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幼女編
第16話 真実の危機
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武道館の着替え室は男女別れている。私は、女子用の着替え室に入った。見学のつもりで来たので着替えなんぞ持っていないが、ある目的の為だ。
「ローアさん。何か御用でしょうか?」
ハクランドギルド、ローアさんが所属する闇ギルド。国内最大の規模を誇る。商人、貴族、王族までもクライアントに持ち、破壊工作、情報収集、暗殺までこなす。その任務で、私についてきているのだろう。攻略本を見ると、ロッカーの中に入って隠れている。
「御用でしょうか?って、どうやって分かったの?」
と、ロッカーを開けて出てきた。
「なんとなく。」
「なんとなくか。なんとなくで、私の仲間を選んで行動不能にしたの?」
「何がですか?」
と、すっとぼけてみたが、攻略本で確認して、レールガンを撃ち込んだ。多分動けなくなっているだろう。
「まっ良いわ。ところで私が誰かわかっているわよね。」
「ローアさんです。」(ニコッ)
私の笑顔にたじろぐ。
「まあ良いわ、他の人達と私は仕事が違うから。」
そう言うと、私をじっと見据えた。私の反応を伺ってるようだ。
「で、何のご用ですか?」
私を見てゆっくり
「そーねー。貴方の命かしら。」
「うーん、私の命って、何故?私、私から何もしてないわよ。」
「そーよねー。でも、大人は複雑なの。」
「そーなの。」
「じゃーね。」
と言って、彼女は私に襲いかかってきた。彼女の手にはナイフがあるが、
「やめません?ふざけるのは。」
私は、短剣で一閃してナイフを吹き飛ばし、冷静な口調で諭した。
「私は、冒険者上りの商会の娘で、鍛治師です。武器の持ち方で、プロかどうかは分かります。貴方は~そう、薬師に近いかな?貴方に騎士を倒した私を倒せるとは思えません。たとえ毒塗りのナイフであっても、毒針もしまって下さいね。お話があればゆっくり聞きますから、お屋敷でも良いですし。」
ローアさんは諦めた様に、武器を全て下に落とした。
「首元の。」
「あっ、これもね」
最後に首元に隠していた紙製ナイフを下に落とした。
「で、何用?」
「任務よ。貴方が本当に騎士としての力があるが確認に来たの。」
「はぁ?」
「よく考えてみて下さい。6歳の幼女が、騎士達を秒殺にし、あの学院長も瞬殺ですよ。何らかの不正を疑うでしょう。」
「不正?」
「はい、不正です。」
「不正って、貴方?帝国政府の人?」
「帝国政府って難しい言い方、って、テストであんな解答をする人は、幼女とはいえ失礼でしたね。」
と言い、いきなり敬礼をした。
「私は、ハクランドギルド所属の薬師ですが、今は帝国軍務省監査局査察部所属軍属ローア士長です。」
「査察部?」
「色々な所に潜入して、調査する仕事。アレックス子爵の素行調査で潜入していたんだけど、いきなり貴方を連れて来て、ハイアがちょっかい出したので、様子見で、私も軽く乗って見たけど、あそこまで杜撰だとわ思わなかったわ。私も巻き添え食らった時は、焦ったわ~。公爵はハイアのこと全て分かっていらして、放置されてたけど、ハイアが、バリモアさん達を使って、色々画策したのは流石に目に余ったわ、今回の試験を受けさせたのもそう。貴方じゃなきゃ、五分五分で死んでたわよ。」
ローアが身分とか明かして大丈夫なのかな?とふとした疑問が湧いた。普通に話してるし。
「ローアさん、ここまで私に言って大丈夫なの?」
「あぁ、貴方は大きな意味でこちら側に来る予定だから。じゃあね。」
そう言って、彼女は、出て行った。
「ふー。なんなのよ。こちら側にって私に何をさせるのよ、これ以上。」
私は、控え室のクッションに3発ほどパンチをして、心を落ち着けた後、タオルで汗を拭き、格闘場に戻った。
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格闘場は、落ち着きを取り戻し、試験が続けられていた。端に受験者の控え場所があり、アレックス少年も座っていた。
「閣下、勝利おめでとうございます。これで騎士見習いですね。」
「そうだな、ありがとう。多分、ジェシカの修行と武器が無ければ一切歯がたっていなかっただろう。」
「いえいえ、閣下の才能と努力です。」
「ところで、バリモア達が申し訳ない事をした。下手をすれば君の命を落としていた。ロバートと相談するが、看過出来ない事だけに、君やルーベックさんにご納得頂いく処理をしよう。」
「そうですね。公爵家としてどうされるかですから、結果に従いますので。あと、バチは既に当たってるようですし。」
「それにしても、あいつらギャラリーから消えたな。どう言う事だ。」
「さあ。」
その後で、私と殿下は、武舞台での戦闘を観ながら2人で、語り合っていた。格闘場とロマンチックな雰囲気は一切ないが、幼心の中に、ほのかな恋愛感情が芽生えてきているのかもしれない。夕方まで戦闘が続いたが、ようやく終わり、大佐が武舞台に立った。
「諸君。今日は参加してもらいありがとう。明日正午、騎士学院の掲示板に結果を発表する予定だ。では、解散だ。」
そう言って、解散していく中、ドルーマン大佐が私の元に走ってきた。
「ジェシカさん。今日の証文だが、明日の合格発表までには用意させておく、明日の午後副学院長室に来てくれ。」
「分かりましたわ。」
「証文って?」
「鍛治師の仕事ですよ。」
「そっ、そうか。」
適当に誤魔化して、館に帰る事になった。騎士さん達は先に帰っているらしく、私は、御者台でなく、座席にゆっくりと座っていった。高級馬車でゆったりとした座席と、煌びやかな装飾だった。そんな中で、アレックス少年は、ピカピカして見えた。その時、この人生での初恋が芽生えたのかも知れない。
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館までの道は長くないが、こんなに短く感じた事は無いだろう。私は、別れを惜しみつつ離れに戻ると、疲れがどっと出て寝てしまった。夢の中では、覚めて欲しくない気持ちで一杯になる内容だったが、習慣は恐ろしいもので、4時には目が覚めてしまう。今日はお庭で修行だったが、アレックス少年は姿を見せなかった。淡々とこなし終わる頃アリアさんがやってきた。
