異世界での異生活

なにがし

文字の大きさ
8 / 117

8話 初めての食事に感動

しおりを挟む
「そんなに頻繁に現れるのですか?」

 食事が来るまで時間がかかりそうだが、それまで沈黙が続くのは耐えられそうにない。どうでもいい事なのだが、聞いてみる事にした。

「ん、何の話?」

 突然の質問にシンシアは質問内容が理解できず、聞き直してきた。先ほどまでとは打って変わってのご機嫌にヤスオは安堵していた。

「転移者です。報告書があるくらいだから、たくさんいるのかなって思って」

 別の転移者と接触できるかもと気になっていた。だが、いたとしても合うのは生活が落ち着いてからで、まだまだ先の話だ。

「あぁ、そうでもありません。報告書によると前回出現したのは102年前のフェスティナ王国です」

──102年前か、さすがにお亡くなりになっているよな。
 
「残念です。できれば会いたかったです」

 シンシアはうなずき、良く分かったわねと言いたげな表情をみせた。

「そうですね。フェスティナ王国に赴くには、陸路では大シン帝国、海路ではククレ王国を抜けなければなりません。両国は事あるごとに、我国に干渉してきますから、我国から出国する人間を容易には通しませんね」

──会話が噛み合ってない?

 まるで、今も生きているような言い方をする。なぜそのような表現をするのか分からないが、念のため聞いてみた。

「今も、健在ですかね?」

 様子を伺うように聞いた。質問の意図が分からなくシンシアは不思議に思っているようで、首を傾げた。

「不幸な出来事に遭ってなければ、存命かと」

──生きているの?

 ヤスオも不思議そうな顔になった。2人が揃って不思議そうな顔をして、まるで不思議顔対決をしているようだ。

「100歳、超えていますよね」

 シンシアはこの会話の何が不思議で、ヤスオが困惑しているのか分からなかった。

「はい。報告書によりますと、転移されたのが20代中頃。今は130歳手前でしょうから、高齢ではありますがお亡くなりになる歳ではないかと…」

──あぁ、そういうことか。

 ヤスオが自分の勘違いに気がついた。おそらくこの世界の人は、ヤスオの世界より寿命が長いのだ。

「大抵の人はお幾つくらいで、お亡くなりになるのですか?」

 不思議顔対決が終了した。まだシンシアは不思議そうなので、シンシアの勝ち。

「個人差はありますが、200歳くらいです。・・ひょっとしてヤスオさんの世界では違うのですか?」

 シンシアも理解し、驚いた表情になる。

「はい、半分くらいです」
「まぁ、短命なのですね。ですが、報告書にはその方がお亡くなりになった記載はなかったですよ」

 この時、自分の姿が若返っていたのを思い出した。

「では、この世界にくると寿命が延びるのかもしれませんね」

 ひょっとして自分が若返ったのは、この世界の年相応の姿になったから。そう思うとヤスオは、シンシアの年齢が気になってきた。だが、この世界でも女性の年齢を聞くのは失礼だったらと思うと躊躇した。そんなことを考えていたら、知らず知らずのうちにシンシアの方を何度もチラ見していた。

「何を考えているのですか?」

──ドキッ。

 見透かされたようで、ヤスオの心臓が大きく鳴る。

「いや、あのー。そのー」

──閃いた!

「先ほどのセルジュさん。お幾つくらいの人なのかなと思いまして‥はは」
「セルジュ兄さん?確か100歳手前だったかと。…ははーん。さてはヤスオさん、私の年齢が気になったのでは?教えませんよー」

 そう言うと、シンシアは舌を出してみせた。

(やばい、ばれた。でも、か、かわいい)

 ヤスオがメロメロになっていると、階段が騒がしくなり二人の青年が上がってきた。

「姉さん、買ってきたよ。はい、どうぞ」

 青年は持っていた袋から四角い長方形の箱を取り出しシンシアの前に置いた。

「こんにちは。僕、マルといいます。よろしくお願いしますー」

 ヤスオの前にも同様な箱が置かれた。

「こんにちは。僕はカミルです。よろしくお願いします」

 湯呑を置き、やかんのお茶を注いだ。二人は正面に腰を下ろすと間髪入れず話し出す。

「姉さんがくるとお昼が豪華になるよ。もっと頻繁にきてよ」
「毎日でもいいよ」

 二人は返事を待たずに話すので、ヤスオもシンシアも聞いているだけ何も話せない。その後も二人は楽しく話ながら、食事を進めていく。シンシアも蓋を開け、頬張り始める。
 ヤスオも箱の蓋を開けた。中身はサンドウィッチだった。挟んでいるものが気にはなったが、周りは美味しそうに食べている。どうせ聞いても分からないだろうと覚悟を決めた。
 眼を閉じ、満を持して噛みついた。美味い。これは、カツサンドなのかトンカツに近い味だが、これほど美味しいのは食べた事がない。他にも、色々な素材が入っているようでパンとよく合う。
 その後も若い二人は食事中話し続けた。時折シンシアも巻込み、騒がしいお昼になった。
 そんな3人を気にせず、ヤスオは一人黙々と美味しい昼食を堪能していた。

 若い二人が片付けを済ませた後、1階へ降りて行った。入れ代わり、セルジュが上がってきた。

──かつてこれほど、美味いカツサンドを食べたことがあっただろうか。

 ヤスオは、カツサンドの美味しさに感動していた。
そんなヤスオを気にせず、セルジュは椅子に座ると前置きなしで話しを切り出す。

「このまま、孤児院や我々に変化がなければの話ですが、5年は持つと思います」

──おお、収入がなくなっても5年持つのか。

 改めてアリアドネの資産の多さに驚いた。

「それまでにヤスオ様には自立して頂きます。私達3人は身の振り方を決めるか、存続させる方法を見つけるか、どちらかを決めなければなりません」

──5年で一人前に。

 前世では、すっかりおっさんになり体力が衰え、物覚えも悪くなっていた。見た目は若くなっても自身は成長できるのか不安しかない。でも、やるしかない。

「ただ、アリ姉さんが戻ってくればすべて解決なので、とりあえずは時間を稼ぐことを考えればいいと思います」

 セルジュはあまり危機感を感じていないようで、余裕すら感じる。

「そうね。セルジュ兄さん達にはしっかり節約をしてもらって、アリ姉さんがいつ帰ってきてもいいようにしてもらわないと」

 二人はアリアドネが帰るのを信じて疑わないようだ。いや、現実を受け入れたくないのかも。これで、アリアドネ失踪が現実味をおびたら、ヤスオは関係者からどんな扱いを受けるのか心配になった。

「節約もだが、他の収入源も模索してみるよ」

 セルジュの顔がやる気に満ちている。やりがいを感じているみたいだ。

「うん。頑張ってね」

 シンシアも安堵したようで、嬉しそうだった。

「それで、ヤスオ様の住む所なのだが、当面はアリ姉さんの自宅はどうだろうか」

 シンシアの表情が変わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

エクセプション

黒蓮
ファンタジー
 血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。  雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。  やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...