、微笑ましくなった。



 オーウェンは雨の日が嫌いだ。進む仕事も進まなくなるからだ。しかし、ソフィアと一緒に居られるのならば悪くないと、今この瞬間の幸せを噛み締めた。



 オーウェンがソフィアを抱いて、ロッキングチェアから立ち上がり外を見ていると、人影がうっすらと近づいてくるのが分かった。オーウェンは玄関の扉を開ける。そこには、雨に濡れたエイデンがいた。 



 「エイデンっ!まさか、こんな日に伝えにきてくれたのか?」

 「ご主人様~ 疲れました。もう無理です... あー、ここで俺の人生は終わりなのか... ご主人様に看取ってもらうなんて光栄です...」

 「エイデン、相変わらず元気だな。そんな小芝居ができるほどには。」

 「もー、面白くない。今回は対岸の離島までいってきたのですよ!ちょっとは慰めて下さいな!」




 そう言って、エイデンは がははっと笑った。雨なんて関係がないようだ。仕事は仕事らしい。やはり頼りになる。


 オーウェンはエイデンに暖かい紅茶をすすめた。 

 「こんな田舎に住んでいても、貴族は貴族ですね~ こんなにうまい紅茶をお持ちだなんて!」

 
 エイデンは嬉しそうに紅茶を一杯すする。 オーウェンはその向かい側に座ると、さっそく話を切り出した。

 
 「それで、見つかったのか?ソフィアの実親は?」


 もちろん、オーウェンには見つかって欲しくない気持ちもあった。もう、ソフィアと離れるのは出来そうにない。
 
 しかし、道理には従わなくてはならない。伯爵だっころの行いが体にしみついていた。

 エイデンはオーウェンに真剣な目を向けた。


 「結果から申しますと、見つかりました。先程申した、対岸の離島にある繁華街で人気のある宿があります。どうやら、そこの亭主の子供だと思われます。」


 「そ、そうか。やはりこの辺りにいたのだな。」


 オーウェンは心臓がきゅっとなった。別れの時がこんなにもはやく訪れるとは思いもしなかった。


 「ですが、一つ。奇妙な話を手に入れました。そこの亭主は嫁を決して人目にさらさないのだとか。街の者は、亭主が美しい嫁を愛してやまないからだと噂しています。それと、お腹の中に子供がいるからとも。もう出産したようですが。   しかし、どうも気になって調べました。」


 「それで、どうだったのだ?」


 「夜になると亭主の宿から、たまに男性が暴れる音と、女性の叫び声が聞こえるのだそうです。その声の主が、」


 「妻の声だと申すのか?だとしたら男の方は...」


 オーウェンの心の中は怒りで爆発しそうだった。もし、もしそうだとしたらと恐れる。 


 「亭主でしょうね。人目にさらさないとなると、嫁に会えるのは亭主だけですから。」

 「なんて事だ!妻に手を出すなんて!....あー、なるほど。そう言うことか。だからソフィアを...」

 「亭主の嫁が赤ん坊を生んだのは確実でしょう。その店の従業員をちょっとお金で釣ったら教えてくれました。 」


 その妻は、ソフィアにまで害が及ぶことを恐れたのだろう。きっと誰か協力者がいて、ソフィアを逃したのだ。 




 オーウェンは事の詳細を知りたくなった。 

 ソフィアをサマンサに預けて、離島のカップ島に行くことにした。


 

 
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