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73.姉弟
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「待ってくれ。」
立ち去ろうとするヤスオを、父親が引きとめた。
「その男が偽物で、娘をさらった奴なのは、わかった。そのことに感謝して、排泄物の件は水に流してやろう。それと、これは娘を助け出してくれた、礼だ。受け取ってくれ。」
父親は、懐から財布を出すと、ヤスオの足元に金貨2枚を投げつけた。金貨がヤスオの足元に転がる。
「お前、何を言っている?」
「おお、すまない。娘を送り届けてくれた礼が入ってなかったな。」
父親は財布からさらに1枚、金貨を出すと、足元に投げた。
「全然、足らない。」
ヤスオは金貨を拾うことなく、男を引きずりながらその場を去った。父親は、礼をしたが相手が受け取らなかったと自分を正当化し、投げた金貨を拾い上げた。それらを見ていた店員達は、父親の態度や言葉に幻滅し、商会の将来を心配した。
西門の門番に事情を説明して、偽冒険者の男を引き渡した。門番は、かなり慌てて城に使いを出し応援を要請した。西門の門番は緊急時に門を開ける係なので、男を引き渡しても仕事に影響はない。あとは門番に任して、スペランザ教会に向かった。
(あの2人本当に、マリナの両親なのかしら。いい演技だったわよ。あの無礼な両親に、いい薬になればいいけど。)
「あの父親。排泄物を水に流すなんて、うまいこと言うものだから、笑いそうになりましたよ。」
(あの男が冒険者じゃないって、どうしてわかったの?)
「構えが、全然なってなかったじゃないですか。時代劇好きを舐めんなよ、です。それに俺の事を知っていましたから。」
(そうか、大抵の冒険者はヤスオの顔を知らないよね。人さらいの一味は、どうしてわかったの?)
「あれだけ露骨に罪を擦り付け、斬り殺そうとしたら、わたしはさらった本人ですって言っているようなものじゃないですか。」
(そうね。それに、“取り押さえる”じゃなくて“殺す”だもん。明らかに口封じを狙っていたわよね。)
「あーあ。報酬、貰い損ねましたね。」
(ないわー。金貨3枚はないわー。自分の娘の価値が低すぎる。マジ引いたわ。)
「まだ、色々勘違いしているのでしょうね。」
(まぁこれで、人さらいの手がかりをつかんだわね。あとは領主がうまくやるでしょう。)
「となると、次はミノタウロスですか。」
(ミノタウロスねぇぇ。)
「何か因縁でもあるのですか?」
(まあね。ついたわよ。)
気がつけば、スペランザ教会の裏口に着いていた。裏口の門を開けると、トイ爺の授業を受ける子供達がいた。子供達に手を振り、セメレ達に挨拶を済ませると、地下室に移動し甘蕉を置く。また、来ますと約束して、教会を後にし、アントの夢を目指した。
「それで、ミノタウロスとはどのような因縁があるのですか。」
(あれねぇ、元は、……わたしの弟なの。)
──ブゥゥゥゥゥ。
驚きのあまり吹いてしまい気管に何かが入り込む。しばらくその場で咳をしてしまい、落ち着くのに時間がかかった。
──危なかった。何かを口に入れていれば、すべて吐き出して、いただろう。
「魔物が弟?元王女様なのに?何がどうなったら、そうなるのですか?」
アリアドネの父が王位についた時、神々への挨拶に失敗し、海の神様を怒らせた。海の神様は罰として母に、牛に欲情する神託を授けた。母は、臣下達に協力させ、牛との行為に成功する。そうして生まれたのが、ミノタウロスだそうだ。アリアドネとは、種違いの弟と言うことになる。ちなみに父の名がミノスで、ミノスの牡牛と言う意味でミノタウロスと名付けられたらしい。
ただし、それはアリアドネが生まれ育った世界の話で、すでに英雄によって討伐されている。この世界のミノタウロスは悪魔族によって再現され作り出されたものなので、直接は関係ない。
