【書籍化決定】悪役貴族に転生した僕、家族を救うために水魔法を極めて破滅回避する!

空月そらら

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エリシオン学園編

第128話 行ってきます、学園へ

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「ありがとう、リリア」

 その言葉が、なんだかとても温かくて。

 僕は少し背筋を伸ばして、歩調を整える。

 そして食堂へと向かうと、そこにはすでに父と母、エレノアお姉ちゃんがそろっていた。

 皆、格式高い貴族の装いに身を包み、きりっとした雰囲気をまとっている。

 僕が入ってくると、エレノアお姉ちゃんが椅子から立ち上がり、さっと僕の元にやってきた。

「リウス、襟がちょっと曲がってるわよ」

 そう言って、エレノアお姉ちゃんはやさしく僕の襟元を整えてくれる。

 僕はちょっとくすぐったくて、顔を赤らめながら「ありがとうお姉ちゃん」と返した。

 エレノアお姉ちゃんは、嬉しそうに目を細める。

「ふふ。似合ってるわよ、その服。……もう、本当に立派になったわね、リウス」

「そ、そうかなぁ……」

 僕は少し苦笑いすると、エレノアお姉ちゃんは肩をすくめて笑う。

 その時、ふわっと白い影が足元を駆け抜けた。

「あっ……フェル!」

 椅子の下からひょっこりと顔を覗かせたのは、我が家のもふもふアイドル、フェルだった。

 今日は特別に、小さな蝶結びのついた正装を着せられていて、いつも以上に愛らしい。

「もふっ!」

 フェルは僕の元に駆け寄ってくると、くるりと背を向けて「撫でて!」と言わんばかりにお尻を突き出してくる。

「もぉ~しょうがないなぁ」

 僕はくすりと笑いながら、フェルのふかふかの毛を撫でてやる。

 すると、フェルは嬉しそうに「くぅ~ん」と鼻を鳴らし、尻尾をぶんぶんと振る。

「今日は僕の晴れ舞台なんだよ、フェル」

 フェルは「そだね」という顔で見上げてきて、前足で僕の裾をちょんちょんとつつく。

 そんな家族との微笑ましい時間を過ごしつつも、僕はテーブルに目を向けた。
 
 食堂の大きなテーブルには、すでに朝のご馳走がずらりと並んでいた。

 焼きたてのふわふわパンに、香ばしく焼かれたベーコン、ほんのり甘いカボチャのスープに、地元で採れた新鮮な野菜のサラダ。

 それに、果物を使ったコンポートが、透き通ったガラス皿に盛られている。

「うわぁ……!」

 席についた僕は、思わず目を輝かせた。

 どれもこれも美味しそうで、朝から胸が弾む。

 目の前には、僕のために用意された特別なプレート。

 子供用だけど、手の込んだ盛りつけがされていて、まるで祝福の一皿みたいだった。

「今日の朝食は、入学のお祝いも兼ねて、ちょっと豪華にしてみたわ」

 母クラリスが優しく言って、にこやかにスープをよそってくれた。

「ありがと、おかあしゃん! いただきまーす!」

 僕は手を合わせ、いただきの言葉を言ってから、スープを一口すする。

「……んーっ、あったかい……!」

 カボチャの甘みとやさしい塩気が口いっぱいに広がって、心までとろけそうになる。
 
 次は焼きたてのパン。

 ナイフでふわっと割ると、ほんのり湯気が立ちのぼる。
 
 そこにバターを乗せると、じゅわっと溶けて染み込んでいった。

「これ……おいしいでしゅ!」

 もぐもぐと夢中で食べながら、思わず笑みがこぼれる。

「ふふ、いっぱい食べてね、リウス。今日はいっぱいエネルギーがいるから」

 エレノアお姉ちゃんが、向かい側の席からそう声をかけてきた。
 
 その言葉に、フェルも「もふっ!」と短く鳴く。

 足元を見ると、専用の小皿に用意されたごはんを前に、尻尾をブンブン振っていた。

「フェルの分も、特別なんだから。しっかり食べるのよ~」

 お姉ちゃんがそう言うと、フェルは「わんっ」と答えるように声を上げて、ぱくっと一口食べ始めた。

「なんだか、フェルも今日は緊張してるみたいね」

 母が微笑みながら言うと、父が「緊張してるのは誰よりもリウスだろう」と、豪快に笑った。

「う……うん、ちょっとだけ」

 僕が恥ずかしそうにうつむくと、父は「堂々としていればいい」とだけ、短く言ってくれた。

 その言葉が、すごく頼もしく感じて、僕の中にじんわりと力が湧いてくる。

「……うん、がんばる」

「いい子ね、リウス」

 母がふんわりと微笑んで、僕の手をそっと包んでくれた。
 
 その温かさに、胸がいっぱいになる。

 家族で囲む朝の食卓――それは、どんなお祝いの言葉よりも、僕にとって大切な時間だった。

 すると、母クラリスは微笑みながらも、少し涙ぐんでいる。

「もう七歳だなんて……本当にあっという間ね」

「……おかあさん?」

「だって、リウスが初めて歩いたときだって、ついこの前のように思えるんですもの」

 僕がもじもじしながら視線をそらすと、フェルがすかさず間に入ってきて、母の膝に前足をかけた。

 母は「フェルも応援してるのよね」と言いながら、もふもふの頭を撫でている。

 そして朝食が終わり、準備が整った僕たちは邸宅の外へと向かう。

 玄関前には、メイドたちがずらりと並び、出発を見送る準備をしていた。

 リリアもその中にいて、しっかりとした笑みを浮かべてくれている。

「リウス様、行ってらっしゃいませ。……どうか、お気をつけて」

「うん、行ってきます!」

 父が手に持っていた転移石を掲げると、淡く青白い光が魔法陣のように広がり、空間を切り裂く。

 光の輪の中へと、僕たちは一歩踏み出した。

 ――いざ、エリシオン学園へ。
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