クラス M

東門 大

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第二章 森 聖喜の場合

第13話 昼間の出来事

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 家に帰ると、僕は外の犬小屋につながれた。
 
 そこにサトルの姉が朝食を持ってきた。予想はしていたがキューブ型のドッグフードだった。ご丁寧に歯磨き用のチューイングボーンまで置かれてあった。

 暁の姉は、僕に関心がないのか、餌のトレーをポンッと置くと、そのまま家に入っていった。ちょっと意地悪そうに見えたが、何もされずに済んで、内心ほっとした。

 昼間はだれもいなくなり、暇だった。何もすることがなく、僕は、今の自分を悲観し、評定会をボイコットしたことを後悔した。今は勝手に立ち歩くことも、言葉を発することも、そしてトイレでおしっこすることも許されないのだ。ぼくはいつまで犬なのだろう。一生このままなんていやだ。


 3時くらいに(庭からリビングの時計が見える)暁が帰ってきた。暁は着替えると、

「イブ! 輝姉ちゃん犬嫌いイヌギライだから気をつけてね」

 とだけ告げて、どこかへ行ってしまった。


 5時前には、輝が友達を三人連れて帰ってきた。

 しばらくしてから、輝はその友達三人と笑いながら庭に出てきた。輝の手には、暁が朝持っていた木の棒があった。

 そしてそれが、僕にとって地獄の始まりだった。

「こいつ? 輝んの新しいイブ」

 茶髪にロン毛の女子が言った。

 僕は女子4人に囲まれた恥ずかしさから勃起してしまい、身をかがめて犬小屋に入ろうとした。

「おすわり」

 輝の声で電撃が走り、僕はその場にうずくまった。そんな僕を見て、輝はまた命令してきた。

「ちんちん」

 僕は動かなかった。そんなの女子の前でできるはずがない。

「なあんだ。こっちの方がいいの? おすわり」

 また電撃がきた。二度目は初めよりも強く感じた。

「じゃあ、もう一回言うよ。ちんちん」

 僕は仕方なく、ちんちんのポーズをとった。勃起したペニスが出会ったばかりの女子たちの前に晒された。

「いやだあ、こいつ勃起してるじゃん」
「気持ち悪い」
「へんたーい……あれ? 犬でも変態でいいのかな?」

 女子たちは口々に僕を罵った。僕は電撃に対する恐怖から、この屈辱に耐えるしかなかった。

「じゃあ、次わあ……おまわり!」

 4人の中で一番背の低い丸顔の子が、指を回しながら言った。僕は1回だけ回った。

「勝手にやめるんじゃないよ」

 輝のビンタが僕の左頬に当たった。
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