攻略本片手に異世界へ 〜モブは、 神様の義祖母 〜

出汁の素

文字の大きさ
17 / 34
幼女編

第17話 喪女とラビリンス

しおりを挟む
 私達はフランドル公爵家中屋敷に着いた。

 私だけ降りて玄関を叩くと、アリアさんが出てきた。びっくりしていたが、私の形相を勘違いし

「正騎士ジェシカ様。ごめんなさい。息子に復讐をしに来たのね。貴女に頂いた根付を悪用してごめんなさい。復讐するなら、私に。」

 と声を張って、涙目で訴えてきた。

「アリアさん。そんな事どうでも良いし、私は何とも思ってません。それより閣下は?」
「閣下って、何で、」
「何でって良いの、通して頂けるかしら。」
「はっ、はい。」

 私の形相と、言葉に反論も出来ず、私をアレックス少年の部屋の前まで連れて行ってくれた。そこには見慣れない騎士が2人立っていた。

「アリア。誰を連れてきた。」
「何故、餓鬼を通した。」

 と、声を荒げて怒鳴ってきた。

「私は、正騎士ジェシカ少尉です。閣下のお見舞いに参りました。」
「正騎士だと、笑わせるな。」
「騎士見習いだからと、馬鹿にしているのか?」

 言ってもいないことで怒ってくる。劣等感の塊か、貴族階級が跋扈する国ではこんな奴が多いんだろうな・・・。と思いつつ、この無駄に苛立ち始めてきた。

「少尉だと、こんな歳の少尉がいるなら、俺は大将かな。ガハハハ。」
「帰って、お母さん乳でも吸ってろ。ガハハハハハ。」

 2人は、全く取り合ってくれそうもない。奥ではアレックス少年が苦しんでいるというのに。だから

「時間が無い、信用出来ないなら、実力で証明するまで。」
「餓鬼のくせに、怪我しても知らんぞ。」

 と、男が殴りかかってきた瞬間、私は、腕を取り、背負い投げの要領で、投げ飛ばした。小さいとはい、5倍の成長力で、18歳の格闘家以上の力がある。綺麗に飛んで、意識を奪った。

「この~」

 続いて蹴りを入れてきた男の足を取り、前回りの要領で、足を捻り、首に手刀を入れ意識を奪い、秒で片付けた。

「なんだ。」

 と、騒ぎを聞きつけ、扉の中から、下男の格好をした男が出てきた。バリモアさんだ。

「げっ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 バリモアさんは、青い顔をして、平身低頭謝っている。

「なんだって、ジェシカさんか。」
「ロバートさん。」

 次にロバートさんが、部屋からひょっこり顔を出した。2人の騎士が意識を失い、1人が謝り倒している状況を見て首をすくめた。色々面倒なので本論に入ることにした

「それより、閣下は?」
「どこでそれを、と言ってもせんないか。入ってくれ。あと、バリモア、やめろ、俺の目の前では変なことはさせんし、ジェシカさんはそんな無駄なことはしないよ。」
「そう、無駄なこと。」

 バリモアさんを一瞥して、そう言うと、久しぶりに会う?アレックス少年。アレックス少年の寝顔、大丈夫かアレックス少年。色々な気持ちが瞬間的に沸いてくる、そんな感じで、私はドキドキしながら、部屋の中に入っていった。すると、ベットで意識をなくし倒れているアレックス少年と、跪いて彼の手を握っている少女がいた。

「へ?」

「あっ。」

 少女が涙目で、私を見つめた。多分、同い年くらいの金髪の美少女。多分大人になったら華麗な社交界の華になるだろうなぁというか感じの子だ。

「ベルベット嬢、こちらは、正騎士ジェシカ少尉。」
「彼から聞いています。大変な鍛治師と。」

 彼?どんな関係よ。アレックス少年~と叫びたいがぐっと堪えて、

「ジェシカさん。こちらはハーミット侯爵閣下のご長女ベルベット様。アレックス様の許婚に先日なられた。」
「いいなずけ~?」
「許婚、そうか、平民だとないかも知らんが、結婚を約束されたお相手だ。幼き頃より、お互いに惹かれ合い、史上最年少で、准騎士に叙任されたことで、許婚が決まった。お主は、准騎士になって無いから、カウントされてないがな。アレックス様が回復され成人されたら、晴れて婚約者となられ、ご婚姻される。」

 私は最後の方は耳に入らなかった。許婚ってなんなのよ。私は、アレックス少年の恋愛を成就させる為に、あれだけ頑張ったってこと。うー。やってられない。と心の中で叫んだ。このままだと、自分が動揺しているのが明らかすぎるので、落ち着く為に目を瞑り、深く深呼吸した。

「ベルベット様。私は、正騎士ジェシカ少尉です。お見知り置きを、ってベルベット様って、ハーミット侯爵第1令嬢。喪女?それってアーサー皇子の」

 私のベルベット様と、ロバートさんの目が点になっている。せっかく冷静になったのに、また混乱してきた。喪女って、アーサー皇子の許婚じゃないの?もーわけが分からない、冷静に冷静に、と気を落ち着かせているところに

