悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう

空月そらら

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序章

第16話 なんなんだあの強さは? カイル視点

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「ど、どうなっているんだ、ぼ、僕が負けた?」

 僕は今、学園の保健室に横たわっている。

 どうやら、アレンとの決闘に負けたらしい。

 しかも、場外負け――情けない、まさか僕がこんな形で負けるとは。

「くそ、なんであいつが第3級魔法を使えるんだよ……」

 第3級魔法だぞ!? そんなもの、相当な魔術の才能と経験がなければ扱えるはずがない。

 上位魔法は選ばれた者だけが手にする力だ。

 それを、アレンは何の苦労もなく、涼しい顔で使いこなしていたなんて……信じられない。

 僕は《剣聖》のスキルを駆使して、剣技を次々に繰り出した。

 それなのに、あいつの前では僕の剣技なんて、まるで子供の遊びのように無力だった。

「もしかして、あいつは転生者なのか?」

 そんなことが頭をよぎった。

 原作にはこんな展開、どこにもなかったはずだ。

 アレンは、ただの悪役貴族。

 僕に倒され、ざまぁされるべき存在だった。

 それなのに、僕とは比べ物にならないくらい強い。

 こんな事はあってはならない。

 あのアレンは、ゲームでは第8級魔法すらまともに使えない無能な令息のはずだ。

 魔法テストでもFランクの成績しか出せなかった雑魚キャラ。

 けど、もしあいつが転生者だったら?

 もしそうなら、この世界のシナリオを既に理解していて、僕の人生をめちゃくちゃにする気かもしれない。

 僕は、この世界を愛している。

 ヒロインたちとの物語、そしてハーレム生活。

 僕は全てを手に入れ、ヒロインを支配するんだ。

 そう、この世界の主人公は僕、カイル・リューコスだ。

 何をしても、許されるはずだ。

 でも、もしアレンなんかにヒロインを奪われたら?

 そんなことがあったら、僕は怒りで狂ってしまうだろう。

「絶対に、アレンを殺してやる。僕の手で……!」

 僕には最強のスキル、《剣聖》がある。

 今はまだ完全には使いこなせていないが、いつかあいつを倒す力を手にする。

 簡単には終わらせない。

 じっくりと、苦しめながら、殺すんだ。

「ふはははは! そうなれば、この世界は僕の物だ! ヒロインも、すべて!」

 僕は、この世界のシナリオを守る。

 アレンがそれを崩そうとするなら、絶対に許さない。

「待っていろよ、アレン……」
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