さらに付け足すと、その討伐した英雄がアリアドネの初恋の人なのだそうだ。
──訳、わからん。
たくさんの情報が入り、ヤスオは大いに混乱した。特に、魔物とはいえ、弟を殺した英雄にどうして惚れたのか。その恋はどうなったのか。混乱しながらも、気になった。だが、ディオ様が旦那様である以上、ろくな結果ではないと思い好奇心を抑えた。でも、一つだけ、知りたい事を聞いた。
「アリ姉様。お父様は何をやったから、海の神様を怒らしたのですか。」
(貢物をケチったのよ。)
「そりゃ、怒るわ。」
アントの夢に到着し、セルジュ達に挨拶をした。これまで調薬した治癒薬を買い取ってもらい、ヤスオの財布は潤った。セルジュ達も在庫切れだった、治癒中薬や大薬が大量に手に入り安堵していた。バナナも好評で、すでに売り切れたそうだ。次のバナナを、孤児院で作っているのを聞くと、これも安堵していた。問い合わせが、すごいらしい。ただ、この件で商業組合に目をつけられたようで、何か言ってこないか心配もしていた。
用も済みヤスオが帰ろうとすると、セルジュに引きとめられた。
「ヤスオ様、お願いがあるのですが。」
「なんでしょう?」
これまで、子供達が採取した薬草を引き取っていたが、調薬する人がいなくて、溜る一方で困っているらしい。今まではアリアドネが引取り調薬していたので、ヤスオにその役を引き継いで欲しいと依頼された。ヤスオは快く引き受け、薬草を持って帰ることになる。
セルジュ達は喜び、ヤスオを2階の倉庫まで案内した。ヤスオが倉庫の扉に手をかけるとセルジュ達は慌てて逃げだした。
──ブワァァァァ。
扉を開けると、大量の薬草がヤスオに襲いかかってきた。なすすべもなく押しつぶされ、埋もれていく。薬草山をかき分け、何とか頭だけが脱出できた。
「こんなにあるのぉぉ。」
「はい。アリ姉さまがお亡くなりになる前に、2週間ほど遠征に行っていましたから、かれこれ2か月分溜っています。」
ヤスオは倉庫の容器に入っている薬草をすべて収納し、以前、薬草採取に使っていた、籠を出し、詰め込んで収納した。残った容器に入りきらない薬草は、倉庫に置いて後日取りに来ると約束し、アントの夢を後にした。
(ヤスオ、寝ること、できないね。)
立ち去ろうとするヤスオを、父親が引きとめた。
「その男が偽物で、娘をさらった奴なのは、わかった。そのことに感謝して、排泄物の件は水に流してやろう。それと、これは娘を助け出してくれた、礼だ。受け取ってくれ。」
父親は、懐から財布を出すと、ヤスオの足元に金貨2枚を投げつけた。金貨がヤスオの足元に転がる。
「お前、何を言っている?」
「おお、すまない。娘を送り届けてくれた礼が入ってなかったな。」
父親は財布からさらに1枚、金貨を出すと、足元に投げた。
「全然、足らない。」
ヤスオは金貨を拾うことなく、男を引きずりながらその場を去った。父親は、礼をしたが相手が受け取らなかったと自分を正当化し、投げた金貨を拾い上げた。それらを見ていた店員達は、父親の態度や言葉に幻滅し、商会の将来を心配した。
西門の門番に事情を説明して、偽冒険者の男を引き渡した。門番は、かなり慌てて城に使いを出し応援を要請した。西門の門番は緊急時に門を開ける係なので、男を引き渡しても仕事に影響はない。あとは門番に任して、スペランザ教会に向かった。
(あの2人本当に、マリナの両親なのかしら。いい演技だったわよ。あの無礼な両親に、いい薬になればいいけど。)
「あの父親。排泄物を水に流すなんて、うまいこと言うものだから、笑いそうになりましたよ。」
(あの男が冒険者じゃないって、どうしてわかったの?)
「構えが、全然なってなかったじゃないですか。時代劇好きを舐めんなよ、です。それに俺の事を知っていましたから。」
(そうか、大抵の冒険者はヤスオの顔を知らないよね。人さらいの一味は、どうしてわかったの?)
