暁のミッドウェー

三笠 陣

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78 追撃の星条旗

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 一方の米艦隊は、単縦陣にて日本艦隊の追撃を行っていた。
 艦隊の前衛は、アレキサンダー・R・アーリー大佐率いる第一駆逐戦隊(フェルプス、ウォーデン、モナハン、エイルウィン、モーリー)が務め、それに続くようにウィリアム・W・スミス少将率いる巡洋艦部隊、その後方にウィリス・A・リー少将直率の戦艦ワシントン、ノースカロライナが続き、後衛としてギルバート・O・フーバー大佐の第二駆逐戦隊(アンダーソン、クヴィン、モリス、ラッセル)が配置されていた。

「前衛のアーリー大佐より、距離一万七五〇〇ヤード(約一万六〇〇〇メートル)にて敵艦隊と思しき反応を探知したとのこと!」

 ワシントン艦橋にその報告がもたらされたのは、日本側が米艦隊を視認するよりも一分から二分ほど前のことであった。

「敵艦隊、本艦隊に接近している模様!」

「……ジャップは、こちらを迎え撃つつもりのようだな」

 報告を聞いて、リーはそう判断した。
 会敵時刻は、想定よりも一時間以上早かった。
 ジャップは日没時までこちらの上空に索敵機を貼り付けて自分たちの動向を把握しようとしていた。恐らくはそこから、こちらがジャップ艦隊の追撃を目論んでいると読んだのだろう。
 そうでなければ、ワシントン以下の艦艇は逃げるジャップ艦隊を追うという展開になっていたはずだ。
 そもそも、空母戦の後に水上艦艇で敵残存艦艇を追撃するという戦術をとったのは、ジャップの方が先であった。
 インド洋での追撃戦では、ジャップ艦艇の砲撃によって空母ハーミスが沈められている。
 だからこそ、ジャップはその二の舞になるまいとあえてこちらを迎え撃つ態勢を整えていたのだろう。

「良かろう、望むところだ」

 砲術一筋で生きていたリーにとって、この夜戦はまさしくジャップと砲撃戦で雌雄を決するまたとない機会であった。
 自軍の空母五隻が沈められ手放しで喜ぶことは出来なかったが、それでも静かな興奮と闘志が体にみなぎってくるのをリーは感じていた。
 ジャップの戦艦は、巡洋戦艦改装のコンゴウ・クラスが四隻。
 戦艦の数だけで言えばこちらが劣勢であるが、ワシントンとノースカロライナは十六インチ砲を搭載した最新鋭戦艦である。
 ノースカロライナは主砲二門が使用不能になっているものの、第一次世界大戦期の旧式艦に遅れを取るとは思っていなかった。コンゴウ・クラスの何隻かも、すでに空襲によって損傷していると判断されていたからである。
 さらにこちらにはレーダーがあるのだ。
 合衆国海軍は緒戦の東南アジア戦線で何度か夜戦を経験しているが、バリクパパン沖海戦など一部の例外を除き、ジャップ艦隊に敗北している。
 しかし今回は合衆国海軍にとっては未だ慣れぬ夜戦といえど、十分な勝算はあるとリーは考えていた。
 敵艦隊はこちらに向かって進んでいる。このまま反航戦に持ち込んでジャップ艦隊の脇をすり抜け、損傷空母の撃沈に向かう。
 第一駆逐戦隊の敵艦隊探知からおよそ三分。艦隊の先頭を進む駆逐艦フェルプスが、敵艦隊との距離が一万五〇〇〇ヤード(約一万三七〇〇メートル)を切ったことを報告してきた。
 未だレーダーによる探知のみで視認は出来ていなかったが、リー少将はここで先制すべきであると判断した。

「アーリー大佐およびスミス少将に射撃許可を出せ。まずは探知したジャップ艦を排除する。本艦およびノースカロライナは、星弾射撃による援護を行え」

「アイ・サー!」

 リーの命令は、TBSによってただちに駆逐艦フェルプス座乗のアーリー大佐と重巡アストリア座乗のスミス少将に伝達される。
 二一四五時(日本時間:一八四五時)、米艦隊はレーダーで探知した艦影に対して、一斉に射撃を開始した。
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