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90.争奪戦
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──ギャァァァァァァ。
マチルダの剣がミノタウロスの背中を突き刺し貫通する。突き刺したマチルダが背中でぶら下がっているので、ミノタウロスは反撃できない。身体を左右に振り、マチルダを振り払おうとする。だが、マチルダは剣を決して離さないので、逆にその行為が傷口を広げることになる。たまらず、両膝を地面につけ、残った片腕で、貫通した剣を押し戻そうとする。両膝が地面につき姿勢が低くなったので、マチルダの足が地に着き、踏ん張りがきくようになる。
そして、力一杯剣にひねりを加える。傷口が少しずつ広がり、そこから大量の液体が噴出する。マチルダはその液体を頭から浴びるがそれでも、剣にひねりを加える。
ミノタウロスは苦しみながらも、何とか剣を押し返そうと腕に渾身の力を込める。だが、そのことが仇となり親指が斬れて落ちてしまう。剣を握れなくなり今度は手の平で押し返そうとする。だが、それも逆効果で、剣先が手の平にめり込んでいく。そして、手の平を貫通してしまう。
マチルダは、剣の握りの部分から、鍔の部分に握り替え、反り返りながら渾身の力を込めてひねりを加える。
──グオォォォォォォォォォォ。
ミノタウロスは断末魔の声上げ、魔石に戻った。ついに、ミノタウロスを倒した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
マチルダは持っていた剣を、空に突き上げ雄叫びを上げた。高鳴る気持ちが、収まると周りを見渡し、恩人?恩魔物?であるハーピーを探した。ハーピーは、木に寄りかかり座っていて、動けないようだ。すでにヤスオが寄り添い、治癒魔法をかけていた。マチルダはヤスオ達に歩み寄り、ハーピーの様子を見た。
「これは、もう助からんな。」
マチルダは顔を伏せ、ヤスオに背を向けた。背中からでも、泣いているのが分かる。
「何を言っているのですか。助かりますよ。」
「いいや、そいつは、助からん。ここで死ぬ。死んだことにする。」
「そうですか。では、それでお願いします。」
ハーピーは、討伐対象なので、見つけたら討たねばならない。助かると分かって、抑えきれず流した涙。こうなってしまっては、討てるはずがなかった。
サーチェの傷が癒え始め、少し動けるようになった。ここまでになると、マチルダも安心した。
「ヤスオ殿。何か食べ物はないか?腹が減って死にそうだ。」
「わっちもさぁ。何か、ないかさぁ。」
(わたしも何か食べたい。この近くに拠点があるから、そこで鍋でも。ねぇ。)
ヤスオは水瓶と手拭いを出すと、全身緑色の液体まみれのマチルダに身を清めるよう勧めた。マチルダはわずかな遠慮も見せず、水をガバガバ使って頭や顔を洗い流した。そして、ヤスオが乾燥魔法をかけ、ある程度乾かすと、細かい箇所を手拭いで拭いた。拭き終わると手拭いをヤスオに返そうとするが、差し出した途端、ヤスオの口元から光るものが垂れたので、新品にして返すと伝え、懐に収めた。
そんなことを行っていると、サーチェの状態が良くなってきた。ヤスオとマチルダは、サーチェに肩を貸し、拠点まで移動した。拠点に着く頃には、サーチェも自走できるくらいに回復し、拠点の大岩を一飛びして、見せた。
焚火を作ると、鍋を吊るし温める。二人には器と先割れスプーンを渡して、茹で上がるのを待った。
「マチルダさんとサーチェとで、こうして食卓を並べるなんて夢のようです。」
「マチルダっちは、わっちを討たないかさぁ?」
「一緒に戦った仲だ。もはや討つ気にはなれん。だが、なぜか敵になるような気がする。」
「奇遇さぁ。わっちもマッチと、何かで競い合うような気がするさぁ。」
「マッチとは、わたしの事か?」
「そうさ、言い易いさぁね。」
「やはりおぬしは、好きになれん。」