「ジェシカちゃん。うちの息子怪我して、本家に運ばれたらしいけど、何かあった?」
「流れ玉に当たったみたいだけど、詳しくは。」
「そう、魔法飛び交うから危険なのに、警戒してなかったんでしょう。」
「そ、そうですね。」
「ところで、こっちが本題だけど、旦那様からの言伝よ。曰く「すまん。例の処理で、修行に参加できない。」だそうです。」
「わかりました。」
それから、朝食後、部屋に戻ると、私の部屋には誰も訪れずなかった、昼前になって扉を叩く音がした。
「はーい。」
私は少し期待しながら答えたが、
「アリアです。昼食をお持ちしました。」
「はーい。」
テンションだだ下がりの声で答えてしまった。
「あらあら、今日の発表を見に行ったら、お帰りになるんですよね。寂しくなってしまったのかしら?」
「はははは。そうですね。」
と乾いた笑いを返してしまっている。本当にアレックス少年に恋をしてしまったのかも知れない。年甲斐もなくって、今の年なら良いのだけど。
「旦那様は、別で確認されるので、バーレールがお連れします。確認後、そのままお帰りになられる様に、荷物は、確認されている時にバーレールを館に戻して積んでおきますね。あの山でいい?」
「はい。アリアさん。今までありがとうございました。」
「旦那様のワガママに付き合わせてごめんなさい。」
「これ、私が作った根付け。」
そう言って、最高級玉鋼で作った神像の根付を2つプレゼントした。
「帝国の守護神、バラモス様の根付です。旦那様にも。神のご加護があられます様に。」
「ありがとう。毎日拝ませて貰うわ。」
アリアさんは喜んで受け取ってもらった。この神像は、Aランクの神像で、そこらの神殿の神像と同ランク。神像は、大きい程効果が高くなるので、この大きさでは限界に近いランクだ。何かあった時に、ご加護が得られるだろう。
アリアさんと別れ、私は、バーレールさんの馬車に乗り、帝国騎士学院に向かった。合格発表を見るためだ。受験者は、点数順に掲示され、点数と合否が合わせて掲示される。騎士を目指す者は、結果に責任を取らせるべきとの考えらしいが、不合格者には公開処刑の様だ。掲示は入口近くに点が悪い者となっているので、最低点者(ランニングでの失格者)は地獄だろう。
配点は入口に書いてあったが、ランニングは、一位300点で、1周遅れ毎に15点減点。筆記は、単語、数字回答形式400問が1問1点、文章回答形式が最初の100問が5点、次の50問が20点、最後の10問が無制限。無制限って何だ?武術試験で試験官1人最高2000点+αとなっている。突っ込みどころ満載だが、見習い合格基準は、武術で500点以上、合計1000点以上らしい。武術の採点はわからないが、合格出来たと思う。
掲示板の背が低く、私の背では、目の前まで行かないと見えないので、人を掻き分けながら順番に見ていく。掻き分け掻き分けなんとか半分を超えた位から合計点が1000点を超え、合格者が出ていた。そこら中で喜んでいる人、悲しんでいる人、家族や仲間と来て、悲喜交々の情景を見せている。ちなみ私の名前は一向に出てこない。もう端に近くなり、2000点を超えてくると、1人1人の点差が離れてくる。そうして3000点を超えたところで、准騎士合格と書いてあった。騎士見習い試験なのに、准騎士と思ってみると、そこにアレックス少年の名前があった。3950点、多分試験官を倒したからだろう。騎士見習いでなく、准騎士合格で、彼により高い拍がついた。私の役目は終わっただろう。一緒に見て祝いたかったが、と寂しさを感じつていた。
「それにしても私の名前は?」
と、少し先の方をみると人だかりが出来ていた。掲示板の端っこだ。私が掻き分けようやくみると、
正騎士合格
ランニング500点
筆記1900点以上
武術12000点以上
合計14400点以上
ジェシカ(6)
尚、正式な点数は後日発表する。
以上って何だ。何故正騎士合格なんだ。と突っ込みどころ満載で、2位の4130点からトリプルスコア以上となっている。2位の人確か19歳だったよね。私は色んな意味でやばいかも。
私はコソコソと抜け出し、副学院長室に向かった。
副学院長室は、校舎の真ん中に高くそびえる塔の45階、上から二番目の階にある。エスカレーターもエレベーターもない中、拷問かとも思うが、日々鍛えている私には造作もないことで、これが辛くなってきたら、辞めろということかと思う。
トントントン
そう叩くと、中から大佐の声が聞こえた。
「誰だ。」
「ジェシカです。」
「待っていた。入りたまえ。」
そう言われてはいると、そこは質素な作りで、机の上は書類の山だった。
「この書類は、私が貯めたんじゃないぞ。昨日、学院長が倒れられ、仕事を引き継いだら、やり残しが大量にあり、朝からこんな感じだ。」
「いや、疑ってませんから。」
私がジト目でみると、
「疑ってるだろ。その目は。まあ良い。証文は用意した。帝国騎士学院の証明付だ。」
「ありがとうございます。これは、譲渡は?」
「当然可能だ。」
「ありがとうございます。」
と言って証文のやりとりが終わると、大佐は私に拍手をし
「正騎士合格おめでとう。」
大佐は、そう言ってくれたが、
「私にはおめでたくもないですよ。」
その後、私は、想定外の言葉を聞いた。
「そうだな。それでだ。軍役どうする?」
「軍役って、私何か?」
そう、軍役、軍の職務に着く義務があるのか?正騎士って資格じゃないの?と、心で抗議の気持ちが膨れ上がる。
「うー。そうだな、知らんか。正騎士には、実は軍役義務があるんだ。6年だが、普通正騎士になるのは、准騎士からの昇格だから、そもそも軍役にある程度付いていて、この議論にならない。規則では、正騎士に叙任から半年以内に任務につく必要がある。叙任を拒否出来る規定も無いしな。君の場合は、市民学校のクラス分け試験を受けていないので、そのタイミングから、軍役に就いて貰うイメージかな?」
ローアさんが言ったのはこのことね。軍役6年て軍人になりたくたいよ。それ以上に、クラス分け試験は受けましたよ。何で?
