異世界での異生活

なにがし

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7.兄妹

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「組合長は、何組合の長なのですか?」

 組合長の動きが止まり、目線を斜め上にして記憶をたどった。

「ウハハハハハ。すまん、すまん。そういえば自己紹介がまだだったな。私は、ここ冒険者組合の組合長、メンガンダル・ダ・カワノだ。よろしく頼む。こちらは従業員の」
「シンシアです。主に事務と受付をしています。よろしく。」

 立ち上がり姿勢を正し、丁寧に挨拶した。

「改めまして、タナカヤスオです。よろしくお願いします。」

 ここが、宿屋ではなく冒険者組合と知って色々と納得した。
そして、組合長と握手を交わし、その後シンシアと1階の受付へと移動した。
受付の奥にある事務室では、ヤスオの冒険者証明の発行で大騒ぎになっていた。

 しばらくして、冒険者証明が発行されてヤスオに手渡された。

「白色の冒険者証ですか。初めて見ました。」

 冒険者証明の発行に時間がかかりそうだったので、その間にシンシアは帰る準備をした。準備といってもロッカーに荷物を取りに行くだけだが。
荷物を持ったシンシアが、冒険者証を物珍しそうに見る。

「人によって色が違うのですか?」

 シンシアは言葉こそ丁寧になったが、どこか不機嫌で、いつか爆発しそうで怖かった。
なので、気安く話しかけるのも気が引けたが、長い沈黙にも耐えられそうにないので、恐る恐る尋ねた。

「冒険者のレベルによって色が違うのです。S級は金色。A級は銀色。そして白色はG級です。」

 やはり機嫌が悪く、対応するのが面倒なようで、会話は必要最低限しか言わない。

「G級は、めずらしいですか?」

 あまり話しかけたくはなかったのだが、少しでも情報を得たくてヤスオは勇気を振り絞った。
案の定、シンシアに睨みつけられ、大きなため息をついて面倒そうにされた。

「どんな方でも大抵Fから始まります。たまに、Eから始まる優秀な方もいるぐらいです。G級は新人冒険者が、最低ランクじゃないと自信を持ってもらうために作ったいわば架空の等級です。珍しいどころか、あり得ないです。」

 架空の等級。自身が一般の人より下だと知り、ますますこの世界で生きる自信を失った。

「じゃあ、そのあり得ない等級になった俺って何なのでしょう?」
「文字通り、最低級のボンクラってことでしょう。でもまぁ、大昔に見世物用で作られた白い冒険者証。職員総出で探し回っている姿は、面白かったなぁ。あのアガサさんの焦った顔。初めて見た。クスクスクス。」

──キター。本日3回目のボンクラ。

 だが、思い出し笑いをしたおかげでシンシアの機嫌が少し戻ったようだ。
これなら、ボンクラも悪くないと思った。


 シンシアは、事務服のまま自身の荷物を背負い、ヤスオを街へ案内した。

「これから、どこに行くのですか?」

 アリアドネの荷物を肩にかけて、シンシアの後を追いかける。

「“アントの夢”っていうところ。アリアドネ様がお作りになった組合よ。」

 時間とともに怒りが収まってきたようで、会話が気さくになってきた。

「何の組合ですか?」
「孤児院組合。アリアドネ様の資産の管理、運営しながら、組合加入孤児院の運営と資金の援助をしているところよ。」

 個人の資産で慈善事業。しかも、複数。アリアドネがとても優しい方だとよく分かる。
だが、収入源が気になる。

「慈善事業ですか。素晴らしいですね。アリアドネ様は何をやって収入を得ていたのですか?」
「冒険者よ。あと薬品を作って、アントの夢で販売もしているわ。」

 それだけで、孤児院の援助を。冒険者とはそんなに儲かる職業なのか。
だったら、アリアドネがいないのは困るのではないかと気になった。

「じゃぁ、これから大変なことになるのでは?」
「そう。それは、あなたもね。それで、大変な者同士これからどうするか話し合いにいくのよ。」

 だいたい話がみえた。
つまりヤスオが自立するまで、アリアドネの資産からの援助で生活する。
これから心配になる食べること、寝る場所のサポートを受けられる。
それを話に行くのかと、この世界の人達の親切に感動した。
だが、その仲介になぜシンシアなのだろうか。
冒険者組合とアントの夢にどんなつながりがあるのか気になる。

「なるほど、ところで冒険者組合とアントの夢とは、何かつながりがあるのですか?」
「冒険者組合はないよ。あるのは、わたし。わたしはね、孤児院出身なの。そしてアントの夢の3人の従業員も孤児院出身。だから、わたしにとってアリアドネ様は母であり、従業員は兄弟よ。」

 子供のように次から次へと質問され返答していたら、シンシアは怒りを忘れていた。

「ここよ」

 アントの夢に入ると、突然のシンシアの訪問に従業員3人は大喜び。
しばらく世間話をした後2人は2階の会議室に案内された。
部屋の中央に大きな会議用テーブルが置かれており、両側に背もたれと肘掛けがついた椅子が4つ並べて置かれていた。
ヤスオとシンシアは片側に並んで座った。
対応してくれたのは、細面で口ひげが良く似合う中年の男性だった。
男性はシンシアの正面に座った。

「ヤスオさん。こちら責任者のセルジュ兄さん。兄さん。こちらヤスオさん。」
『初めまして』

 挨拶を済まし、まず、シンシアがこれまでの経緯を説明した。
セルジュは驚き、動揺し、頭を抱えたまま動かなくなってしまった。
 しばらく沈黙が続き、やっと口を開いた。

「状況は分かった。まさかアリ姉さんが行方不明になるとは…。それで、その方が何か関係しているというのだな。」

 ヤスオを睨みつけ、胡散臭い奴だと思っている顔だ。

「そうよ。兄さん。」

 やや下を向き、しょうがないのよと言いたげな顔をする。

「だからといって、何でこんなボンクラそうな奴に援助しなければならないのだ。」

 セルジュは立ち上がり、両手を頭に置いて天に向かって叫んだ。

──あれれ。4回目のボンクラがきたぞ。

 この人も遠慮なく愚弄するのかと、目が点になった。

「ヤスオさんは、アリ姉さんの恩人かも知れないの。そんな人を見放したら、あとで怒られない?」

 一応、後押しはしてくれるが、どう見ても仕事上の責任感で、ヤスオを心配した感じではなかった。
事実、私の立場も分かってよと言いたげな顔だった。

「うっ。それは‥確かに。」

 肩を落としながら諦めた表情で座る。

「それに、いちいち言っていることがわたしと被っているの。恥ずかしいからこれ以上は勘弁して。」

 顔を赤らめて腕組をし、頬を膨らまして怒る。

「なんだ、お前もボンクラを言っていたのか。」
「そう。2回目よ」
「4回目です。」

 突っ込んだが、声が小さく聞こえなかったかスルーされた。

「いろいろ計算しないと、これからの検討もできない。しばらく席を外すので待ってくれないか。その間、食事を用意するので、食べていてくれ。シンシアも食べるだろう?」
「ええ兄さん。頂くわ。」

 セルジュは、ブツブツ言いながら階段を降りていった。

「もうお昼か。そういえば、わたし達、朝から何も食べてなかったわね。」

 珍しく、シンシアの方から話しかけてきた。その表情は穏やかで、機嫌も完全修復されていた。

──グッキュルキュルキュル。

 お腹で返事したので、シンシアは笑っていた。

「そんなに頻繁に現れるのですか?」

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