悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう

空月そらら

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序章

第18話 治癒魔法

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「えっと、魔法は独学で学んだんだ」

 ルンが俺に詰め寄ってきたので、咄嗟に俺は嘘をつく。

「ど、独学で~!? でも第4級魔法は相当知識がないと発動出来ないよ~!?」

 ルンはまるで星を見つけたかのように俺を見てくる。

「お前、凄いよアレン……」

「まさか、こんなに強いなんて」

 ユキ達は驚愕した表情を浮かべて俺を見る。

 まあ当然の反応だろう。

 ここ王国では、魔術師の大半が第5級魔法から4級魔法の範囲でしか戦えない。

 俺の父、デリックでさえ第3級魔法だしな。

「本当に嬉しいよ! アレンが私たちのパーティーに入ってくれて!」

「間違いねえな、こりゃ他のパーティーに取られてたかもしれねえ」

「ムム、私も負けられません~!」

 なんだか、ユキ達の視線が先ほどとは違い、少し怖いんだが。

 そんな会話をしていると、森の奥から悲鳴が響き渡る。

「だ、誰か! 助けてくれ!!!」

 突然、森の静けさを突き破るように、誰かの絶望的な叫び声が響く。

 おそらく逃げ遅れた冒険者が声を上げているのだろう。

「急いで行くよ皆!」

 ユキは先頭を切って駆けていく。

 俺達も続いて悲鳴が聞こえた方向へ向かって行くのだった。
 
 ★

「俺たちはここだ! 助けてくれ!!」

 声のした場所に着くと、2人の冒険者が見える。

 どうやら怪我をしているようで、2人ともオークから後ずさりをしているようだ。

「ルンは後方から魔法で攻撃、前衛は私とゴウで行くよ!」

「おっけ~!」

「了解!」

 ユキがオークと戦っている間に、俺は怪我をしている冒険者の所へ向かう。

 そこには男と女の冒険者がいた。

 命に別状は無さそうだが、怪我が酷く、走る事は出来なさそうだな。

「大丈夫ですか? どこら辺が痛みますか」

「あ、足首の方が痛くて……」

「わ、私も」

「分かりました、第5級魔法《ヒーリング》」

「ど、どうなってるの? 傷が治っていく……」

 俺は治癒魔法を使い2人の傷を治していく。

 初めて治癒魔法を使ったから少し緊張するが、きちんと魔法が付与されているらしい。

 そして治癒が完了し、俺はその場を立ち上がる。

 すると、男の冒険者が俺に声を掛けてきた。

「あ、あなたは治癒魔法が使えるのですか? しかも第5級魔法を」

「ああ、そうだが……」

 冒険者の中だと、魔法を使える人間は非常に珍しいのだろうか。

 まあ、ある程度学びがなくては魔法は扱えないし、あまりいないのかもしれないな。

「あ、ありがとうございます! あの、名前は何と言うんですか?」

「俺の名前はアレンだ」

「アレンさん! ありがとうございます!」

 そう言って2人の冒険者は頭を何回も下げてくる。

 まだ傷が癒えたばかりなので、俺は頭を下げるのを止めようとするが、何度も感謝を俺に伝えてくる。

(なんだこの感じ……俺は嬉しいのか?)

 俺はこの世界に転生してから、初めて気持ちが高揚している。

 俺の前世では誰からも感謝なんてされなかった。

 会社で働いていた時も、学生の時も、俺が誰かの為に行動しても、感謝なんてされた事は無かった。

「ゴウ! 一気に行くよ!!!」

「おう!」

 そんな記憶を思い返していると、ユキ達の声が聞こえる。

 連携の動きを見るに、どうやらオークに対して連撃を繰り広げるようだ。

「お前たちはここからすぐ離れてくれ、戦闘の邪魔になる」

「わ、分かりました!」

 俺が短くそう告げると、冒険者たちは戸惑いながらもすぐにその場を離れていく。

 背後に残る足音が遠ざかると同時に、森の静寂が戻ってきた。

 だが、その静寂はすぐに破られる。

 巨体のオークが、突如として獣じみた咆哮と共に、力強い足で地面を蹴り上げ、驚くべき速度で俺のほうへ跳んできた。

 大地が震え、枯葉が舞い上がる。

 こいつ、音に反応して俺の方に来たのか。

「アレン!!! そこから離れて!!!」
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