「は?クラス分け試験は、受けましたよ。この区画の帝国予備学院で。」
「予備学院で?予備学院で受けられる筈がないだろ。」
「えっでも、バリモアさんから、受けられると手続きしてもらって受けましたよ。帝国予備学院で、試験日に。」
「いや、受けられるのは、帝国予備学院の入試だけだ。」
「本当ですか?」
バリモアさん、私を嵌めたのか、また酷い。マジか~。それにしても、あの試験難しいな~とは思ったんだけど、あの時図に乗って答えなきゃ良かった。ただ、コケにしたくてやったのか?意図が分からん。
「そうだ、難しかっただろう。」
「いや、全て解きましたけど。」
「は?全てって二部目も」
「はい、全て。」
「いや、二部目は帝国中央学院の試験問題だ。調べておく。バリモアが何をやったかも含めてな。」
二部目は帝国中央学院の試験か、ヤバイな解いちゃったよ~。絶対トラブルよ。とりあえず、試験は大佐に任せて、軍役も確認しとかないと。
「とりあえずわかりましたが、軍役って何をするんですか?」
「何でも構わん。騎士団に入るのが普通だが、王侯貴族の家臣になったり、兵団でも、警備隊でも構わん。君なら、宮廷鍛治師でも良いかもしれない。」
「そんな、面倒くさい。」
宮廷鍛治師なんぞ、無理難題言われそうな気がする。やだ~。
「もし、無ければ、騎士学院の鍛治師でも構わん。何もしなくても、通ってさえくれれば、こなしたと書面を作ろう。」
「考えてみます。」
家に帰ってから、相談するしかないか。それにしても面倒くさい事だ。
「正騎士は、少なくとも、予備役少尉になるから、それ以下の役割では兵役とみなされんから、注意してくれ。」
少尉と言えば、主要騎士団でも十人以上の部下を持つ分隊長級、地域の警備隊レベルであれば、百人以上の部下を持つ警備隊長になれる階級だ。
「また、このナイトカードに魔力を通すと、君だけしか反応しない証明書になる。これがあれば、正騎士として、皇宮や、主要施設、各学校、中央図書館等にま入れるから、悪用しないように。詳しくは、この規定集を見てくれ。」
私は、叙任書と、ナイトカードとよばれる魔道具、規則集を受け取り、部屋を出た。
騎士学院の門に出ると、バーレールさんが馬車で待っていた。私は、バーレールさんの馬車に乗り込んだ。アレックス少年と会えない寂しさ、お別れ出来なかった悲しさで胸が張り裂けそうになっていた。アレックス少年を忘れる為に軍役も良いかな?とも思い悩んでいる。
家の前までは、景色が一切目に入らなかった。私は、馬車を降りて、商会の入り口に立った。
「ただいま~」
と大きな声で叫ぶと、
「ジェ~シ~クァ~」
と泣きながらお父さんが、突っ込んでくる。私に抱きつこうとした瞬間、私は宙挙げられる、チュウをされた。
「お帰りなさい。ジェシカ。」
と、お母さんに抱き抱えられ、突っ込んできたお父さんは、豪快にこけ、お父さんの上に座っている。アイルお兄ちゃんは、奥で号泣し、お姉ちゃんは、階段から微笑んでいた。私は、家族に迎えられて、徐々に日常生活に戻っていった。
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最近、特に変わったとことといえば、剣や武器も打つようになった事だ。工房では、知らないうちにダイアンお兄ちゃんを超えたことと、結構勝手をやったことで、ダイアンお兄ちゃんには怒られた。マジで。その後、私の開発したものが多すぎるので、怒られた。本気で。お兄ちゃんは、鍛治研究所と、共同研究所の上級理事さんとして、運営を統括しているので、今後のことについても話し合い、私を上級研究員にして、研究室を持つこと。そこの研究員達には、お兄ちゃんが指示して実用化の作業をさせること。開発したら、理論等私がちゃんと論文にして、研究所に提出するとこ。証文については、研究所に渡し運営費に当てること等を決めた。
翌日から、ドドリゲルさんのところで作ったものの論文を書き出した。この世界の論文は、自分勝手で、内輪にしか分からない内容が多く読みにくい。私には耐えられないので、読み手にも気をつけてながら書くと、それは手間がかかってしょうがないかった。それで、ワープロみたいな魔道具を作り、魔石を改造して、データを保存できるようにした。活版印刷の技術はあるので、その技術を応用して、魔石データを打ち出すタイプライター式のプリンタも作った。打つのは、前世の経験で、途轍もなく早いので、バンバン作っていったが、このワープロ、プリンタ等の論文や、レールガン、妊娠促進薬の論文も含めて、45本、合計2000枚を超える論文を作ったため、書き上げるのに1ヶ月もかかった。もう、その頃には冬になり、雪も降りだしている。この1ヶ月忙しく過ごし、すこしは、アレックス少年のことも忘れられる様になってきていた。そんな時、
「こんにちは。こちらにジェシカさんはいらっしゃいますか?」
「どちら様で。」
「上官は、帝国騎士学院の学院長代理のドルーマン大佐です。調査結果を持って来たとお伝えください。」
「そうですか。では、ここでお待ち下さい。」
「ジェシカ、ジェシカ~。」
と、下から声が聞こえて来た。ドルーマン大佐がわざわざいらしたんだ。
「はーい。」
私が階段を降りて行くと、お父さんが固まっていた。
「先輩なぜ?」
「ガルガンディ商会、そうか、お前の娘か。」
「娘って、ジェシカのことですか?」
「そう正騎士ジェシカだ、学院時代、首席で、殆どの騎士団からオファーが来たのに、冒険者を選んだ、商売人騎士とまで言われたお前の娘か勿体ない。オルコットとか、ラーズとかが知ったら、ここに勧誘に来るぞ。」
と、大佐とお父さんは楽しそうに話しだした。
「オルコット帝国魔道騎士団参謀長と、ラーズ帝国乙女騎士団第3姫護衛隊長の両中佐ですか。昨日揃って勧誘に来ましたよ。ハルク帝国軍務省財務局予算部長と、ベース帝国軍務省補給局武具部長と4人でね。朝まで飲んで帰って行きましたが、ロイズ帝国軍務省人事局次長が、動いてくれてるらしいです。娘の軍役で変な部署に引っかからない様に。同期の皆には、有難い限りです。」
「そうか。」
なんか、話が長くなりそうなので、
「で、お父さん。立ち話もなんなんで、奥で話しません?お父さん居なくても店は回るでしょ。」
「そうですね。先輩どうぞ。」
と、私とお父さんと、ドルーマン大佐は、三人で奥の商談室に言った。
「お父さん、さっきの話聞いてないけど。」
そう、私はオファーの話など聞いていない。