「アーサー皇子?そんな話もありました。でも、私はアレックスが良かったの。でもこのままだと、そうなるかもしれませんね。」

 私は、その言葉で合点がいった。ゲームに至る流れでは、アレックス少年は、ここで亡くなり、喪女は、アーサー皇子の婚約者となる。そう言うことか。はー。どうしよう。でも、アレックス少年が死ぬのはもっと耐えられない。イヤー。じゃーない助けるか。色々な気持ちが交差する中私は心を決めた。

「ベルベット様、失礼しました。閣下の容態を拝見させて下さい。」
「容態だと?」

 後ろに控えていた、薬師風の青年が、私に聞いてきた。

「正騎士殿。私は宮廷薬師のハリヤース。閣下の容態は宮廷薬師が見てますから。大丈夫です。あなたはみられますか」

 若い、下級貴族っぽいちょっと派手な服を着た、宮廷薬師が出てきた。薬師のくせにお肌が汚いのは気になるが、優秀そうではある。だが、彼が治せないから困っているのにしゃしゃり出てくるとは。

「は?では、治せると。」
「いや、だから全力で、解毒や免疫療法をやっている。」

 馬鹿か解毒や免疫療法で治ったら、こんな状態になってないだろう。と心で叫びつつ、詰め詰めモードになっていく

「だから、治せるのか?」
「いや、であるからな、」

 宮廷薬師といえどもこんなもんか。使えない。

「五月蝿い。宮廷薬師か知らないが、治す見立てが出来ないなら、下がっていて下さい。」
「私が平民出だから、貴方も馬鹿にして。」

 宮廷で平民出で苦労しているかもしれないが、それを言い出しちゃダメでしょう。この子は、前に聞いたロドリゲス薬商会の学校出身の薬師ね、まだ下っ端だからここに来たんだろうな。なんだかんだ言って、皇宮の薬師達は大混乱だろうな。面倒くさいけど、とりあえず、ロドリゲス薬商会の学校出身なら抑え込めるだろう。

「平民出?何か関係が?私も平民です。貴方、ハリヤースの学校出身なのね。」
「ぞれがどうした。」
「そこのテキストと参考書持ってるよね。」
「あぁ、初版をな。宮廷薬師の先輩方もこんな分かり易くて、新しいやり方も多数載っており、色々丁寧に説明している書は無いと、取り寄せだくらいだから、今でも持ってるが。」

 ハリヤースさんは、さっと自慢げに2冊の書を取り出した。ハリヤースさんが自慢げになる意味が分からないが

「裏の編集者見てみ。」
「裏?」

 ハリヤースさんは、言われた通り裏を見ると目を見開いた。

「えー、編集ガルガンディ商会出版部。なんだこれ、ガルガンディ商会って、経営とかならわかるけど、何故?」
「私は、ガルガンディ商会の商会主の次女で、2人しかいない出版部の部員。部長は、兄のダイアン共同研究所上級理事。ちなみに私は共同研究所上級研究員よ。私と兄でテキストを作ったの。」

 私の言ったことを理解できたかどうかわからない位、震えた声で怒り気味に、多分、この本の内容は、ロドリゲス薬商会の叡智と勘違いしていたんだろう。

「嘘を、だってその頃3、4歳だろう。」
「出来るわ。私の神具、この特別な鑑定板なら。」
「特別?」
「そう、大神カグラ様の鑑定板ならね。」
「カグラ様の?それで、分かるのか?」

 大神カグラの名前で日和っている。それ以上に興味が勝っているのか、怒りの声はすぐに飛んでいった。

「分かるか分からないわ。でも、分かる可能がある。だから容態を見るのよ。そこをどきなさい。」

 あっ、素直にどいた。

「どれどれ。」
 私は、鑑定板を出して、アレックス少年を見た。当然何が原因か分からない。次に、攻略本モードで、アレックス少年を検索した。すると、

『現状、ザリーマストのアレルギーで死の淵にある。』

と追加されていた。ザリーマストのアレルギーをクリックすると、

-----------------------------------------------------------------------------------------------------
ザリーマストのアレルギー
 帝国南部全域に群生するザリーマストの花の根のエキスを抽出して煮詰めて作る栄養補給薬として知られるザリーマスト薬のアレルギー。
 通常は、無害だが、1年単位で、花が咲いた後の根から作った物を継続的に摂取する事で、突然免疫反応が高まり、意識を奪い、死に至ることがある。アレルギーが発症する迄の期間は、年齢による差があるが個人差は少ない。
 黄色い花が咲く前の根を用いれば発症することは無い。
 治療では、回復魔法等免疫療法、解毒薬、ポーション等は効果がなく、悪化させる為、以下の薬が有効。
 ビリガンガン
 ボリプリガン
 ロクソーリン
 エリクサー
 万能薬
 抗ヒスタミン剤
-----------------------------------------------------------------------------------------------------

 抗ヒスタミン剤って、おい。まあ、この中で作れる物を探せばいいのね。

「一応わかったわ。」
「えっ。治せるの?」
「治せるのか?」
「薬が揃えばだけど。ハリヤースさん。ビリガンガン、ボリプリガン、ロクソーリン、エリクサー、万能薬の内、出来るものある?」

