13 / 117
13話 呪いの被害者になる
しおりを挟む
食堂は、とても賑やかで子供達の声が飛び交っていた。
長テーブルが二列に置かれており、テーブルの左右両側に長椅子が置かれている。子供達は一列目に向かい合わせで座り、慌ただしく料理に食らいついている。すでに食べ終わり奥で、はしゃいでいる子もいた。
二列目のテーブルでは、老人が一人静かに食べていた。
──パン、パン。
「はーい。皆さんにお知らせがあります。食べながら聞いて下さい」
セメレが、手を叩きながら食堂に入ってくる。子供達は注目し、はしゃいでいた子達も何事かとセメレの前にやってきた。
「今日から、新しい人がきます。その人は大人ですが、呪いのせいで少し記憶を失っています。ですから、皆さんと一緒に勉強することになりました。仲良くしてあげてくださいね」
子供達はざわめき始めた。やはり“呪い”が気になっているようだ。
「はい、先生」 「はい。どうぞ」
「その人死んじゃうの?」 「大丈夫です。死にません」
「呪いはうつりますか?」 「大丈夫です。うつりません」
「私達も呪いになるの?」 「大丈夫です。なりません」
「呪いって何ですか?」 「病気の遠い親戚のようなものです」
「記憶って何ですか?」 「そこからですか」
ハーと一つ溜息をつき、子供達に右手を上げて見せ、落ち着くよう求めた。まるで、犬に“待て”をしているようだ。
「その方は、呪いの影響で大事なことを忘れてしまったのです」
子供達の騒ぎは収まらない。
「大事なことって何ですか?」 「主に、文字や常識です」
「常識って何ですか?」 「私達が、当たり前と思っていることです」
「当たり前って何ですか?」 「当たり前は当たり前です」
「くじを引くとでるやつ」 「それは“あたり”で当たり前ではありません」
「スルメ?」 「それは、”あたりめ“です」
「とにかく、今日から一緒にしますのでお願いしますね」
話が横道にそれてきたので、セメレは話を切り上げた。朝食が終わるとマイヤがヤスオを呼びにいき、子供達と合流した。
自己紹介を待たずに、子供達はヤスオを質問攻めにしようと集まる。だが、その場にいた老人が子供達に外に出るように指示を出す。
渋々外に出る子供達。セメレとマイヤに見送られて、ヤスオと老人も後に続いた。老人は革の兜と鎧を纏い、短剣を腰に差していて、兵士か冒険者にみえた。
「わしは子供達の護衛をしている、トイと言う。皆はトイ爺と呼ぶ。あんたもそう呼んでくれ」
トイ爺は、三食ご馳走になるかわりに子供達の護衛と剣術指南を引き受けている。
「はじめまして、ヤスオです。よろしくお願いいたします。それで、これからどこかに行くのですか」
護衛がつくからには、どこか危ないところに行くのかと心配になる。
「午前中は、薬草を採りに街の外へ。午後からは教会に戻って勉強じゃ」
薬草採取。孤児院のわずかだが収入源になる。
外へ出たら一匹の犬が尻尾を振りながら、トイ爺のもとに寄り添ってきた。トイ爺はその犬をあやし、頭をなでた。
「ヤスオさん。こやつはボン。わしの相棒じゃ」
「ボン。今日は、よろしく」
ボンの頭をなでようと、手をだす。
──ガブッ。
ボンはヤスオの手に噛みついた。甘噛みで少し痛い程度なのだが、離れない。
「おいボン。離せ」 「うぅぅぅ」
「離せよ」 「うぅぅぅ」
まったく離す気配がない。
「フォフォ。ボンはヤスオさんをえらく気に入ったようじゃ。さぁ行きましょう」
トイ爺は、かまわず先に行ってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってください。ボン、離せ」
頭を押さえ引き抜こうとするが、抜けない。無理やり口を開こうとするが、強く噛んできて、痛い。くすぐってもさすっても離れない。
仕方なく抱きかかえて歩こうとするが、中型犬サイズなので重くて長い距離は歩けない。なので、背中に背負って行くことにする。ボンも察してくれて素直に背中に乗った。
「さてはお前、これが狙いか」
こうして、犬を背負って歩く羽目になった。道中、無防備になったボンを子供達が触りまくったが、まったく動じなかった。
「やぁ、トイ爺さん。今日も薬草取りの護衛かい」
気さくに声をかける門番に、トイ爺は冒険者証を見せた。
