異世界での異生活

なにがし

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77.鳥人に鶏肉

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「サーチェ。」

 ヤスオは、サーチェの話を遮り、目配せを送った。サーチェも子供達がいることに気がつき、ヤスオの意図を察知し、それ以上は話さなかった。
 食事も終わり、すぐにでも子供達を街に連れ帰りたかったが、すでに太陽は真上を通り越し、傾けかけている時間。夜になっても森を抜けられそうにないから、今日はここで一泊して、明日朝一に出発することにした。サーチェもあの食事が、もう1度食べられると喜び、快く承知してくれた。
 そうと決まれば、ゴブリン退治。陽が暮れるまでは、まだ時間があるので、ヤスオは子供達をサーチェに任せ、出かけることにした。

「ヤスオっち。待つさぁ。薬と食事のお礼に、これを貰っておくれさぁ。さっき子供達と拾っておいた物さぁ。」

 そこには、山盛りになったゴブリンの魔石が置いてあった。数多くあり、とても先程の戦闘で出ただけとは思えない。

「いいのか?ほとんどサーチェが、狩ったものだろう。」
「いいさぁ。わっちが持っていても邪魔なだけださぁ。」

 サーチェは冒険者ではないので、無理に魔物を狩る必要はない。襲われても空を飛んで逃げればいいし、以前ヤスオがしたように、木の上にいればいい。ではこの魔石は、4日間、子供達を守って倒してきた分になる。その数、ゆうに300は超えていた。この近辺にそれほどの数のゴブリンがいたのには驚きだが、短期間でこれ程の数を討伐したサーチェにも驚かされた。先程、追跡した時は、巣は一つしかないようだった。おそらくサーチェによって、3~4つの巣は壊滅的ダメージを負い、一つに併合されたのだろう。だとしたら面倒な事になった。冒険者組合に依頼が出された行方不明者はあと一人。もし、放棄された巣にいたら、発見が難しくなる。どうか、これから行く巣にいて欲しいと願った。

「じゃぁ、ありがたく頂戴するよ。」
「目はいい方だから、見落としは、ないはずさぁ。」

 確かに探知魔法をかけても、取りこぼしはなかった。ヤスオはサーチェに感謝して、魔石を巾着袋に入れ収納した。

──これ、相当な金額になるな。

 ヤスオは、魔石を換金した金額を暗算したら、薬、食事代より、はるかに上回ることに気付いた。サーチェには、またいつかお返しをしようと思う。


 ゴブリンの巣につくと、躊躇なく中に侵入する。相変わらずのペンギン歩きに、太ももが悲鳴をあげ苦しい。さらに、ゴブリン共が行く手を阻み、なかなか前に進めない。さらに、さらに、外出していたゴブリン共が戻ってきて挟み撃ちになった。ヤスオはその場に座り込み、背後のゴブリンに爆風魔法を放ち、吹き飛ばした。後方の空気が、外に出されたため、ストローのように前方の空気が吸い寄せられ、同じ勢いの風が前方のゴブリンとヤスオに襲いかかる。

──ボオォォォォォォ。

 洞窟内に轟音が鳴り響き、ゴブリン共は吹き飛ばされ、ヤスオ目指し飛んでくる。ヤスオは盾でゴブリンを抑え、何とか風をやり過ごす。すると今度は、洞窟内部の気圧が下がったため、入口から洞窟内部へ強風が吹き荒れる。

──ボオォォォォォォ。

 一旦風と共に鳴りやんだ轟音が、再び鳴り響きヤスオを襲う。ヤスオは壁にしがみつき何とかそれも耐え忍んだ。気がつくとヤスオ近辺のゴブリンは全滅していた。

「あぁぁ、びっくりした。死ぬかと思った。」
(もう、無茶しないでよ。以前、地下室を掃除した時、大惨事になるって言ったじゃない。)
「あれは、ランタンの火で埃に引火する粉塵爆発の事を言っているのだと。」
(ふんじん?何それ?)
「ともかく、以前、爆風魔法を使ったことがあったから問題ないと思っていました。」
(あの時は、広い場所で使ったから影響が少なかっただけ。あの時も狭い通路は大変な事になっていたはずよ。)

 ヤスオは先に進み、奥の広い場所を目指した。相変わらず、太ももが悲鳴をあげ、腰までもが痛くなってきた。やっと広い場所に出ると、まだまだ大量のゴブリンがいた。例によって出口を塞いで、照明魔法でひるまして、次々と討伐する。ゴブリン共は戦うのを諦め、出口に付近に集まる。だが、出られない。ただの的になったゴブリンをヤスオは容赦なく討伐した。

 探知魔法でゴブリンの全滅を確認したら魔石を回収する。そして、祈りながら検索魔法をかけてみた。

──いてくれた。

 奥に排泄物が山のように溜った場所がある。その中にいた。洞窟内は比較的綺麗で、この方が最近まで清掃していたのが分かる。ヤスオは手を合わせ、冥福を祈り、間に合わなかった事を詫び、収納した。
 太ももと腰の痛みに耐えながら何とか外に出られた。外はすでに、日が暮れ暗くなっていた。月明かりを頼りに、洞窟に戻る。

「さて、夕飯は何にしようか?そういえば、串焼きがダメなのは、なぜですか?」
(あなた、サーチェに鶏肉を食わす気?)
「ああ、確かに。でもヤギ肉だったら問題ないのでは?」
(ええ、問題ないわね。でも、串焼きを食べた無邪気な子供が、鶏肉はないの?て聞かれたらどうする。)
「最悪な空気に、なりかねませんね。分かりました。出さない方が無難ですね。」

 洞窟の近くまで戻ると、入口にサーチェが立っていた。サーチェがヤスオに気がつくと、両手を振り下ろし、文字通り一飛びで、ヤスオの前に立った。

「ヤスオッち。無事か?遅いので心配したさぁ。」
「心配なのは、俺か?それとも食事か?」
「食事に決まっているさぁ。わっちは明かりが作れないから、これから食べ物を採りにいけないさぁ。」
「正直、なんだ。そこは、嘘でも両方って言わないか?」
「ところでヤスオっち。ぶち臭い。そのまま洞窟に入らないで欲しい。」

──あれ?“さぁ”は、どこ行ったさぁ?

 どうやら収納したとき、いくらかヤスオに飛び散ったようだ。以前、マリナと行動を共にしたことで、その手の臭いに耐性が付いていて、気がつかなかった。
 ヤスオは灯を入れたランタンと食料をサーチェに渡し、自分は湖に行って身を清めると伝えた。サーチェはそれらを受け取ると洞窟の中に消えて行った。

 湖に着くと、拠点を探した。だが湖の西側は、冒険者は来ないので、おそらく無いだろうとアリアドネは伝えた。仕方なく、適当な場所で穴を掘り、石を並べ焚火の準備をした。

 途中拾っておいた薪を出し、火を入れた。


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