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第10話 隣国の風景
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数日間の旅を経て、私たちはついにエスタード王国とガルディア王国の国境に到達した。厳重な警備体制が敷かれた国境検問所では、ガルディア側の役人が、私たちの身分証明書と通行許可証を確認した。その手続きは、エスタード側の緩慢なそれに比べて、遥かに厳格で、しかし無駄がなく、効率的に見えた。役人たちの態度も、横柄さはなく、ただ淡々と職務をこなしているという印象だ。
(これが、ガルディア……)
検問所を通過し、ガルディア王国の領土へと足を踏み入れる。馬車が走り出すと、すぐに私はエスタードとの違いに気づき始めた。
まず、街道が驚くほど良く整備されている。石畳は平坦で、馬車の揺れが格段に少なくなった。道端には定期的に距離を示す標識が立てられ、街道沿いの木々も手入れが行き届いている様子が見て取れた。
すれ違う人々も、どことなく雰囲気が違う。エスタードの農民たちが見せるような、どこか投げやりな怠惰さはなく、皆一様にきびきびと動き、その服装も質素ながら清潔感があった。彼らの顔つきには、厳しい生活の中にも、どこか誇りのようなものが感じられる気がした。
(規律正しい……そして、勤勉そうな人々……)
これが、ライオネル公爵が治める領地(ガルディア王国全体が彼の強い影響下にあると聞く)の姿なのだろうか。冷徹と噂される公爵だが、少なくとも、その統治は行き届いているのかもしれない。
さらに数日走り続け、私たちはついにガルディア王国の首都、ヴァルテンシュタットへと到着した。城壁に囲まれた巨大な都市の威容に、私は思わず息をのんだ。
城門をくぐり、市街地へと入っていく。そこには、私が想像していた以上に壮大で、活気に満ちた光景が広がっていた。
石造りの建物はどれも重厚で、歴史を感じさせるが、同時に清潔に保たれている。道行く人々の服装も、エスタードの貴族が見せるような過剰な装飾はないものの、質が良く、洗練されたデザインのものが多い。街には活気があり、市場には様々な品物が溢れ、人々は忙しそうに、しかしどこか楽しげに行き交っている。
(すごい……なんて、整然としていて、力強い街なのかしら……)
エスタードの王都も華やかではあったけれど、それは一部の貴族のためだけの、どこか上辺だけの華やかさだったように思う。けれど、このヴァルテンシュタットの活気は、もっと地に足のついた、国全体の力強さから生まれているような気がした。
街の中心に近づくにつれて、ひときわ高くそびえ立つ壮麗な城が見えてきた。あれが、ガルディア王家の居城だろう。そして、その城に匹敵するほどの規模と威厳を持つ、黒い石造りの巨大な建物が、少し離れた丘の上に建っているのが見えた。
「あれが……ヴァルテンベルク公爵邸でございます」
供の者が、畏敬の念を込めた声で教えてくれた。
(あれが……ライオネル公爵のお屋敷……)
遠目にも分かるその威容は、まるで街全体を見下ろす黒い要塞のようだ。あの場所に、これから私は住むことになるのだ。そして、あの屋敷の主である、ライオネル公爵と対面するのだ。
期待と不安が、再び私の胸の中で渦を巻いた。この活気ある美しい街並みを作り上げた人物。そして、冷徹と噂される謎多き公爵。彼は一体、どんな人なのだろうか。
馬車は、その黒い公爵邸へと続く坂道を、ゆっくりと上り始めた。私の心臓は、緊張で早鐘のように打ち始めている。
いよいよだ。私の新しい人生が、この場所で、始まろうとしている。良い方向へ向かうのか、それとも悪い方向へ転がるのか、それはまだ分からない。けれど、もう引き返すことはできないのだ。
私は、ぎゅっと拳を握りしめ、これから待ち受けるであろう運命に、覚悟を決めて向き合おうとしていた。
(これが、ガルディア……)
検問所を通過し、ガルディア王国の領土へと足を踏み入れる。馬車が走り出すと、すぐに私はエスタードとの違いに気づき始めた。
まず、街道が驚くほど良く整備されている。石畳は平坦で、馬車の揺れが格段に少なくなった。道端には定期的に距離を示す標識が立てられ、街道沿いの木々も手入れが行き届いている様子が見て取れた。
すれ違う人々も、どことなく雰囲気が違う。エスタードの農民たちが見せるような、どこか投げやりな怠惰さはなく、皆一様にきびきびと動き、その服装も質素ながら清潔感があった。彼らの顔つきには、厳しい生活の中にも、どこか誇りのようなものが感じられる気がした。
(規律正しい……そして、勤勉そうな人々……)
これが、ライオネル公爵が治める領地(ガルディア王国全体が彼の強い影響下にあると聞く)の姿なのだろうか。冷徹と噂される公爵だが、少なくとも、その統治は行き届いているのかもしれない。
さらに数日走り続け、私たちはついにガルディア王国の首都、ヴァルテンシュタットへと到着した。城壁に囲まれた巨大な都市の威容に、私は思わず息をのんだ。
城門をくぐり、市街地へと入っていく。そこには、私が想像していた以上に壮大で、活気に満ちた光景が広がっていた。
石造りの建物はどれも重厚で、歴史を感じさせるが、同時に清潔に保たれている。道行く人々の服装も、エスタードの貴族が見せるような過剰な装飾はないものの、質が良く、洗練されたデザインのものが多い。街には活気があり、市場には様々な品物が溢れ、人々は忙しそうに、しかしどこか楽しげに行き交っている。
(すごい……なんて、整然としていて、力強い街なのかしら……)
エスタードの王都も華やかではあったけれど、それは一部の貴族のためだけの、どこか上辺だけの華やかさだったように思う。けれど、このヴァルテンシュタットの活気は、もっと地に足のついた、国全体の力強さから生まれているような気がした。
街の中心に近づくにつれて、ひときわ高くそびえ立つ壮麗な城が見えてきた。あれが、ガルディア王家の居城だろう。そして、その城に匹敵するほどの規模と威厳を持つ、黒い石造りの巨大な建物が、少し離れた丘の上に建っているのが見えた。
「あれが……ヴァルテンベルク公爵邸でございます」
供の者が、畏敬の念を込めた声で教えてくれた。
(あれが……ライオネル公爵のお屋敷……)
遠目にも分かるその威容は、まるで街全体を見下ろす黒い要塞のようだ。あの場所に、これから私は住むことになるのだ。そして、あの屋敷の主である、ライオネル公爵と対面するのだ。
期待と不安が、再び私の胸の中で渦を巻いた。この活気ある美しい街並みを作り上げた人物。そして、冷徹と噂される謎多き公爵。彼は一体、どんな人なのだろうか。
馬車は、その黒い公爵邸へと続く坂道を、ゆっくりと上り始めた。私の心臓は、緊張で早鐘のように打ち始めている。
いよいよだ。私の新しい人生が、この場所で、始まろうとしている。良い方向へ向かうのか、それとも悪い方向へ転がるのか、それはまだ分からない。けれど、もう引き返すことはできないのだ。
私は、ぎゅっと拳を握りしめ、これから待ち受けるであろう運命に、覚悟を決めて向き合おうとしていた。
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