 ハリヤースさんは、大きな本を取り出し調べ始めた。

「エリクサーや万能薬は、伝説的なものだから、むりだろ。後のものは、薬図鑑にすら載ってない。」

 私は、攻略本で調べたら、ロクソーリンだけ、素材がなんとか揃うかも知れない。
「ハリヤースさん。バリストス草と、リバヤント草、レイモンの実を揃えられる?」

「レイモンの実なら、旬なので簡単に手に入るでしょう。バリストス草は基本的な薬草なので幾らでも手に入ると思います。ですが、リバヤント草とは何ですか?」

「リバヤント草は、我がフランドル地方で染物等に使う草で、春先に生えるものだ。今は手に入らん。」
「えっ、それでは、アレックス様は、」(涙目ウルウル)

「そうすると、あそこで探すしかないか、帝国中、いや、世界中の草花が咲き乱れる大草原。」
「そんな場所があるんですか?」(笑み)

「そう、冒険の大迷宮17階層、無限の草原なら、」
「えっ、迷宮ですの?17階層なら、ってあれ皆さん落胆されて」

ロバートさんと、ハリヤースさんがうなだれている。

「ベルベット様、無限の草原は、まさに無限に近い広大な草原。階段の登り降りは、それほど離れてませんが、世界中の迷宮で、もっともだだっ広い草原と言われ、端を見たものはおりません。その中に世界中の草花が一面に咲き乱れているのですが、その中から、リバヤント草の様な特徴が無い草を探すのは無謀です。しかもそこには食人花等のモンスターがゴロゴロいます。誰が行けるのですか。」

ベルベット様は、間髪入れずに

「私が行きます。命がけでとってきます。」
「いや、ベルベット様にそんなことは、」
「ロバートさんも来てくれますか?」
「いや、」

 静観していた私は、ベルベット様のアレックス少年へん愛が本物だとわかった。そして失った後の抜け殻の彼女もゲームで知っている。本当は、恋敵に手を貸すのは耐えられないが、彼女の気持ち、それ以上にアレックス少年を失う事に耐えられそうにない。

「ベルベット様、気に入りました。私がついていきます。ロバートさんは、閣下の警護を、ハリヤースさんは、レイモンの実を絞り、濾過して、遠心分離し、内側の汁を大型の薬瓶2本分と、バリストス草を薬研ですり潰して、汁を濾過して、大型薬瓶4本分用意しておいて下さい。」

「げっ」

大型薬瓶1本分の汁を濾過して作るのは結構辛い。私は神聖魔法で出来るし、それ用に魔道具も作ったので何とか出来るが、普通げっと思う気持ちは分かる。魔道具は、共同研究所に、先月導入したので、何とかできる筈だ。というか、してもらわないと困る。

「げっ、じゃない。必要なら、共同研究所を通せば、共同研究所、薬研究所、薬商会の協力を得られる筈です。兄に一筆書いておきますので、よろしくお願い申し上げます。」

 ハリヤースさんは、渋々準備に出て行った。

「あと、ロバートさん。えーと、ハーバードお兄ちゃんが、今期の授業終わってる筈だから連れてきて、迷宮に潜るからって。」

「わかった。すぐ行く。」

 ロバートさんは駆け出して行った。

「バリモアさん、ルーベック鍛治商会に行って、武具を持っ来るので、ついてきて下さい。馬車もよろしくお願いします。」
「はい。」

 バリモアさんは、食い気味に返事し、出て行った。

「ベルベット様、潜れる護衛は?装備は?」

 ベルベット様は、悩んだ挙句に

「お父様に相談しないと難しいですわ。装備なら私の宝石等を売れば用意は。」
「わかったわ、ちょっとごめんなさい。」

 そう言って、体のサイズ等を触って確認した、メイドに服の脱ぎ着を手伝ってもらっているのだろう、抵抗なく受けていた。

「私が、装備はどうにかするわ。魔法は使える?」
「基礎なら・・。」

 ダメっぽい。

「武器は?」
「剣を少々」

 私は、さっと剣を取り出し、ベルベット様に渡した

「これを握ってみて」
「はっはい・・。」

 型だけを意識した感じの持ち方だった。迷宮で即席で鍛えるか・・・。

「わかりました。」

 そのタイミングで、「ジェシカ様準備できました~。」とバリモアさんの声が下の階から聞こえると

「で、行ってくるので、直ぐに出られる準備を。あと、数日かかるかもしれませんので、ご実家に手紙を。」

 そう言って、私はルーベック鍛冶商会の支店に向かった。そこの私の倉庫には、実験的に作ったものを含めて多くの武具がおいてある。予備で作ったポーション類を含めてすべてマジックバックに詰め込んだ、一応私の装備と、ベルベット様の装備はバリモアさんに持たせて、急いで下屋敷に戻った。戻ると、1台の豪華な馬車が止まっており、お兄ちゃんが、お友達2名を連れて待っていた。

「リーゼンハルト様、アーサー様なんで。」

「やぁ、ジェシカちゃんお久しぶりです。弟の病を治す可能性があるのであれば、協力するのは当然でしょう。」
「ジェシカさんは僕が守るよ、僕に任せて。」
「って、アーサー、お前はジェシカちゃんより弱いじゃん。」
「でもでも、そう言いたいじゃん。」

