ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素

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第一章 はじまりの物語

最終話 旅立ち

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「すみませ~ん。」

 クラン設立の翌日、僕はアリシア様にご紹介頂いた薬師様の工房に向かった。そこは、セイレーンの端、鍛治師や、魔導具師の工房が多くある別名工房街にあった。工房の入口には、乾かした薬草や、ポーションが並んでおり、奥から僕と同じ歳くらいの少女が出て来た。

「はーい。おきゃくさまですか?」
「はい。ロードベル様にお願いがあってまいったのですが。」
「おばあちゃんにですか。おばあちゃん、一見さんには会わないと思うんですど。」
「アリシア様からの紹介状があります。」
「アリシア様からですか、わかりました。お預かります。少し待っていて下さいね。」

 僕が、アリシア様の紹介状を渡すと、少女は奥に入っていった。

「それにしても、御典医様なのに、質素だな。」

 僕がそう小声で呟くと

「そりゃ、儲からんからだよ。」

 奥から出て来たのは腰の曲がったおばあちゃんだった。

「ここらの職人はみんなそうだ、商人ギルドの奴らに原料、大口の販路を抑えられてしまってな、私等に残るのなんて微々たるものじゃよ。工房を建てたときの借金や、地代とかで、首が回らず、商人達に奴隷の様に働かされている職人も多い。職人に厳しい世の中じゃよ。」
「ロードベル様も?」
「ワシか?ワシは何とか子孫に借金を残さない様に出来たんじゃがな。それで、アリシアの嬢ちゃんから紹介状をもらったんだね。何に困っているだ坊や。」

 優しいおばあちゃんの様な目で僕を見据えている。芯が本当に強い目だと良くわかる。

「実は、僕の相棒のロッシが、腕を完全に失い、意識も戻らない状況です。どうにか治るポーションは無いでしょうか。」

 ロードベル様は少し悩んで

「それは多分、意識が戻らないのは、腕の損壊からきた出血を原因とした、脳細胞のダメージによるものじゃ。作り方が分かってるポーションでは、回復には最上級ポーションのエリクサーか、ホーリーペイン、意識だけなら上級ポーション白き聖水が必要じゃ。」
「では、」
「じゃがな、素材が手にはいらん、入っても鮮度を保たんといかんのじゃ。」
「素材は、私が探します。鮮度もこれを・・。」
「マジックバックか。」

 僕は、マジックバックを取り出した。

「お主はマジックバックを持っているのか。これが有れば助かった命も多くあったものを。商人達が馬鹿高い値段を付けて手に入らんのじゃ。」
「はい。」

 僕は、マジックバックをロードベル様に差し出した。

「今回の依頼、このマジックバックで如何でしょうか。」
「こちらとしては嬉しいが、」
「素材が手に入るのがいつになるかわかりませんので、先渡しでお渡しします。」
「良いのか?」
「どうぞ。」
「ありがとう、本当はそろそろ薬師を辞めようと思っていたんだが、ロッシ君が治るまで続けよう。まぁ、この婆さんが死ぬまでに、素材を手に入れてくれ。」

 そう言って、素材を聞いたが、全く聞いたことも無い様なものばかりで、今の僕に手に入れいる術は無かった。僕は、ロードベル様におすすめの鍛治師を教えてもらった。そこは、近所の工房だった。この工房も質素なもので、奥からカンカンとの音が聞こえて来た。

「すいませーん」

 カンカンという音が止み、奥からドワーフのお爺さんが出て来た。

「小僧か、どうした。」

 筋骨隆々で肌が赤銅した色のザ・ドワーフって感じのおじいさんだった。

「サハリン様、ロードベル様からおすすめ頂いて来たのですが、武器を作って欲しいんですが。」
「ふーん。婆さんからか、小僧はふーん。ナイトかな?ブレードソードって所か。」
「よくわかりますね。」
「あぁ、筋肉のつき方でな。で、何が欲しいんだ」
「ブレードソードと、クランの仲間にプレゼントする杖を2本、攻撃系と回復・支援系で。」
「そうか、ブレードソードなら鉄か鋼、杖は鋼しか素材がない。素材を集めるには時間がかかる。何せ商人が使えないし、商人を通した取引でないと、ちゃんとした素材を卸してくれないからな。」
「商人ってそんな酷いんですか。」
「あぁ、金儲けしか考えてないからな。すまねぇな。」
「じゃあ、素材があれば、どうにかなるんですか?」
「あぁ、」

 悲しそうなサハリン様に、ドカン、ドカン、ドカン、ドカンと金属のインゴットを大量にサハリン様の目の前に出した。

「こ、これは、」
「とりあえず、1本1キロのインゴットですが、純鉄100本、銀50本、プラチナ20本、ミスリル20本です。これでどうにかなりますか?」
「あぁ、余裕すぎる。ほとんど余るぞ。」
「残りは差し上げます。杖は期限は1週間でお願いできますか。帝都に発ってしまうので、」
「帝都って、アリアのお姫様か、プレース商会のヤンチャ娘も一緒だったな。」
「プレース商会って?」
「セイレーンで唯一と言って良いくらいまともな商会だ。周りから爪弾きにされているが、公爵家との取引で何とかやっている。困ったときには、職人衆は唯一頼りにしているが、そろそろ限界に近いだろうな。」
「そうなんですか。だったら、今回の依頼は冒険者クラン アクアからの依頼としてください。アクアのオーナーはアリア様なので、素材と一緒に渡されても説明は着くでしょう。代金は別途お支払しますので、素材の余りは自由に使って構いませんので。」
「分かった、ありがとうな。」

 僕は、走ってクランに戻り、スレインからプレース商会の場所を聞いた。

「すみません。」
「はーい。」

 現れたのは、スノーさんを小さくした様な女の子だった。

「冒険者のアレックスと言います。素材を売りに来たんですが。」
「アレックスさんですね。私はマリアって言います。少し待ってくださいね。」
「はい。」

 って、マリアさんの目線に顔を下げて笑顔で挨拶した瞬間。

 ドーン

 僕は、ドロップキックを喰らって商店の入り口から外に飛ばされていった。

「うぅぅぅぅぅ」
「何やってんのよ。うちの妹に。」

 今まで見たことがない様なスノーさんがそこにいた。鬼の形相だ。僕は何かしたか?

