奥様はご主人様

東門 大

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第二章 美沙の視点

第一話 醜悪な発見

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 人に対する評価なんて一瞬で変わるものだ。

 ある秋も深まりかけた頃、いつものように家に帰って、リビングのドアを開けると、床に転がる健太がいた。

 彼は全裸で、汗だくになり、そのぶよぶよとしただらしない腹と、脂肪に埋もれてほとんど見えない細い性器を晒し、必死に自慰行為に耽る最中だった。

 65インチのテレビには、女が男に首輪をつけて四つん這いにさせ、鞭で尻を打ちつける卑猥な動画が映っていた。

 その瞬間、私の頭の中で何かが崩れた。私は、目の前にいるこの物体を、もはや夫として、いや人間として認識できなくなった。そして、私の胸の奥深くに、今まで感じたことのない得体のしれない熱が沸き起こった。怒りとは違う何かだった。

 健太は私に気づき、慌てて手で性器を隠し、テレビを消そうとリモコンを探る滑稽な動きをした。

「健太」
 私の声は、自分でも驚くほど冷徹だった。健太は床にひれ伏し、120kgの体躯《タイク》を震わせた。

「美沙……どうして……今日は遅番じゃ」
 声を震わせながら狼狽しつつ、健太はどう言い訳しようかと、考えているに違いなかった。

 彼の醜い欲望が、私の中の女王を目覚めさせた。
「最近、誘ってくれないと思っていたら、こんなことで、性欲を満たしていたのね」
「土下座。しなさいよ」
 意識せず、この言葉が出た。

 健太は、震えながら私の足元で土下座した。まるで白い団子のようにうずくまった健太の背中を足で踏みつけながら私は確信した。彼は私の夫ではない。彼は、この醜い肉体を辱められ、徹底的に支配されることを望む、一匹の動物なのだ。

 どうしてこんな男を今まで夫だなんて思っていられたのだろうと、私はこれまでの自分を恥じた。

 健太は38歳。身長167cm、体重120kgという、ぽっちゃりを通り越した体形の男だ。私は元々、ぽっちゃりとした体型の男性が好きだったことに加えて、健太の常に女性を立ててくれる性格に好意を抱いた私は、そのまま結婚へ突き進んだのだ。しかし、結婚生活が進むにつれ、その「女性を立てる」態度は、ただの気弱で卑屈な性格の裏返しだと感じ、愛情も少しずつ冷めていった。

 そして結婚して五年が経つ今、健太と暮らす日常は、退屈そのものだった。人には言えないが、セックスレスも長く、それも私を憂鬱にさせていた。

「許してあげるから、私の言うことを何でも聞きなさい。あのテレビに映っていた奴隷のように生きたいのなら、今日から私の奴隷として生きなさい。それがあなたの望みなのでしょう」

 健太の顔には、屈辱と恐怖があったが、全身はひくひくと歓喜に震えているように見えた。
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