 と兄弟でじゃれている。

「二人とも、行っても問題ないですか?私たちの罪にならない?」
「大丈夫、僕達基本放置だから。」
「皇宮の出入りは出来るけど、専用室ないし・・・。行けばなぜか客間だし。」
「大丈夫ですか・・。違う意味で。」
「どちらの意味でも、大丈夫だよ。」

 一応、お兄ちゃんも大丈夫って顔しているので、大丈夫だろう。戦力にはなるメンバーだし。

「ベルベット様も、急ぎで行きますので、馬車に乗って下さい。粗末な馬車で申し訳ございませんが。私のじゃないけど。」
「粗末って言うな~」

 そう言うと、やり取りを見て

「ジェシカさん、あなたって・・・。」

 ベルベット様は、そうポツリとつぶやいた。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

 馬車の中で、迷宮探索についての説明を始めた。

「目標は、冒険の大迷宮17階層、無限の草原。行程は2日。レベル上げなしで、1日で一気に降りて、探して戻る。」
「へっ、無謀なそんなことが・・・。」

「大丈夫です。お兄ちゃんは、単独で、23階層まで潜った経験があります。それなりの装備も用意しました。装備は返してもらいますが、他言無用で。」

 と言って、まず、それぞれに合った剣を出した。

「ジェシカの用意する他言無用の武器か、そら恐ろしいな。」
「お兄ちゃん、恐ろしいって。」
「だってさ、今もらった剣って、SSランクだろ。いくらくらいするんだよ。」

 と言って、剣を眺ているお兄ちゃんに。

「全部私が造ったからそこまでしないけど、うちの商会の資産より。多いくらいかな。」
「父さん泣いちゃうよ。多分。」
「それがあって他言無用で。」

 お兄ちゃん以外は目が点になっている。

「この剣って、国宝級?」

 ベルベット様の言葉に、

「さすが、ジェシカさん。凄腕鍛治師さんですね。」
「アーサー様、凄腕ってレベルじゃないですよ。もしかして、噂に聞くルーベックの魔女って?」
「は?ルーベックの魔女?」

 ベルベット様が聞いたことが無い名前を出してきた。私は、変な声を出してしまった。

「そう、最近ルーベック鍛治研究所で、革命的な論文を発表しまくっている。ペンネームミスJ。二つ名は、ルーベックの魔女、お父様方が話されているのを聞いたわ。どうにか取り込みたいと。」
「面倒な話よね。」
「じゃあ、僕に囲われている事にしたら?一応皇子だし、」

 アーサー様がまた、変なことを言い出している。

「アーサー、ジェシカさんが、可愛そうだろ。」
「実際には、囲わないし、囲える器量が今あるわけないし。僕が囲っていると言っても、実際は、兄上が囲ってると思うだろう。兄上の親友の弟はルーベック鍛治商会グループの将来のトップと思われてる鍛治師で、それなりに繋がりがある。だが、あの商会のオーナーは不明で、少なくても皇族や、貴族の本家ではないと言われている。ハーバードさんのとこでも無理だし、少し前に市場で噂になった外国の王族ではないかと、言われている。だから、何となく、僕が囲っていると言えば、色々な憶測をうんで、みんな動きづらいと思うんだ。」
「そうだね。アーサーが個人的にと加えておけばなお良いかな?」
「実際に、ジェシカさんを囲えれば良いけど、怖いお兄さんがいるからね。」

 アーサー様が、思ったよりよく考えているけど、私囲われるの。囲われるって何よ。

「で、妹がその魔女前提だけど、どうなのよ。」
「いや、私は単なる鍛治師だから、」

 そう、私は鍛冶師、単なる鍛冶師よ。

「レールガンの噂も聞いているわよ。」

 ベルベット様~。やっぱり、ブチ切れなければよかった。

「あれは、まあ、兵器としては、強いか知れないけど、いー。私が魔女でいいわよ。もう知らないから。囲う囲われるはすべてが済んでから考えましょう。それより、みんな、迷宮は命がけよ。ベルベット様はともかく、みんなはほんとに良いの?」

 もう無理。とりあえず、迷宮に集中しよう。

「了解、僕はお兄ちゃんだから、妹を守るのが仕事だし、ついてくよ。」

 お兄ちゃん、惚れちまうよ。

「アーサーはともかく、僕の弟も同じ病だから、助けるためには頑張りますよ。」
「バカ兄貴で、やな奴だけど兄弟だからね、助けられるなら助けるよ。」
「じゃあ、みんないいのね。」

「「「あぁ」」」

 3人が、声を揃えて答えた。

「じゃあ、あと一人ピックアップして行くから。まずは、家まで急ぎましょう。」
「おい、それって」
「お姉ちゃんを連れに行きます。」
「うぐっ」

 ハーバードお兄ちゃんは、お姉ちゃんが苦手なので、顔が引き攣っている。ともかく、お兄ちゃんを放置して、ベルベット様の戦闘方法などを確認しながら、家に帰った。

「ただいまー。おねーちゃん帰っている?」

 玄関で声を出すと、奥から

「ジェシカ~。お店で大声出さないの。どんな、馬車で帰ってくるの・・・。これって、帝室の家紋じゃない・・・。ハーバードお兄ちゃんか、出てきなさい。」
「げっ、」
「げっじゃない。何故、帝室の馬車で来ているのか説明しなさい。」
「お説教の前に、リバヤント草って在庫ある?」 「リバヤント草、そんなの帝都で殆ど需要ないから在庫なんてないんじゃない。」