「そうじゃ。全員で13名と1匹じゃ。通るぞ」
「どうぞ。それで、子供達がいつも通り1,2,3、…11名と?…!待て」
門番はヤスオを見つけると、道を塞いで止めた。
「爺さん。この犬と一体化している者は何?」
ヤスオはボンが落ちないように大きく腰を曲げ、余った左手で冒険者証を出して見せた。
「白い冒険者証。初めて見た。本物なのか?」
門番は固まってしまった。すると門の内側に設置されている門番の控室から別の門番が出てきた。
「昨日、冒険者組合史上初のG級冒険者が出たそうだ。あんた、G級ヤスオか?」
「あっ。はい」
ヤスオは姿勢を正し、軽く会釈した。
「冒険者組合から、温かく見守って欲しいと頼まれている。通してやれ」
「分かりました。あんた、違う意味ですごいね。通ってよし」
門番は、ヤスオの上着のポケットに冒険者証を入れてやり、道を開けた。
ボンは手を離し、走って門を抜けた。ヤスオも2人に会釈して、門を通り抜ける。
「今日はこの辺で、やるぞ」
『はーい』
トイ爺の声かけに、子供達が一斉に作業を始める。門を抜けてすぐの場所だった。黒髪に赤いリボンを付けた小さい女の子がヤスオに近づいてくる。
「おじさん。一緒に薬草探し、しましょ」
門を出ると隣街まで続く道が伸びている。道の両側には一面、色々な草や花が自生する広い草原になっていて子供達はいつもそこで薬草採取をしていた。
女の子は、ヤスオの手を取って広い場所へ入っていく。子供達もヤスオと女の子を取り囲んで続く。
「お嬢ちゃん。おじさんに薬草の特徴を教えてくれないか」
「アイルだよ。おじさん薬草知らないの?」
それを聞いた子供達は薬草を見つけては、ヤスオのそばまで駆け寄り現物を見せた。そして自生している場所の特徴など採取のノウハウを鼻高々に教えてくれた。
長テーブルが二列に置かれており、テーブルの左右両側に長椅子が置かれている。子供達は一列目に向かい合わせで座り、慌ただしく料理に食らいついている。すでに食べ終わり奥で、はしゃいでいる子もいた。
二列目のテーブルでは、老人が一人静かに食べていた。
──パン、パン。
「はーい。皆さんにお知らせがあります。食べながら聞いて下さい」
セメレが、手を叩きながら食堂に入ってくる。子供達は注目し、はしゃいでいた子達も何事かとセメレの前にやってきた。
「今日から、新しい人がきます。その人は大人ですが、呪いのせいで少し記憶を失っています。ですから、皆さんと一緒に勉強することになりました。仲良くしてあげてくださいね」
子供達はざわめき始めた。やはり“呪い”が気になっているようだ。
「はい、先生」 「はい。どうぞ」
「その人死んじゃうの?」 「大丈夫です。死にません」
「呪いはうつりますか?」 「大丈夫です。うつりません」
「私達も呪いになるの?」 「大丈夫です。なりません」
「呪いって何ですか?」 「病気の遠い親戚のようなものです」
「記憶って何ですか?」 「そこからですか」
ハーと一つ溜息をつき、子供達に右手を上げて見せ、落ち着くよう求めた。まるで、犬に“待て”をしているようだ。
「その方は、呪いの影響で大事なことを忘れてしまったのです」
子供達の騒ぎは収まらない。
「大事なことって何ですか?」 「主に、文字や常識です」
「常識って何ですか?」 「私達が、当たり前と思っていることです」
「当たり前って何ですか?」 「当たり前は当たり前です」
「くじを引くとでるやつ」 「それは“あたり”で当たり前ではありません」
「スルメ?」 「それは、”あたりめ“です」
「とにかく、今日から一緒にしますのでお願いしますね」
話が横道にそれてきたので、セメレは話を切り上げた。朝食が終わるとマイヤがヤスオを呼びにいき、子供達と合流した。
自己紹介を待たずに、子供達はヤスオを質問攻めにしようと集まる。だが、その場にいた老人が子供達に外に出るように指示を出す。
渋々外に出る子供達。セメレとマイヤに見送られて、ヤスオと老人も後に続いた。老人は革の兜と鎧を纏い、短剣を腰に差していて、兵士か冒険者にみえた。
「わしは子供達の護衛をしている、トイと言う。皆はトイ爺と呼ぶ。あんたもそう呼んでくれ」
トイ爺は、三食ご馳走になるかわりに子供達の護衛と剣術指南を引き受けている。