「いや、正式にはオファーされていない。今度、ゆっくり時間をとって来るそうだが、とりあえず、まだ決めないでくれとの事だ。」
「その人達って偉いの?」
「そうだな~。バカな奴が多いな。」
「いや、ジェシカさん。ロイズ中佐を含め、5人は、皆中佐で、ストレートで昇格している。」
お父さんの言葉を大佐がフォローしている。
「大佐、私は少尉だけど、偉いの?」
「一般兵では、2階級下の曹長は目標、騎士なら、騎士学院卒業で1階級下の准尉任官となる。おまけのお父さんも准尉だ。軍務に就いていないからな。」
「お父さん格下。」
「娘に~。」
お父さん、ちょっと悲しそうだ。
「それはそうと、今日は?」
「今日は、バリモアの処罰と、クラス分け試験の件だ。」
「はい。」
大佐は急に真面目な顔になった。
「まず、バリモアの件だが彼はやり過ぎたが、君の流れ弾で、手足に大きな怪我を負い、騎士として復帰は難しいということもあり、極刑は免れた。君が親御さんに送った根付が、君と、バリモアの家とで和解になったとの判断もあってな。一応、騎士見習いの地位を剥奪して、以上ということで片付いた。他の者達に着いてだが、それぞれ、小さいご余罪がゴロゴロ出てきて、同様の取り扱いとなった。」
「そうですか。良かったです。」
「良かったのか?」
「はい、生きてさえいれば、どうにかなるでしょうから。」
私は、本心でそう思った。どんな罪であれ、人を殺してない人を処刑にするのはどうかと思っている。前世の感覚が残っているのだろう。
「そうか、それと、彼らをけしかけたハイアという娘は、行方不明になり、背後関係は分からずしまいだった。」
「そうですか。」
公爵家が揉み消したんだろう。命があるか心配だから、後で調べてみよう。
「あと、クラス分け試験だが、帝国予備学院に確認したところ、予備学院で教えることはない。卒業資格を与えるとのことだ。帝国中央学院からは、卒業資格を与える教授職を用意するので来てくれと言われた。」
「はあ、私は、学校で青春を謳歌したいのですが。」
そう、私は恋をしたいの。仕事とか名誉とかどうでも良いの。
「「は?」」
「だから、恋愛とか楽しみたいんですけど、女の子だし。王子様見つけたいじゃないですか。」
「はぁ。お父さんとしてはそんなの認めんぞ。将来役に立つ様にな」
でた、頑固オヤジ、だけど
「お父さん、正騎士と、鍛治師マイスターの資格があって、それ以上に何を。」
「いや~、女の子なんだから、う~。お嫁さんとか。」
「だったら、恋愛しないと。」
「お父さんはそんなの。」
親子のバカな会話を聞いていて、大佐が止めに入った。
「待て待て、ジェシカ、鍛治師マイスターだったのか?」
「レールガンが認められて、鍛治師マイスターに昇格しました。あと、鍛治研究所と、共同研究所の上級研究員です。」
「お父さん、上級研究員なんて聞いてないぞ。」
「だって、お兄ちゃん理事だし。」
「あいつ、理事なの?毎年偉くなるな。」
「ルーベック鍛治商会の次期商会主と言われてるからね。」
「父を速攻で超えていくね。」
大佐の素朴な疑問も、親子のバカな会話に沈んでいく。それでも頑張って聞きたかったであろう事を聞いてきた。
「ところでレールガンって、買えるの?」
「80億ゴールドと、軍の許可書があれば。」
「その程度か、騎士学院でいくつか買うか。」
「魔石は使い捨てですよ。」
「本当か。でも、帝国親衛騎士団等は。」
「はい、8丁お買い上げ頂きました。2丁分は税金でしたけど。殆ど儲かりませんよ。」
実際、この売上480億ゴールドは、ほぼ丸儲けで、全て通信商会に注ぎ込んでいる。通信機器、配信施設等、主要な設備は私が研究所の成果を更に工夫し低純度の魔石で、ローコストで大量生産している。必要なのは、運転資金と、不動産購入費、帝都及び、帝国全土に一気に拡げるには、まだ足りないが、帝都と、周辺、鉱山を結ぶ拠点にはなんとかなりそうだ。
「そうか、一応聞くが給料は貰ってるのかな?」
「はい、お給料は頂いてます。私は生産ノルマが管理されてないので、出来高で上限がありますが。」
「で、どのくらいだ?」
「先月で1億ゴールドだったかな?マイスターに昇格したし、マイスターに昇格前は500万ゴールドだったよ。」
「儂よりでは比較にならん。そんな額払えんよ。」
「収入でも抜かされてく~。」
「でもでも、全額お母さんに預けて、お小遣い500ゴールド貰ってるよ。」
「その位なら払えるかな?」
ドルーマン大佐は、確認したい事を聞き終えたか、ニヤリとし、私も微笑んで返した。そして鞄が、紙の束を出した。
「でだ。帝国中央学院の免状と、教授任命書、後、各教授の君の解答に関する解説論文だ。こっちが、当騎士学院の上級研究員任命書だ。共に週一回程度出勤すれば軍役扱いになるものだ。共に肩書きは使って良いし、研究室を開けとくので、いつでも来てくれていい。条件を読んでおいてくれ。」
「ドルーマン大佐、確認させて頂きます。特に論文を。」
「そうか、期待しないで待ってるぞ。肩書きは大いに使ってくれ。ジェシカさんに使って貰えれば、PR効果になるだろうしな。」
そう言うと、ドルーマン大佐は急いで帰っていった。
「ジェシカ~、ところで、お前は何処に行くんだ~?」
「わかりませんが、可愛いお嫁さんになりたいの。」
「そーかー。」
打ちひしがれたお父さんは、遠い空を眺めていた。
部屋に戻ると人の気配が2つあった。
「ローアさん。何か御用でしょうか?あら、もうお一人さんも。」
と声をかけると、2人が天井から飛び下りてきた。ローアさんと、おじさま風の紳士だ。
「ジェシカさん。お久しぶりです。急用で参りました。こちらは」
「ジェシカさんか、私は、帝国軍務省監査局査察部のロドマン中尉だ。」
「で、急用とは。」
「アレックス・フランドル子爵が倒れられた。毒を盛られたのだ。」
えっ、アレックス少年が毒を?私は、気が動転して、卒倒しそうだったが、とりあえず、気持ちを押しとどめ、
「お命は?」
「ゆっくり時間をかけて盛られた様なので、何とか生きている。リーディング殿下や、そのご学友たちも一緒だ。宮廷薬師2人、リーディング殿下担当の料理人3人自害している。」
「アレックス・フランドル子爵は、中屋敷にいた時に倒れられたので、中屋敷におられます。」
「それで、私に何を。」
「宮廷薬師も、民間の研究所も直ぐには分からない状態だ。時間が無い、今流行りの妊娠促進薬を作ったお主なら、2つの試験で歴代最高点を叩き出したお主ならどうにか出来ないか?」
「この通り、頼みますわ。」
