異世界での異生活

なにがし

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79.商人

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 そして、ヤスオが面会に応じるよう説得することと、すぐに討伐隊を編成して、ミノタウロスを打ち取る特命を出した。
 チャーフィーは、すぐに作戦の立案とメンバー編成と準備に奔走した。そして、準備が整い今、出発しようとしていたところだった。
 衛兵達は不満だった。コメット団長の追い詰められた立場は分かるが、日が暮れて、暗闇での出陣に何の効果があるのか疑問に思っていた。そして、何より暗闇の進軍がいかに危険かと緊張し最悪を覚悟していた。それが、一瞬で解放されたのだ。喜ばずにはいられない。衛兵達は、この幸運に感謝していた。

「G級ヤスオ殿。恥を忍んで申し上げる。この4人の子らを我らに預けてはくれまいか。」
(ヤスオが子供を短期間で救い出すのはいいのだけど、逆にそのことが衛兵団に恥をかかす事になっていたのね。衛兵団に貸しを作るのもいいんじゃない。)
「承知しました。子供達をよろしくお願いします。」
「感謝する。この子達は我らが責任をもって、親御さんの元へ届ける。」

 チャーフィーは、ヤスオにしがみつく子供の一人を抱き上げ、優しい言葉をかける。他の衛兵も、それぞれ子供を抱き上げ、安心させた。そして、ヤスオを囲んで、街へ歩き出す。

「これで、冒険者組合に出された捜索依頼は残り1件だな。」
「そっちは冒険者組合に引き渡してもいいですか?」
「はぁ?救い出したのか?」
「はい。間に合いませんでしたが。」
「ああ。それで、構わん。」

──こいつ、本当に人間か?化け物だろ。

 チャーフィーは、心底そう思った。だが、街の噂で普通とは違うのだと思い出し、妙に納得した。そして、自身が貞操の危機にあるのではと気がつき、有事の際ここにいる戦力でヤスオを取り押さえる作戦を練った。ただ、ヤスオの戦力情報は皆無で、どのような攻撃が得意なのか分からない。それでは、作戦の練りようが、なかった。

「あの狼煙は、何なのですか?」

 作戦対象に声をかけられ、心臓が高鳴った。何かの駆け引きかと疑ったが、これ以上、起こってもいないことに、警戒するのは、やめようと思考を停止した。

「北と南で二手に別れて捜索するつもりだったからな。あの狼煙は北門の連中に作戦中止を伝えるものだ。」

 こうして、ヤスオは街に入ると南門で、子供達に別れを告げ、家路につく。すでに冒険者組合の受付時間を過ぎているので、老婆の引き渡しは明日にする。

 その後、子供達はチャーフィーによる聞き取り調査を受けた。子供達は自分をさらった人間の特徴を的確に答え、チャーフィーを感心させた。だが、4日間どう過ごしたかの質問には、必死だったので覚えてないなど、あいまいな答えが返ってきて、チャーフィーを困惑させた。

 ヤスオは、アリアドネに今夜の食事はオクレツにしようと進言すると、アリアドネに急ぎ帰ろうと、せかされた。結局、寄り道をすることなく真っすぐ、自宅に帰るのだが、警戒することがある。

「アリ姉様。チャーフィーさんの話から、推測するに。」
(家の前に、マチルダがいる可能性が高いわ。)
「どうしましょう。」
(帰らない訳にもいかないから、話しぐらい聞いてあげましょう。)

 家の近くまで帰ってきた。案の定、家の前に人影が見える。だが、その人影はヤスオが近づいても、まったく気がつかない。さらに近づくにつれて、その者が恰幅のいい男と分かる。その男はどこか上の空で、途方に暮れているように見える。

うちに何か御用ですか?」

 声をかけられ驚いた男は、ヤスオに気付くと、ひざまずき額を地面につけた。

「この度は、娘の恩人に対して大変、無礼な行いをしてしまい、申し訳ありませんでした。」

 マリナの父、ロスリコス商会のマーチャントだった。マーチャントの大きな声に、ご近所が何事かと窓を開け、覗き込む。さすがに、これは見た目が悪いと、すぐにマーチャントの腕を引き、自宅に招き入れた。

「それで、今日は謝罪に来たのですか?」

 マーチャントにお茶を入れたいが、帰ってきたばかりなので、お湯がない。ヤスオはすぐに、かまどに火を入れ、お湯を沸かした。

「はい。それと相談がありまして。」

 昨日、マリナを訪ねて衛兵団の団長が商会を訪問した。せっかく団長様が来てくれたのでと、娘に、うんこプレイをしたヤスオを裁いてほしいと嘆願した。それが事実ならと約束を取り付けたが、いざマリナの話を聞くと自分の勘違いと気付かされた。そのことで、団長には呆れさせてしまい、軽蔑されてしまった。帰り際に、どのくらいお礼をしたのか問われ、金貨3枚を渡そうとしたが、足らないと受け取って貰えなかった事を話した。

──そなたの娘の命は、たった金貨3枚かぁ。それで、いっぱしの商人のつもりか。

 と団長に怒鳴りつけられ、その声が隣近所、従業員にお客様と聞かれ周りから白い目で見られた。さらに、団長から冒険者組合に伝わり、冒険者組合から依頼を出しながら報酬を払わない商人がいると商業組合に苦情を入れられた。そして今朝、商業組合より、この問題が解決するまで、取引停止にすると告知された。

 マーチャントは号泣しながら何度も謝罪し、お礼を受け取って、冒険者組合に苦情を取り下げるよう頼んでほしいと嘆願した。そして、いか程お礼をすれば納得してもらえるか聞いてきた。その間、マーチャントは何度も額をテーブルにぶつけ謝罪し、テーブルの上はマーチャントの涙と鼻水まみれになっていた。

「今思えば何故、あなた様に、あのような態度をとったのか不思議でなりません。娘が恥辱を受けたと思い、怒りでそうなったとしか考えられません。」
「勘違いとは言え、我が子の事です。冷静でいられない気持ちは分からなくは、ないです。」
「分かって頂けますか?」
「はい。きっとソフィアさんも、同じ気持ちで仕事が手に、つかなかったのでしょう。」
「ソフィア?ソフィアをご存じでしたか。先日、妻が解雇したのですが、致し方ないとあきらめておりました。」
「致し方ない、ですか?」

「いえ、今なら分かります。わし達は、落ち込むソフィアに、鞭を打つようなことしていたのですね。」


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