悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう

空月そらら

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序章

第17話 ゴブリンの討伐

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「アレン、突然こんな事になっちゃってごめんね? でもあの場には丁度B級レベルの私達がいたからさ」

 馬車の中で、俺はユキにそう声をかけられる。

 揺れる車内の中、ユキの言葉がやけに穏やかに聞こえた。

 まあ、いきなりB級のオークと戦うことになれば、普通、腰が抜けてもおかしくない。

 それに、今回の依頼はただの魔物討伐ではなく、人命救助も兼ねている。

「大丈夫だ、アレン。今回は俺たちが前線で戦うから、後ろで見ててくれ。さすがに初戦で戦うなんて無理だろ? しかも相手はオークだしな」

 ゴウが俺にそう言い、ルンもそれに続ける。

「そうだよ~、まずは私たちの戦いを見ててね~」

 二人が俺に視線を向ける。

 ユキもそれを見てくすりと笑い、俺に優しく微笑んで口を開く。

「ゴウたちの言う通り、今回は私たちの動きを見ててね、アレン」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 パーティーの連携は非常に重要だ。

 少しでもタイミングがずれれば、一瞬で全てが崩れてしまう。

 だからこそ、俺はユキ達の動きをしっかりと観察し、学ばなくてはならない。

「お、そろそろ着くよ~」

 馬車が止まり、ルンが声を上げる。

「ここら辺でオークと冒険者が出会ったんだよな?」

 ゴウが確認し、ユキが指示を出す。

「よし! 皆降りるよ!」

 ユキが軽やかに馬車から飛び降りる。

 それに続いて、俺たちも馬車を降りる。

 周囲には木々が立ち並び、風に揺れる葉の音が響く。

 緑豊かな景色の中で、俺達は冒険者の痕跡を探し始める。

「それじゃあ、冒険者がどこにいるか探そうか。アレン、あんまり私から離れないでね」

「ああ、分かった」

 歩きながら、俺は行方不明の冒険者を探す。

 この独特の緊張感――学園や王都では決して味わえない感覚だ。

 自然と身が引き締まる。

 ユキが聞いた話によれば、今回のオークはかなり大きい個体で、木の棒を武器として持っているらしい。

 視界に入ればすぐにわかるだろうが。

「あ! 何かいるよ~!?」

 ルンが突然声を上げる。

 見ると、そこにはゴブリンが3匹。

 下位魔物だが、彼らも武器として小型の剣を持っている。

「あいつは、ゴブリンじゃねえか」

「ここは私たちに――」

「いや、俺がやろう」

 俺はユキの言葉を遮り、前に出る。

 ゴブリン程度なら、あんまり魔力を使わず簡単に倒せる。

 ユキたちの体力を温存するためにも、ここは俺がやるべきだ。

「第4級魔法 《エクリプス・闇槍》」

 俺の手から、闇の槍が放たれる。

 その瞬間、ゴブリンたちは驚き、逃げようとしたが――。

「グギャアアアアア!?」

 放たれた槍はゴブリンに直撃し、全てを貫いた。

「これで終わりか」

 俺はため息をつきながら呟く。
 
「え、え? ど、どうなってるの?」

 俺はユキの困惑した表情に気づく。

 ゴウとルンも同様に驚愕していた。

「今のって第4級魔法じゃねえか!? そ、そうだよな、ルン!」

「う、うん……今のは確かに第4級魔法だった。どうなってるのよ~!?」

 驚愕と困惑に包まれるユキ達を前に、俺はただ、静かに立ち尽くしていた。
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