「いや、初めて会ったマリアさんに何を。」
「はーん。初めて会ったものを見境もなく。」
「見境って、ただ、商会主を呼んでもらおうと思って。」
「は?商会主ってお父さん?娘さんを僕にくださいってか?」
「いやいや、マリアでなく。」
「えっ、私、困るわ、だって今から帝都に」

 怒りから、急にしおらしくなったスノーさんだが。

「貰うも、何も、商談で来たんです。」
「商談?クラン長に内緒で?」
「内緒って、クラン長、来週からいないし、」
「何を。」

 と、お怒りのスノーさんの後ろで、

「お姉ちゃん。そろそろ良いかな?中でやってくれないかな?」

 人だかりが出来ていた。

「あらやだ、中に入りますわよ。」
「そうですね。」

 そう言って、中の応接室に入った。中には、30歳くらいの胸に娘命と書いたシャツを着た人がドカンと座り、スノーさんと、マリアさんが両側に座った。

「で、娘を貰いに来たという餓鬼は君か。」

 のっけから間違っているが、だいじょうぶだろうか。

「お父様、こんな妹を狙う悪魔どうしてくれましょうか。イヒヒヒヒ」
「そうだな、スノーよ。」

 と2人で異様に盛り上がっている。スノーさんてこんなキャラだったか?

「あの、親子仲良く盛り上がっているとこすみません。冒険者クランアクアのクラン長代理兼副クラン長のアレックスと言います。プレース商会には、当クランの御用商人になって頂きたいのですが。」

 スノーさんは、悪徳令嬢風の目で僕をみて

「は?何をいいます。クラン長の私を差し置いて勝手に御用商人なんて。」
「そうそう、それに、スノーのクランならうちは元々御用商人に・・・」
「してないわよ・・・」
「へっ」

 スノーさん親子の間に冷たい風が吹くのを見えた様な気がする。

「アリシア様のところで販路は紹介してくれるっていうし。どうせうちそろそろつぶれるじゃん。」
「マリア、スノーがいじめる」
「よしよし」
「マリア甘やかさないの。」

 盛大な親子のジャレ合いだなと思いまつつ、

「先ほどロードベル様のところに行く途中色々な工房をみて来きて、職人さん達と話して来ました。素材の購入先と、販路を抑えられみんな商人の奴隷の様に使われていました。その中で唯一まともなのが、プレース商会で、困ったとこに融通してもらっていると。」
「お父さんそんなことしてたの」
「すごいだろ」
「だからうちは貧乏なんでしょう」
「うぅぅぅ、マリア、オネェちゃんが~」
「ハイハイ。」
「うっ、続けますよ。御用商人になって、職人さん達に素材を供給してあげてください。」
「そんなことを言っても、実質君1人でどうするだよ。迷宮から取れる鉱物は、全体の数%で、鉱山を持つ貴族の御用商人ネットワークに抑えられちゃってるんだよ。焼け石に水だよ。」
 と、完全に拗ねた顔をしている。

「スノーさん良いですか?」
「良いわよ」

 と、スノーさんの了解をとりドンドンドンドンドンとインゴットを置いていった。銅、青銅、鉄、銀、金、白金等。

「これは、・・・」
「これで一部です。御用商人として委託販売をお願いします。そちらの利益は売り上げの4割。輸送用のマジックバックも用意します。商品の値段はわかりませんので、まかせます。」
「分かった。うけてやるよ」

 まだ拗ねた顔を続けているが、笑顔だった

「全くお父さんたら。」

 僕とお父様は、握手を交わし、プレース商会は御用商人となった。






旅立ちの日

「アレックスくん、よろしくお願いします。」
「クランのことで何かあれば連絡してくださいね。」

 クランの執務室でそんな話をすると、僕は2人へのプレゼントを取り出した。

「アリア様、スノー様本当にありがとうございました。こちらを」

 2人にミスリルの杖を渡すと、2人の目がキラキラし出した。
「ミスリル製の杖で、ブースト用の魔石は入れ替え可能。杖にマジックバックの機能をつけているわ、魔石も取り替え可能ですわね。サハリン師の作ですわね。50万ゴールドは下らないものですわね。」
「スノー様には、このバックを。プレース商会にも売れない様なものを詰め込んであります。魔導具実験等で使ってください。」
「こんなものまで、・・・。預かるわね。出来る限り有効に使うわ。」

 僕は2人に頭を下げ

「このクラン アクアをお預かりします。お二人がお戻りになるまで。」
「潰さない様に気をつけてくださいね。何かあったらアリシア様を頼ってくださいね。」
「私たちが戻る頃には、世界とは言わないは、ブラックタイガーを潰せる位のクランに育てなさい。」

「わかりました。みなさんご無事で。」

 そう言って、2人は執務室を出て、帝都に旅立っていった。


ー第一章完 第二章に続くー
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