悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう

空月そらら

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1章

第45話 秘密会議 ラール視点

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「ラール、どうやら『黒神』は裏で魔法書の売買をし、取引をしているらしいぞ」

 仮面をつけた少女が静かに言葉を発する。

 彼女の名はミリア。

 仮面の奥に隠れた眼光は鋭く、まるで深淵を覗き込むかのように冷ややかだが、同時に魔法に対する知識と才能を伺わせる知的な光を帯びていた。

 ミリアは冒険者ランキング3位に名を連ねるパーティー『白い翼』のメンバーであり、その実力は折り紙付きだ。

 そしてミリアの隣では、重厚な鎧を身にまとった屈強な女、モーナがうなずきながら言葉を継ぐ。

 「ああ、しかもその稼いだ金を組織の強化に使ってるらしいぜ」

 重装備の鎧がきしむ音が、静かな部屋に低く響く。

 モーナはミリアとは対照的に、力強さと威圧感を持った冒険者で、モーナの一言一言が鋭い刃のように重みをもって響く。

 その鋭さは、ただの情報ではない確かな裏付けがあるのだと、私に伝わってきた。

 私は少し考え込む。

 確かに、組織を強化するために金を使うのは理解できる。

 だが、それだけではない気がした。

 『黒神』の勢力がただの武力だけでなく、金の力で支持を広げているのだとすれば、賄賂や裏取引も行っているのではないか――そう考えると、私の心中には暗い影が落ちる。

「これでは収集がつかないわね、ありとあらゆる問題が発生しているわ」

 そう言ってため息をついたのは、パーティーのリーダー、リンだった。

 リンの長い黒髪が、まるで漆黒の夜を切り裂くように揺れる。

 リンは冷静でありながらも、その瞳には炎が宿っている。

 私は、この問題の元凶が誰であるか、心の中で理解していた。

 自分と同じ王族であるクロド――王国の第二王子。

 私とクロドは支持率を巡って日々争いを繰り広げている。

 現国王である父上は、静かにその様子を見守っているが、父の胸中には「強き者が王国を治めるべき」という信念が根付いているだろう。

「そうね、まずは黒神の魔法書売買を止める必要があるわね」

 私は、決意を固めたように静かに言い放つ。

 しかし、黒神がどこで魔法書を手に入れ、売買しているのかは依然として謎に包まれている。

 情報戦の面では、私はクロドに劣っていると感じざるを得ない。

「魔法書……一体どこから来ているんだろうな」

 ミリアが呟くと、モーナが軽く肩をすくめた。

 「まあまずは、どの場所をアジトにしているかを探せばいいんじゃねか? そしてそこにいた奴らから情報を聞き出す!」

 モーナが力強く提案する。

 その口調には、自信と行動力が満ち溢れていた。

 やはり、最も確実な方法は敵の拠点を叩き、そこで情報を得ることだろう。

 それに、奴らと直接対峙することで、何か新たな手がかりが見つかるかもしれない。

「それがいいわね」

 ラールはモーナの意見に同意する。

 この国を守るため、そして、クロドに対抗するために、今こそ行動を起こすべき時なのだ。

「では、ラーン。私達はそのアジトを探す任務になるけど、いいわね?」

「ええ、勿論いいわよ」

 ラールは力強く頷き、リンたちの行動に許可を与える。

 リン達はそのまま部屋を出て行こうとするが、ラールはふと思い立ち、彼女たちを呼び止める。

「そういえば、あのアレン君ってどうなったの? ほら、レッドストーンを回収している冒険者の子」

 この問いは、ずっと私の頭の片隅に引っかかっていた。

 リンたちの話によれば、アレンという若き冒険者もまた、黒神の組織の活動を妨害しているという。

 それも、ただの冒険者ではなく、レッドストーンを収集し、私と同じような保管方法をしていると聞いた。

「ああ、あいつなら最近『雪の風』のパーティーに所属していて、パーティーランクがAになったらしいぞ」

 ミリアがそう告げると、私は驚きの表情を浮かべる。

 パーティーランクがA……確か前に聞いた話ではBだったはずだが、まさかこれほど早く成長するとは。

 普通の人間なら、ここまでの急成長はありえない。

 私の推測では、アレンには何か突出した才能が秘められているに違いない。

「アレン君のお陰?」

「間違いないな」

 ミリアが自信たっぷりに答える。

 ミリアの目には、どこか羨望のようなものが浮かんでいる。

 ミリアは『白い翼』の中でも最強の存在であり、ミリアの魔法はこの世界でも異端とされるほどの力を持っている。

 そのミリアがアレンを高く評価しているのだから、彼の才能は間違いなく本物だろう。

「成長が楽しみね、是非アレン君を私の傘下に入れたいのだけれど」

 私がそう言うと、リンが軽く眉を上げて口元をほころばせる。

 「ラール殿下、顔がニヤけていますけど……」

「あらあら、王女たる者が、ごめんなさいね」

 リンに注意され、私は慌てて表情を引き締める。

 どうやら、私は考え事をしていると顔に出てしまう癖があるようだ。

「では私達はもう行くぞ、またなラール」

 そう言って、ミリアは転移魔法を発動し、リンたちを連れて一瞬にして部屋から姿を消す。

 転移魔法の魔力が、微かにラールの体をくすぐった。
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