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第39話 迫りくる危機
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ライオネル公爵の断固たる声明によって、エスタードからのアリアナ送還要求は一旦退けられた形となった。ガルディア国内も、アリアナ擁護の声で一色となり、レオンハルト王子の目論見は完全に外れたと言っていいだろう。
しかし、それで彼が諦めるはずもなかった。むしろ、公の場で恥をかかされたという思いが、彼の歪んだ執着をさらに増幅させ、より直接的で危険な行動へと駆り立てていたのだ。
その最初の兆候は、私の身辺に現れた。
ある日の夕暮れ時、私は公爵邸の庭園を一人で散策していた。少し考え事をしたい気分だったのだ。侍女には「すぐ戻るから」と声をかけ、人通りの少ない、奥まった場所にある薔薇園へと足を向けた。そこは、私のお気に入りの場所で、美しい薔薇の香りに包まれていると、心が落ち着くのだった。
しかし、その日は何かが違った。薔薇のアーチをくぐり、小径を進んでいくと、ふと、背後に人の気配を感じたのだ。振り返っても、誰もいない。
(気のせい……かしら……?)
少し不安を覚えながらも、私はさらに奥へと進んだ。そして、中央の噴水の前に差し掛かった瞬間だった。物陰から、黒ずくめの男たちが数人、音もなく現れ、私を取り囲んだのだ!
「きゃっ……! あななたち、誰ですの!?」
私は驚きのあまり声を上げた。男たちは皆、目元以外を布で覆い、手には短剣や棍棒のようなものを握っている。その殺気立った雰囲気に、私の心臓は恐怖で激しく高鳴った。
「……大人しく我々についてきてもらおうか、アリアナ・ベルンシュタイン嬢」
リーダー格らしき男が、低い声で言った。その声には、聞き覚えがない。しかし、彼らの目的は明らかだった。私を、どこかへ連れ去ろうとしているのだ。
(まさか……エスタードからの刺客……!?)
レオンハルト殿下が、ついにこんな強硬手段に……!
「お断りしますわ! 誰か……誰か来て!」
私は大声で助けを求めようとした。しかし、男の一人が素早く私の口を塞ぎ、もう一人が私の腕を掴む。抵抗しようにも、屈強な男たちの力には敵わない。
(だめ……このままでは……!)
絶望感が私を襲う。ライオネル様の顔が脳裏に浮かんだ。助けを求めたい。けれど、声が出せない。
その時だった。
「――そこまでだ、下衆ども!!」
鋭い、怒りに満ちた声が響き渡った。声の主は、いつの間にか私たちの背後に立っていた、ライオネル公爵だった! 彼の隣には、剣を抜いたゲルハルト将軍と、数名の護衛騎士たちの姿もある。
「公爵様っ……!」
私の口を塞いでいた手が緩んだ隙に、私はか細い声を上げた。
黒ずくめの男たちは、公爵の突然の登場に明らかに動揺していた。しかし、すぐにリーダー格の男が叫んだ。
「構うな! 女を連れて逃げるぞ!」
男たちは、私を無理やり引きずって逃げようとする。しかし、それよりも早く、ライオネル公爵が動いた。彼は、まるで黒豹のような俊敏さで男たちに襲いかかり、その手にした長剣で、次々と彼らを打ち倒していく。その剣捌きは、恐ろしいほどに正確で、一切の無駄がない。
ゲルハルト将軍と護衛騎士たちも加勢し、あっという間に形勢は逆転した。黒ずくめの男たちは、数人が深手を負って倒れ、残りは散り散りになって逃走していった。
「アリアナ! 無事か!?」
公爵は、すぐに私の元へ駆け寄り、震える私を力強く抱きしめた。その腕の中で、私はようやく安堵の息をつくことができた。
「だ、大丈夫です……公爵様が、助けてくださったから……」
「……すまない。私が、もっと早く気づいていれば……。君に、こんな怖い思いをさせることはなかったのに……」
彼の声は、後悔と、そして私を案じる深い愛情で震えていた。
捕らえられた襲撃者の一人は、エスタード訛りの言葉を話したという。やはり、レオンハルト殿下の差し金であることは、ほぼ間違いないだろう。彼は、私を誘拐するという、最も愚かで危険な手段に打って出たのだ。
この事件は、私にとって大きな衝撃だった。けれど、それと同時に、ライオネル公爵の私への想いの深さと、彼が私を命がけで守ってくれるという事実を、改めて強く認識させられる出来事でもあった。
しかし、これで終わりではないはずだ。レオンハルト殿下の狂気は、まだ止まらないだろう。私たちは、次なる危機に備えなければならない。そして、その危機は、もはや私個人だけでなく、ライオネル公爵自身、あるいはガルディア王国そのものに向けられる可能性すらあったのだ。
しかし、それで彼が諦めるはずもなかった。むしろ、公の場で恥をかかされたという思いが、彼の歪んだ執着をさらに増幅させ、より直接的で危険な行動へと駆り立てていたのだ。
その最初の兆候は、私の身辺に現れた。
ある日の夕暮れ時、私は公爵邸の庭園を一人で散策していた。少し考え事をしたい気分だったのだ。侍女には「すぐ戻るから」と声をかけ、人通りの少ない、奥まった場所にある薔薇園へと足を向けた。そこは、私のお気に入りの場所で、美しい薔薇の香りに包まれていると、心が落ち着くのだった。
しかし、その日は何かが違った。薔薇のアーチをくぐり、小径を進んでいくと、ふと、背後に人の気配を感じたのだ。振り返っても、誰もいない。
(気のせい……かしら……?)
