異世界での異生活

なにがし

文字の大きさ
61 / 117

61話 骸骨と交戦

しおりを挟む
 拠点とは冒険者達が、安全に休憩をとるために切り開き作った場所で、そこでは火を使っても燃え広がる心配はない。場所によって形は違うが、多くは大きな石を円形状に並べ簡単な壁を設置し、数人が入る小さな空間を作る。その中央に底の浅い鉄の器が置いてあり、器の中で焚き火をする。
 陽も暮れてきたので、ヤスオは近くの拠点に移動し辺りを見渡す。その場所には人の気配がなく、誰もいないようだ。ヤスオは大きな石を乗り越え開けた空間に入る。誰かが焚き火をした形跡があり、薪も多く放置されている。
 ヤスオはそこに薪と火を入れ焚き火を起こすと、調薬を始めた。夜も更けてきて、その日の調薬の材料がなくなり、ヤスオはくつろいでいた。

「誰も、来ませんね」

 開けた場所なので、何かが近づけば気配で分かる。石の壁があるので、いきなり襲われる心配もない。ヤスオはこんな良い場所に誰も来ないのが不思議だった。
 拠点は昼間、休憩するのに使う場所で、冒険者はみんな日帰りで行動する。森で寝泊まりするのは自殺行為だとアリアドネは説明した。

──ん、自殺行為?

「アリ姉様、なんちゅうことを、俺にやらせるのですか」
(大丈夫よ。ヤスオには警告魔法があるでしょ。襲われる前に気づくでしょ)
「だったら、すぐに警告魔法を使います」

 ヤスオは無詠唱で警告魔法を使うと、いきなり警告音が頭の中に鳴り響く。探知魔法で周りの状況を確認した。周りには魔物がウジャウジャいた。暗視魔法を使い、石の隙間から周りを見渡すと、すでに視認できる位置に近づいていた。

「アリ姉様。完全に囲まれています」
(何か、分かる?)
「人の形をしているようですが、何か変です」
(あれは、骸骨よ。小鬼よりランクが上の魔物だけど、それは剣を持っているからで、動きは小鬼より遅いわ)

──骸骨…スケルトンか。

(バラバラにしないと死なないから、突くより、頭から振り下ろして、真二つにした方が、効率がいいわよ)

 ヤスオは開放魔法でショートソードを出し、身体、防具、武器の強化魔法を唱えた。

(完全に囲まれる前に、こちらから奇襲をかけ、潰していくわよ)

 ヤスオは指示に従い、焚き火をおとりにして、石を乗り越えて、まず東側に潜むスケルトンに奇襲をかけた。数体に切り込み、風魔法5位の竜巻魔法で上空に吹き飛ばし地面にたたきつけ魔石に戻した。それでも数体のスケルトンを魔石に戻しただけで、数としては、たいして減らしたわけではなく、すぐに取り囲まれた。

「アリ姉さん。変です」
(どうしたの?まだ、始まったばかりよ)
「ここらにいる骸骨は、全部メスです。骸骨はメスしかいないのですか」
(はあぁぁ?骸骨に性別があるの?)

 膨らみがなければ、くびれもない。ましてや聖武器もないのに、どうやってメスだと分かるのか?

──まさか、骸骨相手に欲情したの?変態。

 唯一の理解者であるアリアドネにすら、疑われている。そもそも、スケルトンのどこを見て欲情するのかが分からない。

(ひょっとして、ヤスオは骨が好きなの?)
「まさか。犬じゃあるまいし」

 とりあえず戦闘続行。アリアドネの指摘通り、スケルトンの動きはとても遅く、盾で受ける必要もないくらい簡単に避けることができた。だが、なかなか死なない。何度も切りつけてバラバラにしないと、魔石には戻ってくれなかった。魔法の効果も薄く、森の中なので火魔法は使えず、土や水魔法は多少の効果はあるが、一撃で倒せない。
風魔法で、吹き飛ばしてもすぐに立ち上がってくる。唯一、竜巻魔法で上空高く飛ばして、地面に叩きつけるのが効果的だった。
 しかし、竜巻魔法は魔力を6消費する魔法で乱発するにはしんどい。結果、一体ずつ体力に任せて、ひたすら切りつけ、それ以外の近づく個体は風魔法で吹き飛ばした。

「あ、あれ?こいつオスだ」
(どうしてわかるの?何が違うの?)

 戦闘は四半刻しはんときを超え、スケルトンの数も減ってきた。だが、北と南に潜んでいた奴らが、焚き火のおとりに気づき、進路を変えて援軍となり到着した。さらに、西に潜んでいた奴らもこちらに向かって来ているのが見える。
 戦闘はさらに激化し、ヤスオは何度もスケルトンに切りつけられた。その都度、治癒魔法をかけ回復して戦闘を続けた。
 半刻はんときが過ぎると、両腕に手枷をかけられ、子泣き爺が背中に乗っているかのような感覚に陥った。

「アリ姉さん。やばいです。もう立っているのもしんどいです」
(仕方ないわね。飛翔魔法で木の上に逃げなさい)

──その手があった。

 ヤスオはすぐに木の上に飛び、適当な枝に腰を置く。そこで、しばらく休憩をとることにする。足元には、うじゃうじゃとスケルトンがうごめいている。中には木に登ろうとする者もいたが、たいていの奴は滑り落ちていた。それでもスケルトンにも器用な奴がいるらしく途中まで登ってきた奴がいた。そんな奴は、風魔法で吹き飛ばす。
 他には石を投げてくる個体もいた。だが、ヤスオまで遠く届かず、落ちた石が別の個体に当たり、その個体は隣の個体に殴られたと勘違いして殴り返していた。スケルトンも喧嘩するらしい。


「美味い。高いだけあって、おいしいですね」
(こんな時にオクカツを、食べなくてもいいでしょう)
「いいじゃないですか。もう一個あるし。高いところで高い物を食べる。風流ですねぇ」
(ダジャレが言いたいだけで、高い物を食べないでよ。もったいない。もう一個は、大事にしてよ)

 気の抜けない休憩を、それなりに楽しんでいた。

「この味。オクカツは初めてのはずですけど、覚えがあるのは何故でしょう?」
(前に、アントの夢で食べているからよ)
「あぁぁ、あの時のカツサンド」

 以前、アントの夢でサンドウィッチをご馳走になった。その時のカツサンドが、美味しくて感動した事を思い出した。その時のカツがオクカツだった。
 食事が済んで一息ついたが、相変わらず足元にはスケルトンがウジャウジャいる。ふと、スケルトンが魔法で攻撃してくるのではと心配になる。

「スケルトンなど、魔物は魔法を使わないのですか?」
(魔物にも階級があって、スケルトンはG級上位。ヤスオより階級は上だけど、魔法は使えない)

 魔物の階級のG級は、魔法が使えない。F級以上になると魔法を使う者もいるが、すべてが使うわけではない。ちなみにスライムやアルミラージはG級下位で、ゴブリンがG級、スケルトンがG級上位で、それぞれ討伐の点数が違うのだと。
 魔物の階級はその危険度を示したもので、冒険者の階級とは別物である。例えば、B級の冒険者がB級の魔物に単騎で討伐できるかというと、まず無理でその場合、冒険者が殺されてしまう。

一刻いっときほど経過したが、スケルトンは引き上げる様子がない。
ヤスオの体力と魔力は、ある程度まで回復していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

エクセプション

黒蓮
ファンタジー
 血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。  雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。  やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...