異世界での異生活

なにがし

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13.孤児院

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 セメレは、ニッコリと笑って、部屋を出ていった。

 食堂は、とても賑やかで子供達の声が飛び交っていた。
長テーブルが2列に置かれており、テーブルの左右両側に長椅子が置かれている。
子供達は1列目に向かい合わせで座り、落ち着くことなく朝食をむさぼり食っている。
すでに食べ終わり奥で、はしゃいでいる子もいた。
2列目のテーブルでは、老人が一人静かに食べている。

──パン、パン。

「はーい。皆さんにお知らせがあります。食べながら聞いて下さい。」

 セメレが、手を叩きながら食堂に入ってくる。
子供達は注目し、はしゃいでいた子達も何事かとセメレの前にやってきた。

「今日から、新しい人がきます。その人は大人ですが、呪いのせいで少し記憶を失っています。ですから、皆さんと一緒に勉強することになりました。仲良くしてあげてくださいね。」

 子供達はざわめき始めた。やはり“呪い”が気になっているようだ。

「はい、先生。」         「はい。どうぞ。」
「その人死んじゃうの?」    「大丈夫です。死にません。」
「呪いはうつりますか?」    「大丈夫です。うつりません。」
「私達も呪いになるの?」    「大丈夫です。なりません。」
「呪いって何ですか?」     「病気の遠い親戚のようなものです。」 
「記憶って何ですか?」     「そこからですか。」

 ハーと一つ溜息をつき、子供達に右手の手の平を見せ、落ち着くよう求めた。
まるで、犬に“待て”をしているようだ。

「その方は、呪いの影響で大事なことを忘れてしまったのです。」

 子供達の騒ぎは収まらない。

「大事なことって何ですか?」  「主に、文字や常識です。」
「常識って何ですか?」     「私達が、当たり前と思っていることです。」
「当たり前って何ですか?」   「当たり前は当たり前です。」
「くじを引くとでるやつ」    「それは“あたり”で当たり前ではありません。」
「スルメ?」          「それは、”あたりめ“です。」

「とにかく、今日から一緒にしますのでお願いしますね。」

 話が横道にそれてきたので、セメレは話を切り上げた。
朝食が終わるとマイヤがヤスオを呼びにいき、子供達と合流した。
 自己紹介を待たずに、子供達はヤスオを質問攻めにしようと集まる。
だが、その場にいた老人が子供達に外に出るように指示をだす。
渋々外に出る子供達。セメレとマイヤに見送られて、ヤスオと老人も後に続いた。
老人は革の兜と鎧を纏い、短剣を腰に差していて、兵士か冒険者にみえた。

「わしは子供達の護衛をしている、トイと言う。皆はトイ爺と呼ぶ。あんたもそう呼んでくれ。」

 トイ爺は、三食ご馳走になるかわりに子供達の護衛と剣術指南を引き受けている。

「はじめまして。ヤスオです。よろしくお願いいたします。それで、これからどこかに行くのですか。」

 護衛がつくからには、どこか危ないところに行くのかと心配になる。

「午前中は、薬草を採りに街の外へ。午後からは教会に戻って勉強じゃ。」

 薬草採取。孤児院のわずかだが収入源になる。
外へ出たら一匹の犬が尻尾を振りながら、トイ爺のもとに寄り添ってきた。トイ爺はその犬をあやし、頭をなでた。

「ヤスオさん。こやつはボン。わしの相棒じゃ。」
「ボン。今日は、よろしく。」

 ボンの頭をなでようと、手をだす。

──ガブッ。

 ボンはヤスオの手に噛みついた。甘噛みで少し痛い程度なのだが、離れない。

「おいボン。離せ。」 「うぅぅぅ。」
「離せよ。」     「うぅぅぅ。」

 まったく離す気配がない。

「フォフォ。ボンはヤスオさんをえらく気に入ったようじゃ。さぁ行きましょう。」

 トイ爺は、かまわず先に行ってしまった。

「ちょ、ちょっと待ってください。ボン、離せ。」

 頭を押さえ引き抜こうとするが、抜けない。無理やり口を開こうとするが、強く噛んできて、痛い。
くすぐってもさすっても離れない。
 仕方なく抱きかかえて歩こうとするが、中型犬サイズなので重くて長い距離は歩けない。
なので、背中に背負って行くことにする。ボンも察してくれて素直に背中に乗った。

「さてはお前、これが狙いか。」

 こうして、犬を背負って歩く羽目になった。道中、無防備になったボンを子供達が触りまくったが、まったく動じなかった。


「やぁ、トイ爺さん。今日も薬草取りの護衛かい。」

 門番が気さくに声をかける。トイ爺は冒険者証を見せた。

「そうじゃ。全員で13名と1匹じゃ。通るぞ。」
「どうぞ。それで、子供達がいつも通り1,2,3、…11名と?…!待て。」

 門番はヤスオを見つけると、道を塞いで止めた。

「爺さん。この犬と一体化している者は何?」

 ヤスオはボンが落ちないように大きく腰を曲げ、余った左手で冒険者証を出して見せた。

「白い冒険者証。初めて見た。本物なのか?」

 門番は固まってしまった。すると門の内側に設置されている門番の控室から別の門番が出てきた。

昨日さくじつ、冒険者組合史上初のG級冒険者がでたそうだ。あんた、G級ヤスオか?」
「あっ。はい」

 ヤスオは姿勢を正し、軽く会釈した。

「冒険者組合から、温かく見守って欲しいと頼まれている。通してやれ。」
「分かりました。あんた、違う意味ですごいね。通ってよし。」

 門番は、ヤスオの上着のポケットに冒険者証を入れてやり、道を開けた。
ボンは手を離し、走って門を抜けた。ヤスオも2人に会釈して、門を通り抜ける。


「今日はこの辺で、やるぞ。」『はーい。』

 トイ爺の声かけに、子供達が一斉に作業を始める。門を抜けてすぐの場所だった。
黒髪に赤いリボンを付けた小さい女の子がヤスオに近づいてくる。

「おじさん。一緒に薬草探し、しましょ。」

 その場所は、門に続く一本道、両側が一面色々な草や花が自生する広い場所になっていた。
女の子は、ヤスオの手を取って広い場所へ入っていく。子供達もヤスオと女の子を取り囲んで続く。

「お嬢ちゃん。おじさんに薬草の特徴を教えてくれないか。」
「アイルだよ。おじさん薬草知らないの?」

 それを聞いた子供達は薬草を見つけては、ヤスオのそばまで駆け寄り現物を見せた。
そして自生している場所の特徴など採取のノウハウを鼻高々にに教えてくれた。

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