50 / 60
第50話 手放した先にあるもの
しおりを挟む
あれから、さらに数年の歳月が流れた。
私、アリアナ・フォン・ヴァルテンベルクは、愛する夫であるライオネル様と共に、ガルディア王国を導く公爵夫妻として、充実した日々を送っていた。私たちの間には、二人の可愛らしい子供たち――黒髪と黒い瞳を父親から受け継いだ賢明な長男アレクサンダーと、私の栗色の髪と優しい眼差しを持つ活発な長女ソフィア――が生まれ、公爵邸はいつも賑やかな笑顔と愛に満ち溢れていた。
ガルディア王国は、ライオネル様の卓越した指導力と、私のささやかな助言もあって、ますますの繁栄を謳歌していた。新しい技術が導入され、産業は発展し、文化は豊かに花開いた。国民の生活は安定し、誰もが希望を持って未来を語れる国。それが、私たちが目指し、そして実現しつつあるガルディアの姿だった。
私は、妻として、母として、そして公爵夫人として、日々多くの役割をこなしながらも、常に心からの幸福を感じていた。ライオネル様の私への愛情は、結婚した当初と何ら変わることなく、むしろ年々深まっているようにさえ感じられる。彼が私を見つめる瞳には、いつも深い信頼と、そして燃えるような情熱が宿っているのだ。
「アリアナ、君がいてくれて本当に良かった。君こそが、私の人生の太陽だ」
彼は、今でも時折、そんな甘い言葉を囁いてくれる。その度に、私の心は温かい光で満たされるのだった。
一方、私の故郷であるエスタード王国は……残念ながら、あの頃とあまり変わらない、あるいはさらに厳しい状況にあると聞いている。レオンハルト殿下は、結局、最後まで自身の過ちから目を背け続け、国の立て直しに失敗した。彼は今も、アリアナという存在を失ったことへの後悔と、虚しさを抱えたまま、孤独な日々を送っているという。
マーサとは、今でも時折手紙のやり取りをしている。彼女の手紙からは、エスタードの苦しい現状と、それでも懸命に生きる人々の姿が伝わってくる。私は、ガルディアの公爵夫人として、エスタードに対して直接的な援助をすることは難しいけれど、両国の間に最低限の友好関係を保ち、いつかエスタードが自力で立ち直る日が来ることを、心から願っている。ライオネル様も、そんな私の気持ちを理解し、できる範囲での人道的な支援は惜しまないでいてくれる。
ある晴れた日の午後、私は子供たちと一緒に、公爵邸の庭園で遊んでいた。アレクサンダーが、ライオネル様にそっくりな真剣な顔で蝶を追いかけ、ソフィアが私の足元で可愛らしい花を摘んでいる。その平和で、愛に満ちた光景を見つめながら、私はふと、エスタードで過ごした日々を思い返していた。
(あの時、殿下に手放された私は、絶望の淵にいたわね……)
けれど、その「手放された」という出来事が、私に新しい道を示してくれたのだ。もし、あのままエスタードにいたら、私は決して今の幸せを掴むことはできなかっただろう。
手放したのは、貴方の方です――。
かつて、レオンハルト殿下にそう告げた言葉が、今、改めて私の胸に深く響く。彼は、私という存在の価値を見誤り、自ら手放した。そして、その手放された先で、私はかけがえのない宝物を見つけたのだ。真実の愛、信頼できる仲間、そして自分自身の力で未来を切り開くという、確かな自信を。
ライオネル様が、執務を終えて庭園へやってきた。子供たちは、彼の姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄っていく。彼が、優しい笑顔で子供たちを抱き上げ、そして私に温かい眼差しを向ける。
この幸せが、私の全て。
私は、愛する家族に囲まれ、希望に満ちた未来へと、確かな足取りで歩んでいく。かつて捨てられた花は、今、このガルディアの地で、誰よりも美しく、そして力強く咲き誇っているのだから。
物語は、ここで終わりを迎える。けれど、私たちの愛と、ガルディアの輝かしい未来は、これからも永遠に続いていくことだろう。
――手放した先には、こんなにも素晴らしい世界が待っていたのだと、今なら心から言える。
