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第34話 王子の後悔、深化
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ベルンシュタイン侯爵率いるエスタードの使節団は、何の成果も得られないまま、失意のうちに帰国の途についた。そして、彼らが持ち帰った報告は、エスタード王国の第一王子レオンハルトを、さらなる焦燥と後悔の淵へと突き落とすことになる。
「……なんだと? アリアナが、あのライオネル公爵の隣で、ガルディアの代表として交渉の場に出ていたというのか!?」
父である国王陛下への報告の席で、使節団からの言葉を聞いたレオンハルトは、信じられないといった様子で叫んだ。ベルンシュタイン侯爵は、苦々しい表情で頷く。
「はい、殿下。アリアナ嬢は……いえ、ベルンシュタイン嬢は、見違えるように堂々とされておりました。その発言も的確で、ガルディア側の主張を理路整然と代弁し、我々の要求をことごとく退けてきた次第でございます。正直、あの者が、かつて殿下の婚約者であったとは、にわかには信じ難いほどで……」
その言葉は、レオンハルトにとって、これ以上ない屈辱だった。自分が「地味で華がない」と切り捨て、厄介払いしたはずの女が、今や隣国で「賢女」と称えられ、あまつさえ自分たちの前に立ちはだかっている。
ゲルラッハ伯爵も、青い顔で付け加えた。
「そ、その通りでございます、殿下。彼女の知識、分析力、そして何よりもあのライオネル公爵からの信頼の厚さは、驚くべきものでした。もはや、我々が知るかつての彼女ではございません……」
使節団の者たちが語るアリアナの姿は、レオンハルトの記憶の中にある、いつも俯きがちで、自分の意見もろくに言えなかった女とは、全く結びつかなかった。
(馬鹿な……あのアリアナが……? 私が、あれほどまでに無能だと断じた女が……?)
だが、複数の人間が口を揃えて言うのだ。それが、紛れもない現実なのだろう。
彼は、自分がどれほど大きな過ちを犯したのかを、今更ながら骨身にしみて理解し始めていた。アリアナが陰でどれほど自分のために尽くしてくれていたのか。彼女の提言が、どれほど的確で、国の役に立つものだったのか。そして何よりも、彼女がどれほど誠実で、思慮深い女性だったのか。
その全てを、自分は気づこうともせず、ただ表面的な華やかさだけを求めて、彼女を傷つけ、手放してしまったのだ。
(地味な花……? とんでもない。彼女は、磨けば光るどころか、すでに完成された宝石だったのだ。それを、私は……私は、自ら溝に投げ捨ててしまったというのか……!)
激しい後悔が、まるで毒のようにレオンハルトの心を蝕んでいく。アリアナを失ったことで、国政は混乱し、民の不満は高まり、近隣諸国からの信用も失墜した。そして今、そのアリアナ自身が、敵国の強力な駒として、自分たちの前に立ちはだかっている。全ては、自分の愚かさが招いた結果だった。
ガルディアのライオネル公爵は、アリアナの真の価値を見抜き、彼女を正当に評価し、そして今や深く愛しているとさえ噂されている。それに比べて、自分は……。
(なぜ、気づかなかったのだ……! なぜ、もっと彼女を大切にしなかったのだ……!)