私なら、なんとか出来るかも知れない。アレックス少年の命を守りたい、私はその気持ちでいっぱいだった。
「薬のことは何故ご存知なのかお聞きしませんが、分かりました。助けられるか分かりませんが、協力します。」
「感謝します。」
「ありがとうございます。」
2人は深々と頭を下げた。
「で、どうしたら。」
「まずは、アレックス・フランドル子爵の症状を見てください。待たせている中屋敷に馬車で向かいます。」
「わかりました。次は玄関から来て下さいね。ローアさんなら、使者として来れば大丈夫ですから。」
そう言うと、2人は屋根に消え、5分後に
「ごめんください。」
とローアさんが入ってきた。
私は平静を保ちつつも、アレックス少年の症状が心配で仕方なかった。前世で孫が難産で1日戦っていた時以上かもしれない。
「お母さん。フランドル子爵の所に行って来ます。今日帰るから。」
そう言って、ローアさんが乗ってきた馬車に飛び乗った。馬車は物凄い速度で道を駆け抜けて、フランドル公爵家中屋敷に着いた。
「ローアさん。何か御用でしょうか?」
ハクランドギルド、ローアさんが所属する闇ギルド。国内最大の規模を誇る。商人、貴族、王族までもクライアントに持ち、破壊工作、情報収集、暗殺までこなす。その任務で、私についてきているのだろう。攻略本を見ると、ロッカーの中に入って隠れている。
「御用でしょうか?って、どうやって分かったの?」
と、ロッカーを開けて出てきた。
「なんとなく。」
「なんとなくか。なんとなくで、私の仲間を選んで行動不能にしたの?」
「何がですか?」
と、すっとぼけてみたが、攻略本で確認して、レールガンを撃ち込んだ。多分動けなくなっているだろう。
「まっ良いわ。ところで私が誰かわかっているわよね。」
「ローアさんです。」(ニコッ)
私の笑顔にたじろぐ。
「まあ良いわ、他の人達と私は仕事が違うから。」
そう言うと、私をじっと見据えた。私の反応を伺ってるようだ。
「で、何のご用ですか?」
私を見てゆっくり
「そーねー。貴方の命かしら。」
「うーん、私の命って、何故?私、私から何もしてないわよ。」
「そーよねー。でも、大人は複雑なの。」
「そーなの。」
「じゃーね。」
と言って、彼女は私に襲いかかってきた。彼女の手にはナイフがあるが、
「やめません?ふざけるのは。」
私は、短剣で一閃してナイフを吹き飛ばし、冷静な口調で諭した。
「私は、冒険者上りの商会の娘で、鍛治師です。武器の持ち方で、プロかどうかは分かります。貴方は~そう、薬師に近いかな?貴方に騎士を倒した私を倒せるとは思えません。たとえ毒塗りのナイフであっても、毒針もしまって下さいね。お話があればゆっくり聞きますから、お屋敷でも良いですし。」
ローアさんは諦めた様に、武器を全て下に落とした。
「首元の。」
「あっ、これもね」
最後に首元に隠していた紙製ナイフを下に落とした。
「で、何用?」
「任務よ。貴方が本当に騎士としての力があるが確認に来たの。」
「はぁ?」
「よく考えてみて下さい。6歳の幼女が、騎士達を秒殺にし、あの学院長も瞬殺ですよ。何らかの不正を疑うでしょう。」
「不正?」
「はい、不正です。」
「不正って、貴方?帝国政府の人?」
「帝国政府って難しい言い方、って、テストであんな解答をする人は、幼女とはいえ失礼でしたね。」
と言い、いきなり敬礼をした。
「私は、ハクランドギルド所属の薬師ですが、今は帝国軍務省監査局査察部所属軍属ローア士長です。」
「査察部?」
「色々な所に潜入して、調査する仕事。アレックス子爵の素行調査で潜入していたんだけど、いきなり貴方を連れて来て、ハイアがちょっかい出したので、様子見で、私も軽く乗って見たけど、あそこまで杜撰だとわ思わなかったわ。私も巻き添え食らった時は、焦ったわ~。公爵はハイアのこと全て分かっていらして、放置されてたけど、ハイアが、バリモアさん達を使って、色々画策したのは流石に目に余ったわ、今回の試験を受けさせたのもそう。貴方じゃなきゃ、五分五分で死んでたわよ。」
ローアが身分とか明かして大丈夫なのかな?とふとした疑問が湧いた。普通に話してるし。
「ローアさん、ここまで私に言って大丈夫なの?」
「あぁ、貴方は大きな意味でこちら側に来る予定だから。じゃあね。」
そう言って、彼女は、出て行った。
「ふー。なんなのよ。こちら側にって私に何をさせるのよ、これ以上。」
私は、控え室のクッションに3発ほどパンチをして、心を落ち着けた後、タオルで汗を拭き、格闘場に戻った。
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格闘場は、落ち着きを取り戻し、試験が続けられていた。端に受験者の控え場所があり、アレックス少年も座っていた。
「閣下、勝利おめでとうございます。これで騎士見習いですね。」
「そうだな、ありがとう。多分、ジェシカの修行と武器が無ければ一切歯がたっていなかっただろう。」
「いえいえ、閣下の才能と努力です。」
「ところで、バリモア達が申し訳ない事をした。下手をすれば君の命を落としていた。ロバートと相談するが、看過出来ない事だけに、君やルーベックさんにご納得頂いく処理をしよう。」
「そうですね。公爵家としてどうされるかですから、結果に従いますので。あと、バチは既に当たってるようですし。」
「それにしても、あいつらギャラリーから消えたな。どう言う事だ。」
「さあ。」
その後で、私と殿下は、武舞台での戦闘を観ながら2人で、語り合っていた。格闘場とロマンチックな雰囲気は一切ないが、幼心の中に、ほのかな恋愛感情が芽生えてきているのかもしれない。夕方まで戦闘が続いたが、ようやく終わり、大佐が武舞台に立った。
「諸君。今日は参加してもらいありがとう。明日正午、騎士学院の掲示板に結果を発表する予定だ。では、解散だ。」
そう言って、解散していく中、ドルーマン大佐が私の元に走ってきた。
「ジェシカさん。今日の証文だが、明日の合格発表までには用意させておく、明日の午後副学院長室に来てくれ。」
「分かりましたわ。」
「証文って?」
「鍛治師の仕事ですよ。」
「そっ、そうか。」
適当に誤魔化して、館に帰る事になった。騎士さん達は先に帰っているらしく、私は、御者台でなく、座席にゆっくりと座っていった。高級馬車でゆったりとした座席と、煌びやかな装飾だった。そんな中で、アレックス少年は、ピカピカして見えた。その時、この人生での初恋が芽生えたのかも知れない。
