無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

空月そらら

文字の大きさ
37 / 72
1章

第37話 神玉の半分を魔力

しおりを挟む
「お、お前は」
 
「あら、ロラン達の方が速かったのね」
 
そう俺に声をかけてきたのは、第二王女のアリスだ。

 そして横には第二王子のアデルがいる。
 
「随分と虫の息のようね、ロラン」
 
アリスがそう呟く。

 先程まで死闘を繰り広げていた俺は、魔力と体力を消耗しているからな。

 そんな会話をしていると、近くにいたケルベロスの体が光に包み込まれるように消えていく。
 
《神玉》 
 
ケルベロスの体内から、一つの大きな石が現れる。

 その石は神々しく輝き、見るものを魅了する。
 
「これが、神玉……」
 
神玉、その石は膨大な魔力を含んでおり、装備や剣の素材として使うことで強力な武器を作ることが出来る。
 
「セレス、早く回収しよう」
 
俺はそう言って、ケルベロスがいた場所に向かう。
 
「あら、そうはさせないわ」
 
アリスはそう言って、魔法を発動する。
 
《上級魔法 闇槍》 
 
アリスの放たれた魔法は、俺に向かって飛んでいく。
 
《雷斬ッッ!》 
 
だがその攻撃が当たる直前に、セレスがアリスの攻撃を弾く。
 
「アリス殿下! これはどういう事だ!」
 
セレスは焦ったような声を上げる。

 その声で、この状況がかなりマズイ状況だということに気づく。

 今の俺たちは魔力も体力も底をついている。

 そんな状況であいつらと戦闘になったら確実に殺されるだろう。

今このフロアには俺たちしか居ない。

 王位を争うアリスにとっては、俺たちを殺し、神玉を手に入れることが最善だと考えるだろう。
 
「全く、残酷ね。あなた達の体力は殆ど残っていない。そんな状況でこの私と戦うなんて」
 
アリスは余裕そうにそう呟く。
 
「僕がいるのも忘れないで欲しいけどな!」
 
アデルが剣先を俺たちに向ける。

 どうにかしてこの状況を打破しなくてはならない。

「転移石を使って逃げるという手もあるが、リア達と距離が離れているし、神玉が奪われる可能性がある」
 
セレスがそう呟く。

 確かにその可能性は高いだろう。

 だがこの状況で逃げ切れるか……。
 
俺は必死に頭を回転させる。

 そしてある一つの方法を思いつくのだった。
 
「神玉の半分を魔力に変えるしかない」
 
俺はそう言うと、セレスは納得したような表情を浮かべる。
 
「なら私はリア達を連れてくるぞ!」
 
そう言ってセレスは、リア達のいる方向へと走り出す。

 俺がセレスを見送ると、アリスとアデルがこちらに向かって歩いてくる。
 
「無駄話はこのくらいにして、早く終わらせましょう」
 
アリスはそう言うと、魔力を体に纏わせる。

 俺は瞬時に神玉を自分の胸元まで近づける。
 
「あ、あいつ! 神玉を!」
 
アデルは俺を見て焦ったように声を上げる。

 だが時すでに遅し、俺は神玉の半分を自分の魔力と融合させる。

 すると体力と魔力が徐々に回復していくのを感じる。
 
そして数秒後、体力と魔力も完全に回復した。
 
「これで全回復だ」
 
「別に、回復した所で私の勝利は揺るがないわ。それにあなたは、神玉を半分も取り込んだのよ? その膨大な魔力に体が耐えられるわけが無い」
 
アリスはそう言って笑う。

 確かにアリスの言うように、神玉を体に取り込むなんで自殺行為だ。

 だが、俺はこの神玉を自分の体に取り込むのが、最善の策だと踏んでいる。

 何故なら今の俺には炎竜を体に憑依させているからな。
 
《上級魔法 闇風》
 
するとアリスが魔法を発動させる。

 放たれた魔法は黒い風の刃のようなものを生み出し、俺の方に一直線に飛んでいく。
 
《最上級魔法 炎星》 
 
俺の放った炎は、アリスの魔法を打ち消すと同時に、爆発するように辺りに散らばる。

 そしてその爆風がアリスとアデルを襲う。
 
「な!?」
 
その衝撃により、2人は地面に転ぶ。
 
「くそ、どうしてロランがこんなに強いんだ!?」
 
アデルがそう叫ぶ。

 すると横でアリスが立ち上がり、こちらに目を向け口を開く。

「その魔法は……まさか炎書の!? どこでそれを手に入れたの!?」
 
「さあな」
 
俺がそう答えると、アリスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに表情を戻す。
 
「いいわ、力づくで聞き出してあげる」
 
そう言って、アリスは俺の方へと走り出してくる。

 その行動に対し、俺は掌をアリスに向けて構えると、再び魔法を放つ。
 
《最上級魔法 爆焔》 
 
俺が唱えた魔法は、今までとは比べものにならないほどの火力を誇っており、辺り一面を火の海へと変えていく。
 
《上級魔法 水渦》 

 アリスはそれを相殺するために、魔法を唱える。

 流石はアリスとでも言ったところか、俺が撃った魔法に対して水の波紋を作りながら、その勢いを弱めていく。
 
「ぼ、僕も加勢するぞ!!」
 
そう言ってアデルは俺に向かって魔法を放つ。
 
《中級魔法 氷矢》 

 アデルが発動させた魔法は、空中で何本にも分裂していき、俺に襲いかかってくる。

「そんな攻撃、無駄だ」
 
俺はそう言って、防御魔法を唱え、アデルの攻撃を全て弾き飛ばす。
 
「アデル程度の魔法じゃ役に立たないわね」
 
そう言ってアリスはアデルに、冷たい視線を送る。

 すると怒りが頂点に達したのか、アデルは叫ぶ。
 
「な、何なんだと!?  ここまで来れたのも僕のおかげだろ!」
 
「あらあら、そうだったわね。もう忘れちゃってたわ」
 
そう言って、アデルをバカにする。
 
「こいつ……!」
 
アデルは額に青筋を浮かべて、怒りで体を震わせる。
 
「なんだ仲間割れか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...