破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

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1章

第13話 エリシアの不在と、初めての“ひとり旅”計画

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 ――エリシアが、しばらく不在になるらしい。
 
「すみません、レオン様。急に王城から呼び出しがかかりまして。数日で戻れると思いますが……」
 
「いや、気にしなくていい。王城の仕事って大変なんだろ?」

 宮廷No.3の彼女に、いつでもべったり付きっきりで指導してもらえるわけがない。

 俺はこの数週間、みっちり魔法や基本的な体術を叩き込まれた。

 おかげで以前よりは格段に成長していると感じる。
 
 でも、彼女がいない間に何をしようか……と思ったとき、ふと前世の夢を思い出した。
 
「そうだ。俺、前世では病気でどこにも行けなかったんだよな。せっかく身体が動くうちに、いろんな場所に行ってみたい。そうだ……キャンプとかしてみたい」

 前世ではアウトドアなんて憧れの存在だった。

 一度でいいから自然の中で焚き火をしたり、川や湖でのんびり釣りをしてみたり、そういうのを味わってみたかった。
 
 この世界は貴族や魔法の文化があるけど、当然自然も豊富だ。

 馬車を手配してどこか田舎まで足を伸ばせば、美しい景観を楽しめるかもしれない。

 そう思い立って、俺は早速、父に断りを入れた。
 
「……何? 王都を出たいだと?」
 
「はい、少し自然に触れてみたくて。学園が始まれば、また忙しくなるだろうし、今のうちに少しだけ……」
 
「バカな。お前には護衛が必要だろう。いや、それ以前に勝手な外出は許可できん」

 予想通り、父は眉間に皺を寄せる。

 だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
 
「護衛なら大丈夫です。俺も、多少は魔法が使えるようになったし……それに、一人だからこそ行きたい場所があるんだ。頼むよ、父上」

 そして押し問答の末、父は渋々ながら承諾した。

 しかし、メイドのミオを同行させようとしてくる。
 
「ならばミオを連れていけ。最低限の身の回りの世話は必要だろう」
 
 当然のように言われるが、俺は首を振った。
 
「今回は一人で行きたいです、彼女には散々迷惑をかけてきたし……」
 
「レオン様……」とミオは切なそうな顔をするが、俺は心を鬼にして断る。

 前世で味わえなかった自由を、今度こそ満喫してみたい。

 それには誰にも干渉されたくない。

 完全に一人旅。

 危険だと言われればそうかもしれないが、せっかくの“絶対快眠”があるし、万が一モンスターが出ても、俺は以前よりだいぶ戦えるようになったはずだ。

「よし、それじゃあ準備を進めるか」

 だが、キャンプ用の道具は残念ながら邸宅にないらしい。

 なので屋敷の倉庫を探って、使えそうな調理器具や寝袋的なものを見つける。
 
 食材はあまり長期保存が難しいが、干し肉や乾パン、塩漬け野菜などを多めに積んでおけばなんとかなるだろう。
 
 そうして数日後、ついに俺は馬車に乗り込む。

 小さな護衛も一応つけられそうになったが、どうにか断り切った。
 
「行ってきます、ミオ。フィリア、父上、母上……」
 
 玄関先で見送る家族や使用人たちにそう告げると、複雑そうな顔をしている者もいたが、俺は気にしない。

 前世の俺が味わえなかった“自由”。この世界でこそ、掴んでみせる。
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