奥様はご主人様

東門 大

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第一章 健太の視点

第二話 豚の調達と装備

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 翌日、僕は会社から帰ると、玄関で全裸になり、正座をして美沙を待った。

 美佐に「奴隷豚は家の中では何もマトってはいなけない全裸よ」「あと、必ず私より先に帰宅して、玄関で正座して待ちなさい。奴隷らしくね」と言われていたからだ。  

 これからどんな生活が待っているのかマゾヒストとしての性癖が。僕の心臓を高まらせた。

 太っている僕は全裸で正座をする自分の体を見るだけで羞恥心を駆り立てられ、勃起していた。

 大きな臀部が足の上に柔らかく乗り、座ると垂れ下がる脂肪がみじめな姿で折り重なっている。そんなみっともない体を隠すこともなく、帰宅した美沙に曝け出すのだ。

 だがその日、美沙はなかなか帰ってこなかった。足がしびれ苦痛になってきた。

 あまりに遅いので、あるいは美沙の気が変わって、家に戻らないこともあり得るか……そんな恐怖がよぎる。

 けれど、それ以上に「支配されている」という震えるような快感が、僕の理性を塗りつぶしていた。

 ガチャリ、と鍵が開く音がした。 

「ご主人様、おかえりなさいませ」と言うべきだったが、あまりの緊張と、全裸で妻を迎えるという倒錯した状況に言葉が詰まり、僕は硬直してしまった。

 直後、僕の頭に硬い衝撃が走った。美沙様がパンプスを履いたまま、僕の頭を踏みつけたのだ。 

「ご主人様が帰ってきたらどうすべきか、その足りない頭では理解できないの?」 

 ヒールの先が頭皮に食い込む。激痛とともに、彼女の軽蔑が体の中に流れ込んでくるのを感じた。僕はたまらず、恍惚とした声を漏らした。 

「……ご主人様、おかえりなさいませ」

 美沙に促され、リビングへ這い進んだ。ソファに座った彼女を見上げると、彼女は買い物袋からいくつかの「道具」を取り出した。  

 まずは、黒い革のマスク。それを僕の顔に押し当てると、視界と表情が奪われた。 

「今日から、あなたは私の『奴隷豚』よ。私に話しかけるときは、豚の鳴き声で許可を求めなさい」  

 マスクに押し込められた頬が熱い。僕はもはや美沙の夫ではなく、ただの鳴き声を上げる肉の塊なのだと自覚させられた。

 次に連れて行かれたのは浴室だった。  美沙は僕を仰向けに倒すと、僕の大きく突き出た腹に馬乗りになった。彼女の重みが僕の脂肪に沈み込み、心臓が早鐘を打つ。  

 電動バリカンが起動し、僕の陰毛が次々と刈り取られていく。ツルツルになっていく股間を晒され、僕は屈辱と興奮で、自分でも制御できないほどに反応してしまった。けれど、皮の薄い陰嚢にに刃を当てられると、それは痛みと恐怖に変わった。「ヴーヴー」とくぐもった悲鳴を上げ、痛みを訴えるが、美佐の手は止まらなかった。

 「うるさいわよ、ブタ」  美沙様はさらに僕の顔の上に跨り、胸毛や腋毛ワキゲまで綺麗に剃り落とした。彼女の香りと、僕自身の脂汗の匂いが混ざり合い、意識が朦朧とする。

 仕上げに用意されたのは、冷たい金属製の貞操帯だった。  

 さすがにそれには抵抗した。どんな結果になるのか見えていたからだ。性的な自由を奪われるのは、惨めミジメすぎる。言葉を許されない僕は、両手で股間を覆った。

 しかしどこで買ってきたのかスタンガンを当てられ、逆らえないと感じた僕は、仕方なく受け入れた。

 僕の、脂肪に埋もれた小さなペニスが、冷酷にリングの中へと押し込まれた。

 カチャリ、と鍵が閉まる音が、僕の性的自由が永遠に奪われた合図だった。 「許さないわ。あなたは永遠に満たされないのよ。それが私への最高の奉仕なの」

 その姿のまま、鏡の前に立たされた。

 鏡に映った自分の姿は、あまりにも無様だった。120kgの毛のない肉塊。顔は黒革に覆われ、股間には金属の枷。首には首輪が繋がれている。  

 けれど、その姿を見た瞬間、僕は魂の底から救われたような気がした。もう、夫として男として振る舞う必要も、醜い体を隠して卑屈になる必要もない。  

 僕は、美沙様の所有物。ただの、一匹の豚になれたのだ。

「さあ、私の汚いブタ。その醜い体で、私に一生服従しなさい」 

 美佐様の声がリビングに響いた。
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