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1章
第42話 到着――王立フローレス学園の大門
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しばらく馬車に揺られ、王都の中心地を抜けると、学園の広大な敷地が見えてきた。
正門には荘厳な紋章が掲げられ、警備の騎士たちが通行を確認している。
貴族の子息たちが次々と到着し、華やかな衣装や馬車が行き交う。
俺は御者に礼を言って馬車を降り、一人で門をくぐった。
「……ここが俺の通う学園か」
広く整備された庭園が広がり、石造りの歴史ある校舎が正面に立ち塞がっている。
貴族のための学園だけあって、建物は城さながらの重厚感だ。
周囲を見渡すと、同じ新入生とおぼしき少年少女があちこちに立ち、談笑したり、緊張した面持ちで道を探したりしている。
皆、格式ばった礼服や学園指定の制服を着ていて、キラキラとした貴族オーラを放っている。
「ま、俺も貴族の一員だし、ここにいても不自然じゃないはず……なんだけどな」
しかし、周りから聞こえてくるのは、ささやかな視線と陰口。
「ねえ、あれってグランフィード家の?」
「聞いたわ、すごく性格が悪いらしいわよ」「スキルが“絶対快眠”とかいうネタで、家族も見放してるとか……」
俺は軽くため息をつく。
やはり噂は広まっているらしい。
「ふん……。もう慣れた。言いたい奴には言わせておけばいい」
自分の心にそう言い聞かせ、きびきびと足を進める。
今日は入学式の日。
講堂のような大ホールで盛大な式典が行われると説明されている。
「よし、まずは大ホールへ……」
そう意識しながら道を探していると、前方にいた数名の男子生徒がこちらを振り返り、クスクス笑いを漏らしていた。
まるで「おお、噂の貴族が来たぜ。からかってやろうか?」と言わんばかりの表情だ。
「おい、お前がレオンか? ハハ、噂通りな顔してんな」
「スキルが寝るだけのやつって本当か? 役立たずじゃん? ぷぷっ」
明らかに見下した態度でこちらを囲んでくる。
本来のレオンだったら即座にキレていただろうが、今は違う。
深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
「道の邪魔なのだが、用がないならどいてくれないか?」
「へぇ、偉そうに言ってんじゃねえよ。どうせ評判の“クズ貴族”なんだろ? ちょっと怖い目に遭わないうちに謝っとけよ」
彼らは俗に言うチンピラ気質の連中だろう。
学園に籍を置いているとはいえ、中にはこういう連中が混じる。
俺は相手にするのも無駄だと判断し、言葉少なにすり抜けようとするが、彼らがわざと通せんぼをしてくる。
「おい、逃げんなよ。なあ、外れスキルさん? ちょいと腕試しさせろよ」
「面倒だな。悪いけど――通してくれ」
そう言って足を踏み出すと、案の定、相手は拳を振りかぶってきた。
――が、遅い。
一拍遅れる攻撃は、俺がエリシアの元で鍛えた反応速度の前では容易に回避できる。
首筋を逸らすだけで空を切り、続く蹴りも軽くステップで避けた。
「な、なんだこいつ……」
「意外とやるな。でもよぉ、こっちは複数だぜ?」
もう一人が背後からタックルするように迫るが、俺は上半身を旋回させて最小限の接触でいなし、相手の足を引っかけて転ばせる。
……一切の魔法を使わず、反撃も最小限だ。
この程度の相手に本気で炎魔法を撃つ必要はないし、派手にやれば学園でさらに悪評が立つだけだ。
「今ので終わりにしてくれ。これ以上やっても無駄だぞ。俺は急いでるからな」
淡々と言い放ち、彼らの間をすり抜けて歩き出す。
チンピラどもは「ちっ……」と舌打ちして追撃の態度を見せるが、周囲の貴族生徒の視線もあってか、深追いせずに睨みをきかせるだけ。
「覚えてろよ……レオン……!」
――その捨て台詞に、俺は心中で「好きにすれば」と呟く。
今さら一々相手にしていたらキリがないのだ。
とにかく、俺が目指すのは入学式の会場。
そこで式典を終え、あとは家に帰るだけ。学園には寮はあるが、俺は馬車通学を選択しているので、そのまま貴族邸まで戻るのが普通なのだ。