少し不安を覚えながらも、私はさらに奥へと進んだ。そして、中央の噴水の前に差し掛かった瞬間だった。物陰から、黒ずくめの男たちが数人、音もなく現れ、私を取り囲んだのだ!
「きゃっ……! あななたち、誰ですの!?」
私は驚きのあまり声を上げた。男たちは皆、目元以外を布で覆い、手には短剣や棍棒のようなものを握っている。その殺気立った雰囲気に、私の心臓は恐怖で激しく高鳴った。
「……大人しく我々についてきてもらおうか、アリアナ・ベルンシュタイン嬢」
リーダー格らしき男が、低い声で言った。その声には、聞き覚えがない。しかし、彼らの目的は明らかだった。私を、どこかへ連れ去ろうとしているのだ。
(まさか……エスタードからの刺客……!?)
レオンハルト殿下が、ついにこんな強硬手段に……!
「お断りしますわ! 誰か……誰か来て!」
私は大声で助けを求めようとした。しかし、男の一人が素早く私の口を塞ぎ、もう一人が私の腕を掴む。抵抗しようにも、屈強な男たちの力には敵わない。
(だめ……このままでは……!)
絶望感が私を襲う。ライオネル様の顔が脳裏に浮かんだ。助けを求めたい。けれど、声が出せない。
その時だった。
「――そこまでだ、下衆ども!!」
鋭い、怒りに満ちた声が響き渡った。声の主は、いつの間にか私たちの背後に立っていた、ライオネル公爵だった! 彼の隣には、剣を抜いたゲルハルト将軍と、数名の護衛騎士たちの姿もある。
「公爵様っ……!」
私の口を塞いでいた手が緩んだ隙に、私はか細い声を上げた。
黒ずくめの男たちは、公爵の突然の登場に明らかに動揺していた。しかし、すぐにリーダー格の男が叫んだ。
「構うな! 女を連れて逃げるぞ!」
男たちは、私を無理やり引きずって逃げようとする。しかし、それよりも早く、ライオネル公爵が動いた。彼は、まるで黒豹のような俊敏さで男たちに襲いかかり、その手にした長剣で、次々と彼らを打ち倒していく。その剣捌きは、恐ろしいほどに正確で、一切の無駄がない。
ゲルハルト将軍と護衛騎士たちも加勢し、あっという間に形勢は逆転した。黒ずくめの男たちは、数人が深手を負って倒れ、残りは散り散りになって逃走していった。
「アリアナ! 無事か!?」
公爵は、すぐに私の元へ駆け寄り、震える私を力強く抱きしめた。その腕の中で、私はようやく安堵の息をつくことができた。
「だ、大丈夫です……公爵様が、助けてくださったから……」
「……すまない。私が、もっと早く気づいていれば……。君に、こんな怖い思いをさせることはなかったのに……」
彼の声は、後悔と、そして私を案じる深い愛情で震えていた。
捕らえられた襲撃者の一人は、エスタード訛りの言葉を話したという。やはり、レオンハルト殿下の差し金であることは、ほぼ間違いないだろう。彼は、私を誘拐するという、最も愚かで危険な手段に打って出たのだ。
この事件は、私にとって大きな衝撃だった。けれど、それと同時に、ライオネル公爵の私への想いの深さと、彼が私を命がけで守ってくれるという事実を、改めて強く認識させられる出来事でもあった。
しかし、これで終わりではないはずだ。レオンハルト殿下の狂気は、まだ止まらないだろう。私たちは、次なる危機に備えなければならない。そして、その危機は、もはや私個人だけでなく、ライオネル公爵自身、あるいはガルディア王国そのものに向けられる可能性すらあったのだ。
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