 そう一度攻略本で確認したが、帝都で調べられる範囲で在庫は無かった。

「じゃ、採取の依頼があったか知ってる?」
「半月位前に一回あった位かな?」
「誰から?」
「多分どっかの騎士団で旗染めの為だっだはず。珍しいから覚えてだけど。」

 フランドル公爵家がらみの騎士団か。はじめはそう思った。

「ありがとう。では、お説教どうぞ、」

 馬車のキャビンから、お兄ちゃんを呼び出し、がみがみお説教をしたが、ある程度で、私がなだめ、迷宮へのアタックに参加してもらった。そうして、みんなで、迷宮の入口に向かった。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------


「おいおい、子供達を連れて迷宮探検か?」 
「隊長、流石に危ないんじゃないかい。」
「そうだな、規定上も通せないだろうな。」
「待ちたまえ、申し訳無いが子連れは通せないのだが。」

 入口の兵士は、私達を見て笑いながら言った。

「子供連れと言うか、私がリーダーだから、子供がお兄さんたちを連れているのですが、」
「そうかい。貴族のお嬢さんかわからないが、命を捨てたいのか?」
「アドバイスありがとうございます。それで、あなたのお名前は、」
「ふん。私か?私は帝国帝都警護軍冒険の大迷宮支部第3分隊長のレイモンド曹長だが。」
「そうですか、曹長。これを」

 と言って私は正騎士のナイトカードを見せた。

「ナイトカード・・・。少尉様・・・。」

 レイモンド曹長はビビって震えている。帝国軍では、階級が絶対で、曹長と、少尉では2階級違い。その中でも、曹長と、少尉の下の准尉はエリートと、一般兵を分ける絶対的な壁と言われており、一般兵からすると、雲の上の人達である。

「通っていいかな?」
「失礼しました。少尉殿。」

 入り口の兵士達が、敬礼をして私達を通してくれた。

「ご苦労」


-----------------------------------------------------------------------------------------------------


 私達は、第1階層に入った。第1階層は、迷宮っぽい、石畳のである。私は、攻略本の地図を見ながら、最短ルートを進んでいる。

「次、左曲がるわよ。先のスライムには、」

 と、ファイヤーアローの魔法を曲げて、倒していく。1階層は、雑魚しかいないので、瞬殺して、ドロップを拾って、階段に向かってひた走る。ベルベット様も、魔法陣等で加速させる事が出来る靴を履いているので、尋常じゃない速さで走っている。
 第1階層~第4階層まで、通常4時間かかると言われているが、1時間で駆け抜けた。

「次は第5階層、降りたら直ぐに門があり、その門の中に階層主がいる。通常、ゴブリンナイトと、ゴブリンアーチャーや、ゴブリンソルジャー等の分隊規模とゴブリンがいるばずだ。」
「そうね、」

 私は、マジックバックから、ある武器を取り出した。

「はい、ベルベット様。」
「これは?」
「量産型レールガンよ。使い捨てだけど、6発打てるから、とりあえず狙ってみて、当たりやすい様に、手ブレ補正とかつけたから。」
「これって高価では?」
「安心して、このミッションのコストは、私持ちだから。少しでもレベル上げをしておいて貰わないと、この後辛くなるから倒しておいてね。」
「はい、分かりましたわ。」
「あと、みんなこれ指につけて。」

 私は、指輪を取り出してみんなに渡した。

「婚約指輪?」

 アーサー様が、ふざけ半分で聞いてきたが、面倒くさくいので、全否定で、

「違うわよ。自動発動の弾除けの魔法陣を付与した指輪よ。矢でも、レールガンでも、弾いてくれるわ。」
「これがあれば無敵?」

 無敵なわけないじゃん。

「レールガンにはね、でも数発分しか保たないから、5個づつ配るね。」
「これって幾らで?」
「売れば億はいくかしら。」
「やっぱり。凄さはわかりました。」

 アーサー様が、急にリボンを取り出してきた。

「何これ。素敵なリボン。」
「いや、貰ってばかりだから。長い髪が邪魔っぽいから。」
「ありがとう。」

 アーサー様にしては気がきくじゃない。とりあえず、髪をしばり、気合いを入れた。

「では、入るわよ。」

 お兄ちゃんと、お姉ちゃんが先導して、扉を開けた。予想に反して、部屋に暗い影が落ちていた。

「あっ、ドラゴンだ。」

 アーサー様が腑抜けた声を出す。ドラゴン、そう、ドラゴンだ。分厚く黒光りした鱗に体を覆われ、20メートルはあろうかとする天井まで届く巨大な体をもつドラゴン。種類としては、下級ドラゴンだそうが、ドラゴンなんて、中階層にも出てこない超強力なモンスター、ここにいるなんて、人為的でなければ、史上最悪の不運としか思えない。それも6体。死を覚悟しつつ、身構えた瞬間。

