手放したのは、貴方の方です

空月そらら

文字の大きさ
49 / 60

第49話 愛に満ちた日々

しおりを挟む
盛大で、感動的な結婚式を終え、私とライオネル様は晴れて夫婦となった。ヴァルテンベルク公爵夫妻としての新しい生活は、驚くほど穏やかで、そして何よりも愛に満ち溢れたものだった。

私たちの朝は、小鳥のさえずりと共に始まる。隣で眠るライオネル様の寝顔をそっと盗み見るのが、私の密かな楽しみだ。普段の厳格な表情とは違う、少しだけあどけないその顔を見ていると、どうしようもなく愛おしい気持ちが込み上げてくる。

「……おはよう、アリアナ」

私がじっと見つめているのに気づいたのか、彼がゆっくりと目を開け、掠れた声で私に微笑みかける。そして、優しい朝の口づけ。そんな何気ない瞬間が、私にとってはかけがえのない宝物だった。

朝食は、二人きりで、庭園を見渡せるサンルームでとるのが習慣になった。そこでは、公務のことは一旦忘れ、昨日読んだ本の話や、街で見かけた面白い出来事など、他愛のない会話を楽しむ。ライオネル様は、私の話にいつも楽しそうに耳を傾け、時には冗談を言って私を笑わせてくれることもあった。あの冷徹と噂された公爵が、こんなにもユーモアのある一面を持っていたなんて、結婚するまで知らなかったことだ。

日中は、それぞれの執務に励む。ライオネル様はこれまで通り、ガルディアの最高指導者の一人として多忙な日々を送っているし、私もまた、公爵夫人として、そして彼の最も信頼する相談役として、様々な仕事に取り組んでいた。貧困地域の支援策、新しい教育施設の設立準備、近隣諸国との文化交流事業の推進……。やるべきことは山積みだったけれど、彼の隣で、彼と共に国の未来を考えられるという喜びは、何物にも代えがたかった。

そして、夜。執務を終えた私たちは、二人きりで静かな時間を過ごす。書斎で共に読書をしたり、暖炉の前でワインを飲みながら語り合ったり。時には、ライオネル様が不意に私をダンスに誘い、誰もいない広間で、二人だけでワルツを踊ることもあった。彼の腕に抱かれ、その温かい胸に頬を寄せていると、私は世界で一番幸せな女性だと、心から感じることができた。

「愛しているよ、アリアナ。……君がいない人生など、もう考えられない」

彼は、そんな甘い言葉を、惜しげもなく私に囁いてくれるようになった。その度に、私は頬を染めながらも、彼の首に腕を回し、その愛情に応えるのだ。

「私もですわ、ライオネル様。あなた様こそ、私の全てです」

私たちの間には、もう何の隔たりもなかった。互いの全てを理解し、受け入れ、そして深く愛し合っている。時には、私が彼に甘え、彼が少しだけ嫉妬を見せるような、微笑ましい出来事もあったりする。そんな日常の全てが、愛おしくて、かけがえのないものだった。

もちろん、公爵夫妻としての責任は重い。ガルディアの未来は、私たちの双肩にかかっていると言っても過言ではない。けれど、二人で力を合わせれば、どんな困難も乗り越えていけると信じている。

私たちは、互いを支え合い、高め合いながら、この国をより良い場所へと導いていく。その誓いを胸に、愛に満ちた日々を、一歩一歩、大切に歩んでいくのだった。

この幸せが、永遠に続きますように――。私は、夜空に輝く星々に、そっと祈りを捧げた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】

早奈恵
恋愛
エドウィン王子から婚約破棄されて、修道院でいじめ抜かれて死んでしまう予知夢を見た公爵令嬢アデリアーナは、男爵令嬢のパナピーアに誘惑されてしまうはずの攻略対象者との出会いを邪魔して、予知夢を回避できるのか試そうとする。 婚約破棄への道を自分で潰すつもりなのに、現実は何だか予知夢の内容とどんどんかけ離れて、知らないうちに話が進んでいき……。 宰相インテリ子息、騎士団長の脳筋子息、実家を継ぐために養子になったわんこ系義弟、そして婚約者の王太子エドウィンが頑張る話。 *リハビリに短編を書く予定が中編くらいになってしまいましたが、すでにラストまで書き終えている完結確約作品です。全23話+おまけ2話、よろしくお願いします。 *短い期間ですがHOTランキング1位に到達した作品です。

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました

黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」 衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。 実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。 彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。 全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。 さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?

【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~

遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。 「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」 彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。 瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット! 彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる! その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。 一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。 知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう 婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ 婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話 *更新は不定期です *加筆修正中です

義母の企みで王子との婚約は破棄され、辺境の老貴族と結婚せよと追放されたけど、結婚したのは孫息子だし、思いっきり歌も歌えて言うことありません!

もーりんもも
恋愛
義妹の聖女の証を奪って聖女になり代わろうとした罪で、辺境の地を治める老貴族と結婚しろと王に命じられ、王都から追放されてしまったアデリーン。 ところが、結婚相手の領主アドルフ・ジャンポール侯爵は、結婚式当日に老衰で死んでしまった。 王様の命令は、「ジャンポール家の当主と結婚せよ」ということで、急遽ジャンポール家の当主となった孫息子ユリウスと結婚することに。 ユリウスの結婚の誓いの言葉は「ふん。ゲス女め」。 それでもアデリーンにとっては、緑豊かなジャンポール領は楽園だった。 誰にも遠慮することなく、美しい森の中で、大好きな歌を思いっきり歌えるから! アデリーンの歌には不思議な力があった。その歌声は万物を癒し、ユリウスの心までをも溶かしていく……。

処理中です...