破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

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1章

第40話 エリシアとの別れ、そして学園の入学式が迫る

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それから数週間。
 
 宮廷魔術師エリシア・ウェントワースの指導のもと、俺――レオン・グランフィードは毎日のように魔法の鍛錬を積んでいた。
 
 火や土、風といった属性魔法を一通り使えるようになり、身体能力の向上も兼ねて剣術の基礎も欠かさず習っている。

 なにより、俺のユニークスキル“絶対快眠(スリープキング)”との相性が抜群で、訓練中に魔力が尽きても数秒の仮眠で即座に回復できるのが最大の強みだ。

 そんな充実した日々も、ついに一区切りつくときが来た。
 
 ――学園の入学式が近い。
 
 かつてのレオン・グランフィード(原作ゲームの“悪役貴族”)は、ここで“勇者”との比較に耐えきれず、やがて破滅の道を歩む……という運命を背負っていた。
 
 だが今の俺は違う。

 前世の記憶やエリシアの指導、妹フィリアの支えなどを得て、多少なりとも自信をつけてきた。

 破滅ルートなど踏み潰してみせる――そう決意している。

 しかし、その矢先。

 あのエリシアが王城から新たな仕事を任されることになり、しばらく邸宅を離れることになった。

 学園の入学式が始まる頃には、彼女も本格的に王宮に戻るため、当分は俺の指導を継続できないらしい。

「レオン様、ここまで教えたことをぜひ活かして頑張ってくださいね。私は王城の仕事が終われば、また様子を見に来ることにしますから」
 
 エリシアはそう言い、品のある微笑を浮かべる。

「こちらこそ感謝してるよ、エリシア。最初は気乗りしなかったかもしれないけど……俺のわがままに付き合ってくれて、ありがとう」
 
「ふふ、いいえ。それに、レオン様の成長ぶりは私も驚くほどです。『絶対快眠』がこれほどまで魔法訓練と相性が良いとは思いませんでしたもの」

 エリシアは旅支度を整えた自分の馬車の傍で、俺に向かい小さく一礼する。

 その姿は凛としていて、改めて見ると本当に美しい。

 王宮No.3の若き宮廷魔術師、という称号も納得だ。

「じゃあ、俺は学園に通いながら、今まで学んだことを無駄にしないようにする。きっと何かあっても、この魔法で乗り切れるはずだ」
 
「ええ、レオン様なら大丈夫。ご家族も応援しておられますし、何より妹のフィリア様がとても心配されていましたから。……どうか、くれぐれも無茶はなさらないでくださいね」

「うん、わかってる。……エリシアも、向こうで忙しいだろうけど体に気をつけてな」

 そうして俺とエリシアは、いったん別れることになった。
 
 さほど遠くないうちに、また会う日は来るかもしれないが、少なくとも学園入学後の生活を始める今は、エリシアなしでやっていかなければならない。

 心細さはあるが、同時に「もう俺は自立しなきゃ」という想いも湧き上がる。

 エリシアの馬車が邸宅の門を抜けるのを見届け、手を振る。

 彼女は最後まで穏やかに笑っていた。
 
 ――こうして、俺を鍛えてくれた師との日々は終わった。これから本格的に“学園生活”が始まる。
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