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第44話 完全な決別
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ローゼンベルク侯爵夫妻が、ほうほうの体で城を去っていった後、応接室にはアリアとレオルドだけが残された。先ほどの激しいやり取りの余韻が、まだ部屋の空気にはりついているようだった。
アリアは、しばらくの間、呆然と立ち尽くしていた。実の両親に対して、あれほどはっきりと拒絶の言葉を口にしたのは、生まれて初めてのことだった。心のどこかで、罪悪感のようなものも感じていたが、それ以上に、長年の呪縛から解き放たれたような、清々しい気持ちの方が強かった。
(これで、本当に終わったんだわ……)
家族との繋がり。それは、アリアにとって、温かいものではなく、むしろ自分を縛り付け、傷つけるものでしかなかった。その鎖を、今、自分の手で断ち切ったのだ。もう、彼らの顔色を窺い、言いなりになる必要はない。
「……大丈夫か、アリア」
不意に、レオルドが心配そうな声で尋ねた。彼の青い瞳には、アリアを気遣う色が浮かんでいる。
「はい……大丈夫です。少し、疲れましたが……でも、すっきりしました」
アリアは、彼に向き直り、正直な気持ちを伝えた。そして、深々と頭を下げた。
「レオルド様、ありがとうございました。そばにいてくださって、そして、守ってくださって……本当に、心強かったです」
彼がいなければ、きっとここまで毅然とした態度は取れなかっただろう。彼の存在が、アリアに勇気を与えてくれたのだ。
「礼には及ばん。当然のことをしたまでだ」
レオルドは、ぶっきらぼうに答えながらも、その表情はどこか誇らしげに見えた。アリアが自分の力で過去と決別したことを、彼もまた喜んでいるのかもしれない。
「それにしても……君の家族は、少々……度が過ぎるな」
レオルドは、苦々しい顔で付け加えた。アリアがあのような両親の元で育ってきたことを思うと、彼の中で新たな怒りが込み上げてくるのを感じていた。
「……ええ。でも、もう関係ありません。私は、ローゼンベルク家の人間としてではなく、アリアとして、ここで生きていきますから」
アリアは、きっぱりと言った。その顔には、迷いはなかった。瞳には、未来を見据える強い光が宿っている。
その姿を見て、レオルドは改めてアリアという女性の強さと、そしてその魅力に気づかされていた。彼女は、逆境の中で、しなやかに、そして力強く成長していたのだ。
(私が……守らねば)
その思いは、もはや義務感や同情ではなかった。彼女という存在そのものを、愛おしみ、守りたいという、純粋な願いだった。
「……ああ。君の居場所は、ここだ。私が保証する」
レオルドは、アリアの言葉に応えるように、力強く言った。それは、彼からの、改めての誓いの言葉でもあった。
この出来事を通じて、アリアは過去のしがらみを完全に断ち切り、自立した一人の人間としてのアイデンティティを確立した。そして、レオルドとの絆もまた、より一層深く、揺るぎないものとなった。
二人は、互いを支え、守り合う存在として、これから訪れるであろう更なる試練に立ち向かっていく覚悟を、静かに固めていた。家族との決別は、アリアにとって辛い経験ではあったが、同時に、新しい人生を力強く歩み出すための、重要な一歩となったのだった。
しかし、彼らが手に入れた平穏は、長くは続かなかった。王都では、アリアへの嫉妬と憎悪に燃える聖女が、邪悪な企みを実行に移そうとしていたのだ。新たな嵐が、すぐそこまで迫っていた。
アリアは、しばらくの間、呆然と立ち尽くしていた。実の両親に対して、あれほどはっきりと拒絶の言葉を口にしたのは、生まれて初めてのことだった。心のどこかで、罪悪感のようなものも感じていたが、それ以上に、長年の呪縛から解き放たれたような、清々しい気持ちの方が強かった。
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彼がいなければ、きっとここまで毅然とした態度は取れなかっただろう。彼の存在が、アリアに勇気を与えてくれたのだ。
「礼には及ばん。当然のことをしたまでだ」
レオルドは、ぶっきらぼうに答えながらも、その表情はどこか誇らしげに見えた。アリアが自分の力で過去と決別したことを、彼もまた喜んでいるのかもしれない。
「それにしても……君の家族は、少々……度が過ぎるな」
レオルドは、苦々しい顔で付け加えた。アリアがあのような両親の元で育ってきたことを思うと、彼の中で新たな怒りが込み上げてくるのを感じていた。
「……ええ。でも、もう関係ありません。私は、ローゼンベルク家の人間としてではなく、アリアとして、ここで生きていきますから」
アリアは、きっぱりと言った。その顔には、迷いはなかった。瞳には、未来を見据える強い光が宿っている。
その姿を見て、レオルドは改めてアリアという女性の強さと、そしてその魅力に気づかされていた。彼女は、逆境の中で、しなやかに、そして力強く成長していたのだ。
(私が……守らねば)
その思いは、もはや義務感や同情ではなかった。彼女という存在そのものを、愛おしみ、守りたいという、純粋な願いだった。
「……ああ。君の居場所は、ここだ。私が保証する」
レオルドは、アリアの言葉に応えるように、力強く言った。それは、彼からの、改めての誓いの言葉でもあった。
この出来事を通じて、アリアは過去のしがらみを完全に断ち切り、自立した一人の人間としてのアイデンティティを確立した。そして、レオルドとの絆もまた、より一層深く、揺るぎないものとなった。
二人は、互いを支え、守り合う存在として、これから訪れるであろう更なる試練に立ち向かっていく覚悟を、静かに固めていた。家族との決別は、アリアにとって辛い経験ではあったが、同時に、新しい人生を力強く歩み出すための、重要な一歩となったのだった。
しかし、彼らが手に入れた平穏は、長くは続かなかった。王都では、アリアへの嫉妬と憎悪に燃える聖女が、邪悪な企みを実行に移そうとしていたのだ。新たな嵐が、すぐそこまで迫っていた。
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