「はじめまして、ヤスオです。よろしくお願いいたします。それで、これからどこかに行くのですか」
護衛がつくからには、どこか危ないところに行くのかと心配になる。
「午前中は、薬草を採りに街の外へ。午後からは教会に戻って勉強じゃ」
薬草採取。孤児院のわずかだが収入源になる。
外へ出たら一匹の犬が尻尾を振りながら、トイ爺のもとに寄り添ってきた。トイ爺はその犬をあやし、頭をなでた。
「ヤスオさん。こやつはボン。わしの相棒じゃ」
「ボン。今日は、よろしく」
ボンの頭をなでようと、手をだす。
──ガブッ。
ボンはヤスオの手に噛みついた。甘噛みで少し痛い程度なのだが、離れない。
「おいボン。離せ」 「うぅぅぅ」
「離せよ」 「うぅぅぅ」
まったく離す気配がない。
「フォフォ。ボンはヤスオさんをえらく気に入ったようじゃ。さぁ行きましょう」
トイ爺は、かまわず先に行ってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってください。ボン、離せ」
頭を押さえ引き抜こうとするが、抜けない。無理やり口を開こうとするが、強く噛んできて、痛い。くすぐってもさすっても離れない。
仕方なく抱きかかえて歩こうとするが、中型犬サイズなので重くて長い距離は歩けない。なので、背中に背負って行くことにする。ボンも察してくれて素直に背中に乗った。
「さてはお前、これが狙いか」
こうして、犬を背負って歩く羽目になった。道中、無防備になったボンを子供達が触りまくったが、まったく動じなかった。
「やぁ、トイ爺さん。今日も薬草取りの護衛かい」
気さくに声をかける門番に、トイ爺は冒険者証を見せた。
「そうじゃ。全員で13名と1匹じゃ。通るぞ」
「どうぞ。それで、子供達がいつも通り1,2,3、…11名と?…!待て」
門番はヤスオを見つけると、道を塞いで止めた。
「爺さん。この犬と一体化している者は何?」
ヤスオはボンが落ちないように大きく腰を曲げ、余った左手で冒険者証を出して見せた。
「白い冒険者証。初めて見た。本物なのか?」
門番は固まってしまった。すると門の内側に設置されている門番の控室から別の門番が出てきた。
「昨日、冒険者組合史上初のG級冒険者が出たそうだ。あんた、G級ヤスオか?」
「あっ。はい」
ヤスオは姿勢を正し、軽く会釈した。
「冒険者組合から、温かく見守って欲しいと頼まれている。通してやれ」
「分かりました。あんた、違う意味ですごいね。通ってよし」
門番は、ヤスオの上着のポケットに冒険者証を入れてやり、道を開けた。
ボンは手を離し、走って門を抜けた。ヤスオも2人に会釈して、門を通り抜ける。
「今日はこの辺で、やるぞ」
『はーい』
トイ爺の声かけに、子供達が一斉に作業を始める。門を抜けてすぐの場所だった。黒髪に赤いリボンを付けた小さい女の子がヤスオに近づいてくる。
「おじさん。一緒に薬草探し、しましょ」
門を出ると隣街まで続く道が伸びている。道の両側には一面、色々な草や花が自生する広い草原になっていて子供達はいつもそこで薬草採取をしていた。
女の子は、ヤスオの手を取って広い場所へ入っていく。子供達もヤスオと女の子を取り囲んで続く。
「お嬢ちゃん。おじさんに薬草の特徴を教えてくれないか」
「アイルだよ。おじさん薬草知らないの?」
それを聞いた子供達は薬草を見つけては、ヤスオのそばまで駆け寄り現物を見せた。そして自生している場所の特徴など採取のノウハウを鼻高々に教えてくれた。
32
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
エクセプション
黒蓮
ファンタジー
血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。
雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。
やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・
とある中年男性の転生冒険記
うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる