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72.劇場
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「こ、これ。寝ているだけじゃぁ…。」
突然、棺の中に女の子が現れ、アガサとユキナは驚いた。さらに、女の子の美しい姿に重ねて驚いていた。さすがのアガサも目を見開き、冷静を保てなかった。ユキナに至っては、信じられず、隣のイーシアに話しかけていた。
「それでは、お引渡し致します。よろしくお願いします。」
ヤスオは、そんなユキナを無視して、頭を下げる。
「お預かりします。」
『お疲れ様でした。』
3人は声と動きをピタリと合わせ、頭を下げた。遅れてユキナが慌てて頭を下げる。
──ゴチン。
ユキナは頭を下げ過ぎて、額を棺にぶつける。シンシアとイーシアの肩が激しく揺れる。
ヤスオは頭を上げ振り返り、その場を後にした。
「いたぁぁぁい。」
「ユキナ、いい一発芸、持っているじゃない。」
「アハハハハ。こんな時に、笑わすなよ。」
ヤスオが外に出て扉を閉めると、ユキナの叫び声と、シンシアとイーシアの笑い声が聞こえた。組合の正面入口まで戻ると、そこにはクミがマリナを連れて待っていた。
ヤスオはクミに挨拶と礼を言い、マリナとその場を後にした。クミもまた頭を下げ、ヤスオ達の姿がなくなるまで、下げ続けた。
「遅くなって、ごめんな。これから家に送るから。」
「ううん。楽しかったよ。お姉ちゃん達、楽しいね。」
「特にあの2人が、だろう?」
「うん。」
サンセット通り。西門から南側の城壁に平行した道で、北側半分は商会などのお店が建ち並ぶ繁華街だが、南側半分は貧しい人が集まった貧民街だ。マリナの家、ロスリコス商会は、北と南の境にあり、あまり治安のいい場所ではなかった。
ヤスオとマリナは商会の近くまで、きていた。商会の前に2人の男が話し込んでおり、1人は鎧と剣を装備した冒険者風の男と、もう1人は制服をきた店員風の男。
店員風の男が、ヤスオ達に気がつくと、慌てて店内に入って行く。すると、見るからにお金持ちの格好をした男女が、飛び出してきた。
「マリナ。」
「お父さん。お母さん。」
3人は、駆け寄り抱き合った。親子の感動の再会…にはならなかった。
「くっさぁぁ。この子、くっさぁぁぁ。」
「この臭いは、なんだ。排泄物か?鼻が曲がる。」
「あはは、わたし、最強なのを忘れていた。」
両親はマリナを突き放し、距離をとった。母親が傍にいた店員に手招きをし、呼び寄せる。店員は慌てて母親のそばに駆け寄った。
「すぐにこの子をお風呂に入れてちょうだい。身に着けている物は、全部捨てて。」
「かしこまりました。奥様。」
「お兄ちゃん。バイバーイ。ありがとう。」
店員は、ヤスオに手を振るマリナに近づき連れて行こうとするが、まずは鼻をつまんだ。そして、マリナの手を取り、店の中に誘導した。残った両親がヤスオに鋭い眼差しを突き付ける。
「貴様、何者だ。娘に何をした。」
すると、冒険者風の男が近づいてきた。
「旦那、こいつはG級ヤスオと言って、女に見境のない変態野郎ですぜ。」
「なんだと。こいつがあの有名な。」
「わたしも聞いたことあるわ。ゴブリンにすら欲情するとか。」
──また、このパターンだ。
ヤスオは額に手をやり、この場をどう収めようか考えた。
「俺は、小鬼共からお嬢さんを救い出し、ここまで連れてきただけだ。」
「嘘をつくな。お嬢さんは街にいて、いなくなったのだぞ。ゴブリンが街中をうろつく訳ないだろう。」
「貴様、娘をさらって、くそまみれにして楽しんだな。」
「お前は、女の子をくそまみれにして、楽しいのか?」
「うるさい。知的なわしが、貴様のような変態の考える事など、分かる訳ないだろう。」
「旦那、これ以上、話してもムダですぜ。こいつが臭いお嬢さんを連れていた。それだけで十分でしょう。」
男は剣を抜き構えた。何度も剣を握り直し、色んな構えを見せたが、どれもしっくりこないようだ。
「お嬢さんをさらって、くそまみれにした。それは万死に値する。G級ヤスオ、死んでもらうぞ。」
(ヤスオ、この男、何かおかしい。)
「はい。俺も同じことを考えていました。」
ヤスオは腕組みをし、仁王立ちをした。そして男を睨みつけ、威圧した。ヤスオの演技が始まり、劇場が開演した。