鍋が茹で上がり、ヤスオは二人の器に中身を盛り付け渡し、自分の器にも盛り付け
食べようとした。
『おかわり。』
二人が同時に、おかわりを要求してきた。
「ちょっと待て、二人共。普通おかわりの前に、いただきますがあるだろう。順番がおかしくないか?」
「すまん。昨夜から戦い続きで、すっかり腹を減らしていて、目の前の食材に我を忘れた。で、おかわり。」
「わっちも、傷回復の影響でお腹ペコペコさぁ。ごめんさぁ。で、おかわり。」
納得は、いかないが、この女性二人の要求を断ることなどできる訳なく、おかわりに応じた。そして、自分も食べようとしたが、
『おかわり。』
──早すぎるだろう。
ヤスオは、面倒くさくなり、お玉を鍋に置いて勝手に自分で注げと告げた。そこからお玉の争奪戦が始まる。
空気の抵抗を最小限に抑え、高速移動をするマチルダと、空気を利用して加速するサーチェとの、お玉を奪い取るスピード対決が行われた。その対決の一回戦は、サーチェに分があり、わずかに早かった。だが、その勢いを止める事ができず、熱く煮えた食材が飛び散る。二人は食材を難なくかわすが、ヤスオにはできない。直撃して、悶絶する。
それが二回戦、三回戦と続き、そのたびに、悶絶した。ヤスオを悶絶地獄から救ったのは、鍋の中身が無くなったからだ。その時のヤスオの周りは飛び散った食材が散乱し、勿体ないと苛ついた。だが、サーチェとマチルダの周りには飛び散った食材が存在していない。
──まさか、避けていたのではなく食べていたの?
「ヤスオ、そんなにこぼしたら勿体ないさぁ。お行儀よく食べるさぁ。」
「まったくだ。食べ物を粗末にすると、食べ物に苦労するようになるぞ。」
──それをお前達に言われたくないし、今まさに苦労しているのですけど。
結局ヤスオが食べられたのは、最初に注いだ一杯だけで、争奪戦に完敗したヤスオに、アリアドネのご機嫌は斜めになった。
「ヤスオ、他に食べ物はないのか?この鳥のせいで全然、足らない。」
「ヤスオ、わっちも、このチビのせいで、足らんさぁ。他に、ないかさぁ。」
ヤスオは、イラつきながらも次から次へと、鍋の中に食料を投入した。
マチルダの剣がミノタウロスの背中を突き刺し貫通する。突き刺したマチルダが背中でぶら下がっているので、ミノタウロスは反撃できない。身体を左右に振り、マチルダを振り払おうとする。だが、マチルダは剣を決して離さないので、逆にその行為が傷口を広げることになる。たまらず、両膝を地面につけ、残った片腕で、貫通した剣を押し戻そうとする。両膝が地面につき姿勢が低くなったので、マチルダの足が地に着き、踏ん張りがきくようになる。
そして、力一杯剣にひねりを加える。傷口が少しずつ広がり、そこから大量の液体が噴出する。マチルダはその液体を頭から浴びるがそれでも、剣にひねりを加える。
ミノタウロスは苦しみながらも、何とか剣を押し返そうと腕に渾身の力を込める。だが、そのことが仇となり親指が斬れて落ちてしまう。剣を握れなくなり今度は手の平で押し返そうとする。だが、それも逆効果で、剣先が手の平にめり込んでいく。そして、手の平を貫通してしまう。
マチルダは、剣の握りの部分から、鍔の部分に握り替え、反り返りながら渾身の力を込めてひねりを加える。
──グオォォォォォォォォォォ。
ミノタウロスは断末魔の声上げ、魔石に戻った。ついに、ミノタウロスを倒した。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
マチルダは持っていた剣を、空に突き上げ雄叫びを上げた。高鳴る気持ちが、収まると周りを見渡し、恩人?恩魔物?であるハーピーを探した。ハーピーは、木に寄りかかり座っていて、動けないようだ。すでにヤスオが寄り添い、治癒魔法をかけていた。マチルダはヤスオ達に歩み寄り、ハーピーの様子を見た。
「これは、もう助からんな。」
マチルダは顔を伏せ、ヤスオに背を向けた。背中からでも、泣いているのが分かる。
「何を言っているのですか。助かりますよ。」
「いいや、そいつは、助からん。ここで死ぬ。死んだことにする。」