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館までの道は長くないが、こんなに短く感じた事は無いだろう。私は、別れを惜しみつつ離れに戻ると、疲れがどっと出て寝てしまった。夢の中では、覚めて欲しくない気持ちで一杯になる内容だったが、習慣は恐ろしいもので、4時には目が覚めてしまう。今日はお庭で修行だったが、アレックス少年は姿を見せなかった。淡々とこなし終わる頃アリアさんがやってきた。
「ジェシカちゃん。うちの息子怪我して、本家に運ばれたらしいけど、何かあった?」
「流れ玉に当たったみたいだけど、詳しくは。」
「そう、魔法飛び交うから危険なのに、警戒してなかったんでしょう。」
「そ、そうですね。」
「ところで、こっちが本題だけど、旦那様からの言伝よ。曰く「すまん。例の処理で、修行に参加できない。」だそうです。」
「わかりました。」
それから、朝食後、部屋に戻ると、私の部屋には誰も訪れずなかった、昼前になって扉を叩く音がした。
「はーい。」
私は少し期待しながら答えたが、
「アリアです。昼食をお持ちしました。」
「はーい。」
テンションだだ下がりの声で答えてしまった。
「あらあら、今日の発表を見に行ったら、お帰りになるんですよね。寂しくなってしまったのかしら?」
「はははは。そうですね。」
と乾いた笑いを返してしまっている。本当にアレックス少年に恋をしてしまったのかも知れない。年甲斐もなくって、今の年なら良いのだけど。
「旦那様は、別で確認されるので、バーレールがお連れします。確認後、そのままお帰りになられる様に、荷物は、確認されている時にバーレールを館に戻して積んでおきますね。あの山でいい?」
「はい。アリアさん。今までありがとうございました。」
「旦那様のワガママに付き合わせてごめんなさい。」
「これ、私が作った根付け。」
そう言って、最高級玉鋼で作った神像の根付を2つプレゼントした。
「帝国の守護神、バラモス様の根付です。旦那様にも。神のご加護があられます様に。」
「ありがとう。毎日拝ませて貰うわ。」
アリアさんは喜んで受け取ってもらった。この神像は、Aランクの神像で、そこらの神殿の神像と同ランク。神像は、大きい程効果が高くなるので、この大きさでは限界に近いランクだ。何かあった時に、ご加護が得られるだろう。
アリアさんと別れ、私は、バーレールさんの馬車に乗り、帝国騎士学院に向かった。合格発表を見るためだ。受験者は、点数順に掲示され、点数と合否が合わせて掲示される。騎士を目指す者は、結果に責任を取らせるべきとの考えらしいが、不合格者には公開処刑の様だ。掲示は入口近くに点が悪い者となっているので、最低点者(ランニングでの失格者)は地獄だろう。
配点は入口に書いてあったが、ランニングは、一位300点で、1周遅れ毎に15点減点。筆記は、単語、数字回答形式400問が1問1点、文章回答形式が最初の100問が5点、次の50問が20点、最後の10問が無制限。無制限って何だ?武術試験で試験官1人最高2000点+αとなっている。突っ込みどころ満載だが、見習い合格基準は、武術で500点以上、合計1000点以上らしい。武術の採点はわからないが、合格出来たと思う。
掲示板の背が低く、私の背では、目の前まで行かないと見えないので、人を掻き分けながら順番に見ていく。掻き分け掻き分けなんとか半分を超えた位から合計点が1000点を超え、合格者が出ていた。そこら中で喜んでいる人、悲しんでいる人、家族や仲間と来て、悲喜交々の情景を見せている。ちなみ私の名前は一向に出てこない。もう端に近くなり、2000点を超えてくると、1人1人の点差が離れてくる。そうして3000点を超えたところで、准騎士合格と書いてあった。騎士見習い試験なのに、准騎士と思ってみると、そこにアレックス少年の名前があった。3950点、多分試験官を倒したからだろう。騎士見習いでなく、准騎士合格で、彼により高い拍がついた。私の役目は終わっただろう。一緒に見て祝いたかったが、と寂しさを感じつていた。
「それにしても私の名前は?」
と、少し先の方をみると人だかりが出来ていた。掲示板の端っこだ。私が掻き分けようやくみると、
正騎士合格
ランニング500点
筆記1900点以上
武術12000点以上
合計14400点以上
ジェシカ(6)
尚、正式な点数は後日発表する。
以上って何だ。何故正騎士合格なんだ。と突っ込みどころ満載で、2位の4130点からトリプルスコア以上となっている。2位の人確か19歳だったよね。私は色んな意味でやばいかも。
私はコソコソと抜け出し、副学院長室に向かった。
副学院長室は、校舎の真ん中に高くそびえる塔の45階、上から二番目の階にある。エスカレーターもエレベーターもない中、拷問かとも思うが、日々鍛えている私には造作もないことで、これが辛くなってきたら、辞めろということかと思う。
トントントン
そう叩くと、中から大佐の声が聞こえた。
「誰だ。」
「ジェシカです。」
「待っていた。入りたまえ。」
そう言われてはいると、そこは質素な作りで、机の上は書類の山だった。
「この書類は、私が貯めたんじゃないぞ。昨日、学院長が倒れられ、仕事を引き継いだら、やり残しが大量にあり、朝からこんな感じだ。」
「いや、疑ってませんから。」
私がジト目でみると、
「疑ってるだろ。その目は。まあ良い。証文は用意した。帝国騎士学院の証明付だ。」
「ありがとうございます。これは、譲渡は?」
「当然可能だ。」
「ありがとうございます。」
と言って証文のやりとりが終わると、大佐は私に拍手をし
「正騎士合格おめでとう。」
大佐は、そう言ってくれたが、
「私にはおめでたくもないですよ。」
その後、私は、想定外の言葉を聞いた。
「そうだな。それでだ。軍役どうする?」
「軍役って、私何か?」
そう、軍役、軍の職務に着く義務があるのか?正騎士って資格じゃないの?と、心で抗議の気持ちが膨れ上がる。
「うー。そうだな、知らんか。正騎士には、実は軍役義務があるんだ。6年だが、普通正騎士になるのは、准騎士からの昇格だから、そもそも軍役にある程度付いていて、この議論にならない。規則では、正騎士に叙任から半年以内に任務につく必要がある。叙任を拒否出来る規定も無いしな。君の場合は、市民学校のクラス分け試験を受けていないので、そのタイミングから、軍役に就いて貰うイメージかな?」
ローアさんが言ったのはこのことね。軍役6年て軍人になりたくたいよ。それ以上に、クラス分け試験は受けましたよ。何で?