「それで、お前は誰だ。見たところ冒険者のようだが。」
「俺は、この旦那に雇われている、この商会の専属の冒険者だ。」
「つまり、用心棒か。」
「そう言うことだ。そろそろ死んでもらうぜ。覚悟しな。」
冒険者はヤスオに斬りかかった。だが、ヤスオの威圧に委縮し、剣先が震えるような奴とでは、勝負にならない。ヤスオは強電魔法より威力の強い感電魔法を無詠唱でかけた。
「ギャァァァァァ。」
冒険者は突然、悲鳴を上げ、這いつくばり地面を舐めた。すぐに立ち上がろうとするが、足に力が入らずその場に座り込む。近づいてくるヤスオに気づくと、剣を振りまわし威嚇した。
突然の大声を出し無様な姿を晒している用心棒。それに驚き怯えた父親は、その場に座り込む。母親は、亭主を置いて店の中に逃げ込んだ。そして、外の騒がしさに気が付いた、店員数名が店から飛び出してきた。
「く、来るな。こ、こんなことして、ただで済むと思うなよ。」
「お前、何か隠しているだろう。吐け。」
「知らん。何も知らん。」
──カラン、カラン。
男は剣をヤスオに投げつけ、両手で後ずさりをして、必死に逃げようとしていた。投げた剣はヤスオまで遠く及ばず、手前に転がった。この男の行動は、初めて討伐した小鬼と同じ事をしていた。小鬼と同等の知性なのだろう、ならば脅せば吐くと確信した。ヤスオは男の剣を拾い、喉に突き付けた。
「マリナをさらったのは、お前だろう。」
突然、確信をつかれ、男の顔色が変わる。目は泳ぎ、何度も唾を飲み込んでいる。
「ち、違う。俺じゃない。ギャァァァァァ。」
男は自分が何をされているか、理解できない。全身に痺れが走り、激痛に見舞われる。これから自分はどうされるのか、そう考えると、心底怯えた。
「吐け。」
「ち、違うんだ。俺は、脅されて仕方なく。本当だ、俺も被害者なんだよ。」
「お前、冒険者でもないだろう。」
「そ、それも脅されたからだ。勘弁してくれ。」
「誰に脅された?」
「そいつは言えねぇ。殺されちまう。」
「ついてこい。」
男の首襟をつかむとそのまま引きずって連れて行く。男は嫌がり抵抗したが、身体強化魔法かけた、ヤスオの力には、なす術もなくズルズルと引きずられていく。
「待ってくれ。」
突然、棺の中に女の子が現れ、アガサとユキナは驚いた。さらに、女の子の美しい姿に重ねて驚いていた。さすがのアガサも目を見開き、冷静を保てなかった。ユキナに至っては、信じられず、隣のイーシアに話しかけていた。
「それでは、お引渡し致します。よろしくお願いします。」
ヤスオは、そんなユキナを無視して、頭を下げる。
「お預かりします。」
『お疲れ様でした。』
3人は声と動きをピタリと合わせ、頭を下げた。遅れてユキナが慌てて頭を下げる。
──ゴチン。
ユキナは頭を下げ過ぎて、額を棺にぶつける。シンシアとイーシアの肩が激しく揺れる。
ヤスオは頭を上げ振り返り、その場を後にした。
「いたぁぁぁい。」
「ユキナ、いい一発芸、持っているじゃない。」
「アハハハハ。こんな時に、笑わすなよ。」
ヤスオが外に出て扉を閉めると、ユキナの叫び声と、シンシアとイーシアの笑い声が聞こえた。組合の正面入口まで戻ると、そこにはクミがマリナを連れて待っていた。
ヤスオはクミに挨拶と礼を言い、マリナとその場を後にした。クミもまた頭を下げ、ヤスオ達の姿がなくなるまで、下げ続けた。
「遅くなって、ごめんな。これから家に送るから。」
「ううん。楽しかったよ。お姉ちゃん達、楽しいね。」
「特にあの2人が、だろう?」
「うん。」
サンセット通り。西門から南側の城壁に平行した道で、北側半分は商会などのお店が建ち並ぶ繁華街だが、南側半分は貧しい人が集まった貧民街だ。マリナの家、ロスリコス商会は、北と南の境にあり、あまり治安のいい場所ではなかった。
ヤスオとマリナは商会の近くまで、きていた。商会の前に2人の男が話し込んでおり、1人は鎧と剣を装備した冒険者風の男と、もう1人は制服をきた店員風の男。
店員風の男が、ヤスオ達に気がつくと、慌てて店内に入って行く。すると、見るからにお金持ちの格好をした男女が、飛び出してきた。
「マリナ。」
「お父さん。お母さん。」
3人は、駆け寄り抱き合った。親子の感動の再会…にはならなかった。
「くっさぁぁ。この子、くっさぁぁぁ。」