「あれだけ露骨に罪を擦り付け、斬り殺そうとしたら、わたしはさらった本人ですって言っているようなものじゃないですか。」
(そうね。それに、“取り押さえる”じゃなくて“殺す”だもん。明らかに口封じを狙っていたわよね。)
「あーあ。報酬、貰い損ねましたね。」
(ないわー。金貨3枚はないわー。自分の娘の価値が低すぎる。マジ引いたわ。)
「まだ、色々勘違いしているのでしょうね。」
(まぁこれで、人さらいの手がかりをつかんだわね。あとは領主がうまくやるでしょう。)
「となると、次はミノタウロスですか。」
(ミノタウロスねぇぇ。)
「何か因縁でもあるのですか?」
(まあね。ついたわよ。)
気がつけば、スペランザ教会の裏口に着いていた。裏口の門を開けると、トイ爺の授業を受ける子供達がいた。子供達に手を振り、セメレ達に挨拶を済ませると、地下室に移動し甘蕉を置く。また、来ますと約束して、教会を後にし、アントの夢を目指した。
「それで、ミノタウロスとはどのような因縁があるのですか。」
(あれねぇ、元は、……わたしの弟なの。)
──ブゥゥゥゥゥ。
驚きのあまり吹いてしまい気管に何かが入り込む。しばらくその場で咳をしてしまい、落ち着くのに時間がかかった。
──危なかった。何かを口に入れていれば、すべて吐き出して、いただろう。
「魔物が弟?元王女様なのに?何がどうなったら、そうなるのですか?」
アリアドネの父が王位についた時、神々への挨拶に失敗し、海の神様を怒らせた。海の神様は罰として母に、牛に欲情する神託を授けた。母は、臣下達に協力させ、牛との行為に成功する。そうして生まれたのが、ミノタウロスだそうだ。アリアドネとは、種違いの弟と言うことになる。ちなみに父の名がミノスで、ミノスの牡牛と言う意味でミノタウロスと名付けられたらしい。
ただし、それはアリアドネが生まれ育った世界の話で、すでに英雄によって討伐されている。この世界のミノタウロスは悪魔族によって再現され作り出されたものなので、直接は関係ない。
さらに付け足すと、その討伐した英雄がアリアドネの初恋の人なのだそうだ。
──訳、わからん。
たくさんの情報が入り、ヤスオは大いに混乱した。特に、魔物とはいえ、弟を殺した英雄にどうして惚れたのか。その恋はどうなったのか。混乱しながらも、気になった。だが、ディオ様が旦那様である以上、ろくな結果ではないと思い好奇心を抑えた。でも、一つだけ、知りたい事を聞いた。
「アリ姉様。お父様は何をやったから、海の神様を怒らしたのですか。」
(貢物をケチったのよ。)
「そりゃ、怒るわ。」
アントの夢に到着し、セルジュ達に挨拶をした。これまで調薬した治癒薬を買い取ってもらい、ヤスオの財布は潤った。セルジュ達も在庫切れだった、治癒中薬や大薬が大量に手に入り安堵していた。バナナも好評で、すでに売り切れたそうだ。次のバナナを、孤児院で作っているのを聞くと、これも安堵していた。問い合わせが、すごいらしい。ただ、この件で商業組合に目をつけられたようで、何か言ってこないか心配もしていた。
用も済みヤスオが帰ろうとすると、セルジュに引きとめられた。
「ヤスオ様、お願いがあるのですが。」
「なんでしょう?」
これまで、子供達が採取した薬草を引き取っていたが、調薬する人がいなくて、溜る一方で困っているらしい。今まではアリアドネが引取り調薬していたので、ヤスオにその役を引き継いで欲しいと依頼された。ヤスオは快く引き受け、薬草を持って帰ることになる。
セルジュ達は喜び、ヤスオを2階の倉庫まで案内した。ヤスオが倉庫の扉に手をかけるとセルジュ達は慌てて逃げだした。
──ブワァァァァ。
扉を開けると、大量の薬草がヤスオに襲いかかってきた。なすすべもなく押しつぶされ、埋もれていく。薬草山をかき分け、何とか頭だけが脱出できた。
「こんなにあるのぉぉ。」
「はい。アリ姉さまがお亡くなりになる前に、2週間ほど遠征に行っていましたから、かれこれ2か月分溜っています。」
ヤスオは倉庫の容器に入っている薬草をすべて収納し、以前、薬草採取に使っていた、籠を出し、詰め込んで収納した。残った容器に入りきらない薬草は、倉庫に置いて後日取りに来ると約束し、アントの夢を後にした。
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