 ドンドンドンドンドンドン

 隣から、爆音が聞こえ、ドラゴン達が脳天を撃ち抜かれ、大量の血を後ろに飛ばして、倒れていった。

「きゃっ、ゴブリンさん大きいから、焦って、打っちゃいました。手ブレ補正のお陰で当たって良かったです。」
「は?ゴブリンさん?」
「それにしても、凄く体がかるくなりました。何か?」

 流石に、ゴブリンと、ドラゴンの違いがわからないベルベット様に少し不安になったが、それ以上に深刻な事がある。なんと、攻略本を見ると、人為的なトラップと多くの死体が見つかった。ここを通る冒険者は実は少ない。多くの冒険者は、既に一回クリアし、スルー出来るからだ。私たちも、この先で別名ワープ石に魔力を流し登録して、入り口からそこまでワープ出来るようにするしね。死体は、多分初めて通る初心者達だろう。ドラゴンにやられ、ボロ雑巾の様になっている。数は30程度、その位なら、日常的に死者が出るので、調査に入らなかっただろう。もしや、私達を狙った人為的なトラップ?とも思うが、多分、この事件の犯人が仕掛けたんだろう。このトラップは、仕掛けられた魔法陣が分かれば、解除できる。だが魔法陣が分からないと解除出来ない面倒なものだ。しかも、なにが召喚されるかわからないと言うリスキーなものだ。犯人達は、リーディング様がなくなったのを確認してから、解除させるんだろうが、本当にヤバイかもしれない。攻略本を見つつ、より慎重に進む事にした。
 第6階層からは、石畳でなく、洞窟風になる。歩き難くなり、敵も強くなってくるが、やっぱり走って進んだ。第7階層、第8階層と順調に進んだのち、攻略本の地図に赤い点の塊を見つけた。その近くに人が3人いて逃げている。追いかけている点は約200。

「モンスタートレイン見つけました。もうすぐ目の前を通過します。どうしますか?」

 モンスタートレイン、それは、モンスターが数珠つなぎになり、冒険者を追い立てるトラップ。逃げても逃げても追いかけていき、周りの冒険者、魔物を巻き込んでいく。200という数は相当大きなモンスタートレイで、結構な時間をかけて逃げているのだろ。

「は?どうやって見つけたの?」
「皇族として、助けてやらんとと思うが。」

 ベルベット様の疑問を無視して、アーサー様の意見を聞くことにした。

「じゃ、助けますか?お兄ちゃん。」

 私がお兄ちゃんをみると。

「了解。」
「お姉ちゃん。」

 私がお姉ちゃんをみると。

「わかったわ。」

 そう答えてくれた。基本二人ともいい人だ。3人で目を合わすと、前に駆け出した。目の前にT字路を右から左に3人の人が駆け抜け、後ろを様々なゴブリン達が駆けていく。ゴブリンの集団が真ん中あたりで、お兄ちゃんは、ハリケーンという竜巻を起こす魔法。お姉ちゃんは、フレアの魔法。私は、小麦粉の袋を投げつけた。
 いわゆる、粉塵爆発を起こして、半分以上倒すした。そのあと、私とお兄ちゃん、お姉ちゃんの3人は、そのモンスタートレインに、切り込んでいった。このレベルの敵には、剣が豆腐を切る包丁の様に、ほぼ無抵抗に切り裂いていく。剣で効率的に首をはねていく。私はトレインの前方方向、お兄ちゃん、お姉ちゃんは後方方向に次々に倒していった。その結果、5分としないうちに、全滅させた。

 逃げていたお姉さんたち3人組は、疲れて座り込んでいた。私は、体力回復ポーションを3本取り出し、彼女達に差し出した。

「あの。ありがとうございました。」

 品のよさそうな剣士風の茶髪短髪のお姉さんが、まず私の手を取り、感謝をしてきた。

「すみませんでした。」

 その隣で、少し可愛い系の魔法使い?魔女っ娘風の童顔お姉さんが、ペコリと頭を下げている。

「どうもありがとうございました。私は、北部の貴族で、」

 緑髪の魅惑的な顔で、魔法剣士風のリーダー格のお姉さんが、感謝するのを慣れてないような感じで、お礼を言い始めたが、話が長そうで、時間がないので、

「時間が無いのでごめんなさい。」

と言って、去って行った。

「必ず、いつかこの恩をお返ししますから~」

 との叫び声が響いている。私達はそのまま、走り続け第10階層の門にたどり着いた。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

「また、あんなドラゴンいたらどうしよう。」

 私は、警戒し、量産型レールガンを2丁取り出し、お兄ちゃんと、お姉ちゃんにも持たせ、両皇子に扉を開けっぱなしにしてもらい中に入った。

「えっ」

 そこにいたのは、部屋を詰めつくす程のオークだった。オークは、ゴブリンより強く、オーガより弱い定番モンスターだが、11階層以降に出てくる。しかも、ゆうに1000体を超える数だ、その目線が全て私に向いた・・・・。計2000の目が、暗闇の中赤く光り、すべて私を向いている。正にホラーである。