私、アリアナ・フォン・ヴァルテンベルクは、愛する夫であるライオネル様と共に、ガルディア王国を導く公爵夫妻として、充実した日々を送っていた。私たちの間には、二人の可愛らしい子供たち――黒髪と黒い瞳を父親から受け継いだ賢明な長男アレクサンダーと、私の栗色の髪と優しい眼差しを持つ活発な長女ソフィア――が生まれ、公爵邸はいつも賑やかな笑顔と愛に満ち溢れていた。
ガルディア王国は、ライオネル様の卓越した指導力と、私のささやかな助言もあって、ますますの繁栄を謳歌していた。新しい技術が導入され、産業は発展し、文化は豊かに花開いた。国民の生活は安定し、誰もが希望を持って未来を語れる国。それが、私たちが目指し、そして実現しつつあるガルディアの姿だった。
私は、妻として、母として、そして公爵夫人として、日々多くの役割をこなしながらも、常に心からの幸福を感じていた。ライオネル様の私への愛情は、結婚した当初と何ら変わることなく、むしろ年々深まっているようにさえ感じられる。彼が私を見つめる瞳には、いつも深い信頼と、そして燃えるような情熱が宿っているのだ。
「アリアナ、君がいてくれて本当に良かった。君こそが、私の人生の太陽だ」
彼は、今でも時折、そんな甘い言葉を囁いてくれる。その度に、私の心は温かい光で満たされるのだった。
一方、私の故郷であるエスタード王国は……残念ながら、あの頃とあまり変わらない、あるいはさらに厳しい状況にあると聞いている。レオンハルト殿下は、結局、最後まで自身の過ちから目を背け続け、国の立て直しに失敗した。彼は今も、アリアナという存在を失ったことへの後悔と、虚しさを抱えたまま、孤独な日々を送っているという。
マーサとは、今でも時折手紙のやり取りをしている。彼女の手紙からは、エスタードの苦しい現状と、それでも懸命に生きる人々の姿が伝わってくる。私は、ガルディアの公爵夫人として、エスタードに対して直接的な援助をすることは難しいけれど、両国の間に最低限の友好関係を保ち、いつかエスタードが自力で立ち直る日が来ることを、心から願っている。ライオネル様も、そんな私の気持ちを理解し、できる範囲での人道的な支援は惜しまないでいてくれる。
ある晴れた日の午後、私は子供たちと一緒に、公爵邸の庭園で遊んでいた。アレクサンダーが、ライオネル様にそっくりな真剣な顔で蝶を追いかけ、ソフィアが私の足元で可愛らしい花を摘んでいる。その平和で、愛に満ちた光景を見つめながら、私はふと、エスタードで過ごした日々を思い返していた。
(あの時、殿下に手放された私は、絶望の淵にいたわね……)
けれど、その「手放された」という出来事が、私に新しい道を示してくれたのだ。もし、あのままエスタードにいたら、私は決して今の幸せを掴むことはできなかっただろう。
手放したのは、貴方の方です――。
かつて、レオンハルト殿下にそう告げた言葉が、今、改めて私の胸に深く響く。彼は、私という存在の価値を見誤り、自ら手放した。そして、その手放された先で、私はかけがえのない宝物を見つけたのだ。真実の愛、信頼できる仲間、そして自分自身の力で未来を切り開くという、確かな自信を。
ライオネル様が、執務を終えて庭園へやってきた。子供たちは、彼の姿を見つけると、嬉しそうに駆け寄っていく。彼が、優しい笑顔で子供たちを抱き上げ、そして私に温かい眼差しを向ける。
この幸せが、私の全て。
私は、愛する家族に囲まれ、希望に満ちた未来へと、確かな足取りで歩んでいく。かつて捨てられた花は、今、このガルディアの地で、誰よりも美しく、そして力強く咲き誇っているのだから。
物語は、ここで終わりを迎える。けれど、私たちの愛と、ガルディアの輝かしい未来は、これからも永遠に続いていくことだろう。
――手放した先には、こんなにも素晴らしい世界が待っていたのだと、今なら心から言える。
913
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】
早奈恵
恋愛
エドウィン王子から婚約破棄されて、修道院でいじめ抜かれて死んでしまう予知夢を見た公爵令嬢アデリアーナは、男爵令嬢のパナピーアに誘惑されてしまうはずの攻略対象者との出会いを邪魔して、予知夢を回避できるのか試そうとする。
