異世界での異生活

なにがし

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79話 傲慢な商人に天誅が下る

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 チャーフィーは、すぐに作戦の立案とメンバー編成と準備に奔走した。そして準備が整い、今出発しようとしていたところだった。
 衛兵達は不満だった。コメット団長の追い詰められた立場は分かるが、日が暮れて暗闇での出発に何の効果があるのか疑問に思っていた。そして、何より暗闇での行進がいかに危険かと緊張し最悪の事態を覚悟していた。それが、一瞬で解放されたのだ。喜ばずにはいられない。衛兵達は、この幸運に感謝していた。

「G級ヤスオ殿。恥を忍んで申し上げる。この四人の子達を我らに預けてはくれまいか」
(ヤスオが子供を短期間で救い出すのはいいのだけど、逆にそのことが衛兵団に恥をかかす事になっていたのね。衛兵団に貸しを作るのもいいんじゃない)
「承知しました。子供達をよろしくお願いします」
「感謝する。この子達は我らが責任をもって、親御さんの元へ届ける」

 チャーフィーは、ヤスオにしがみつく子供の一人を抱き上げた。

「もう大丈夫、お姉ちゃん達が家まで送ってあげるからね」

──おねえちゃん?

チャーフィーは金色の髪に青い瞳をし、衛兵団のベレー帽を被った可愛らしい女性だ。だが、それはヤスオから見ての話しで子供から見ると母親より年上に見え、お姉ちゃんと呼ぶには苦しい。衛兵達もその事には気づいていて、額に汗を流し子供達が地雷を踏むのではないかと恐怖した。子供達もその事には疑問に思ったが、ここで対応を間違えると家に帰れなくなると思い気を使った。

「うん、お姉ちゃんありがとう」

チャーフィーの漫勉の笑みに、衛兵達はその子供に心から感謝した。よくやったと他の子供達も抱き上げ労いの言葉をかける。そのまま和んだ空気で、街に向かって歩き出す。

「これで、冒険者組合に出された捜索依頼は残り1件だな」
「そっちは冒険者組合に引き渡してもいいですか?」
「ん?まさか、救い出したのか?」
「はい、間に合いませんでしたが」
「ああ、そうか。それで、構わん」

──こいつ、本当に人間か?化け物だろ。

 チャーフィーは、心底そう思った。だが、街の噂で普通とは違うのだと思い出し、妙な胸騒ぎがする。そして、自分が貞操の危機にあると気がついた。ヤスオに不審な動きがあれば、うまく身をかわし周りの者でヤスオを取り押さえる作戦を練った。ただ、ヤスオの戦力情報は皆無で、どのような攻撃が得意なのか分からない。それでは、作戦の練りようがなかった。

「あの狼煙は、何なのですか?」

 作戦対象に声をかけられ、心臓が高鳴った。何かの駆け引きかと疑ったが、これ以上、起こってもいない事に、警戒をするのはやめようと思考を停止した。

「北と南で二手に別れて捜索するつもりだったからな。あの狼煙は北門の連中に作戦中止を伝えるものだ」

 こうして、ヤスオは街に入ると南門で、子供達に別れを告げ家路を急いだ。すでに冒険者組合の受付時間を過ぎているので、老婆の引き渡しは明日にする。

 その後、子供達はチャーフィーによる聞き取り調査を受けた。子供達は自分をさらった人間の特徴を的確に答え、チャーフィーを感心させた。だが、森での4日間についての質問には、必死だったので覚えてないなど、あいまいな答えが返ってきて、このギャップがチャーフィーを困惑させた。

 ヤスオは、アリアドネに今夜の食事はオクレツにしようと進言すると、アリアドネに急ぎ帰ろうとせかされた。結局、寄り道をすることなく真っすぐ自宅に帰るのだが、心配事が一つある。

「アリ姉様。チャーフィーさんの話から、推測するに」
(家の前に、マチルダがいる可能性が高いわ)
「どうしましょう」
(帰らないわけにもいかないから、話くらい聞いてあげましょう)

 家の近くまで帰ってきた。案の定、家の前に人影が見える。だが、その人影はヤスオが近づいても、まったく気がつかない。さらに近づくにつれて、その者は恰幅がよく派手な衣服を身に着けた男と分かる。その男はどこか上の空で、途方に暮れているように見える。

うちに何か御用ですか?」

 声をかけられ驚いた男は、ヤスオに気づくと、両膝と額を地面につけた。

「この度は、娘の恩人に対して大変無礼な行いをしてしまい、申し訳ありませんでした」

 マリナの父、ロスリコス商会のマーチャントだった。マーチャントの大きな声に、ご近所が何事かと窓を開け覗き込む。さすがに、これは見た目が悪いとすぐにマーチャントの腕を引き、自宅に招き入れた。

「それで、今日は謝罪に来たのですか?」

 マーチャントにお茶を入れたいが、帰ってきたばかりなのでお湯がない。ヤスオはすぐに、かまどに火をおこし、お湯を沸かした。

「はい。それと相談がありまして」

 昨日、マリナを訪ねて衛兵団の団長が商会を訪問した。せっかく団長様が来てくれたのでと、娘にうんこプレイをしたヤスオを裁いてほしいと嘆願した。それが事実ならと約束を取り付けたが、いざマリナの話を聞くと自分の勘違いだと気づかされた。そのことで、団長には呆れさせてしまい、軽蔑されてしまった。帰り際に、どのくらいお礼をしたのか問われ、金貨3枚を渡そうとしたが、受け取ってもらえなかった事を話した。

──そなたの娘の命は、たった金貨3枚かぁ。それで商人といえるのかぁ。

 と団長に怒鳴りつけられ、その声が隣近所、従業員にお客様と聞かれ周りから白い目で見られた。さらに、団長から冒険者組合に伝わり、冒険者組合から依頼を出しながら報酬を払わない商人がいると商業組合に苦情を入れられた。そして今朝、商業組合よりこの問題が解決するまで、取引停止にすると告知された。

 マーチャントは号泣しながら何度も謝罪し、お礼を受け取って、冒険者組合に苦情を取り下げるよう頼んでほしいと嘆願した。そして、いかほどお礼をすれば納得してもらえるか聞いてきた。その間、マーチャントは何度も額をテーブルにぶつけ謝罪し、テーブルの上はマーチャントの涙と鼻水まみれになっていた。

「今思えばなぜ、あなた様に、あのような態度をとったのか不思議でなりません。娘が恥辱を受けたと思い、怒りでそうなったとしか考えられません」
「勘違いとはいえ、我が子の事です。冷静でいられない気持ちは分かります」
「分かって頂けますか?」
「はい。きっとソフィアさんも、同じ気持ちで仕事が手につかなかったのでしょう」
「ソフィア?ソフィアをご存じでしたか。先日、妻が解雇したのですが、致し方ないと諦めておりました」
「致し方ない、ですか?」
「いえ、今なら分かります。わし達は、落ち込むソフィアに、鞭を打つようなことをしていたのですね」
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