奥様はご主人様

東門 大

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第二章 美沙の視点

第九話 支配の飽和とブタの懇願

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 裕二とお互い結婚を意識する様になり、頻繁に彼を家に招くようになった私は、満たされすぎていたのかもしれない。

 健太は完璧なペット、完璧な奴隷として機能していたが、その完全な服従は、私にとって刺激の飽和をもたらした。

 そもそも私自身、健太ペットを飼育するためのスキルが足りていない。
 
 裕二と愛し合うたびに、健太はオットマンになり、正座して見守り、最後に汚れたものを洗浄する。このルーティンは、もはや私の中で奇妙な日常になっていた。

 ある日、裕二が帰った後の静寂の中、私はケージに戻された健太を、冷たい目で見下ろした。

 彼は貞操帯と豚マスクを再び装着され、四つん這いで私の足元に控えていた。

「健太」
私は、試しに、ほとんど関心のない声で尋ねた。

「あなた、もういいわ。飽きちゃった」
「あなたに、人間の暮らしに戻りたいか、聞いているの。どうしたい? もう解放してあげてもいいかなって思っているのよ」

 それは、本心から「捨ててもいいかな」という思いから出た言葉だった。

 裕二のとの結婚の障壁にもなり得るという打算もあった。

 健太のぶ厚い体が、微かに震えた。マスクの口元から、「ブヒッ、ブヒィ」という、いつもの家畜の鳴き声ではない、人間としての苦悶が漏れた。

 私は健太のマスクをとり、彼と久しぶりに目を合わせた。彼の目は涙で潤んでいた。

 しばらくの沈黙の後、彼は頭を床に擦り付け、必死な声で、そして明確な人間の言葉で懇願した。

「……美佐様、捨てないでください」彼は床に頭を叩きつけ、必死に、剥き出しの人間の言葉で懇願してきた 。涙と鼻水で床を汚し、かつての自尊心も夫としての面影もかなぐり捨てて、私に踏みにじられることに自分の価値を見出そうとしている 。
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「一生、どんなに辱められてもいい。何にでも従います。だから、そばに置いてください……!」 

 その醜くも真実味を帯びた叫びを聞き、私はしばらく沈黙した 。

 そして、再び彼の背中に足を乗せ、支配の重みを思い出させてやった 。

「あなたはそう言うと思っていたわ。でもね、言葉だけでは確信が持てないの」 


 私は用意していた小箱から、精巧な金属製の「焼き印」を取り出した 。これを胸と背中に刻めば、二度と人間には戻れない。

 社会からも普通の幸せからも永遠に追放される「奴隷の刻印」 。痛みに弱い健太なら、これを見せれば諦めるに違いない。そんな思いで事前に準備しておいた物だった。

「これがなんだか分かる? あなたが本当に身の生活を続けると言うのなら、あなたの醜い胸と背中に、私の所有としての印を刻んであげる」
「一度入れれば、二度と人間には戻れない。社会からも普通の幸せからも永遠に追放される『奴隷の刻印』よ。その覚悟はある? それとも、ここで私に捨てられて、一人の人間に戻る?」 

 震えながらも、彼に迷いはなかった。私に捨てられることだけが、彼にとっての唯一の絶望なのだ 。彼は自ら、体に印を刻んでくれと懇願した 。

 その魂を削り出すような言葉を聞いているうちに、私の中に再びサディスティックな満足感が湧き上がってくるのを感じた 。

「いいわ、ブタ。そこまで言うなら、一生飼ってあげる。永遠に、醜い豚奴隷として、私と裕二の快楽のために生きなさい。その刻印にふさわしい絶望を、たっぷり与えてあげるわ」 

 その言葉を聞いた瞬間、彼は絶頂したかのような安堵の表情を浮かべた 。歓喜に震えながら私の足を舐めるその姿を見て、私は確信した 。

 その日、私は彼の体に一生消えない隷属の証を刻み込んだ 。こうして、私は彼の永遠のご主人様となったのだ 。

 その声の切実さは、彼の全てを物語っていた。

 彼は、人間としての尊厳や自由を失うことよりも、私の支配下にある「豚奴隷」という屈辱的な役割こそが、自身の存在意義となっていることを悟っているのだ。

 この男は、もう、元には戻れない。

               END
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