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第一章 かずま

第9話 試合

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「明日、北小川中と試合を組みました」

 ゴールデンウイーク前の金曜日、練習後のミーティングで、義貴さんから告げられた。

 中学生になってから、一度も他校と試合したことのない僕たち一年生は、初めての経験に胸を膨らませた。でも先輩達の顔を見ると、全員が俯いて、暗い表情をしていた。

 その様子を見た明日香さんが、声をあげた。

「みんな、どうした。負けなきゃいいんだ。さあ、練習するぞ」

 さすが明日香さんだ。と僕は「はい」と大きな声で答えた。

 しかし、反応したのは一年生だけだった。

 そして次の日。

 先輩達が暗そうにしていた理由を理解した。北小川中はとても強く、と言うよりも南中のディフェンスが酷く、全く歯が立たなかったのだ。結果は7対1の大敗。入った一点も相手のオウンゴールというおまけ付きだ。

 先輩達は強すぎる北中との試合で気持ちが乗らなかったに違いない、と僕は勝手に推測した。

「先輩、どんまいです」

 僕は心がけて明るい声で先輩達に声をかけたが、誰一人として反応してくれなかった。

 試合後、部員全員が部室に集められた。フローリングとロッカー側に、付き人である男子と主人である女子が対面するように並んだ。女子の中央には義貴さんがいた。

「全く進歩しないね。これで北中戦十二連敗だよ。悔しいと思わないのかい?」

 赤髪の早苗さんが激しい口調で言った。

「デク、反省言いな」

 義貴さんが吐き捨てるように言った。

「今日の負けは、全て、キャプテンでキーパーの僕に責任があります。ディフェンスに的確な指示も出せず。簡単なシュートも止めることができませんでした。申し訳ありません」

「で?    どうするんだい?」

 義貴さんがニヤついた顔で尋ねた。

「敗者の罰を受けます。僕が全て受けます」

「いいだろ。準備しな」

 その言葉を聞くと、明日香さんは躊躇うことなく全裸になった。

 僕たち一年には、それだけで衝撃だった。あの一年生の憧れである明日香さんが、負けたというだけで、全裸で罰を受けるというのだ。

 それから明日香さんは床に手をついて脚を開き、お尻を高くあげた。その姿には唖然とした。僕にはできない。いくら萌絵様の命令でも……それを明日香さんは「準備しな」と言われただけで、自ら実行したのだ。

「義貴様、僕に罰をお与えください」


 それを聞いた義貴さんは、床に置いてあった五十センチ物差しを持って立ち上がり、明日香さんのお尻を力一杯叩いた。バシッという音が、部室中に響いた。一瞬明日香さんの体がプルプル震えるほどの衝撃だった。

「くっ、ありがとうございます」

 その言葉にも僕達は驚いた。叩かれてありがとうなどと、とても言えない。明日香さんはそれをやったのだ。

「みんな、デクが責任は全部自分にあると言ってる。すると、一人分を十回としても、最低百八十回、叩かれることになる。お前達はそれでいいのか?」

 この言葉が何を意味しているのか、一年生の僕でも分かった。

 でも、僕も叩いて下さいなんて言えるはずなかった。

「僕も敗者の罰をお願いします」

 一人の三年生が、前に出た。副キャプテンの珠音ジュノンさんだった。それに続くように、先輩達は服を脱ぎ、お仕置きの姿勢をとった。

 そんな先輩を見て、僕だけやらないわけにはいかなかった。意を決して、服を脱ぎ、お尻をあげた。

 僕の目に、股間にぶら下がる竿と袋が見え、その向こうに物差しを持って近づく萌絵様が見えた。萌絵様には僕のお尻の穴まで丸見えだっただろう。ついにこんなところまで見られてしまった僕は、もう人ではいられないという気持ちになっていた。しかもこれから定規でお尻を叩かれるのだ。

「いい格好。義貴さんに手加減なしって言われたから、覚悟しなさい」

 萌絵様は楽しそうだ。

 そして一発目がきた。物差しの1発は想像以上に痛く、僕はお尻をプルプルさせた。

 その様子が面白かったのか、萌絵様は大声で笑った。

「ハハハハハ……。きちんと反省も言うのよ」

 とても反省など言う余裕はなかった。

 二十発は叩かれただろうか。お仕置きの姿勢を保つのが限界にきた頃、

「もういいよ」

 義貴さんの一言で、尻叩きはようやく終了した。

 

 その後、僕たちは、明日香さんがやるのを見て、その場に正座した。

「私達のミーティングが終わるまで、そうやってなさい」

 早苗さんが言った。

「来週は東中とやるからね。きちんと練習するのよ」

 その言葉を残して、女子達は奥の部屋へ消えていった。
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