破滅確定の悪役貴族、【絶対快眠】スキルで最強魔法使いになったので、学園スローライフを満喫する

空月そらら

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1章

第73話　一日の終わり

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　魔法実践の授業が終わり、なんとか無事に本日のカリキュラムをこなした。

　教師から「レオン、順調ね。成績もかなり上がりそうよ」と言われ、ほっと胸を撫でおろす。
　
　一方で、アークの落胆ぶりがチラチラと視界に入ったが、特に絡まれることもなく終わった。

　教室で自暴自棄になっている姿を見かけたが、俺が声をかける義理もないだろう。

「さて、じゃあ帰るか……あ、フローラはどうする？　一緒に門まで？」

「うん、今日も馬車だよね？　私も途中まで一緒に歩くよ」

　フローラと連れ立って廊下を歩き、学園の門へ向かう。
　
　途中、同級生が「レオン、すごかったね」とか「フローラも魔法下手とか言ってたのにそれなりだったんじゃん？」などと声をかけてくる。
　
　二人とも笑顔で応えながら、門を出てそれぞれの帰路につく。

「じゃあ、また明日ね。お疲れさま」

「おう、お疲れ」

　フローラと別れた後、俺は屋敷へ向かう馬車に乗り込む。
　
　今日は疲れたが、“絶対快眠”があれば夜に少し仮眠するだけで回復できる。

　道中、窓から夕陽を眺めながら思う。

　生徒会長の勧誘や、アースの失敗など色々あったが、俺自身は順調だ。

　生徒会がどう動くか気になるが、今は深く考えても仕方ない。

　★

　　その日の夕刻、グランフィード邸に到着。

　使用人に出迎えられ、荷物を渡して自室へ向かおうとすると――廊下で妹のフィリアが待ち構えていた。

「お兄さま、おかえりなさい……！　あの、ちょっとお願いがあるんだけど……」

「ん？　どうした、フィリア」

　フィリアは俺よりだいぶ年下で、小柄な体を儚げに揺らして恥ずかしそうに視線を下げる。

「実は、治癒魔法を習ってみたいなって思って……。最近、母様とかメイドさんが風邪ひいたりしたときに、私も何かできないかなって考えたの」

「それで……治癒魔法か。確かに便利だけど、習得にはそこそこ練習が必要じゃないか？」

「うん。でも、お兄さまは魔法得意だよね。もしよければ、明日から少しお休みになるらしいから、その間に教えてほしいんだけど……迷惑かな」

　彼女は不安げに眉を下げる。

　そんな顔をされたら断れない。

　正直、治癒魔法は俺も専門ではないが、エリシアからベースは学んだし、基本的な回復術くらいは実践できる。

「いいよ、教えられる範囲なら。俺もそんなに詳しくはないんだけど、基礎くらいはわかるから」

「わあ、ありがとうございます、お兄さま……！　嬉しい……！」

　フィリアが目を輝かせる。
　
　こういう微笑ましい姿を見ると、妹を守りたい気持ちが強くなる。

　かつての原作ではレオンが家族に見放されて破滅したが、今の俺は幸せに包まれている。

「よし、明日から少し練習しようか。休みってのは学園が休日なのか？」「うん、何か行事の準備があるとかで、二日ほどお休みになるんだって。だから、お兄さまが良ければ……」

「もちろんいいさ。じゃあ、明日から少しプチ特訓を始めよう」

「はい、楽しみにしてます！」

　フィリアはうれしそうに部屋へ走り去る。

　あとで細かい時間と場所を決めればいいだろう。
　
　やれやれ、最近は学園で忙しいかと思いきや、家族との時間も増えるんだな。

　悪くない。

★

　翌日、学園が休みなので俺は朝から邸宅の庭に出る。

　ここでフィリアに治癒魔法を教えることになっている。
　
　空は晴れ渡り、気温も程よい。

　絶好の日和だ。

　フィリアが白髪ロングを揺らしながら、待ちきれない様子で先に庭に来ていた。

「おはよう、お兄さま！　私、やる気満々ですよ……！」

「おはよう、フィリア。あまり力まなくていいから、まずは基礎からだよ」

　そう言いかけたとき、姉のセレスが優雅に姿を現した。

　プラチナブロンドの髪をゆるく編み込んで、目元には少し妖艶な光がある相変わらずの美貌。

「あら、レオン。こんな朝早くから庭にいるなんて珍しいわね。……何か面白いことでもしているの？」

「セレス姉さん……ちょっとフィリアに治癒魔法を教えてあげようと思って。俺も詳しくはないんだけどね」

　すると姉は目を丸くし、からかうような笑みを浮かべる。
　
　「へえ、あのレオンが家庭教師みたいなことをね……面白そう。私も混ぜてくれない？」

「えっ、姉さんも？　別にいいけど……治癒魔法に興味あるの？」

　「そりゃあ貴族としては知識あって損はないし、私も使えたら便利だと思わない？　別に剣士系でも魔法は多少できるし」

　俺は「ま、いいけどさ」という気持ちで了承する。

「そっか。じゃあ、姉さんも一緒に教えることになるな。俺もそこまで高等な治癒術は使えないから、本当に基礎しか教えられないけど……」

「それで十分よ。フィリアと二人で学ぶ形ね。ふふ、よろしく頼むわ、弟よ」

　こうして、妹と姉の二人に治癒魔法をレクチャーするという不思議なイベントが始まった。

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