「まじ?」

 私は思わず、恐慌状態になり、持っているレールガンを連射し、予備を含めて使いきるまで、どんどん出して、どんどん打った

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

 計16丁、96発のレールガンで、レールガンは何体も貫通し、7割以上を撃ち殺した。一瞬のうちオークの血が舞い、部屋が血だらけになったが、どんどんドロップと共に、死体が消えていくという不思議な光景が広がっていた。

「大丈夫よ、落ち着いて。」

 お姉ちゃんが後ろから抱きしめてくれて、私はようやく冷静さを取り戻した。同じタイミングでお兄ちゃんが、オークの中に飛び込んでいった。2人の皇子も同様だ。アーサー皇子は、懸命に懸命に1体1体倒していくが、2人は飛び跳ねる様にどんどん首を落としていく。落ち着いた私も、その中に参加していった。レールガンの魔石を入れ替え、故障を瞬時に直して、オークキング、オークジェネラル等上位種中心に撃ち殺していった。10分に満たない戦闘で、全滅が終了し、すべてのドロップアイテムも回収した。ドラゴンや移動中の物などを含めると、莫大な財産になるドロップアイテムだが、真面目に計算すれば赤字になる(実際にはコストは殆どかかっていないが)。

 階段を降りるとそこは、森だった。山や谷はそこにはあった。

「なにこれ。」

 ゲームとして見ていても、実際に見るのではやっぱり違った。圧巻な景色が広がり、ワインバーンや、ロック鳥等が飛び交っている。そんな中だが、私は攻略本を頼りに駆け抜けた。レアアイテムがある宝箱や、レアアイテムをドロップするモンスター等を無視して、第15階層の扉まで駆け抜けた。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

「今度は、どんなトラップだろう。」

 私は、警戒し、量産型レールガンを2丁取り出し、お兄ちゃんと、お姉ちゃんにも持たせ、両皇子に扉を開けっぱなしにしてもらい中に入った。

「はっ」

 そこには、何も居なかった。次の階層に続く扉は閉まっており、進めないが、何も居なかった。

「どういうこと?」

 私は、冷静に、攻略本を確かめると、そこには、12の赤い点が映っていた。少しづつ私達に近づいてくる。

「・・そういうこと。」

 私は、赤い点の方向に、レールガンを打ち込んだ。

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

 すると、レールガンが通り抜けた空中ところから、赤い血が12本噴き出してきた。その地に彩られて、モンスターの輪郭が見えてきた。第5階層にいたドラゴンと同型のモンスターで姿が見えないインジブルドラゴンである。インジブルドラゴンは、地上からは絶滅した伝説上のモンスターで、迷宮に偶に出没し、皆殺しにしていく。ドロップアイテムも、超レアなものである。

「よくわかったな、ジェシカ」
「職人の勘ってやつですよ。」
「どんな勘なんだ。」

 笑いながら、ドロップアイテムをアイテムバックに突っ込んでいく私達に、3人は苦笑いをしていた。

 次は、草原。だだっ広い草原に丘がある。その中を直線的に次の階層への階段に向かう。約3キロを直線的に走り、洞窟に入ると、階段があった。階段の下は、ようやく第17階層だ。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------

 草や花が咲き乱れる、別名無限の草原についた。本当にだだっ広い草原に世界中の草花が群生している。この中からリバヤント草の様な特徴が無い草を探すのは、砂漠で1粒の砂金を探すようなものである。が!私には、攻略本がある。すすいーっと検索で場所を見つけた、7キロ先の岡の下だ。私達は、走って向かった。向かう途中、食人花の群生地を5か所通ったが、私の炎の魔法で焼き殺した。多分、魔力が莫大に上がったんだろう。魔力はレベル1UPで素の状態の10%増える。多分わけのわからないレベルに上がっているんだろうなと思いつつ走り抜けた。

 目の前の群生地は荒らされていた、辛うじて数本残っていたが、絶対的に足りない。

「あーん。せっかく来たのに。」
「誰だ・・・。トラップといい、最近やったものだろうが。」
「もう無理なの?」
ベルベット様や、二人の皇子は落胆した。

「数本あれば何とかなるわよ・・・。多分。・・・・特殊な取り方するから、みんな警戒して周りのモンスター倒していて。」

 お姉ちゃんは、何か感じ取ってくれたか

「わかったわ。ベルベット様行きますわよ」

 と言って、ベルベット様を引き連れて行ってくれた。

「俺たちも行くか。」

 お兄ちゃんも、二人の皇子を連れて行ってくれた。

「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん。」

 そう言うと。私は準備を始めた。

 準備を終えて、大地にグリーン様神聖魔法植物促成を唱えると、リバヤント草が花を咲かせ、種を付け、枯れ、新たな芽を出し、花を咲かせ、種を付け、枯れ、のサイクルを、10秒に1回繰り返していった。これこそ神のなせる御業である。急速に広がっている群生地は。土が見えている銀群生地を越えて、辺り一面に広がっていった。