「は?クラス分け試験は、受けましたよ。この区画の帝国予備学院で。」
「予備学院で?予備学院で受けられる筈がないだろ。」
「えっでも、バリモアさんから、受けられると手続きしてもらって受けましたよ。帝国予備学院で、試験日に。」
「いや、受けられるのは、帝国予備学院の入試だけだ。」
「本当ですか?」
バリモアさん、私を嵌めたのか、また酷い。マジか~。それにしても、あの試験難しいな~とは思ったんだけど、あの時図に乗って答えなきゃ良かった。ただ、コケにしたくてやったのか?意図が分からん。
「そうだ、難しかっただろう。」
「いや、全て解きましたけど。」
「は?全てって二部目も」
「はい、全て。」
「いや、二部目は帝国中央学院の試験問題だ。調べておく。バリモアが何をやったかも含めてな。」
二部目は帝国中央学院の試験か、ヤバイな解いちゃったよ~。絶対トラブルよ。とりあえず、試験は大佐に任せて、軍役も確認しとかないと。
「とりあえずわかりましたが、軍役って何をするんですか?」
「何でも構わん。騎士団に入るのが普通だが、王侯貴族の家臣になったり、兵団でも、警備隊でも構わん。君なら、宮廷鍛治師でも良いかもしれない。」
「そんな、面倒くさい。」
宮廷鍛治師なんぞ、無理難題言われそうな気がする。やだ~。
「もし、無ければ、騎士学院の鍛治師でも構わん。何もしなくても、通ってさえくれれば、こなしたと書面を作ろう。」
「考えてみます。」
家に帰ってから、相談するしかないか。それにしても面倒くさい事だ。
「正騎士は、少なくとも、予備役少尉になるから、それ以下の役割では兵役とみなされんから、注意してくれ。」
少尉と言えば、主要騎士団でも十人以上の部下を持つ分隊長級、地域の警備隊レベルであれば、百人以上の部下を持つ警備隊長になれる階級だ。
「また、このナイトカードに魔力を通すと、君だけしか反応しない証明書になる。これがあれば、正騎士として、皇宮や、主要施設、各学校、中央図書館等にま入れるから、悪用しないように。詳しくは、この規定集を見てくれ。」
私は、叙任書と、ナイトカードとよばれる魔道具、規則集を受け取り、部屋を出た。
騎士学院の門に出ると、バーレールさんが馬車で待っていた。私は、バーレールさんの馬車に乗り込んだ。アレックス少年と会えない寂しさ、お別れ出来なかった悲しさで胸が張り裂けそうになっていた。アレックス少年を忘れる為に軍役も良いかな?とも思い悩んでいる。
家の前までは、景色が一切目に入らなかった。私は、馬車を降りて、商会の入り口に立った。
「ただいま~」
と大きな声で叫ぶと、
「ジェ~シ~クァ~」
と泣きながらお父さんが、突っ込んでくる。私に抱きつこうとした瞬間、私は宙挙げられる、チュウをされた。
「お帰りなさい。ジェシカ。」
と、お母さんに抱き抱えられ、突っ込んできたお父さんは、豪快にこけ、お父さんの上に座っている。アイルお兄ちゃんは、奥で号泣し、お姉ちゃんは、階段から微笑んでいた。私は、家族に迎えられて、徐々に日常生活に戻っていった。
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最近、特に変わったとことといえば、剣や武器も打つようになった事だ。工房では、知らないうちにダイアンお兄ちゃんを超えたことと、結構勝手をやったことで、ダイアンお兄ちゃんには怒られた。マジで。その後、私の開発したものが多すぎるので、怒られた。本気で。お兄ちゃんは、鍛治研究所と、共同研究所の上級理事さんとして、運営を統括しているので、今後のことについても話し合い、私を上級研究員にして、研究室を持つこと。そこの研究員達には、お兄ちゃんが指示して実用化の作業をさせること。開発したら、理論等私がちゃんと論文にして、研究所に提出するとこ。証文については、研究所に渡し運営費に当てること等を決めた。
翌日から、ドドリゲルさんのところで作ったものの論文を書き出した。この世界の論文は、自分勝手で、内輪にしか分からない内容が多く読みにくい。私には耐えられないので、読み手にも気をつけてながら書くと、それは手間がかかってしょうがないかった。それで、ワープロみたいな魔道具を作り、魔石を改造して、データを保存できるようにした。活版印刷の技術はあるので、その技術を応用して、魔石データを打ち出すタイプライター式のプリンタも作った。打つのは、前世の経験で、途轍もなく早いので、バンバン作っていったが、このワープロ、プリンタ等の論文や、レールガン、妊娠促進薬の論文も含めて、45本、合計2000枚を超える論文を作ったため、書き上げるのに1ヶ月もかかった。もう、その頃には冬になり、雪も降りだしている。この1ヶ月忙しく過ごし、すこしは、アレックス少年のことも忘れられる様になってきていた。そんな時、
「こんにちは。こちらにジェシカさんはいらっしゃいますか?」
「どちら様で。」
「上官は、帝国騎士学院の学院長代理のドルーマン大佐です。調査結果を持って来たとお伝えください。」
「そうですか。では、ここでお待ち下さい。」
「ジェシカ、ジェシカ~。」
と、下から声が聞こえて来た。ドルーマン大佐がわざわざいらしたんだ。
「はーい。」
私が階段を降りて行くと、お父さんが固まっていた。
「先輩なぜ?」
「ガルガンディ商会、そうか、お前の娘か。」
「娘って、ジェシカのことですか?」
「そう正騎士ジェシカだ、学院時代、首席で、殆どの騎士団からオファーが来たのに、冒険者を選んだ、商売人騎士とまで言われたお前の娘か勿体ない。オルコットとか、ラーズとかが知ったら、ここに勧誘に来るぞ。」
と、大佐とお父さんは楽しそうに話しだした。
「オルコット帝国魔道騎士団参謀長と、ラーズ帝国乙女騎士団第3姫護衛隊長の両中佐ですか。昨日揃って勧誘に来ましたよ。ハルク帝国軍務省財務局予算部長と、ベース帝国軍務省補給局武具部長と4人でね。朝まで飲んで帰って行きましたが、ロイズ帝国軍務省人事局次長が、動いてくれてるらしいです。娘の軍役で変な部署に引っかからない様に。同期の皆には、有難い限りです。」
「そうか。」
なんか、話が長くなりそうなので、
「で、お父さん。立ち話もなんなんで、奥で話しません?お父さん居なくても店は回るでしょ。」
「そうですね。先輩どうぞ。」
と、私とお父さんと、ドルーマン大佐は、三人で奥の商談室に言った。
「お父さん、さっきの話聞いてないけど。」
そう、私はオファーの話など聞いていない。
「いや、正式にはオファーされていない。今度、ゆっくり時間をとって来るそうだが、とりあえず、まだ決めないでくれとの事だ。」
「その人達って偉いの?」
「そうだな~。バカな奴が多いな。」
「いや、ジェシカさん。ロイズ中佐を含め、5人は、皆中佐で、ストレートで昇格している。」
お父さんの言葉を大佐がフォローしている。
「大佐、私は少尉だけど、偉いの?」
「一般兵では、2階級下の曹長は目標、騎士なら、騎士学院卒業で1階級下の准尉任官となる。おまけのお父さんも准尉だ。軍務に就いていないからな。」
「お父さん格下。」
「娘に~。」