だが、どれだけ後悔しても、もう遅い。アリアナは、もう自分の手の届かない場所へ行ってしまった。それどころか、自分にとって脅威となり得る存在にまでなってしまったのだ。
焦燥感、屈辱感、そしてアリアナへの歪んだ執着。それらが、レオンハルトの中で黒い炎のように燃え上がり、彼の理性を焼き尽くそうとしていた。
「……アリアナは……アリアナは、私のものだったはずだ……!」
彼は、誰に言うともなく、そう呟いた。その瞳には、もはや正気とは思えない、狂的な光が宿り始めていた。彼はまだ、自分の過ちから何も学んではいなかった。ただ、失ったものへの執着だけが、彼をさらなる破滅へと駆り立てていく。
アリアナの価値を本気で再認識したレオンハルト王子。しかし、その気づきは、あまりにも遅すぎ、そしてあまりにも歪んだ形で、彼の心を支配しようとしていたのだった。
「……なんだと? アリアナが、あのライオネル公爵の隣で、ガルディアの代表として交渉の場に出ていたというのか!?」
父である国王陛下への報告の席で、使節団からの言葉を聞いたレオンハルトは、信じられないといった様子で叫んだ。ベルンシュタイン侯爵は、苦々しい表情で頷く。
「はい、殿下。アリアナ嬢は……いえ、ベルンシュタイン嬢は、見違えるように堂々とされておりました。その発言も的確で、ガルディア側の主張を理路整然と代弁し、我々の要求をことごとく退けてきた次第でございます。正直、あの者が、かつて殿下の婚約者であったとは、にわかには信じ難いほどで……」
その言葉は、レオンハルトにとって、これ以上ない屈辱だった。自分が「地味で華がない」と切り捨て、厄介払いしたはずの女が、今や隣国で「賢女」と称えられ、あまつさえ自分たちの前に立ちはだかっている。
ゲルラッハ伯爵も、青い顔で付け加えた。
「そ、その通りでございます、殿下。彼女の知識、分析力、そして何よりもあのライオネル公爵からの信頼の厚さは、驚くべきものでした。もはや、我々が知るかつての彼女ではございません……」
使節団の者たちが語るアリアナの姿は、レオンハルトの記憶の中にある、いつも俯きがちで、自分の意見もろくに言えなかった女とは、全く結びつかなかった。
(馬鹿な……あのアリアナが……? 私が、あれほどまでに無能だと断じた女が……?)
だが、複数の人間が口を揃えて言うのだ。それが、紛れもない現実なのだろう。
彼は、自分がどれほど大きな過ちを犯したのかを、今更ながら骨身にしみて理解し始めていた。アリアナが陰でどれほど自分のために尽くしてくれていたのか。彼女の提言が、どれほど的確で、国の役に立つものだったのか。そして何よりも、彼女がどれほど誠実で、思慮深い女性だったのか。
その全てを、自分は気づこうともせず、ただ表面的な華やかさだけを求めて、彼女を傷つけ、手放してしまったのだ。
(地味な花……? とんでもない。彼女は、磨けば光るどころか、すでに完成された宝石だったのだ。それを、私は……私は、自ら溝に投げ捨ててしまったというのか……!)
激しい後悔が、まるで毒のようにレオンハルトの心を蝕んでいく。アリアナを失ったことで、国政は混乱し、民の不満は高まり、近隣諸国からの信用も失墜した。そして今、そのアリアナ自身が、敵国の強力な駒として、自分たちの前に立ちはだかっている。全ては、自分の愚かさが招いた結果だった。
ガルディアのライオネル公爵は、アリアナの真の価値を見抜き、彼女を正当に評価し、そして今や深く愛しているとさえ噂されている。それに比べて、自分は……。
(なぜ、気づかなかったのだ……! なぜ、もっと彼女を大切にしなかったのだ……!)
だが、どれだけ後悔しても、もう遅い。アリアナは、もう自分の手の届かない場所へ行ってしまった。それどころか、自分にとって脅威となり得る存在にまでなってしまったのだ。
焦燥感、屈辱感、そしてアリアナへの歪んだ執着。それらが、レオンハルトの中で黒い炎のように燃え上がり、彼の理性を焼き尽くそうとしていた。
「……アリアナは……アリアナは、私のものだったはずだ……!」
彼は、誰に言うともなく、そう呟いた。その瞳には、もはや正気とは思えない、狂的な光が宿り始めていた。彼はまだ、自分の過ちから何も学んではいなかった。ただ、失ったものへの執着だけが、彼をさらなる破滅へと駆り立てていく。
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