「やばい、増え過ぎだ。」

 私が、魔法を止めると。成長は遅くなり、草になったタイミングで止まった。

「続けて。収穫だ!」

 そう言って、私は、群生地の外のリバヤント草を収穫する魔法を唱えた。魔法でとれば、通常の100倍以上のスピードで丁寧に根からとれる。魔力があふれたせいか、リバヤント草に魔力がこもっているが、薬に体力回復のプラスの効果が出るだけで、悪影響はない筈だ。私は、取り終えると、お姉ちゃんとベルベット様の所に向かった。
 そこでは、ウォーウルフたちと戦っていた。ベルベット様はレベルアップのせいか、6歳児とは思えない動きで、お姉ちゃんに伍する程の動きをしていた。防具がほぼ無敵で、あてれば切れる状況だが、戦況は少し優勢と言う感じで、10体の相手に、1体倒しただけだった。私は、剣を抜き、切りかかった。先ほどから、神聖魔法を全力で打っていた流れで、全力で切りかかってしまったのだが、早くなり過ぎて、タイミングが上手く取れなかった。

「おっとっとっと」

 スピードを止められず、戦場を抜けてしまったのである。仕切り直しをして、切り込んでいく。ウォーウルフはスピード重視のモンスターである。私をスピードで翻弄しようとするが、スピードで圧倒し、私が足を切り裂いて、お姉ちゃんに首を切り裂いてとどめを取って貰った。その結果1分もせずに全滅させることが出来た。

「お姉ちゃん。ベルベット様大丈夫ですか。」
「大丈夫です。」
「大丈夫よ。あなたは。」

「収穫を終えました。どうぞこれを」

 そう言って、体力回復ポーションを取り出した。途中、3人組のお姉さん達に渡したのと違い、美味しい味のポーションだ。

「ありがとう。」
「ありがとうございます。」

 そうやって、お姉ちゃん達がポーションを飲んでいるときに、お兄ちゃんを探すと、モンスターハウスに陥ってた。

「やばい。」
「どうしたの。」
「お兄ちゃん達がやばいの、あっちの方向、先に行くから、後から来て」

 そう言って、私は走っていった、300mほど先の窪地にお兄ちゃん達はいた。真ん中の明らかに怪しい宝箱を調べに行ったんだろう、開く前にモンスターハウスにあんる、意地の悪いトラップの様だ、モンスターは、ウォーウルフに、ウォーライアン、ウォージェガー、ウォータイガー等、ウォー系で顔だけ違うの??って感じの100体だ、基本的に優勢だが、流石にアーサー様にはしんどいらしく、アーサー様を守りながらの戦いに少し手こずっている様子だ。

 私は、魔力が上がったのが楽しくなったので、アイスニードルという、氷の槍を投げつける魔法を並行発動・連発し、氷の槍の雨を降らせた。その槍でウォー系が次々と撃ち抜かれ、ものの1分で殲滅した。

「ありがとう。助かったよ。」
「アーサー皇子。情けなーい。」
「えぇー」

 私が、ドロップアイテムとりながら少し弄ってみると、アーサー様は泣きそうな顔をした。リーゼンハルト様は、アーサー様の頭をなでながら

「よーし、よーし。お前は6歳にしては凄いよ~。大丈夫だよ~。」

 と慰めた。いたたまれなくなった私は。

「かえるよ~」

 と言うと、沈んでいたアーサー様も涙を拭いてついてきて、第16階層のワープ石に走り出した。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

 第16階層から地上に戻った、出たら早朝だった。1日もかからずに戻れたことになる。最良の結果だろう。
 なんとなくステータスカードをみると、E級冒険者の称号の記号がついており、レベル273まで上がっていた。
 騎士である私がリーダーなので、無税でドロップ品から税金は取られなかった。武具を回収した後、お兄ちゃんとお姉ちゃんは、冒険者ギルドに向かい、3階層の階層主の事について報告に向かい、残りに4人は、馬車でフランドル公爵家中屋敷に急ぎ戻った。馬車の中では4人はぐっすり寝ていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

前世では地味なOLだった私が、異世界転生したので今度こそ恋愛して結婚して見せます

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 異世界の伯爵令嬢として生まれたフィオーレ・アメリア。美しい容姿と温かな家族に恵まれ、何不自由なく過ごしていた。しかし、十歳のある日——彼女は突然、前世の記憶を取り戻す。 「私……交通事故で亡くなったはず……。」 前世では地味な容姿と控えめな性格のため、人付き合いを苦手とし、恋愛を経験することなく人生を終えた。しかし、今世では違う。ここでは幸せな人生を歩むために、彼女は決意する。 幼い頃から勉学に励み、運動にも力を入れるフィオーレ。社交界デビューを目指し、誰からも称賛される女性へと成長していく。そして迎えた初めての舞踏会——。 煌めく広間の中、彼女は一人の男に視線を奪われる。 漆黒の短髪、深いネイビーの瞳。凛とした立ち姿と鋭い眼差し——騎士団長、レオナード・ヴェルシウス。 その瞬間、世界が静止したように思えた。 彼の瞳もまた、フィオーレを捉えて離さない。 まるで、お互いが何かに気付いたかのように——。 これは運命なのか、それとも偶然か。 孤独な前世とは違い、今度こそ本当の愛を掴むことができるのか。 騎士団長との恋、社交界での人間関係、そして自ら切り開く未来——フィオーレの物語が、今始まる。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

処理中です...