最後のメッセージ

寄賀あける

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 制服の一団が笑いさざめきながら移動している。片側二車線の道路の向こうだ。その中にナツミの姿を見つけて心が躍る。こちらに背を向けているナツミがシュウに気が付くことはなさそうだ。次の信号、それに間にあえば追いつくかもしれない――一度は早まったシュウの足が急に緩やかになる。

 しきりにナツミに話し掛けていた男がナツミの肩に手を置いた。それをナツミがそっけなく振り払う。周囲が冷やかしたのだろう、一瞬シュウの耳に届くほど笑い声が大きくなった。梅雨の合間に差し込む日の光が、白い夏服に輝いている――シュウはナツミを追うこともできず、その場に佇んでしまった。

 ナツミに追いついたところでどうしようと言うのだろう? 果たしてナツミの友人たちはシュウが声を持っていないことを知っているのだろうか? 気まずい空気が流れることは目に見えている。

 ナツミは気にしないと言った。だけどそんなナツミを周囲はどう思うだろう。やめたほうがいいとナツミに助言する人も出てくるかもしれない。

 ナツミたちを避けるように来た道をとって返すと、シュウを呼ぶ声が微かに聞こえた。ナツミの声だ。信号待ちか何かのときに、偶然こちらを見たのだろう。シュウは気がつかないふりをしてそのまま立ち去った。



***

【今日、M町の交差点で見かけたよ。声をかけたけど聞こえなかったみたいだね】

 その日、ナツミから届いたメッセージは正直言って辛かった。

【そう? 気がつかなかったよ……考え事してたのかな。ごめんね】

 意識して嘘をつくのは初めてだった。隠すために言わないのと、事実と違うことを言うのじゃ重さが違う――僕にとって楽しいはずのキミとのメッセージの遣り取りが、その日は気が重かった。

【考え事? なんじゃ、なんじゃ、悩みかな? よかったらこのナツミさんに言ってみなされ。案外名アドバイザーかもよ?】

【う~~ん……名じゃなくって迷かもしれん。遠慮しとく】

 キミに言えるはずなどなかった。僕の悩みが、コンプレックスからきたひがみだってことは僕自身が一番よく知っていた。

 そんな惨めな自分をどうして見せられる?

 そう、コンプレックス……キミの肩に手をおいた誰かはキミに何か言っていた。それにキミは何か答えていた。そこに交わされた言葉が、僕がヤキモチを妬くようなことじゃないとしても、少なくとも僕がそいつに代われる事はない。

 ねぇ、ナツミ、キミは本当に憧れなかったのかい? 耳元で囁かれる甘い愛の言葉、決して僕にはあげることのできないそんなトキメキを、キミは少しも望まなかったのかい?

 そして僕は――僕はキミが羨ましかった。いつでも明るい光に囲まれているようなキミ、そんなキミがなぜ僕の恋人なんだろう? 僕には……僕には恋を語ることもできないのに。

 夏服のキミは、僕には眩し過ぎたんだよ。
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