「はぁ……先が思いやられるけど、慣れてくしかないな」
背後で何やら言い争いをしている気配を尻目に、俺は大ホールを目指して歩みを進める。
正門には荘厳な紋章が掲げられ、警備の騎士たちが通行を確認している。
貴族の子息たちが次々と到着し、華やかな衣装や馬車が行き交う。
俺は御者に礼を言って馬車を降り、一人で門をくぐった。
「……ここが俺の通う学園か」
広く整備された庭園が広がり、石造りの歴史ある校舎が正面に立ち塞がっている。
貴族のための学園だけあって、建物は城さながらの重厚感だ。
周囲を見渡すと、同じ新入生とおぼしき少年少女があちこちに立ち、談笑したり、緊張した面持ちで道を探したりしている。
皆、格式ばった礼服や学園指定の制服を着ていて、キラキラとした貴族オーラを放っている。
「ま、俺も貴族の一員だし、ここにいても不自然じゃないはず……なんだけどな」
しかし、周りから聞こえてくるのは、ささやかな視線と陰口。
「ねえ、あれってグランフィード家の?」
「聞いたわ、すごく性格が悪いらしいわよ」「スキルが“絶対快眠”とかいうネタで、家族も見放してるとか……」
俺は軽くため息をつく。
やはり噂は広まっているらしい。
「ふん……。もう慣れた。言いたい奴には言わせておけばいい」
自分の心にそう言い聞かせ、きびきびと足を進める。
今日は入学式の日。
講堂のような大ホールで盛大な式典が行われると説明されている。
「よし、まずは大ホールへ……」
そう意識しながら道を探していると、前方にいた数名の男子生徒がこちらを振り返り、クスクス笑いを漏らしていた。
まるで「おお、噂の貴族が来たぜ。からかってやろうか?」と言わんばかりの表情だ。
「おい、お前がレオンか? ハハ、噂通りな顔してんな」
「スキルが寝るだけのやつって本当か? 役立たずじゃん? ぷぷっ」
明らかに見下した態度でこちらを囲んでくる。
本来のレオンだったら即座にキレていただろうが、今は違う。
深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
「道の邪魔なのだが、用がないならどいてくれないか?」
「へぇ、偉そうに言ってんじゃねえよ。どうせ評判の“クズ貴族”なんだろ? ちょっと怖い目に遭わないうちに謝っとけよ」
彼らは俗に言うチンピラ気質の連中だろう。
学園に籍を置いているとはいえ、中にはこういう連中が混じる。
俺は相手にするのも無駄だと判断し、言葉少なにすり抜けようとするが、彼らがわざと通せんぼをしてくる。
「おい、逃げんなよ。なあ、外れスキルさん? ちょいと腕試しさせろよ」
「面倒だな。悪いけど――通してくれ」
そう言って足を踏み出すと、案の定、相手は拳を振りかぶってきた。
――が、遅い。
一拍遅れる攻撃は、俺がエリシアの元で鍛えた反応速度の前では容易に回避できる。
首筋を逸らすだけで空を切り、続く蹴りも軽くステップで避けた。
「な、なんだこいつ……」
「意外とやるな。でもよぉ、こっちは複数だぜ?」
もう一人が背後からタックルするように迫るが、俺は上半身を旋回させて最小限の接触でいなし、相手の足を引っかけて転ばせる。
……一切の魔法を使わず、反撃も最小限だ。
この程度の相手に本気で炎魔法を撃つ必要はないし、派手にやれば学園でさらに悪評が立つだけだ。
「今ので終わりにしてくれ。これ以上やっても無駄だぞ。俺は急いでるからな」
淡々と言い放ち、彼らの間をすり抜けて歩き出す。
チンピラどもは「ちっ……」と舌打ちして追撃の態度を見せるが、周囲の貴族生徒の視線もあってか、深追いせずに睨みをきかせるだけ。
「覚えてろよ……レオン……!」
――その捨て台詞に、俺は心中で「好きにすれば」と呟く。
今さら一々相手にしていたらキリがないのだ。
とにかく、俺が目指すのは入学式の会場。
そこで式典を終え、あとは家に帰るだけ。学園には寮はあるが、俺は馬車通学を選択しているので、そのまま貴族邸まで戻るのが普通なのだ。
「はぁ……先が思いやられるけど、慣れてくしかないな」
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