お父さん、ちょっと悲しそうだ。
「それはそうと、今日は?」
「今日は、バリモアの処罰と、クラス分け試験の件だ。」
「はい。」
大佐は急に真面目な顔になった。
「まず、バリモアの件だが彼はやり過ぎたが、君の流れ弾で、手足に大きな怪我を負い、騎士として復帰は難しいということもあり、極刑は免れた。君が親御さんに送った根付が、君と、バリモアの家とで和解になったとの判断もあってな。一応、騎士見習いの地位を剥奪して、以上ということで片付いた。他の者達に着いてだが、それぞれ、小さいご余罪がゴロゴロ出てきて、同様の取り扱いとなった。」
「そうですか。良かったです。」
「良かったのか?」
「はい、生きてさえいれば、どうにかなるでしょうから。」
私は、本心でそう思った。どんな罪であれ、人を殺してない人を処刑にするのはどうかと思っている。前世の感覚が残っているのだろう。
「そうか、それと、彼らをけしかけたハイアという娘は、行方不明になり、背後関係は分からずしまいだった。」
「そうですか。」
公爵家が揉み消したんだろう。命があるか心配だから、後で調べてみよう。
「あと、クラス分け試験だが、帝国予備学院に確認したところ、予備学院で教えることはない。卒業資格を与えるとのことだ。帝国中央学院からは、卒業資格を与える教授職を用意するので来てくれと言われた。」
「はあ、私は、学校で青春を謳歌したいのですが。」
そう、私は恋をしたいの。仕事とか名誉とかどうでも良いの。
「「は?」」
「だから、恋愛とか楽しみたいんですけど、女の子だし。王子様見つけたいじゃないですか。」
「はぁ。お父さんとしてはそんなの認めんぞ。将来役に立つ様にな」
でた、頑固オヤジ、だけど
「お父さん、正騎士と、鍛治師マイスターの資格があって、それ以上に何を。」
「いや~、女の子なんだから、う~。お嫁さんとか。」
「だったら、恋愛しないと。」
「お父さんはそんなの。」
親子のバカな会話を聞いていて、大佐が止めに入った。
「待て待て、ジェシカ、鍛治師マイスターだったのか?」
「レールガンが認められて、鍛治師マイスターに昇格しました。あと、鍛治研究所と、共同研究所の上級研究員です。」
「お父さん、上級研究員なんて聞いてないぞ。」
「だって、お兄ちゃん理事だし。」
「あいつ、理事なの?毎年偉くなるな。」
「ルーベック鍛治商会の次期商会主と言われてるからね。」
「父を速攻で超えていくね。」
大佐の素朴な疑問も、親子のバカな会話に沈んでいく。それでも頑張って聞きたかったであろう事を聞いてきた。
「ところでレールガンって、買えるの?」
「80億ゴールドと、軍の許可書があれば。」
「その程度か、騎士学院でいくつか買うか。」
「魔石は使い捨てですよ。」
「本当か。でも、帝国親衛騎士団等は。」
「はい、8丁お買い上げ頂きました。2丁分は税金でしたけど。殆ど儲かりませんよ。」
実際、この売上480億ゴールドは、ほぼ丸儲けで、全て通信商会に注ぎ込んでいる。通信機器、配信施設等、主要な設備は私が研究所の成果を更に工夫し低純度の魔石で、ローコストで大量生産している。必要なのは、運転資金と、不動産購入費、帝都及び、帝国全土に一気に拡げるには、まだ足りないが、帝都と、周辺、鉱山を結ぶ拠点にはなんとかなりそうだ。
「そうか、一応聞くが給料は貰ってるのかな?」
「はい、お給料は頂いてます。私は生産ノルマが管理されてないので、出来高で上限がありますが。」
「で、どのくらいだ?」
「先月で1億ゴールドだったかな?マイスターに昇格したし、マイスターに昇格前は500万ゴールドだったよ。」
「儂よりでは比較にならん。そんな額払えんよ。」
「収入でも抜かされてく~。」
「でもでも、全額お母さんに預けて、お小遣い500ゴールド貰ってるよ。」
「その位なら払えるかな?」
ドルーマン大佐は、確認したい事を聞き終えたか、ニヤリとし、私も微笑んで返した。そして鞄が、紙の束を出した。
「でだ。帝国中央学院の免状と、教授任命書、後、各教授の君の解答に関する解説論文だ。こっちが、当騎士学院の上級研究員任命書だ。共に週一回程度出勤すれば軍役扱いになるものだ。共に肩書きは使って良いし、研究室を開けとくので、いつでも来てくれていい。条件を読んでおいてくれ。」
「ドルーマン大佐、確認させて頂きます。特に論文を。」
「そうか、期待しないで待ってるぞ。肩書きは大いに使ってくれ。ジェシカさんに使って貰えれば、PR効果になるだろうしな。」
そう言うと、ドルーマン大佐は急いで帰っていった。
「ジェシカ~、ところで、お前は何処に行くんだ~?」
「わかりませんが、可愛いお嫁さんになりたいの。」
「そーかー。」
打ちひしがれたお父さんは、遠い空を眺めていた。
部屋に戻ると人の気配が2つあった。
「ローアさん。何か御用でしょうか?あら、もうお一人さんも。」
と声をかけると、2人が天井から飛び下りてきた。ローアさんと、おじさま風の紳士だ。
「ジェシカさん。お久しぶりです。急用で参りました。こちらは」
「ジェシカさんか、私は、帝国軍務省監査局査察部のロドマン中尉だ。」
「で、急用とは。」
「アレックス・フランドル子爵が倒れられた。毒を盛られたのだ。」
えっ、アレックス少年が毒を?私は、気が動転して、卒倒しそうだったが、とりあえず、気持ちを押しとどめ、
「お命は?」
「ゆっくり時間をかけて盛られた様なので、何とか生きている。リーディング殿下や、そのご学友たちも一緒だ。宮廷薬師2人、リーディング殿下担当の料理人3人自害している。」
「アレックス・フランドル子爵は、中屋敷にいた時に倒れられたので、中屋敷におられます。」
「それで、私に何を。」
「宮廷薬師も、民間の研究所も直ぐには分からない状態だ。時間が無い、今流行りの妊娠促進薬を作ったお主なら、2つの試験で歴代最高点を叩き出したお主ならどうにか出来ないか?」
「この通り、頼みますわ。」
私なら、なんとか出来るかも知れない。アレックス少年の命を守りたい、私はその気持ちでいっぱいだった。
「薬のことは何故ご存知なのかお聞きしませんが、分かりました。助けられるか分かりませんが、協力します。」
「感謝します。」
「ありがとうございます。」
2人は深々と頭を下げた。
「で、どうしたら。」
「まずは、アレックス・フランドル子爵の症状を見てください。待たせている中屋敷に馬車で向かいます。」
「わかりました。次は玄関から来て下さいね。ローアさんなら、使者として来れば大丈夫ですから。」
そう言うと、2人は屋根に消え、5分後に
「ごめんください。」
とローアさんが入ってきた。
私は平静を保ちつつも、アレックス少年の症状が心配で仕方なかった。前世で孫が難産で1日戦っていた時以上かもしれない。
「お母さん。フランドル子爵の所に行って来ます。今日帰るから。」
そう言って、ローアさんが乗ってきた馬車に飛び乗った。馬車は物凄い速度で道を駆け抜けて、フランドル公爵家中屋敷に着いた。
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