「この臭いは、なんだ。排泄物か?鼻が曲がる。」
「あはは、わたし、最強なのを忘れていた。」
両親はマリナを突き放し、距離をとった。母親が傍にいた店員に手招きをし、呼び寄せる。店員は慌てて母親のそばに駆け寄った。
「すぐにこの子をお風呂に入れてちょうだい。身に着けている物は、全部捨てて。」
「かしこまりました。奥様。」
「お兄ちゃん。バイバーイ。ありがとう。」
店員は、ヤスオに手を振るマリナに近づき連れて行こうとするが、まずは鼻をつまんだ。そして、マリナの手を取り、店の中に誘導した。残った両親がヤスオに鋭い眼差しを突き付ける。
「貴様、何者だ。娘に何をした。」
すると、冒険者風の男が近づいてきた。
「旦那、こいつはG級ヤスオと言って、女に見境のない変態野郎ですぜ。」
「なんだと。こいつがあの有名な。」
「わたしも聞いたことあるわ。ゴブリンにすら欲情するとか。」
──また、このパターンだ。
ヤスオは額に手をやり、この場をどう収めようか考えた。
「俺は、小鬼共からお嬢さんを救い出し、ここまで連れてきただけだ。」
「嘘をつくな。お嬢さんは街にいて、いなくなったのだぞ。ゴブリンが街中をうろつく訳ないだろう。」
「貴様、娘をさらって、くそまみれにして楽しんだな。」
「お前は、女の子をくそまみれにして、楽しいのか?」
「うるさい。知的なわしが、貴様のような変態の考える事など、分かる訳ないだろう。」
「旦那、これ以上、話してもムダですぜ。こいつが臭いお嬢さんを連れていた。それだけで十分でしょう。」
男は剣を抜き構えた。何度も剣を握り直し、色んな構えを見せたが、どれもしっくりこないようだ。
「お嬢さんをさらって、くそまみれにした。それは万死に値する。G級ヤスオ、死んでもらうぞ。」
(ヤスオ、この男、何かおかしい。)
「はい。俺も同じことを考えていました。」
ヤスオは腕組みをし、仁王立ちをした。そして男を睨みつけ、威圧した。ヤスオの演技が始まり、劇場が開演した。
「それで、お前は誰だ。見たところ冒険者のようだが。」
「俺は、この旦那に雇われている、この商会の専属の冒険者だ。」
「つまり、用心棒か。」
「そう言うことだ。そろそろ死んでもらうぜ。覚悟しな。」
冒険者はヤスオに斬りかかった。だが、ヤスオの威圧に委縮し、剣先が震えるような奴とでは、勝負にならない。ヤスオは強電魔法より威力の強い感電魔法を無詠唱でかけた。
「ギャァァァァァ。」
冒険者は突然、悲鳴を上げ、這いつくばり地面を舐めた。すぐに立ち上がろうとするが、足に力が入らずその場に座り込む。近づいてくるヤスオに気づくと、剣を振りまわし威嚇した。
突然の大声を出し無様な姿を晒している用心棒。それに驚き怯えた父親は、その場に座り込む。母親は、亭主を置いて店の中に逃げ込んだ。そして、外の騒がしさに気が付いた、店員数名が店から飛び出してきた。
「く、来るな。こ、こんなことして、ただで済むと思うなよ。」
「お前、何か隠しているだろう。吐け。」
「知らん。何も知らん。」
──カラン、カラン。
男は剣をヤスオに投げつけ、両手で後ずさりをして、必死に逃げようとしていた。投げた剣はヤスオまで遠く及ばず、手前に転がった。この男の行動は、初めて討伐した小鬼と同じ事をしていた。小鬼と同等の知性なのだろう、ならば脅せば吐くと確信した。ヤスオは男の剣を拾い、喉に突き付けた。
「マリナをさらったのは、お前だろう。」
突然、確信をつかれ、男の顔色が変わる。目は泳ぎ、何度も唾を飲み込んでいる。
「ち、違う。俺じゃない。ギャァァァァァ。」
男は自分が何をされているか、理解できない。全身に痺れが走り、激痛に見舞われる。これから自分はどうされるのか、そう考えると、心底怯えた。
「吐け。」
「ち、違うんだ。俺は、脅されて仕方なく。本当だ、俺も被害者なんだよ。」
「お前、冒険者でもないだろう。」
「そ、それも脅されたからだ。勘弁してくれ。」
「誰に脅された?」
「そいつは言えねぇ。殺されちまう。」
「ついてこい。」
男の首襟をつかむとそのまま引きずって連れて行く。男は嫌がり抵抗したが、身体強化魔法かけた、ヤスオの力には、なす術もなくズルズルと引きずられていく。
「待ってくれ。」
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