「そうですか。では、それでお願いします。」
ハーピーは、討伐対象なので、見つけたら討たねばならない。助かると分かって、抑えきれず流した涙。こうなってしまっては、討てるはずがなかった。
サーチェの傷が癒え始め、少し動けるようになった。ここまでになると、マチルダも安心した。
「ヤスオ殿。何か食べ物はないか?腹が減って死にそうだ。」
「わっちもさぁ。何か、ないかさぁ。」
(わたしも何か食べたい。この近くに拠点があるから、そこで鍋でも。ねぇ。)
ヤスオは水瓶と手拭いを出すと、全身緑色の液体まみれのマチルダに身を清めるよう勧めた。マチルダはわずかな遠慮も見せず、水をガバガバ使って頭や顔を洗い流した。そして、ヤスオが乾燥魔法をかけ、ある程度乾かすと、細かい箇所を手拭いで拭いた。拭き終わると手拭いをヤスオに返そうとするが、差し出した途端、ヤスオの口元から光るものが垂れたので、新品にして返すと伝え、懐に収めた。
そんなことを行っていると、サーチェの状態が良くなってきた。ヤスオとマチルダは、サーチェに肩を貸し、拠点まで移動した。拠点に着く頃には、サーチェも自走できるくらいに回復し、拠点の大岩を一飛びして、見せた。
焚火を作ると、鍋を吊るし温める。二人には器と先割れスプーンを渡して、茹で上がるのを待った。
「マチルダさんとサーチェとで、こうして食卓を並べるなんて夢のようです。」
「マチルダっちは、わっちを討たないかさぁ?」
「一緒に戦った仲だ。もはや討つ気にはなれん。だが、なぜか敵になるような気がする。」
「奇遇さぁ。わっちもマッチと、何かで競い合うような気がするさぁ。」
「マッチとは、わたしの事か?」
「そうさ、言い易いさぁね。」
「やはりおぬしは、好きになれん。」
鍋が茹で上がり、ヤスオは二人の器に中身を盛り付け渡し、自分の器にも盛り付け
食べようとした。
『おかわり。』
二人が同時に、おかわりを要求してきた。
「ちょっと待て、二人共。普通おかわりの前に、いただきますがあるだろう。順番がおかしくないか?」
「すまん。昨夜から戦い続きで、すっかり腹を減らしていて、目の前の食材に我を忘れた。で、おかわり。」
「わっちも、傷回復の影響でお腹ペコペコさぁ。ごめんさぁ。で、おかわり。」
納得は、いかないが、この女性二人の要求を断ることなどできる訳なく、おかわりに応じた。そして、自分も食べようとしたが、
『おかわり。』
──早すぎるだろう。
ヤスオは、面倒くさくなり、お玉を鍋に置いて勝手に自分で注げと告げた。そこからお玉の争奪戦が始まる。
空気の抵抗を最小限に抑え、高速移動をするマチルダと、空気を利用して加速するサーチェとの、お玉を奪い取るスピード対決が行われた。その対決の一回戦は、サーチェに分があり、わずかに早かった。だが、その勢いを止める事ができず、熱く煮えた食材が飛び散る。二人は食材を難なくかわすが、ヤスオにはできない。直撃して、悶絶する。
それが二回戦、三回戦と続き、そのたびに、悶絶した。ヤスオを悶絶地獄から救ったのは、鍋の中身が無くなったからだ。その時のヤスオの周りは飛び散った食材が散乱し、勿体ないと苛ついた。だが、サーチェとマチルダの周りには飛び散った食材が存在していない。
──まさか、避けていたのではなく食べていたの?
「ヤスオ、そんなにこぼしたら勿体ないさぁ。お行儀よく食べるさぁ。」
「まったくだ。食べ物を粗末にすると、食べ物に苦労するようになるぞ。」
──それをお前達に言われたくないし、今まさに苦労しているのですけど。
結局ヤスオが食べられたのは、最初に注いだ一杯だけで、争奪戦に完敗したヤスオに、アリアドネのご機嫌は斜めになった。
「ヤスオ、他に食べ物はないのか?この鳥のせいで全然、足らない。」
「ヤスオ、わっちも、このチビのせいで、足らんさぁ。他に、ないかさぁ。」
ヤスオは、イラつきながらも次から次へと、鍋の中に食料を投入した。
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