婚約破棄への道を自分で潰すつもりなのに、現実は何だか予知夢の内容とどんどんかけ離れて、知らないうちに話が進んでいき……。
宰相インテリ子息、騎士団長の脳筋子息、実家を継ぐために養子になったわんこ系義弟、そして婚約者の王太子エドウィンが頑張る話。
*リハビリに短編を書く予定が中編くらいになってしまいましたが、すでにラストまで書き終えている完結確約作品です。全23話+おまけ2話、よろしくお願いします。
*短い期間ですがHOTランキング1位に到達した作品です。
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
【完結】廃墟送りの悪役令嬢、大陸一の都市を爆誕させる~冷酷伯爵の溺愛も限界突破しています~
遠野エン
恋愛
王太子から理不尽な婚約破棄を突きつけられた伯爵令嬢ルティア。聖女であるライバルの策略で「悪女」の烙印を押され、すべてを奪われた彼女が追放された先は荒れ果てた「廃墟の街」。人生のどん底――かと思いきや、ルティアは不敵に微笑んだ。
「問題が山積み? つまり、改善の余地(チャンス)しかありませんわ!」
彼女には前世で凄腕【経営コンサルタント】だった知識が眠っていた。
瓦礫を資材に変えてインフラ整備、ゴロツキたちを警備隊として雇用、嫌われ者のキノコや雑草(?)を名物料理「キノコスープ」や「うどん」に変えて大ヒット!
彼女の手腕によって、死んだ街は瞬く間に大陸随一の活気あふれる自由交易都市へと変貌を遂げる!
その姿に、当初彼女を蔑んでいた冷酷伯爵シオンの心も次第に溶かされていき…。
一方、ルティアを追放した王国は経済が破綻し、崩壊寸前。焦った元婚約者の王太子がやってくるが、幸せな市民と最愛の伯爵に守られた彼女にもう死角なんてない――――。
知恵と才覚で運命を切り拓く、痛快逆転サクセス&シンデレラストーリー、ここに開幕!
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~
青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた
そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた
しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう
婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ
婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか
この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話
*更新は不定期です
*加筆修正中です
義母の企みで王子との婚約は破棄され、辺境の老貴族と結婚せよと追放されたけど、結婚したのは孫息子だし、思いっきり歌も歌えて言うことありません!
もーりんもも
恋愛
義妹の聖女の証を奪って聖女になり代わろうとした罪で、辺境の地を治める老貴族と結婚しろと王に命じられ、王都から追放されてしまったアデリーン。
ところが、結婚相手の領主アドルフ・ジャンポール侯爵は、結婚式当日に老衰で死んでしまった。
王様の命令は、「ジャンポール家の当主と結婚せよ」ということで、急遽ジャンポール家の当主となった孫息子ユリウスと結婚することに。
ユリウスの結婚の誓いの言葉は「ふん。ゲス女め」。
それでもアデリーンにとっては、緑豊かなジャンポール領は楽園だった。
誰にも遠慮することなく、美しい森の中で、大好きな歌を思いっきり歌えるから!
アデリーンの歌には不思議な力があった。その歌声は万物を癒し、ユリウスの心までをも溶かしていく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる